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【Case Study編】〜ダイバーシティ&インクルージョンの答えは“スキル育成”〜 逸早くD&Iの先へ進んだP&Gの“スキル”とは? ー re:Culture#10

<概要> re:Culture #10ではP&Gジャパン合同会社でヒューマンリソーシス シニアディレクターを務める市川 薫氏より、P&GのD&I推進についてお話を伺いました。 市川氏は女性リーダーがまだ少なかった営業職での自身の経験や、スイス・ジュネーブ赴任時の多国籍チームでの業務経験も踏まえて、組織内の多様性・インクルージョンを推進しつつ部下や組織の人材育成にも力を注いでいらっしゃいます。現在は、人事部門にて組織内の人事業務を担うとともに、経営層によるEquality & Inclusion リーダーチームの一員として社内アライコミュニティを率いながらインクルーシブな職場づくりに邁進していらっしゃり、 営業に関するスキルや管理職向けの社内研修も担当し、社外に向けた「インクルージョン研修」の講師も務めています。そんな市川氏より、P&Gのお取り組みをたっぷりとお話しいただきました。

INDEX

-スピーカー
P&Gジャパン合同会社 ヒューマンリソーシス シニアディレクター
市川 薫
1997年P&G営業統括本部入社。小売店・卸店営業担当、カテゴリー担当営業企画、店頭販促支援チームリーダーなど多種多様な営業業務に従事。 女性リーダーがまだ少なかった営業職での自身の経験や、スイス・ジュネーブ赴任時の多国籍チームでの業務経験も踏まえて、組織内の多様性・インクルージョンを推進しつつ部下や組織の人材育成にも力を注ぐ。 現在は、人事部門にて組織内の人事業務を担うとともに、経営層によるEquality & Inclusion リーダーチームの一員として社内アライコミュニティを率いながらインクルーシブな職場づくりに邁進している。 営業に関するスキルや管理職向けの社内研修も担当し、社外に向けた「インクルージョン研修」の講師も務めている。

-モデレーター-
株式会社PR Table マーケティング マネージャー
志村 陸 
大学卒業後、OA機器メーカーの株式会社リコーで新規開拓営業、商品企画に従事。 その後株式会社博報堂にてAccount Executiveとして大手内資/外資企業の マーケティングコミュニケーションの実行に伴走。 住宅設備メーカー/総合人材業界/PCメーカーなどのブランディング及び プロモーションを戦略立案〜エグゼキューションまで実施。 現在はPR Tableにてブランドコミュニケーションを担い、talentbookの マーケティングに奔走中。re:Cultureのプロデュースも務める。

経営戦略としての「Equality&Inclusion」

市川:私のほうから、P&Gという会社がどのようにEquality&Inclusion(平等な機会とインクルーシブな世界の実現)に取り組んできたのかということをご説明させていただきます。

皆さま、P&Gという会社についてご存知でしょうか。例えば製品面で言うと、アリエール、パンパース、ファブリーズ、パンテーン、SKⅡなど。このあたりのブランドですと「よく知っているよ」「うちにあるよ」とおっしゃっていただける方も多いのではないかと思います。

そんな我々の会社ですが、実は、人材が一番の大事な資産だと捉えています。

「今、我々が持っているブランド・資産・お金、すべてがなくなってしまったとしても、人材さえいれば、私は10年でこの会社を立て直すことができる。」これは、60年ほど前のアメリカ本社の当時の会長が発言した言葉です。そのくらい、人材は非常に重要な資産だと捉えています。

「多様な人材」が最大限の力を発揮できる組織づくり

人材を重要視している我々の会社が「ダイバーシティ&インクルージョン」そして「平等」をどのように捉えているのかということをご説明させていただきます。

 まず一つ目のポイントは、多様な「才能」「発想」「経験」があるということ。これが、まさにダイバーシティに当たる部分です。次が、一人一人に機会が与えられている、イクオリティ(平等な機会)というところです。 そして最後に、自らの価値を認められている、自分が輪の中に入っていて自分の能力を最大限に発揮することができると思われる環境をつくっているということ。これが、インクルージョンになります。

つまり、いろんな人がいろんな才能を持ってこの会社に入ってきている中で、それを最大限に発揮できる環境づくり・組織づくりを目指しています

もう少し具体的に、分かりやすい例も交えながらお話をしたいなと思います。
「多様性」「平等な機会」「インクルージョン」というのをフルーツに例えてみます。
まず、多様性というのは、組織の中にりんごもあれば、みかんもあれば、バナナもある。多様性がある状態のことです。いろんなタイプの人がいるという事実のことを指します。
そしてその中で、りんごもみかんも同じ機会を持つ。これは、今、それができているということではなく、その形を目指していくという理想の姿のことを表わしています。

