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【Session編】〜従業員と共に成功する会社に〜 全ての従業員を対象とした、ボッシュのD&I推進 ー re:Culture #16

◆概要 re:Culture #16ではボッシュ株式会社で人事部門 人材開発グループ セクションマネージャーを務める加藤氏より、ボッシュのD&I推進についてお話を伺いしました。 こちらはレポ―ト第2弾のセッション編となります。

INDEX

※本記事は【Report〜Case Study編〜】〜従業員と共に成功する会社に〜 全ての従業員を対象とした、ボッシュのD&I推進 ー re:Culture #16の続編です。

ゲストスピーカー:

ボッシュ株式会社 人事部門 人材開発グループ セクション・マネージャー
加藤 聡一郎氏
2009年ボッシュ株式会社入社。
事業管理部で個別製品や事業部全体の収益管理、ERPシステム変更のためのプロジェクトなどに従事した後、人事部門へ異動。
人事部門では人事企画部において主にトータル・リワードの視点に基づいた各種制度設計・導入を担当後、2019年からは人材開発グループに主軸を移し、DEIの推進や人材開発に関わる各種施策の企画・運営を担っている。
現在は、人材開発グループと人事企画部を兼務し、人事施策を総合的に考えられる立場を活かして日本のボッシュ・グループにおけるビジョン達成のための活動に取り組んでいる

モデレーター:PR Table 志村 陸

制度を浸透させるための取り組みや工夫

志村:ここからセッションに入らせていただきます。早速、質問も頂いております。同じ質問をいくつか頂いているので、先に、そこから触れさせていただければと思います。

「世間より早くから様々な制度を取り入れられていて素晴らしいなと思いました。一方で、制度はあっても使われない、使いにくい、風土が浸透しないなど、割とどこの会社でもありがちだと思います。ボッシュさんでは、そのような壁はなかったでしょうか」というところです。これと同じ質問を二つ頂いております。
たくさんの施策を打たれていますし、そのどれもが、少なくとも日本の市場よりは早いものばかりだと感じました。こういった制度は、ボッシュの中で実際にワークしているのかというお話。いかがでしょうか。

加藤:ありがとうございます。おっしゃるとおり、制度を入れて会社が変わるかといったら、そうではないです。我々もそこは同じです。やはり、制度をつくったあとに、そもそも制度があること自体を知らないというケースがあるので、まずは周知が必要です。

そのあとに問題になってくるのは、制度はあるけど使いづらいということです。そのほとんどは「これを使いたい」と言い出しにくい。会社の中で制度を使っている人が多くない。
最近ですと、男性の育児休職の利用というところがホットなテーマかなと思うんですけれども。やっぱり、ファーストペンギンになる人は大変で「えっ、とるの?」みたいなところからはじまるというところはあるかなと思います。

我々が大事にしているのは、最初にやってみようと思って出てきた人たちが不利益を被らないように、できる支援はしていくという部分。あとは、利用されたということ自体がAという部署で起きても、それが会社全体に知られないと、「誰も使っていないんじゃない?」という疑心暗鬼で終わってしまいます。「使っている人がいるんですよ」というのを周知していくことが、一つ、大事だと思います。

あとは、そういった意識を持っている人たちの仲間づくりというのが大事かなと思っています。それこそ、我々の施策の中にコミュニティをつくるということがいっぱい出てきたと思います。そこの背景にある意識というのは、こういったテーマに関心を持って、自分事として取り組む人たちを、会社の中に少しでも増やしていくということが重要だと考えています。
そういう人たちが、いろんな職場の中にいる状態ができてくると「こういうことを使いたいと思っているんだけど難しいよね」という話が仮に職場で出てきたときに「いやいや、使えるよ」「良いんじゃない?ぜひ使ってみてよ」みたいな声かけができる人が各職場にいるということ。
やはり、人事ばかりが言っていても、一般の従業員からすると「人事はそう言うけどさ」みたいなところがありますので。そこは、一緒に働く仲間が味方になってくれるというのは、最終的に、それがある種の文化として根付く上では大事なのかなと考えています。

