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【Session編】従業員の行動・意識を変革するコクヨの働き方改革 ー re:Culture #3

re:Culture #3ではコクヨ株式会社より働き方改革タスクフォース タスクフォース長を務める新居臨氏より、「働くという行為をより豊かな体験にしたい」というミッションへのお取り組みを伺いました。

INDEX

※本記事は「【Case Study編】従業員の行動・意識を変革するコクヨの働き方改革 ー re:Culture #3」の続編です。

コクヨ株式会社 働き方改革タスクフォース タスクフォース長
新居 臨
1975年兵庫県神戸市生まれ。建築構造やデザインに興味を持ち、広島大学工学部卒業後、1998年コクヨ株式会社に入社。インテリアデザイナー・プロジェクトマネージャー・ワークスタイルコンサルタント等、働く環境に関する多様な経験を経て現在に至る。

風通しの良い環境をつくるために

弊社:それでは、ここからセッションパートです。今回、ご参加いただいている企業さまから、特にお問い合わせが多かったものを抜粋して、三つご用意しています。こちらと、頂いた質問を織り交ぜながらお話しできればなと思っております。

まず、質問から、いくつかご回答を差し上げましょうか。

例えば、一つ目「コミュニケーションプレイスの比率をアップされたとのことですが、機密事項を扱う管理系部署も同じフロアに入っておられるのでしょうか」ということです。

新居臨氏(以下新居):ありがとうございます。やはり、セキュリティポリシーと環境は、バランスだと思っています。なんでもかんでもオープンにして、なんでもかんでもコミュニケーションをとれば良いということではないですね。

社員の仲間、特定の人が聞いていたら申し訳ないんですけれど、一つ言えるのは、うちの会社でやってみたところ、法務部の仲間やガバナンス系の仲間は「絶対に駄目だ」「オープンにするなんてとんでもない」「壁を立てて、しっかり仕切った環境を」と。抵抗という言葉はあまり良くないですが、はじめは抵抗をすごくもらいました。

新居:ただ、なぜこれをしたいのか。さっきも言ったとおり、風通しの良い関係をつくりたいんだ。僕が何か法務的なことでちょっと困ったら、扉をトントンと叩いて「すみません、良いですか、ちょっと。ご相談があって」って言いたくないんです。

ダッと走っていって助けてほしいんです。こういうことを一生懸命お伝えしました。じゃあ、どこまで会社としてちゃんと定めたポリシーを守りながら、起こしたい変化に環境はどのくらい後押しできるのかみたいなことを会話でつくっていきました。

コクヨの20%プロジェクトルール

弊社:ありがとうございます。質問がだいぶ溜まってきたので、セッションパートの三つのテーマにもご回答できればと思います。
「プロジェクトと皆さんそれぞれの現業務との関係はどうだったのでしょうか。通常業務が忙しくてプロジェクトが蔑ろになることはありませんか」と。これはよく聞きますね。

新居:プロジェクトのジレンマですね。お話できることとしては、これまでそういう重点経営課題のために、うちの中でもいくつかプロジェクトを立ち上げて実行してきました。

まさにご質問のとおり、プロジェクトを進捗させるための時間がないとか、どうしても現業のマネージャーからすると優先順位で現業を優先してしまう傾向があり、なかなか工数を割かないとか、そういうことがありました。それは、どちらかというと、プロジェクト側のプロジェクトリーダーがしっかりハンドリングをして、現場に対して、重要度をしっかりとお伝えするというようなこと。

あとは、プロジェクトには、人材的にも、現業で100%稼働してくれているエース級の人が導入されがちです。その方が、プラスプロジェクトで稼働状況が150%にならないように、しっかり現業リーダーもプロジェクト側もコミュニケーションをとっていくことが大事だと思っています。とはいえ、うちの会社も同じように、こういうことはすごくあります。去年の9月から運用を開始したんですけど、20%プロジェクトルールというものをコクヨの仲間全員に適用しています。

プロジェクトとして解決したい課題をざっと列記して、それに興味のある人に手を挙げてもらいます。職階職性問わず。最大工数の20%をコーポレート側がコントロールして、しっかりと確保します。全社的にトライアルをはじめています。ちょうど今、この9月からはじめましたけれども、今のところは社内で50プロジェクトほど動いています。

弊社:例えば、参加率はいかがだったのでしょうか? 50プロジェクト稼働中、全社を巻き込んだ場合に何%くらいが参画しているのでしょうか?

新居:手を挙げて、プロジェクトとしてお見合いが成立したのが30プロジェクトくらいです。逆にいうと、20プロジェクトくらいは、社員の皆から見ても魅力的じゃなくて落ちるんですね。

弊社:それは面白いですね(笑)。

新居:「このプロジェクトは興味があって面白いから、私やります」と言ってくれた人たちがマッチング成立して、そこがプロジェクトとして稼働している状況です。参加してくれているのは、うちの社員のボトムで、30プロジェクトで100名いかないくらいじゃないかな。

弊社:1プロジェクト、2~3、4名くらいのイメージですか?

