2026.06.04

日立製作所が「求職者ファースト」に挑んだ採用ブランディングプロジェクトの全容──talentbook STUDIO✖️日立製作所

【Profile】 

中村早希 :株式会社日立製作所 人財統括本部 採用部門。採用ブランディングプロジェクト全体のプロジェクトリーダー(PL)。

増田沙絵 :株式会社日立製作所 人財統括本部 採用部門。PMO担当、採用ホームページ・オウンドメディアチームリーダー兼務。

 熊崎裕章:talentbook STUDIO チーフプロデューサー。採用ブランディングの伴走支援チーム「talentbook STUDIO」として本プロジェクトに参画。



日立製作所といえば、日本を代表する総合電機メーカー。しかしその実像は、ITやエネルギー、鉄道から都市インフラなど幅広く事業を手がけるグローバルな社会イノベーション企業です。

「家電・ハードウェアの会社」というイメージと実態のギャップ——。その認知変容を目的に、2025年夏、採用ブランディングの大規模プロジェクトが動き出しました。

採用サイトのフルリニューアルを軸に、記事・動画制作、交通広告まで複数の施策を一気通貫でディレクションしたのが、talentbook STUDIOです。日立製作所の中村さん・増田さんと、talentbook STUDIOの熊崎が、約1年間の伴走を振り返ります。

「採用候補者」が抱くイメージと、実態とのギャップを埋めたい

▲株式会社日立製作所 中村早希さん

──まずは、このプロジェクトが始まった経緯からお聞かせください。

中村早希(以下、中村) 日立製作所はITからエネルギー、鉄道、産業など幅広い事業を展開していて、グローバル社会課題解決、社会イノベーション事業を推進しています。しかし、この言葉自体の抽象度が高く、採用活動において候補者や学生にしっかり伝わっていないという課題がありました。市場調査をしたところ、日立に対するイメージの上位が「白物家電」「ハードウェアの会社」で。採用担当として日々感じていた認識の乖離がデータとして可視化されて、これは変えていかなければと強く感じました。

増田沙絵(以下、増田) 社会イノベーション事業を正しく理解してもらった上で、日立を選択肢のひとつにしてほしい。そのために採用ブランディングを強化しようというプロジェクトが立ち上がりました。これまでキャリア採用チームと新卒採用チームがそれぞれ独自にやってきた取り組みを横断して、30名規模の社員が関わる初めての大規模プロジェクトです。

──女性活躍の推進も今回の重点テーマとして掲げていましたね。

中村 社会イノベーション事業を推進するためには多様な人財が必要で、女性管理職の割合もKPIのひとつになっています。女性の方にも日立への認知を広げていきたいという課題意識がありました。ただ「女性だけ」に特化するのではなく、障がいのある方のストーリー記事も新たに作るなど、フラットに「日立でいろんな人が活躍している」ことを伝えることを大事にしていました。

大規模な複数の施策を一気通貫でやれるのが、talentbook STUDIOだった

▲株式会社日立製作所 増田沙絵さん

──採用サイト、記事・動画制作、交通広告と、複数の施策をtalentbookにまとめて依頼した理由はどこにありましたか?

中村 まず、以前からキャリア採用チームのオウンドメディアでご一緒していたので、日立のことをよく理解してくださっている安心感がありました。それと、今回は短期間でかなり大規模な施策を複数同時に動かさなければいけなかった。そのとき、施策ごとに別々のパートナーに依頼してしまうと、メッセージにブレが生まれてしまう。採用候補者が複数のコンテンツを目にしたとき、全体として一つのメッセージが届かないといけないので、一気通貫でやれる体制が必要でした。

増田 私も以前からプロジェクトをご一緒していて、熊崎さんを中心に日立の社内事情も含めてよく把握してくださっていた。それをうまく生かして調整や工面をしていただけたというのが、個人的にはとても大きかったです。

熊崎裕章(以下、熊崎) お声がけいただいたとき、率直にとても嬉しかったですね。ちょうど私たちの社内でも、記事制作だけでなく包括的なプロジェクトをご支援できる体制を作っていくタイミングだったんです。広告代理店出身のメンバーや記事制作のプロ、紙媒体やイベントなどのオフライン施策の経験者など、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが増えてきていたので、「ここが、チャレンジさせていただくタイミングだ」という気持ちで臨みました。

▲talentbook STUDIO 熊崎裕章

──今回、複数の社外パートナーとも連携したプロジェクトだったんですよね。

熊崎 採用サイトはベイジさん、動画も複数本作成しましたが、特性に合わせて協業する制作会社さんも変えました。全ての連絡窓口は私のところに集約して、各社・各チームの情報が途切れないようにするのが一番重要でした。どれだけ情報量を揃えておけるか。「talentbookには伝えていたけど、制作チームからはそれを踏まえた提案になっていない」ということを避けるために、1日10回以上のやり取りをしていたこともありましたね。

増田 本当に、見えないところで熊崎さんが日立側のプロジェクトメンバーとも個別に電話を入れてくれていたりして。「状況に合わせて多くのやり取りをしてくれているんだろうな」というのは、見えない部分でも感じていました。
 

採用サイトをゼロから作り直す──「求職者ファースト」への転換

──採用サイトのリニューアルは、どのような思想で取り組みましたか?