志村:ありがとうございます。頂いていた質問で「ボッシュでは壁はなかったですか?」というところに関しては、あるはある。でも、その壁を取り除いていく工夫はたくさんあるというお話でした。

ファーストペンギンの人たちが損失を被らないようにサポートしていくという中で、実際に使っている人がいるという情報を社内全体に届けるというお話もありましたけれども。
情報を届けても、大きい会社だと、局所的に、どうしても浸透しにくい部署も発生すると思います。そこでも、ファーストペンギンになろうとしている人をフォローするような仕組みややり方は、情報の共有以外にありますか?

加藤:そうですね。仕組みまではいっていないかもしれないのですが。我々のようなダイバーシティを推進しているような部署や、制度の利用促進をしているような人事の担当者というのが、声をあげながら。あとは「相談があったらきてください」ということで、オープンに構えているということが、一つあると思います。

それだけで十分かと言われてしまうと、なかなか難しい面があるのですが。
例えば、実際にLGBTQの取り組みでは、私のグループのメンバーが、最初、かなり積極的に動いて、当事者からも信頼を得て「この人だったら相談できるよね」という関係をつくることで、何かあれば今もそのメンバーに連絡がきたり、私に連絡がきたりして。職場で困って、職場の中では解決できないけれども、相談先があるみたいな状態を、組織全体ではつくっているということが大事かなと思います。

制度の企画から社内へ浸透させるために重要なこと

志村:少しだけお話が変わるんですけれども、加藤さんが自己紹介の中で、制度と文化の両方を見る立場にいらっしゃるというご紹介がありました。
このお話の中で、加藤さんが制度をつくるところの管轄をされているということだけではなく、文化にもアプローチをしていく、両方にアプローチができるポジションにいるということが、すごく大事なのかなと思いました。そういう部分で、何か意識をされて、ポジションや部署の役割が決まっていたりするのでしょうか。

加藤:そうですね。そこは、少なくとも、私自身はすごく意識した部分です。実際に、制度の企画をして、導入したときに、最後に難しさとして残ったことがあります。
いくらマネジメントを説得して、労働組合を説得して、導入に至り、いろいろな制度説明でも動画を展開したり、質疑応答の場を用意したりして、そういった場に出てきても、なかなか腹落ちしていない人ももちろんいます。
また、出てこないけれども「なんか制度が変わったな」と、変わったことに対してすごく抵抗感があり「こんな制度が変わるなんて」という声が出てくるのを聞くと、制度を入れただけでは駄目なんだと感じます。
いくら、背景としていろいろ考えて、思いを込めて、その思いでマネジメントを説得して入れたとしても、実際に使うユーザーの人たちが腹落ちしていないと、狙った効果が出ないということを感じました。

そういった意味で、制度のことだけをするのではなく、それをどう浸透させていくか。浸透させていく中で、もらったフィードバックに対して応えるような制度をつくっていく。そういった視点で取り組める人が必要なんじゃないかなと思いました。たまたま、チャンスを頂いて、今、こういった立場でやらせていただいている状況です。

社長や役員に期待する役割

志村:ありがとうございます。今、ちょうどお話に出ていた中で、近しい質問を頂いています。労働組合や、加藤さんの今のポジションから施策を講じるというお話もあったんですけれども。今度、社長という立場について、ご質問を頂いています。

「社長が社員に、DEIの中で、特にジェンダーダイバーシティについて言及する際に、どうしても否定的なコメントが寄せられます。イノベーションなどのメリット、誰もが働きやすい環境、そういったことを伝えても、共感を得ることや、重要性が伝わりづらいです。皆が自分事として行動していけるように、社長はどのようなメッセージを発信すべきでしょうか。どういう役割を果たしていくべきでしょうか。」すごく難しい質問ではあるんですけれども。

加藤:社長視点ですか……。

志村:ポイントとしては、このページでいろいろなキーワードが出ているのではないかと思っているんですけれども。実際に、社長という立場ではないので、難しい部分はあるかもしれないんですけれども。
ボッシュの中で、加藤さんが、社長や取締役、役員などのトッププレーヤーの方に期待している役割はありますか?