新居:そうですね。

弊社:これは、コーポレートの部門の方々がしっかり時間の計測管理もお手伝いしている感じですよね?

新居:そうです。

弊社:これは勤怠か何かをチェックしながら?

新居:そうですね。基本的には、今のところ、ヒアリングベースで運用しています。もっともっと全社的にプロジェクト型のワークスタイルに変革していくタイミングにおいては、仕組みの導入が必要になると思っていますね。

弊社:面白いですね。プロジェクトに手を挙げた場合は、社員の方が、皆さん側に面接をしにくる感じなんですか? どういうフローでお見合いが成立するんですか?

新居:起案したプロジェクトのリーダーとエントリーしたメンバーが面談をして決定です。

弊社:進捗管理は皆さま側がやっていらっしゃるんですか?

新居:そうですね。ヒアリングベースで実施しています。ただ、今までのプロトタイプ、プロジェクトを運営してきたプロトタイプの中でも、ある一定、うちの社員の仲間は、けっこう自主的にコントロールしてくれています。
例えば、過去には、このプロジェクトは参画メンバーが3割で運用してねというお願いを落とすと、結果的に、皆、ちゃんとコントロールをして3割くらいにはなってくれるという、うちの社員の仲間の特性もあります。そんなに大きく逸脱はしないし。今のところ、それでモチベーションが下がったというクレームは、大きなものはないですね。

弊社:ご質問にもあったように、ちょっとイメージが湧くのが、ある企業さまの話の中で聞いたことがあるなと思ったことがあります。一回、プロジェクトを起案してテストしてみてお願いしたら、ある部署はディレクターの方も含めたマネージャーが「やりたくないです」とはじかれて。結果、そことは「ちょっと来年、再来年くらいに」というふうになったケースもうっすら聞いた記憶があります。貴社の場合、そんなに大きいハレーションはあまりなかったんですか?

新居:うーん、そうですね。やっぱり「これは解決をしたい大事な経営課題です」ということをしっかりとお伝えしているつもりではあるということが一つ。

あとは、特に若い世代から、ルーティン的にしっかりとコツコツと業務をやっていくということに対して「自身のキャリアパスとしての未来が本当に描けますか」というある一定のお声もあります。それは「現場で我慢してやってね」という話ではなくて、どんどん新しい体験・エクスペリエンスを提供していくことが必要だと判断して運用しています。まだまだよちよち歩きではありますけれど。

コロナ禍でのマネージャー層の対応

弊社:ありがとうございます。続きまして「ディレクター以上のマネージャー層の意識改革、管理から自律をどう進めていますか。上層部ほどコロナ禍でも出社率が高く、リモートワークで部下がきちっと働いているか不安を感じているように思います。」これもけっこうな企業さまからご質問がありますね。

新居:弊社のことも包み隠さずお話をすると、コロナで働き方が分散して、よりマネージャーのキャラクターがすごく強くマネジメントに現われた昨年だったなと思いますね。

あるマネージャーは、真面目で業務遂行をしっかりしていくんだということを良かれと思ってコミュニケーションをとりにいった結果、メンバーは在宅で家で働きながら「すっげぇ過度に干渉してくるんですけど。これって信じてもらえていませんよね」と。

片や、こういう形になると皆、自律的にしっかり働こうとする。でも、在宅で働く、ソロで働いてくれている社員は「ずっとほったらかされていません?」「心理的安全性が低いんですけど」と。ある種、良かれと思ってやったことがほったらかしになっているみたいなことも起こりますよね。

これは、うちでも100%は解決できていないんだけれども。「そういう事例やそういう声があるよ」「現場でよく考えてね」という情報発信はいつも一生懸命やっているつもりではあります。

特に労務管理も、こういうふうに分散化する中で、しっかり把握していこうということの中で、今一度「うちの労務管理ルールはこういうものですよ」という動画をつくって発信しました。その中で今みたいな話を寸劇しました。「俺は良かれと思ってこうしているんだ」と。

弊社:楽しそうですね(笑)。

新居:1カ月45時間以上の残業に対するラインづけみたいなことも「大丈夫です、大丈夫です。分かっていますから。45時間超えませんよ。」月末、上司の声で「あれ?ぜんぜん駄目だったじゃないか。おかしいな」みたいなことをつくって、社員の皆に発信しました。要は「こういうことは起こりがちだから注意してね」ということをつくって発信しました。

弊社:そういう声を集めるようなことをしていらっしゃるんですか? サーベイみたいなことで、毎月なのか、そういう頻度で集めているものなんですか?

