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【Session編】 シスコはいかにして「社員が行きたくなる会社」になったのか? – re:Culture#1

◆ 概要 re:Culture #1はConscious Cultureの実現を目標に掲げ、従業員が「会社に来るのが楽しみ」な会社を実現しているシスコシステムズ合同会社より業務執行役員 人事部長の宮川愛氏にご登壇いただきました。 こちらはレポ―ト第2弾のセッション編となります。

INDEX

※本記事は【Report ~Case Study編~】 シスコはいかにして「社員が行きたくなる会社」になったのか? – re:Culture#1の続編です。

シスコシステムズ合同会社 業務執行役員 人事部長
宮川愛(Ai Miyakawa)
東京都出身。2003年に外資系IT企業に人事として 入社後、日本国内人事のみならず、アジア太平洋地域の人事( 主に人事企画業務・報酬制度・M&A等)に従事。
2014年3月 にシスコ入社後、部門担当人事(HR Business Partner)として営業組織の組織強化に携わる。2016年8月より現職。
2018年「働きがいのある会社」大企業部門1位、2020年に 3位を獲得。
シスコ社内のみならず日本の働き方の未来を創造に向けて 講演やセミナーにも多数登壇。

日本人の特性を考えたジョブ型について

弊社:宮川さん、ありがとうございました。ここからはセッションタイムをしながら、皆さんからの質問を受け付けたいなと思います。

すでに、一つ質問を頂いています。「ジョブ制度であると、個人の業務範囲が明確になる一方で、それ以外の業務を拾わなくなるデメリットがあると思いますが、どのような状況でしょうか。効果的な対応策はありますでしょうか」ということです。
ジョブ型に切り替えていくことでの弊害を気にされているということです。シスコさんの場合はどうなのかというご質問をされています。

宮川:すごく良いご質問です。たしかに、それは弊害としてあるかと思います。弊社も、一時期は、すごく個人商店になってしまったときがあります。今、それを軌道修正して、元に戻しています。

そこを埋めるのは、自分自身のパフォーマンスを出すというカルチャー。個人のパフォーマンスだけではなく、チームという観点で見たときにどうなのか。より広い視点で見たときに、自分が本当の目的に向かっていくときに何をしなければいけないのか。
そこのところを再認識してもらって、個人が納得をした上で、コアの業務以外の薄い領域に、皆さんに少しずつ入っていってもらうということ。
様々なプロジェクトを通じながら、それがどういうことを意味するのか。皆さんで腹を割って話していただいて、その中で納得をした上でやっていただいているという状況です。

海外と日本と、考え方の根底が違っているところもあります。海外でジョブ制度をやると、欧米のカルチャーには根底に個人主義というのがあるので、そこがバッチリ分かれてしまって、間に落ちるものがものすごく増えてしまいます。
日本人というのは、元々、より社会的なカルチャーを持った人種だと思いますので、私たち日本人の強みをカルチャーの中でいかに生かすかというところが、一つヒントになってくるのかなと思います。

弊社:ありがとうございます。質問も回答もとても興味深いなと思ってお伺いしていました。実際にどうなのか、お伺いしたいです。例えば、さっき、欧米のカルチャーと日本のカルチャーは違うという話がありました。
個人主義だからこそ気にならなかったこと。僕は、外資の会社さんと仕事をすることが多かったんですが、本当にこぼれまくるんですよね(笑)。「それ、私、担当じゃないんで」と言われ「これ、誰が拾うんだよ」ということをパートナー企業だった私達が拾ったりしていたんですけれど。

こぼれたことが、果たして、どれだけ影響があったのか。実は、気になっちゃうけど、そんなにクリティカルなものではなかったりすることもあったのではないかと思います。
そこをジョブ型に切り替えたときに、今まで大事だと思っていたけれど、誰かが埋めなければいけないと思っていたけれど、誰も埋める必要がなかったということは、ある可能性もあると思います。シスコさんではどうだったのかなと気になりました。

宮川:すごく大切な視点で、おっしゃるとおりですね。私たち、日本人として、かなり完璧を求める。きれいにすべてが収まることを求めるというのは、人種としてすごくあると思っています。おもいきってやめてみると、多少、何か影響があることは、ないわけではないけれども、そこまで大きな影響はなかったというのは、けっこうあります。
そこは、経営陣でも戦略等を話すときに、はじめることと同時にやめること「何をやめるのか」それをやめたときに「どういうことが起きてもよしとするのか」というところを必ず話し合うようにしています。