加藤:そうですね。今のお話の直接の回答にならないかもしれないんですけれど。実際、会社内でもあるのは、例えば女性について取り上げて仕組みを入れますとか、若手に注目して仕組みを入れますというと、それはその層に対する優遇じゃないかという声が必ず出てきます。
今回のご質問も似たようなことかなと思います。そういった意味でいくと「今は、ここを対象にして話をしているけれども、皆さんが大事で。我々の関心の対象は、女性だけではなくて、全従業員なんですよ」ということも合わせて粘り強くコミュニケーションしていく。なるべく、実際の行動として、そういった姿を見せていく。

要するに、特定の層だけ注目しているのではなく、他の方にも注目しているということを行動で示していくということが大事なのかなと思っています。
実際に、今、弊社の中でも、社長のメーダーは、ブログで自分で記事を書いたり、Vlogといってビデオでメッセージを寄せたりということで、いろいろ活動しています。そのメッセージの種類も、特定の領域に偏るのではなく、普通の種類に展開するということも工夫しているなということで見ています。

声は出てくると思います。どんなに工夫をしても出てくるなというのが、正直な実感です。そこはそこで受け入れつつ。「特別扱いをしているわけではない。この三つの項目でいくと、エクイティの観点で不利益を被っているので、スタートラインを一緒にするために、今、ここに重点的に取り組んでいるんだ」というニュアンスでメッセージを出していくことが一つ。それですべてが解決するわけではないですけど、方策かなと思います。

志村:なるほど。ありがとうございます。特に、ジェンダーダイバーシティについて言及する際にというふうに、質問では頂いているんですけれども。ここって、今、エクイティのところで「他者が抱える制約に関心を持ち」という一文があるんですけれども。ここはすごく難しいというか、自分事化しにくい部分ではあると思うので、そこが一つ、ポイントになってくるんじゃないかなと思います。

インタラクティブなコミュニケーションの重要性

志村:あとは、私は、仕事柄、コミュニケーションについて考えることが多いんですけれども。さっき、おっしゃられたように、ボッシュの社長も、ブログやVlogなど、いろいろな情報発信をされているということなんですけれども。それこそ、直接、社員を会話ができる場も設けられているんですか?

加藤:そうですね。そういうことも実施しています。ライブで中継しながら質問をしたり。今、オンラインなので、そういう場も持っていますし。コロナになる前は、少し広めの会場をとって、その場で実際に手を挙げて質問をするということもできるように。そういった場は、年に数回、持つようにしています。

志村:なるほど。私がお話をしたいなと思ったのは、そういうインタラクティブというか、今もそうですけれど、頂いた質問に対してリアルタイムに回答ができるというか。やっぱり、テキストになったり、動画になったりすることによって、編集されたもの、整理してから回答しているというところに、また疑いの余地ができてしまうのかなと、最近、考えています。
だから、できるだけオンタイムで対話型になっているということも、一つ、重要なポイントなんじゃないかなというふうに思いました。

加藤:そこは、そう思います。インタラクティブなコミュニケーションに飢えている人が増えているなと、今、すごく感じています。実際、会社の中でいろいろな情報展開をするといったときにも、動画にすると便利なので動画も使うんですけれども。一方で、知識を入れるという意味では動画は良いんですけれども。

そこに自分も関わりたい、関わってほしいというテーマだったりすると。実際の例として、イベントを開催しました。質疑応答の時間が十分にとれませんでしたとなると、イベントでとったアンケートの結果が、如実に悪くなるんですよね。「質問の時間が十分じゃなかった」「聞きたいことが聞けなかった」と出てきます。
そこは、明らかで、インタラクティブに自分もそこに関与したいし、メッセージを受け取ったら自分事として消化するためにもちゃんと質問をしたいという意識は、ここ数年、以前よりも高まっているなという気がします。