そして、最後にこれがすごく大事なポイントです。それがインクルージョンできている。
単なる状態があるということではなく、その状態であるメリットを生かして、それを理解しあって、認め合って、活かし合うということ。それをインクルージョンと定義付けています。

価値観の異なる人や背景の異なる人が交じり合うということは、必ずしも心地良いことではないと思います。ぶつかったり、距離を置いたりすることもあると思いますが、それでは多様性があることの意味を完全に活かしきれていません。

インクルージョンは、“スキル”によって解決することができます。

ダイバーシティこそが、経営戦略

P&Gにおいては、ダイバーシティ、ないしはEquality&Inclusion(平等な機会とインクルーシブな世界の実現)というものを経営戦略だと捉えています。経営戦略であるということは、例えばCSRや福利厚生など、そういったことではなく、会社としてビジネスを伸ばしていくために必要だからやるということです。

ではなぜ、それを経営戦略と捉えているかというと、P&Gという会社が市場での競争力を上げて、ビジネスの結果を出していくために必要不可欠であると考えているからです。
我々がこのような取り組みをずっとさせていただいている結果、どんな良いことが起きているのか。まず数字で言いますと、堅調なビジネス成長が見込めています。
日用品の業界は超成熟市場なので、年々、売上を伸ばしていくというのがすごく難しい環境なのですが、そういった中でも、おかげさまで順調にビジネスを伸ばしております。特にこの5年間での成長は著しく、約2倍の成長率で伸長しています。

あとは、いろいろな価値観を持った、そして固定概念にとらわれないたくさんの社員がいます。
そういったメンバーを育成して、組織がより強くなっていきます。

また、いろいろな背景を持った人たちがいるので、お互いの時間を無駄にするということにすごくセンシティブになります。だから、効率的な会議の運営をする。時間をしっかり決めたり、どうしても参加できない人のために議事録をつくっておくとか、そういった社内意識もすごく高まり、生産性が上がります。結果として、革新的なアイデアを持った社員が考える製品や、コミュニケーションへのイノベーションが生まれてくるということです。

一つ例を挙げます。たとえば、下駄箱用のファブリーズです。このアイデアは、様々な消費者インタビューをやっているときに、日本人ではない、外国の社員から「日本って玄関で靴を脱ぐよね。靴箱って臭くなっちゃうよね。こういう商品が良いんじゃない?」と。私たちはけっこう目から鱗でした。そういったアイデアから商品が生まれたこともありました。

あとは最近、パンテーンというヘアケアのブランドが、プライドヘアというマーケティングのキャンペーンを実施しました。これは、トランスジェンダーの方の就職活動を応援するキャンペーンで、かなりご好評いただきました。我々社員がこのようなことを考える土壌づくりをして、それをしっかりと実現できるような環境をつくる。こういうことがビジネスの成長に繋がっていきます。

繰り返しになりますが、これはCSRや福利厚生のためにやっているのではなく、ビジネス戦略だと捉えています。

日本で働いている社員の国籍も29カ国に渡ります。それこそ、いろいろなカルチャーの方が混じり合って働いているので、そういった中でダイバーシティ&インクルージョンを実現していく環境が整っていくのではないかと思っています。

30年に渡るインクルージョン推進の変遷

そんな我々ですが、最初からすごくうまくいっていたわけではありません。ここに至るまでに、30年の道のりがありました。それを四つのフェーズに分けてお話をします。

四つのフェーズごとに、どんなことに取り組んで、どんな壁にぶち当たったからこそ次のフェーズにいったのかということをご説明しようと思います。

一番はじめのフェーズは1990年代からはじまります。このときに起きていたことは、会社に女性の人数が少なすぎるため、女性に活躍の場を与えなければいけないということです。今の日本の状況とちょっと似ている感じかなと思います。

私は入社して24年くらいになるのですが、営業本部に入社したとき同期の中でも女性はたった1人でした。150人くらいの営業オフィスに配属されましたが、その中でも女性は3、4人。そういうところからスタートしています。
約30年かけていろいろと学んできたことがあります。私が共有させていただくことが、皆さまにとって、何か一つでもヒントになれば良いなと思っています。決して、同じ道のりを辿るのに30年かかることはないと思っています。