そうじゃないと、やらなければいけないことばかりがどんどん膨らんでいって。コアの領域よりも、当然、周辺領域のほうが大きいんですよね。だから、何をプライオリティとしてやらなければいけないかというのが、非常にぼやっとしてきます。そこは、本当に、やめることの勇気もすごく大事なポイントだと思います。

弊社:ありがとうございます。質問者さんもお聞きいただきましたでしょうか。やはり、新しいことをはじめるときに何を諦めるのか、何を捨てるのかというのは、非常に大事な視点だと思いました。

今、質問を頂いた方からも感想を頂きました。「素敵なカルチャーですね。自律的なメンバーだからこそできることだと思います」と。素晴らしいですよね。

シスコ社員のエンゲージメント調査

弊社:続いての質問です。「様々な施策をご紹介いただきましたが、社員の満足度はいかがでしょうか。何か測定する方法はおありでしょうか」と。満足度は高いかなと思うのですが。何をもって高いと言えるのかというご質問かなと思います。

宮川:世の中には、今、エンゲージメントをはかる様々なツールがあります。弊社の場合は、社内でつくったものを使用しています。

スライドには満足度調査を書いてあって、言い方が古くて申し訳ありません。 これは、エンゲージメント調査ですね。その中で何をはかっているかというと、こちらに記載のあるような内容です。そこで定点観測をすることによって、何が上がっているか、何が下がっているか。

例えば、弊社の場合、数年前に組織横断性。まさに、先ほど、ジョブ型のご質問を頂きましたけれども。やはり、各組織がとてもサイロ化してしまって、キャリアでも仕事でもまったく分断をされているということがありました。
そのときは、組織間のサイロや、個人間の仕事のサイロの分断をなくして、組織が、個人を越えてもキャリア形成ができるように会社としてどうサポートするかということを徹底的にやりました。
その結果、今、緑のところを見ていただくと、そこの項目も高くなっています。そのときに何をしたかというと、例えば、シャドーイング制度というものを入れました。鞄持ちとも言いますね。

まったく違う部署の人がやっているミーティングとかに同席をさせてもらったり、営業でない人が営業の社員をシャドウしてお客さん先のプレゼンテーションに同席したり。そういう中で、自分以外の組織がやっていること、その人たちの組織のミッション、また、そういった組織に行くためにはどういったスキルが必要なのか。それを自分自身で考えて次のキャリアパスに繋げていただく。そういったこともやりました。
あとは、ローテーションのサーベイをはじめました。他の仕事に移りたいという人たちの意識サーベイです。「次の半年から1年以内に移りたい」「次の1、2年で違う職種に移りたい」「まったく移りたくない」そこも含めてサーベイをします。

それが「どういう職種になりたいのか」「なぜなりたいのか」というところまで聞いた上で、その人がその情報を、その組織の長と共有します。この人のキャリアパスはどうやってやっていこうかということで、組織もまたがったキャリアをつくっていかれるような手助けをしました。
こういった形で定点観測をすることで、強い部分をさらに伸ばすだけではなく、弱い部分をいかに組織として改善していかれるかということを行っています。

もう一つ、弊社でやっているのは、Great Place to Work、働きがいのある会社に、2017年よりエントリーしています。その中で、その前の年とスコアがどう変わっていったのかということを見るようにしています。

弊社:ありがとうございます。質問者さんに続く形で僕も聞きたいなと思います。今、世の中にあるいろんなエンゲージメントツールのうちのいくつかが、他社比較できるようになったりすると思います。
シスコさんのエンゲージメントが高いというのは、シスコさんだけだと、本当に自分たちが高いのかどうか分からない。だから、同じ項目で他社比較をするとか。もしくは、先ほどのGreat Place to Workみたいに表彰されるという機会もあると思います。

それが社内の方に与える影響。「表彰された」「他と比べて高いらしい」というのが社内に対してどういう良い効果があるのか。もしくは良くはない効果があるのか。お話しいただけますでしょうか。