志村:そうですよね。同じことを言っていても、動画で伝えるのと、ライブで伝えるのでは、受け手側からすると、納得感はぜんぜん違うんだろうなと思いました。ありがとうございます。

ダイバーシティを社員のベネフィットに繋げていくために

志村:また、同じ質問を頂いているところがありますので、回答できればと思います。このピラミッドの図ですね。ここで、ビジネスをやっている企業として、最終的にはベネフィットのところに繋がっていくというお話なんですけれども。
具体的には、どういう形で実現できているのか。また、現時点でどこまできているのかというのをどこまで継続しているのか。二つのご質問がきています。ここは、ものすごく難しいところだというふうに思うんですけれども。現時点でのご回答はありますか?

加藤:正直、継続は課題です。それによって効果がどう出ているのかは、難しいなと思いますね。特に、ドイツの従業員と一緒に働くと、意見を言わないということがまずあり得なくて。ダイバーシティ&インクルージョンだと言ってはいるものの、特に向こうのメンバーと会話をすると、質問をしないということが、まずありません。

そういう意味で、必ず、意見の交流は生まれています。逆に、ダイバーシティがあまりない。しかも、ダイバーシティを尊重するとか、生かすとかいう状態がない状態というのが、今、そんなになくなってきているところもあって。最初のご質問の観点でいくと、かなり生かすという領域が増えてきている気がします。

志村:上から2段目くらいまではきていると。

加藤:はい。その上で、利益を得るというところは、明確には難しいものの。やっぱり、コミュニケーションが活発になるとか、意見が出やすいとか、それが実際の改善活動に繋がっているのは、目に見えてあるかなと思います。
それこそ、少し繋がりがある部分。特に、日本の中で「ダイバーシティを尊重しています。皆さん、意見を言ってください」と言っても、意見はなかなか出てこないと思います。

実際、私が入社して体験したこととしては、社内でワークショップが頻繁に実施されていて、そのワークショップを円滑に進めるためのファシリテーターの育成もけっこう強化してやっています。ファシリテーターの役割は、意見を言うではなく、その場に出ている人が全員、意見を出せるように支援をするコンセプトを貫いているので、引き出すみたいな技術を散々学ぶんですね。
実際に、ファシリテーターを育成して、育成されたファシリテーターが参加するワークショップを体験した人たちは「あっ、こんなに意見が出るんだ」「課題、解決策をいろいろ考えたと思ったけど、メンバーに聞けば、これだけ意見が出てくるんだな」というのを、実体験として、そういう体験を積み重ねてきているというのが、これまであるかなと思っていて。

そういう意味で、多様であること。そして、多様な意見が出てくることによるベネフィットというのは、小さな経験ではあるんですけど積み重ねていて。それが軽減されることによって、皆さん、ちょっとずつ腹落ちしているのかな。

志村:そうですね。やっぱり、継続というところはすごく難しいですし。トレンド的にも、特に人事領域で重要視をされるものというのは、定量的に継続しづらいものというのがどんどん重要だというふうに言われるケースが多くなってきているので。継続というところに課題を感じている企業はすごく多いんだと思います。

それこそ、今、加藤さんがおっしゃられた、発言のしやすさ、より多様な意見が出るようになったということは、すごく定性的なものだと思います。定性のアンケート調査くらいしか、今はなかなか思いつかないのかなというふうに思いますね。

加藤:ただ、今のお話の繰り返しになってしまうかもしれないんですけれども。メリットというか、ベネフィットを感じるという意味では、定性的な感覚でもいいと思ってはいます。まず、そこがスタートかなと思うんですよね。何かイノベーションが起きたとしても、それがすごく革新的であったとしても、いきなり売上に繋がらないですよね。やっぱり、アイディアが出てきても、そこを具現化して、実際のビジネスに繋げていくためにはすごく時間がかかるので、数値的なものにあまりこだわりすぎてしまうと、この活動は進まないのかなと思っています。

