2026.05.18

就活ハラスメント対策が義務化される時代に、採用の「対話設計」を問い直す

執筆:talentbook株式会社 共同代表取締役 大堀航


「人事の目が届きにくい場所」で多発する就活ハラスメント

就活ハラスメントとは、就職活動中やインターンシップ中の学生に対して、採用する立場の企業や社員が優越的な立場を利用して行うハラスメント行為を指します。

その実態は、決して他人事ではありません。

厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」によれば、インターンシップ中にセクハラを経験した学生は30.1%、インターンシップ以外の就職活動中に経験した学生は31.9%にのぼります。就活やインターンを経験した学生のうち約3人に1人が、何らかのハラスメントを受けているという現実があります。

さらに深刻なのは、ハラスメントが発生している場所です。

就活中にセクハラを受けた相手として最も多いのは「インターンシップを担当した自社従業員(40%)」で、次いで「採用面接担当者」「企業説明会の担当者」「OB・OG訪問を通じて知り合った従業員」がそれぞれ約20%となっています。(厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」)

つまり、被害は採用担当者だけでなく、インターンの現場やOB・OG訪問という「人事の目が届きにくい場所」で多発しているのです。

2026年10月、法的義務化が始まる。


2025年6月11日に労働施策総合推進法および男女雇用機会均等法が改正・公布され、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置をすべての事業主に義務付けることが決定しました。施行日は2026年10月1日です。

これまでのセクシュアルハラスメント防止措置は社内の労働者のみが対象でした。今回の改正により、就職活動中の学生、インターンシップ参加者、転職活動中の応募者など「求職者等」も保護対象に加わります。採用活動の多くの場面が、法的対応の対象となります。


企業に求められる具体的な対応としては、主に以下が挙げられます。

  • 就業規則・懲戒規定の改定

  • 採用担当者・リクルーターへのハラスメント研修の実施

  • 採用サイトや選考案内への相談窓口の明記

  • OB・OG訪問を含む面談ルールの策定と周知


対策を怠った場合のリスクも明確です。就活時にハラスメントを受けたと広まれば、企業イメージの低下や求人への応募数減少につながります。損害賠償請求や行政指導を受けるリスクもあります。現代の学生はSNSで即座に情報を拡散できる環境にあり、一度「ブラックな採用活動をしている」という評判がつけば、それを覆すには長い時間がかかります。

問題の本質は「密室化した対話」にある?


ここで改めて考えたいのは、なぜハラスメントが人事の目の届かない場所で起きるのかという点です。

多くの企業が現場社員にリクルーターとして協力を仰いでいます。接触機会が増えることは採用競争力を高める一方で、人事担当者が一人ひとりの社員の言動をモニタリングすることを困難にしています。リクルーターと学生の「個人的なやり取り」が「密室化」されることこそが、ハラスメントの温床となります。LINEなどのプライベートなツールを利用した場合、不適切な発言があっても企業側は把握できません。(エアリーフレッシャーズクラウド調査より)

「学生の本音を引き出したい」「親密な関係を築きたい」という善意の意図が、管理されていない環境の中でハラスメントに転じてしまう。これは個人の資質の問題であると同時に、「対話の設計」が機能していないことによる構造的な問題でもあります。 

「良い対話を設計すること」が企業の責任になる


就活ハラスメント対策の義務化は、採用における「学生体験の設計」が法的責任の範囲に入ったことを意味します。

これまで、誰と話すか、何を話すか、どんな場をつくるかは、現場の社員個人の「マナー」や「空気を読む力」に委ねられてきました。しかし今後は、その設計ができていない企業が法的リスクを負う時代になります。

逆に言えば、対話の場を適切に設計できている企業は、ハラスメントリスクの低減と同時に、学生の志望度向上という採用上のメリットも得られます。

当社talentbookで実施した調査(26卒学生500名・採用担当者250名対象)では、以下のことが明らかになっています。

  •  学生の82.4%が「自分に合った社員と話せれば志望度が変わる」と回答

  •  一方で、自分に合った社員と「ほぼ毎回話せた」と感じている学生はわずか27.8%にとどまる

  • 面談を増やした企業の93.4%が「それでも志望度・承諾率は改善しない」と回答


「良い対話を設計すること」は、もはや採用の差別化ではなく、企業としての責任になりつつあります。
 

OB・OG訪問の「管理と設計」という新しい課題


法改正が特に影響するのが、OB・OG訪問やリクルーター面談の領域です。企業が実質的に関与する説明会、面接、インターンシップ、OB・OG訪問等はすべて法的対応の対象となり得ます。外部委託先や採用活動に関与する関係者を含め、企業としてのルール整備・周知が求められます。

つまり、これまで「自由に任せていた」OB・OG訪問も、企業が責任を持って設計・管理しなければならない領域になったということです。

企業に求められるのは大きく3つです。

1. 面談のルールを明文化する

OB・OG訪問や社員との面談において、どのような言動がハラスメントにあたるかを明示し、社員に周知する。個室での面談禁止、プライベートSNSでのやり取り禁止なども含めたルールの整備が必要です。

2. リクルーターへの研修を実施する

採用担当者だけでなく、学生と接するすべての社員(リクルーター・面接官・インターン担当者)へのハラスメント研修を継続的に実施することが義務となります。「何がハラスメントにあたるか」を具体的に伝えることが重要です。

3. 面談の「場」を企業管理下に置く

企業が関知しないプライベートなやり取りをなくし、面談が適切な環境・内容で行われているかを把握できる仕組みを構築する。これが、リスク管理と学生体験向上の両立につながります。

採用CXという視点で、対話を設計する

今回の法改正を受けて、人事担当者がまず取り組むべきは「ハラスメントをなくすための最低限の対応」ではないと思っています。

それよりも問いたいのは、「学生と社員が話す場を、どう設計するか」です。

誰と話すか。何を話すか。事前にどんな情報を共有するか。面談後にどうフォローするか。これらを適切に設計することは、ハラスメントリスクの排除と、学生の志望度向上を同時に実現します。

対話の場を「管理する」ことと「豊かにする」ことは、矛盾しません。 むしろ、設計されていない対話こそが、ハラスメントと機会損失の両方を生んでいたのです。

「タレントブック・キャンパス」が向き合う課題


タレントブック・キャンパスは、AIが「誰と?何を?話すべきか」をコーディネートする面談コーディネートサービスです。

学生の関心・価値観に合った社員をAIがレコメンドし、面談前に双方の情報を共有し、対話のガイドを提示する。面談は企業管理下のプラットフォーム上で行われ、その後のデータも蓄積される——これは採用CXの向上であると同時に、今回の法改正が企業に求める「面談の管理と設計」そのものでもあります。

就活ハラスメント対策の義務化は、2026年10月から始まります。

施行まで残り半年を切った今、対話の場の設計を見直す最初の一歩として、ぜひタレントブック・キャンパスをご検討ください。

▶ タレントブック・キャンパスの詳細はこちら
https://product.talent-book.jp/tb-campus


参考資料

厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」

厚生労働省「2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます」

「新卒採用における社員接点と意思決定に関する実態調査」talentbook株式会社(2026年3月)

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