宮川:僭越ながら、弊社は2017年に働きがいのある会社で1位をとっています。1年お休みをしまして、昨年には3位に転落しました(笑)。
当然、1位をとったときは、社員自身もすごく喜んでいました。弊社の社員は、シスコがすごく好きな社員がとても多いので、自分たちの普段やってきたことがこうした形で認められたという気持ちになり、すごく良かったんですけれども。

3位になったときは社内でちょっと不穏な空気は流れたのですが、実際にはスコアは上がっていたんです。ただ、1年お休みをしている間に、もっともっとスコアを上げた会社さんがありました。
そのあたりは、社員にオープンにコミュニケーションをして「順位としては3位でしたが、私たちのスコアは上がっていて。ベストカンパニーという群の中では突出して良かった」ということは伝えるようにしました。なるべくオープンに伝えています。

弊社:もし、順位も下がって、スコアも下がったら、どんな不穏な空気があるのでしょうか。

宮川:弊社、その他にも、クオータリーごとに各マネージャーがやっているサーベイもあります。どうしても会社の売上とそういった意識というのは連動しています。

特に営業ですと、自分のインセンティブにも響いてきます。そこは常に変動するものだと考えています。重要なのは、その結果を受けてどういうアクションをとっていくのか。そのアクションをとっているということを、社員にいかに見せていくのか。そのアクションの中に、社員の意向をいかに含められるか。そういうところだと思います。

弊社:そうですね。たしかに今仰られた状況だとしたら、事業を立て直すのにどういうアクションをとっているか、そういう会社の動きを知るのが重要になりますよね。「俺らだけで頑張れって言うのかよ」じゃなくてね。なるほど。ありがとうございます。すごく興味があったので聞けて良かったです。

残り時間でいくつかセッションをしていきたいと思います。


弊社:ご質問を頂いています。「社内アンバサダー・ボランティアの方はどのように募るのでしょうか。集めるコツはあるのでしょうか」という質問と、元々、私が用意していたエバンジェリストの発見の質問がかなり近いと思いましたので、ここで兼ねさせていただければなと思います。

この質問者さんもきっとお悩みだと思います。誰を最初に味方につけるか。誰に最初にエバンジェリストになってもらうか。語り手になってもらうか。すごく大事だと思います。その人から会社の熱量がいろいろなコミュニティに広がっていくと思います。その人を最初に発見するというのは、いろいろな会社さんが苦労されています。シスコさんではどのようにされているのか、お伺いできればと思います。

宮川:難しい質問ですね。弊社でそういう人を見つけるのに苦労しているかというと、苦労していないかもしれません。その理由を考えたときに、その人たちが自ら手を挙げて、その人がやりたいことを実現できるというカルチャーがあるからだと思います。

例えば、部署ごとの取り組みにしても、誰かが手を挙げて「この部署でこういうことをやってみたいです」という人がいると、周りの人がその人をサポートして「ぜひ、それをやってみよう」という形で、様々な取り組みがはじまります。

人事の私としては、部門長の人に「こういう人いませんか?」と言うと「この人がこんなことをやったよ」とすぐに教えてくれるんです。だから、そこにピンポイントでアプローチをしていけば、すぐにそういう人が集まってきます。というところでは、そういうエバンジェリスト的な社員というのが、いかに輝ける土台をつくってあげるかというのは、組織づくりとしてはすごく重要だと思います。
頂いた質問のアンバサダーをどうやって募るかというところは、弊社もすごく紆余曲折がありました。例えば、女性活躍推進のアンバサダーが一つあります。
これは、過去には、すべての女性のハイポと言われる「この人、将来有望だ」と思われる女性が皆、入っていって、すごく盛り上がった時代がありました。
それを越えたら、一気に下火になってしまって、一気にアンバサダーが最低で5人くらいまで減ってしまいました。いろんなところに派生していったということもあるんですけれども。
イベントをやっても誰も集まらないという状態。人が集まらないので、活動している本人たちもやる気を失って、活動がどんどん下火になっていく。そんな時代もありました。

その中でやった取り組みがいくつかあります。まずは、新卒1、2年目の社員を入れることを強制しました。これで、少しでも人数を増やしていき、社員が社内で活躍できる土俵を増やしていくということ。それがトップダウンのアプローチですね。
ボトムアップは、今、活動してくれている社員を集めて、その中でデザインシンキングをやって「どうしたら人が集まるのか」ということを違う視点で考えてみる。そうやって、いくつか試行錯誤をしながら、今では、また、30、40人のグループに成長していきました。そういった地道な取り組みはあるかと思います。