ダイバーシティ&インクルージョンというのは、3カ月や半年でというのは難しいかもしれませんが、30年の道のりを1年、2年、5年ほどでやることは十分可能だと思います。そういった形で、ご自分の会社の状況とあわせながら聞いていただければと思います。

第1ステージが「女性にも活躍の場を」ということで、女性が活躍するにはどうしたら良いのか。
まずは、限られた人数の女性をネットワーキングするところからはじめました。

女性だからこその悩みを相談しあったり、だからこそこういうシステムが必要だということを話し合ったり。いわゆる、女性だけの限定グループで取り組みをはじめました。それによって、いろいろ理解が進んだり、カルチャーが変わっていったりするということもありました。

しばらくやって一番はじめに直面した壁が「そもそも女性だけで良いの?」というところです。
これは当たり前ですが、女性の中にもまったく違ったキャリアビジョンを持っている人もいるし、どんなサポートが周りから得られるかということも人によって違いますし。
あとは「男性って無視なの?そういうことでもないよね」ということです。
結局「一人一人違う」ということで、次のステージでは女性だけではなく、個々の多様性を尊重するというフェーズに入りました。

このときにはじめて、女性だけではなく、ダイバーシティという多様性ということにフォーカスして、それを推進していくというフェーズになりました。1998年に我々の会社ではダイバーシティを推進する担当を配置し、ネットワーキングや研修をやりました。

しかし、先ほどのりんごやみかんの例にもあったように、多様性があるということは状態に過ぎません。それを活かしきれていなかったらあまり意味がないのです。「違いを活かすスキルって何なんだろう」「自分らしさ×帰属感」ということで、いろんな人を配置するだけで終わっているだけでは駄目だということになりました。 

例えば、具体的なスキルとしては、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に対して理解を深めて、正しくインクルージョンできるスキルを社員皆が持てるようにするということが必要だということになりました。

三つ目のステージは「多様性を受容・活用」していくカルチャーと仕組みづくりです。
例えば、キャリアデーというものを実施し、上司と部下でキャリアについて話し合い、積極的にお互いのことを理解する。そして「どういうふうにキャリアを考えていったら良いのか」を話し合います。

あとは、様々なトレーニングを実施し、その結果、女性の管理職の比率が30%を超えました
そうした様々なアクティビティをずっとやってきています。

四つ目のステージで、私たちが今どのようなことに直面しているのかというところですが、これはまさに「停滞感」です。

様々な取り組みをしてきている中で「これ以上、何が必要なの?」「うちの会社は日本の中ではリードをしているし、もうできているんじゃないの?」「なんだかんだいって、結局、女性にしかフォーカスしていないよね」「所詮、女性のためじゃないか」という声が上がり、ちょっと停滞感があるというのが、少し前の状況でした。

具体的にいいますと、課題として皆が考えていることは、例えば、忙しすぎてそれどころじゃない、反対しないが積極的でもない等だったと思います。
ダイバーシティ&インクルージョンという活動にすごく積極的なのは、あくまで一部の人たち。すごくパッションを持っていたり、それが仕事だったりする一部の人たちであると。サイレントマジョリティーと呼んでいる「ものを言わないけれども大多数の人たち」と積極的に活動する人達とのギャップが停滞の要因だったのではないかと思います。

こうした停滞感からステップアップするために経営層とすごくディスカッションをしました。
最初は、数字で見えやすいギャップがある「ジェンダー議論」。
それをきっかけに「実はジェンダーだけではなく、もっといろいろな多様性がある」「ここは経営層がよりコミットメントを持ってダイバーシティを促進していかなきゃいけない」という気づきが生まれ、組織に落とし込むということをしました。

具体的には、中期経営計画の中のビジョンの中にしっかりと入れ込み、トップが発信し、社員を巻き込むということをやっています。今、まさにこのフェーズにございます。

経営ビジョンに組み込み、組織へと落とし込む

具体的に、中期経営計画の中に入れたということなのですが、これがP&Gジャパンの2025年までのビジョンです。
「LEADING THE FUTURE OF JAPAN」ということで、だいぶ大きな目標を掲げているんですけれども(笑)

三つの要素があります。もちろん、ビジネスで勝っていくということもそうですが。それと並列で「Lead in PEOPLE」人でも勝っていくし、そして社会も率いていくということを中期経営計画の中に入れています。