中村 これまでのサイトは、日立が伝えたいことをとにかく出す、という形でした。情報量はあるけれど、「欲しい情報がどのメニューにあるのかわからない」という声もありました。今回は求職者ファーストで、どんな方がいつ来ても必要な情報をすぐに取れる動線設計を優先しながら、キーメッセージを含めてゼロベースで作り直しました。

熊崎 ベイジさんは「求職者ファースト」という設計フレームワークを持っていらっしゃるんですが、それが今回の課題にすごく合っていた。私たちはそこにtalentbookとしてのコンテンツの視点を重ねる形でご支援しました。サイト全体の構造としては、トップページで会社として伝えたいメッセージを打ち出し、下層ページには具体的な事実情報を整理する。そして採用オウンドメディアでは、実際に働く人の言葉で具体事例を届ける。各施策の役割分担を意識しながら、全体を設計していきました。

中村 正直、難しかったのは、採用サイトの戦略設計と、日立における採用活動の基本方針の議論が同時並行で進んでいたことです。まさに「走りながら考える」という状況で…、

例えば「人への投資」のセクションは、採用部門以外の関係部署を巻き込んでのディスカッションが必要でした。もちろん、広報部門とのやりとりもです。色々な部門の思いがあるので、スケジュールも何度も調整して本当に大変でしたね。

熊崎 スケジュールを守ることと、みなさんの中で納得のいく着地点を待つことのせめぎ合いは、正直難しかったです。ただ、そこで時間をかけて議論されたからこそ、今後も語れるメッセージになっていくんだろうなと感じながら伴走していました。

https://www.hitachi.com/ja-jp/recruit/


──最終的に着地したサイトへの反応はいかがでしたか?

中村 学生や候補者からの反応はこれからとなりますが、他の部署の社員から「見やすくなったね」という声をもらえたのが、まず本当に嬉しかったです。日立の社員って、お互いのセクターが何をしているか細かくは知らないことが多くて、領域が広いがゆえの部分でもあるんですが、そういった社員にもサイトが届いていると感じました。

増田 採用サイトにはほぼすべて、これまで撮り下ろしてきた社員の写真を使っているんですけど、「いい写真が多すぎてどの組み合わせにしようか迷うくらい」でした(笑)。社員の顔でサイトが埋まるというのは、私たちが大切にしたいことの実現でもあったので嬉しかったですね。

記事・動画・交通広告──サイトを核に、施策を「面」で展開する

──採用サイトと並行して、記事・動画制作や交通広告など複数の施策も同時に動いていました。全体の設計はどのように考えていったのでしょうか?

熊崎 採用サイト、オウンドメディア、YouTube動画でそれぞれ情報の粒度を意識して設計しました。さらに今回は、デジタル広告や交通広告、雑誌タイアップなど、色々なチャネルを掛け合わせて同時に施策を行いました。オンラインとオフラインが連動して、生活導線のさまざまなところで日立さんを露出させていくイメージです。

中村 点と点の施策を面として実施していくことが必要だと感じていたので、その設計を一緒に考えてもらえたのはとても助かりました。

──記事制作では、どのような方を取り上げていったのでしょうか?

増田 今回から全社の社員が対象になったので、ITだけでなく、エネルギー・鉄道・産業など幅広い領域の方を取り上げることを意識しました。女性活躍推進を大きなテーマとして掲げてはいましたが、あえて女性にフォーカスしすぎるのではなく、フラットに日立でいろんな人が活躍しているということを伝えたかった。障がいのある方のストーリー記事も新たに制作しています。

中村 取材した社員からの反応がとても嬉しくて。記事が公開されると『自分の業務の棚卸しができた』『家族に自慢します』という声が届いたり、取材時に撮ってもらった写真をプロフィールに設定してくれる社員が続出したり。求職者だけでなく、社員のエンゲージメントにも繋がっていることがわかる声が届いて、そこは本当に嬉しい気づきでした。

──talentbook STUDIOとして、取材を重ねる中で見えてきた「日立らしさ」はどんなものでしたか?

熊崎 どの領域・どのレイヤーの方も、共通して『社会貢献』に向かう言葉をお話になるんです。経営層だけでなく、現場の方からも。創業の理念がカルチャーとして根付いているんだなと、取材を重ねるたびに感じました。ただ、社員数が数万人規模になると一概には言えない難しさも出てきます。どうしても発信内容が抽象的になりがちな分、具体的な一人ひとりの言葉がより重要になると思って、コンテンツの作り方にこだわっていきました。

──動画制作やファッション誌とのタイアップなど、採用広報としては異色の施策も実現しましたね。

中村 ビジネス雑誌への出稿が多かった私たちにとって、ファッション誌への展開は初めてのチャレンジでした。女性の生活導線の中に日立を届けるという発想がとても新鮮で。プロモーションムービーは想定以上に再生数が伸びて、社内でも大きな話題になりましたね。また数字という目に見える形だけでなく、他部門から動画を活用したいという声があがったことも、制作して良かったと思えた瞬間のひとつです。

熊崎 動画もドキュメンタリーに強いチーム、アニメーション対応のチームなど、求める表現に応じて複数の制作会社と連携しています。それぞれのパートナーとの連携ディレクションも、talentbook STUDIOとしての大事な役割のひとつでした。

──交通広告はどういう位置づけで取り組んだのでしょうか?