それよりは、日々の、すごい発見をしたとか、従業員がすごく生き生きしているとか、そこからはじめて。定性的であることが、もしかしたら数字にこだわる方にとっては違和感があるかもしれないんですけれども。この取り組みに関しては、そこからはじめて、感覚的に良さそうだというものから、まずはそれでOKという形ではじめるのが良いような気がしています。

志村:なるほど。ありがとうございます。まさに、このイベントのテーマでもある企業カルチャー。なんとなく、皆、良いほうが良いよねというのはあるけれども、数値的に評価しにくい領域なので。ここに出てくるお話というのは、基本的に数値化するのが難しいなというふうに、すごく感じています。

加藤:あとは、それが、会社だけではないと思うんですね。自分の意見が出せたということもそうですし。それによって職場の雰囲気が良くなれば、当事者である従業員自身もすごくメリットを感じる部分かなと思います。そういった意味で、我々が共に成功するという意味で、今回のタイトルにもつけさせていただきました。


志村:ありがとうございます。今のお話は、元々用意していたテーマの「DEIを推進して一番影響を感じる部分は?」というところでは、いろんな人の意見が出やすいというふうに多くの社員が感じてくれているのではないかというところになるんですかね?

加藤:そうですね。やっぱり、活発に意見が出ますし。「こういうテーマについてアイディアを募集しているんだけど」と言ったときにアイディアが出てきたり、「これに参加しませんか?」と声かけをしたときにメンバーが集まったりすること自体が、この推進による効果なのかなと感じています。

新しい制度やプロジェクトがスタートするきっかけ

志村:なるほど。ありがとうございます。新しいプロジェクトとか、公募に対して、社員の皆さんに参画してもらうというところで、ご質問を頂いています。
「新しい制度やD&Iに関わるプロジェクトは、どこから立ち上がることが多いですか?子育て社員やLGBTQの当事者、ダイバーシティ人事担当者、経営層などでいうと、そこでしょうか?」というところです。

加藤:そうですね。比較的、完全に新しいテーマみたいなことになると、マネジメントからの提案であったり、従業員の声であったり。ただ、具現化するのは、最初、担当人事、我々のような組織が、それを拾って形にしたり、こういう形があるんじゃないかとスタディしたりした上で提案として持っていくという感じになりますかね。
さすがに、完全に一般の従業員が企画まで持ってきて「これを形にしてくれ」「これを会社に導入してくれ」というところまではきていないので。「これ、なんとかならないかなあ」みたいなもやもやしたものを我々が拾ったり、マネジメントが「こういうことを聞いたけどどうなんだ?なんとかしてあげられないのか?」ということで出てくる話が多いかなと思いますね。
もちろん、我々から、世の中の動向や会社内の状況を見ながら提案することもありますけれども。優先順位を決めていくときに、実際に声があるというのは大事な要素なので、そういった意味で、どこからかは別として、会社内から声が上がっていることに取り組む。その結果として、いろんな制度が入ったり、仕組みが実現したりすることが多いかなと思います。

志村:なるほど。そうすると、ボッシュの中では、ある意味、人事がご意見箱じゃないですけれど、割と社員の声が集まりやすい形になっているというイメージですか?

加藤:そうですね。人事の中でもいろいろな役割があるので、それぞれ、拾ってきたものを共有しながら進めているという状態ですね。

志村:ありがとうございます。D&I領域ということで言うと、人事系の部署で進められているところが多いんじゃないかなというところ。あと、たまにあるのは、経営企画みたいなところが、中計の中に入ったということがスタート地点で、経営企画からスタートすることもあるんじゃないかなと思います。

DEIの進度に部署による差はあるのか

志村:今、ちょうど、部署の話が出たので、二つ目のテーマにも触れさせていただきたいと思います。「DEIの進度に部署による差はある?」というところです。
ボッシュという会社もメーカーなので、いわゆる本社機能の人たちと、現場でものづくりをしている人たちとで、同じ会社の中でもカラーが違うと思います。それによるDEIの進度の差はあるのでしょうか。