新居:そうですね。今年度から、基本的にパルスサーベイを月次で実施しています。様々なサーベイを実施しています。これまでも年次のエンゲージメントサーベイとか、もちろんやってはいましたけれども。ここは、なかなか1年で大きなトレンドは出てこないんです。毎年、毎年を振り返ってみると、とはいえ似たような感じになっていて。ここも大きな気づきを頂いたのは、去年のコロナですよね。

やっぱり、コロナで緊急でいろんなアンケートをしました。「今日は健康についてのアンケートです。皆さんどうですか」と。ご自宅の環境で「腰が痛い」「パソコンで目が疲れる」とか、健康という側面でいろいろなお声を頂きました。あとは時間管理やコミュニケーションなど。あと、紙やハンコ。いわゆるワークフロー系のお悩み。ベタな郵便物とか。会社に届く郵便物。皆、自宅で働いていて、アクセスしたいんだけどできませんとか。そこは、皆のいろんな声を聞きながら、会社としてすぐに対策を練って施策を出しました。

弊社:御社の場合、すごく面白いな、強みだなと感じたのは、例えば声を収集するなり、サーベイするなり、一側面を切った場合には、たしかに昨年のコロナから各社さまがやられているなと我々もお付き合いしている企業さまを見て思うこともありますが。
やっぱり、カルチャーにしっかり数値があり、実態の数字を見ながら改善している。そこのPDCAがすごく回っているなと、お話を聞いて思っています。そこの態度変容も含めた数値というのは、けっこう細かく見ていらっしゃるんですか?

新居:そうですね。細かく見ています。去年の弊社の数値結果で言うと、コロナが起こって、こうして働き方が分散化して「あなたにとって、この働き方や自身のアウトプット、業務成果に対する満足度は、コロナ前と比較して上がりましたか?下がりましたか?」と一人称で聞きました。

そうすると、6割の仲間が「上がった」「この働き方はけっこういいね」と。もっと言うと、通勤時間がなくなることによって「睡眠時間が長くなった」とか、社内では可処分時間が増えたと言っているのですが「自由に使える時間が増えた」とか。これは良いことでした。片や、まったく同じ質問を「チームでの成果、アウトプットに対する満足度は、コロナ前と比べて上がりましたか?下がりましたか?」というと、30%の仲間が「下がった」と言いました。

どうも、このへんに、今年やるべきテーマがあると思っています。この働き方の良いところはそのままに。やっぱり持続的成長に向けて、チームでどう働いていくのかということを、今、問われているなと思っています。そこに対する施策を今、検討を進めて、どんどん施策を打っていこうと考えています。

弊社:承知しました。面白いですね。弊社も昨年3月中旬くらいから「これは、経営層で話して、一回、リモートをしよう」と言って。4月下旬からは完全リモートに切り替えたんですね。
やはり、我々も、最初は不慣れなところから一瞬慣れてきて。ただ、所々、秋口くらいから、さっきお話があったように、マネジメントのやり方も含めて、一部は放任で個人が孤独を感じたりして。

けっこう同じような悩みを抱えているなと思いました。いろんな企業さまも、いろいろな悩みを持っているものの、たぶん特効薬はあまりないんだろうなと、私は最近思っています。例えば「とはいえ、何からはじめたら良いんだろう」と思う方も多い中で「まずはここからいったらどうか」という一歩踏み出すアドバイス・学びがあれば教えてください。

新居:どうでしょうね。やっぱり、目的を明確にして、しっかり伝えるということに尽きるんじゃないかなと思います。先ほど来ずっとお話ししていますけれど、うちの場合は、持続的成長のための働き方を進めていくんだけれども。決して、会社のために滅私奉公するための関係じゃなくて。人も会社も成長していく。人と会社を繋ぐ、すごく風通しの良い関係をつくったらお互いがお互いに満足度高い関係性になれるんじゃないかなということを目的としています。

まだ、うちの会社の中でも、皆、それがちゃんと全員腹落ちしているかというと、まだまだ足りていないところが多いと思います。それを一生懸命、今も発信しています。そうありたいけど、例えば、昨年度はコロナということが起こった。そのときに会社としては「こうしたい」「ああしたい」ということをお伝えしていくと、ある一定、受け止めてくれる方も受け止めやすいということかなと思います。

弊社:ありがとうございます。まさに、全体アンケートの中でも、視聴者の方々から「目的が分かりません」「決まっていません」という答えが多かったです。

やはり、まずは「何のための手段として、どういうふうにこれを使うのか」という観点で、今一度、整理するというのが、近道なのではないかというところを、私もお話を聞きながら思った次第です。

新居:そう思いますね。総労働時間を削減したり、副業を解禁したり。もちろん、各個社さまごとに、解決したい課題に近い施策からやられたら良いと思いますけれども。もしかしたら、今、世の中で網羅的に言われる働き方改革の項目の中で「うちはこうありたいから、あえてこれはやりません」という判断ももちろんあって良いのではないかと思います。

弊社:たしかに。

新居:全員が全員、howとして使えるようなマスターピースみたいなものは絶対になくて。個社さまごとに、けっこうご苦労されながら進めていく課題解決行為なのではないかと思います。

弊社:そうですよね。本日お話いただいた内容は、参考になる企業も多いと思います。ありがとうございました。

※本記事は「【Case Study編】従業員の行動・意識を変革するコクヨの働き方改革 ー re:Culture #3」の続編です。