熊崎 交通広告は通りすがりに目に触れるものですから、立ち止まってじっくり読んでもらう媒体ではありません。Hitachiのロゴとビジュアルが連動して、繰り返し頭に刷り込まれていく状態を作ることが役割です。これまで制作してきた記事のキーワードをすべて引き出してメッセージ案を洗い出し、日立さんのプロジェクトに関わる社内メンバー総出で議論を重ねて絞り込んでいきました。3,000〜4,000字の記事コンテンツとは全く別の思考で、新鮮な挑戦でしたね。

中村 女性に響く洗練されたビジュアルにしたいけれど、振り切ると化粧品会社みたいになってしまう。ハードのプロダクトも扱う会社としての矜持もある。そのバランスを何度も議論しました。東京駅周辺への掲出では、見つけた社員がチャットで共有してくれて、社内でもかなり話題になりましたね。 

 「受発注の関係」を超えた伴走パートナー

──改めて、1年間を振り返って、talentbookをパートナーとして感じたことを率直に聞かせてください。

中村 このプロジェクトは採用ホームページのシステム移行も伴っていたので、「本当にリリースできるのだろうか…」と不安になる瞬間も何度かありました。でも、細かいことも含めて何度もすり合わせをしながら、最終的に大きなトラブルなく着地できたのは、talentbookさんのプロジェクトマネジメント力が大きかったと思っています。

増田 採用ホームページをここまで大きく変えるというのは、今後またあるかどうかわからないほどの大規模プロジェクトです。以前から一緒にやってきたtalentbookさんに一緒に取り組むことができて、無事着地できたのは本当によかったです。

熊崎 ありがとうございます。私が意識していたのは、「受発注の関係になりすぎない」ことでした。パートナーとしてではなく、日立のプロジェクトメンバーの一員として入っていくイメージです。言われたことをただやるでもなく、こちらから一方的に押しつけるのでもなく、状況を見ながら着地点を見つける役割を担おうと。大手企業さんとのプロジェクトでは、採用サイト制作も交通広告も、人事部門として主導するのは初めてというケースが多い。専門的な話をしっかりご理解いただくためのコミュニケーションを、丁寧に積み重ねることも意識していました。

中村 熊崎さんの人柄も本当に大きかったと思います。本音で相談できる関係でいられたのは、それがあったからこそで。ブランディングって正解がないから、誰かと一緒に考える時間がとても重要で。その役割を担ってもらえたことが、チームとしての力になりました。
 

「やってよかった」で終わらない──これからめざすこと

──今後の展望を聞かせてください。

中村 アウターに向けた施策のラインナップはある程度できてきたので、次はインナーブランディングに挑戦したいですね。社員一人ひとりが日立の魅力を語れるようにしていく部分はまだこれからで、採用活動を強くするためにも重要な領域だと思っています。

増田 社内の人も、実はまだ他の部署が何をしているかをそこまで知らなかったりする。コンテンツを通じて「日立ってこんなにいろんな人が活躍しているんだ」と社員同士が知る場を作っていくことで、エンゲージメントも上がっていくんじゃないかと思っています。これは少し大きな話になるんですけど、日立と同じように採用ブランディングに課題を感じている日本の大手企業は多いと思っています。各社が取り組みを進めることで、日本全体の雇用が盛り上がるんじゃないかという想いも正直あります。日立がリーディングカンパニーとしてその先頭を走っていきたいですね。

熊崎 私が大事だと思っているのは、「作ったものを正解にしていく」ということです。採用サイトも動画も記事も、作っただけで終わりではなくて、それを使って候補者とどうコミュニケーションを取っていくか、発信した情報が実際に求職者の行動につながっていくかが重要です。そこを日立のみなさんと一緒に検証し、育てていくフェーズに入っていきたいと思っています。

中村 第三者であるtalentbookさんの客観的な視点と、チームでの議論が組み合わさることで、自分たちでは見えなかったものが見えてきた1年だったと思います。これからも、ぜひその関係を続けていきたいです。


 talentbook STUDIOについて

talentbook STUDIOは、採用ブランディング・採用広報に関わる伴走支援を提供するtalentbook株式会社のチームです。記事・動画制作から採用サイト構築、広告施策まで、クライアントの課題に応じた包括的なディレクションを提供します。

※所属・役職は取材時(2026年3月)のものです。

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