加藤:やはり、そこはありますね。そもそも、多様な従業員が、分かりやすい多様性が職場にあるかどうかということ自体のスタートラインが違ったりしますよね。製造ラインですと、我々、金属加工をしているので、どうしても男性の従業員が多いですし。そうなってくると、本社機能のように、実際は半分が女性ですみたいな職場とは、雰囲気も違って。

実際に触れる機会がなければ、相手を理解する機会もないですし。理解した上で工夫する、試行錯誤の経験もないので。知識では分かっているけれども、腹落ちしないというか。実際に目の前にしたらどうしたらいいのかというのは、部署によって起きます。

志村:理論だけになってしまう、理屈だけになってしまいますもんね。

加藤:まずは、そこを知っていただくことが大事なので、理論や、いろんな情報を伝えるようにしているのですが、最後は経験が物を言う部分がありますので。そこは、どうしても、すべての部署で同じレベルというのは難しいですね。

志村:そこは、ある種、DEIが必要な場所と、もしかしたらそんなに必要じゃない場所もあるということが事実・真実なんですかね?

加藤:どうなんでしょうね。そういう悩みを持ったこともあるんですけれども。今の個人的な考えとしては、すべての部署で必要なのかなと思っています。
それは何かというと。例えば、あまりダイバーシティがないように見える男性だけの職場においても、それぞれ、持っている意見は違ったり。それこそ、実はこの人はこんなスキルを持っていますとか、こんな知識を持っていますとか、そういうものを隠して仕事をしていたりすると思います。
本当は、そういうものをさらけ出して、少し新しい視点を入れたほうが、その現場の活性化に繋がったり、前例踏襲的にやっている仕事に風穴を開けて新しい仕組みを入れていくきっかけになったりすると感じています。
そういった視点に立つのであれば、すべての職場で、どんなに人がいようと、人が集まった場所にはDEIが必要だというのが、今の私の意見です。

志村:ありがとうございます。実は、誰もがマイノリティというところで言うと。仮に20代の男性社員ばかりという環境があったとしても、それでもどこかで、皆、マイノリティを抱えているというところですかね。そこを具現化するのが難しいという課題なのかもしれないですね。

加藤:そうですね。そこを表に出すのが難しいのかなと思いますね。我々、新入社員の研修も担当させていただいています。同じように20代の男性を見ても、一人一人、違うんですよね。思っていることも違いますし、バックグラウンドもぜんぜん違います。その人たちが、それぞれ、本来持っている個性を出せれば、そこだけでダイバーシティがすごくあると思うんですけれども。

一方で、組織の中に入ってしまうと、やっぱり遠慮をしてしまうということで、本来の自分を出し切れない部分があると思います。これは、悪いことではなくて、通常の反応として起きると思います。通常なんですけど、そこを越えて、どう個性を出してもらうか。そこがすごく大事だなと。そういった実際の関わりからも感じています。

志村:分かりやすくダイバーシティがある場所と、ダイバーシティが見えにくい場所によって、進度の難しさみたいなことがあるということですね。ありがとうございます。

「なんでだろう」と考える視点を持つことの重要性

志村:次の質問です。「エクイティの概念を日本で説明するのが難しいのですが。冒頭でおっしゃられていた新入社員研修の事例の話は、すごく分かりやすかったです。他に啓発の工夫などがあればご教授ください」ということです。

加藤:啓発の工夫ですか。

志村:さっきの話の中の「実は誰もがマイノリティ」みたいなところとも繋がってくるのかなと思ったんですけれども。

加藤:工夫かあ……。よくよく目を凝らして見ると、いろんなところで制約を抱えている人がいるんですよね。それこそ、今日の冒頭の質問に一つありましたけど、女性ということに関しても。我々も社内でインタビューやアンケートをとると感じるのは、お子さんが生まれて子育てをすると、同じように男性にも子どもが生まれているんですけれども、結果的に、日本の社会の中ですと、子育てのメインは女性みたいなところが各家庭で起きていて。そうすると、時間的な制約を受けてしまう。