もちろんこれに紐付いて、戦略とアクション、数値目標があります。これらを経営陣が決めて発信し、会議があるごとにこのスライドを見せるようにしています。先ほど言ったように、ダイバーシティというのはジェンダーだけではありません。もっといろいろな様々な多様性があるんですが、その他の多様性について何かアクションをとれていたわけではありませんでした。そこで、私たちはもう少し範囲を広げてコミットするためにも、3つの柱とPWD、障がい者の方も含めたアクションを積極的にとっていこうと決めました。

全社会議において「私たちはこれをやっていきます」ということをトップが発信し、社長だけではなく様々な経営層が自分自身のコミットメントのスピーチをします。上からだけではなく下からもということで、アライコミュニティを設立しました。
これは、 LGBTQ+の社員をサポート・支援するメンバーたちのことです。LGBTQ+の社員も、そうでない社員も、同じように働きやすい環境をつくらなければいけない。そのためのサポーター軍団を社内でキックオフしました。

また、バッジで「自分はアライ(LGBTQ+の支援者)です」ということを見える化しています。
あとは、皆が正しい知識を持てるように社員研修を拡充しています。

ここまでが、今やらせていただいている第4ステージであり、多様性を実現しています。
その結果、平等な機会を実現するという理想型に近づいていきたいと考えております。

本質的なインクルーシブ経営のために、何が必要なのかということを考えました。
我々は、この三つの柱が大事だと考えています。どれが欠けてもうまくいきません。

一つ目が文化。まずは、多様性を尊重してインクルージョンしていきましょうという企業文化が必要です。
二つ目がそれを支える制度。例えば、フレックスワークのような働き方。いろいろな背景を持った人がいるわけですから、多様な人材を支える、多様な働き方を支えるような会社としての制度も整えなくてはいけません。
三つ目がスキル。先ほど、インクルージョンはスキルだというお話をしました。「人をうまく巻き込んで、盛り上げながら、一人一人の最大限の能力を発揮して」というのは、人徳によるみたいなところがあるように思われるかもしれません。

もちろん、そういうことが元々上手な人もいらっしゃると思いますが。私たちは、こういうことは研修によって学ぶこともできると考えています。そういったスキルを身につけるという三つの柱が大事だと思っています。
それらが相互に作用することによって、様々な個人の能力と成果を、組織の中で最大限に発揮することができるのではないかと考えています。

「文化」「スキル」「制度」を織り混ぜながらうまくやっているからこそ、今、大きくなってきています。ここの部分はまだまだ取り組み途中ではありますが、おかげさまで、名誉ある賞を頂いたり、いろいろなことをしております。
これを通じて我々の社員、LGBTQ+の方も、そうでない方も含めて、皆が働きやすい環境づくりができていけば良いなと考えています。

ビジネス成長のためのダイバーシティ&インクルージョン

まとめのスライドに入っていきます。冒頭にもご説明したとおり「多様性」「平等な機会」「インクルージョン」とは、あくまでビジネス成長のためにやります。なぜなら、この環境を提供することによって、一人一人が持っている能力を最大限に発揮することができるからです。

個人が持っている能力を100としたときに、それを50しか使えない環境と、120使える環境では、同じメンバーがいたとしても効果が変わってくると思います。
また、よくある話で、1+1が3以上になる組織ってあると思います。そういったことで、個人が最大限のパフォーマンスを発揮することで、それがビジネスの結果に結びついていくというふうに、我々は信じています

約30年の間に、いろいろな失敗もしましたし、試行錯誤もしてきました。私たちが持っているコツを社外に向けてもご提供させていただくことで、日本全体が良い方向に変わっていけば良いなと思っています。

いくつかプログラムを紹介します。一つ目が社外向けの「インクルージョン研修」です。先ほど私が言ったような、アンコンシャス・バイアス、スキルの部分です。
元々、社外秘にしていたものをもうちょっと広げていきましょうということで、開発したものを社外に無償提供するということを5年くらい前から行っています。すでに400社以上の方にご参加いただいて、非常に好評いただいております。

今までは、一般的なダイバーシティ&インクルージョンについてのノウハウをご提供していました。つい先日、記者会見で発表したのですが、アライ育成研修、LGBTQ+にフォーカスした研修も、新たにご提供することになっています。

また、女性起業家を支援するために「こんなスキルを身につけたほうが良いよ」ということをプログラムとして提供させていただいています。あとは、企業の研修の担当の方だけではなく、一般の方にももっと理解してもらうために、社外シンポジウムみたいなこともやっています。

私のほうからP&Gのケースをご紹介させていただきました。ありがとうございました。