一つすごく重要なのは、カルチャーとして、そうやって頑張っている人たちを周りがしらけた目で見ないということだと思います。これは、すでに主みたいな方が、割と何に対しても斜めの見方をする。
こういう方が、企業によってはいらっしゃると思います。場合によっては、そういった人をうまく取り込む。その人の強みをうまく生かしながらうまく取り込むことによって、流れを変えるというのは、状況に応じて必要だとは思っています。

人事に必要な力とは

弊社:ありがとうございます。今のお話とも通ずるなと思ったのは、社内のアンバサダーにしても、エバンジェリストにしても、その人のやる気や元々持っているものを後押ししてあげることが非常に大事だと。それが直接関われることもあれば、人事が直接関われないこともある。いかにそういう仕組みをつくっていくかということが重要だと思います。 

はじまる前に宮川さんに質問したのは「これから、人事のケイパビリティをどういう方向に上げていくのが良いのだろうか」ということです。そのときに宮川さんから頂いた答えが今の答えにもなると思うので、ご紹介いただきたいなと思っております。不思議な入りになっちゃいました(笑)。

宮川:オーセンティックリーダーシップのところですかね。頂いたご質問としては「人事としてどういうケイパビリティを高めるか」ということだったんですけれども、回答の方向がだんだんずれていきまして、何のお話をさせていただいたかというと。
オーセンティックとは、真実のとか、本物のとか、そういう意味があると思います。自分らしさの追求がすごく重要なことだと思っています。その中で、人事としての取り組みとしては、そういった様々なデザインシンキングや、様々なことのファシリテーションができる能力が必要です。

一つ、弊社でやっているワークショップの中に、2日間のパワーオブチームというものがあります。その中で話し合う内容というのが、一人ひとりの強み。これを4象限に入れて、どういうところに位置づけができるかというのを部署全体でマッピングします。
あと、いわゆる信頼関係を築くために、普段の鎧を着ている自分を捨てて、自分自身、本来の自分をさらけ出す。これは、一人一人の人生において、最も自分に影響があったこと、価値観を形成したような出来事はどういうことがあったかを話してもらいます。

一人、10分、15分、長いときには30分。仕事で見えている表面的なその人だけではなく、先ほどのアイスバーンの下のところですね。氷山の下のほうにある、その人の背景みたいなものを理解してもらって、チーム力を高めるというお話をさせていただきました。
そういったセッションのファシリテーションもできるようになっていく。コーチングのスキルや、ファシリテーションを効果的にやるスキルが、人事としてはより必要になっていきます。こういう話をさせていただきました。

弊社:ありがとうございます。人事という仕事を抽象化して、別の捉え方をしてみると、組織のファシリテーションをしている役割とも言えると思います。それが大きい会社であれば、大きな社会の中でいろんな小さな社会があると思います。それぞれが高めあえるようなファシリテーションを常にされていると思います。ある意味、それの延長であることなのかなという意識があります。ありがとうございます。

今、宮川さんがおっしゃった話を、僕はたまたま別のところで学びました。『LIFE DESIGN』という本があります。アメリカのAppleのプロダクトデザインをやったビル・バーネットさんという方が書かれたものです。
それを元にした人事向けのワークショップに参加させていただいたことがあります。それが自分にとっても非常に良い経験でしたし、きっとそういうことをやられているんだろうなと思いました。

そのワークショップは、どこかのエージェンシーが代行していると思うので、ぜひ調べて申し込んでみていただければと思います。そういうふうにして、人が「私はこれをやりたい」「あれをやりたい」と手を挙げやすくなるんじゃないかなというイメージがあります。

さて、ここで時間になってしまいました。宮川さん、ありがとうございました。

宮川:ありがとうございました。

弊社:ここでご感想を頂きました。「すごく良い講演を聞かせていただきました。できればぜひ書籍などでまとめて出版していただきたいです。」宮川先生の今後のご活躍にご期待をということで、楽しみですね。そういうときがきたら、ぜひ僕も大量購入したいと思います。

宮川:ありがとうございます(笑)。

弊社:皆さん、本日はご視聴いただきましてありがとうございました。

宮川:ありがとうございました。