ただ、一方で、会社の中、職場での働きぶりということで言うと、どうしても仕事に集中できるほうが有利な側面がある。家族のことが気になっているようでは、パフォーマンスを出し切れないということはあると思います。そういったことに対して、女性優遇じゃないかという声を越えて、どう手助けできるのか。このテーマに関しては、各家庭のことなので、けっこう難しいなというのが正直なところなんですけれども。そういう想像を巡らせてみると、いろんなケースがあります。そこをどう理解して、できるところは支援していくのか。

介護でも同じですね。年齢層が上がってきて、親の介護を経験されている従業員の方も増えてきています。そういったものを職場で言わない方も多いです。でも、疲れているなとか、すぐに帰って忙しそうにしているなとか、なんでだろうと考える。単純に怠けていると思うのではなく「実は、今、家庭のほうが厳しいんじゃないかな」「個人的に余裕がないんじゃないかな」と。

もしかしたら、外的に見て、介護とか育児とか、明確な要因がなくても、その人が精神的に余裕がないということもある種、制約なわけです。そういった制約にも「今、ちょっと集中できなそうだから、少し助けてあげる必要があるんじゃないか」と。集中力がないから短絡的に評価を下げるということではなく、なんでだろうという視点を持って関わることが大事な気がします。

志村:なるほど。ありがとうございます。

社内広報において大切なこと

志村:次の質問です。「DEIの施策で、社内広報が果たす役割と責任は何ですか。特に、効果的、好評だった、社内広報の施策は何でしたか」という質問です。
ここは、私がお伺いしたかった三つ目のテーマ「情報発信やネットはなぜ大切?」と近い質問かと思います。

加藤:そうですね。社内広報は、我々も、今、積極的に取り組んで、いろいろと試行錯誤しているところになります。
なぜ大切かというと、何事もまずは知ってもらうことからです。なるべく多くの人にリーチすることが大事です。ただ届いただけだと見ていない人はいっぱいいるので、いかに読んでもらうかということが大事です。そうすると「これは大事なんですよ」と認識してもらわなければいけないので、そこでいろいろな工夫が必要になります。

場合によっては、一人一人に「○○さん」と呼びかけてメールを送るとか。一つ、ネットワークをつくって、コミュニティをつくっているという背景としては、それに関心を持っている人が職場にいると、取り上げてくれるんですよね。
それが、特に管理職だったりすると、部内や課内のミーティングの中で「こんな情報がきているね」ということで取り上げてもらうと、それまで手元には届いていたけれどスルーしていた人たちが「それって大事なんだ」「それってそういう話なんだ」と認識をしてくれたりします。

一方的にマスアプローチで情報発信をするのは、最低条件、必要なんですけれども。一方で、その中に、いかに1対1、口コミ的な要素を増やしていくか。そこはすごく大事で、工夫のしがいがあるところかなと思います。我々も、今、試行錯誤の最中ですけれど。

社内広報は広報だけの仕事ではない

志村:今、画面に映っている施策もそうなんですけれども。人事がやるべき役割と、社内広報が果たすべき役割に垣根がない状態なのかなと思いました。社内向けの情報発信は、社内広報の人たちがやる仕事だったり、社内のコミュニティをつくったりするのは、割と広報的な動きなのかなと思いました。そもそも、人事に広報的な動きが求められているのかなと、お話を聞いていて思いました。

加藤:違うんですね(笑)。自然にやっているので。我々も、実際、自分たちのコミュニティを持っていたり、LGBTQのコミュニティの管理・運営・サポートをしていたり。あとは、人事として、一つコミュニティを持っていて、いろんな制度について詳しく説明をしているコミュニティで情報発信をしたりしています。
そういう意味では、社内広報は、広報の仕事みたいにはなっていないですね。それは、人事に限らず、社内のいろんな担当職場が、各々、情報発信をしている状態にあります。責任を持っている部署が広報をする。しかも、なるべくリーチできるように、それぞれが工夫をしている。時々、ノウハウの共有をしながらやっているという状態です。

志村:なるほど。今、質問をされた方は「社内広報が果たす役割と責任」ということなので、この方は、社内広報の担当の方なのかもしれません。もしかしたら、人事で全部やらなくても、こういうご意見を持ってくださっている、少なくとも疑問を持ってくださる方が、社内広報であれば、連携をして進めるということも。

加藤:実際に我々も連携していて。やはり、強みとしては、全従業員にすべからく届けるということは、社内広報の方のほうがノウハウを持っていたり、ルートを持っていたりします。そこは、多分に連携できますし、実際に連携しています。

DEIの施策で効果的だったもの

志村:質問の後半で頂いていた、効果的だった施策として、何か思い当たるものはありますか? 社員からうけが良かったものや、反応が良かったものなど、何かありますか?

加藤:反応にもいろいろあるんですけれど……。LGBTQの話も、最初、我々も、なかなかとっつきづらいかなということで、どこまで皆さんに受けて入れてもらえるか、難しいだろうなという想定をしながら進めていました。
実際にイベントで社内の当事者の方とAllyの方に出ていただいて話をしていただいたら、アンケートですごく好評でした。「身近にいるんですね」「自分の身近にいないので、会社の中にいるという想像もできていませんでした」という気づきが出ていたり。実際に、それをきっかけにAllyの宣言をしていただいた方もたくさんいます。
そこは、想定よりも反響が良かったという意味では、このイベントは効果を発揮しましたね。

志村:なるほど。まさに、近いところで「ジェンダーダイバーシティとか、障がい者に関する考えを社内で浸透させていくために、最も効果的だった施策は何ですか?」というところでも、LGBTQの施策というのは、ボッシュの中でも良かったということですね。

加藤:そうですね。すべての会社さんでできるとは思わないんですけれども。可能であれば、実際の会社内の当事者に協力してもらって、生の声を届けるということは、けっこう意味があるのかなと思います。
どうしても、ただ人事が言っているだけとか、ただ専門家が言っているだけだと「本当にそれって大事なの?」「それって私に関係あるの?」というところで、なかなか腹落ちしないということが見えてきています。

そうすると、身近な人、少なくとも会社の中に当事者がいて、その人が生の声で皆さんにメッセージを届けるということは、我々が想像していた以上に響くと感じました。

当事者の声を届けるために

志村:少し前の質問で「社長が果たす役割は何が良いですか?」とありましたが、今のお話を伺っていると、社長や経営層が、直接、ダイレクトにこういう施策を推進するということ自体が難しいのかなと思いました。
社長であっても、できることは、当事者の方の声のほうが効果的ということがあるかもしれません。もしかしたら、当事者の方たちが声を上げやすいカルチャーをつくるというところに働きかけるべきかもしれないし。もしかすると、カルチャー推進室みたいなものをつくることが、社長としてできる一番の動きなのかもしれないなと感じました。

加藤:そうですね。一方で、少なくとも、社長がそれを本気で推進しようと思わないとうまくいかない部分もあるかなと思っています。それは、当事者が安心できないところがあると思います。どれだけ声を上げても、会社が本当に認めてくれるのか。

そういう意味では、もしかしたら、一つ、やれる手としては、当事者と繋がっているのであれば、社長と会って直接話をしてもらう。社長も、当然、直接話せば無視できません。社長にとっても自分事になるきっかけになるかなと思いますし。
実際に、この活動では、社長のメーダーに、Ally宣言というものを書いていただきました。最初に「第1号Allyです」と掲げていたりもしています。それをきっかけに「会社の中では受け入れられるんだな」というのが、メッセージとして、一つあります。じゃあ、具体的にどうしたら良いのかということで、当事者の声を届けるというアプローチをとっています。

志村:なるほど。質問がたくさん残っていますが、今回はここで終了させていただきます。
加藤さん、ありがとうございました。