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◆ 概要 re:Culture #1はConscious Cultureの実現を目標に掲げ、従業員が「会社に来るのが楽しみ」な会社を実現しているシスコシステムズ合同会社より業務執行役員 人事部長の宮川愛氏にご登壇いただきました。 どのようにして今のシスコシステムズのカルチャーが醸成されたのか、その裏にはどんな取組みがあったのか。宮川氏が渦中で実践されたご経験を基に、余すことなく語っていただいております。

INDEX

シスコシステムズ合同会社 業務執行役員 人事部長
宮川愛(Ai Miyakawa)
東京都出身。2003年に外資系IT企業に人事として 入社後、日本国内人事のみならず、アジア太平洋地域の人事( 主に人事企画業務・報酬制度・M&A等)に従事。
2014年3月 にシスコ入社後、部門担当人事(HR Business Partner)として営業組織の組織強化に携わる。2016年8月より現職。
2018年「働きがいのある会社」大企業部門1位、2020年に 3位を獲得。
シスコ社内のみならず日本の働き方の未来を創造に向けて 講演やセミナーにも多数登壇。

シスコの基本理念

宮川:改めまして、本日はよろしくお願いいたします。まず、本日の流れです。シスコにおける基本理念、市場を取り巻く環境、働きがいを支える3要素およびシスコの取り組み、コロナ禍における取り組みについてお話をします。

まず、シスコで考える私たちの基本理念(Guiding Principles)です。何の判断をするにも、こういった価値基準を基に判断をしていこうという根底にあるものです。
まず、私どもが何を考えているかというと、すべての根底には私たちのカルチャーが礎にあります。そして、私たちの仕事には、常に私たちのパーパス(Purpose)が存在します。

最近、パーパス経営等、言われたりしていますけれども、パーパスとは企業としての存在意義です。ミッションやビジョンよりもさらに高次にある、会社としての本当の存在意義のことをパーパスというふうに呼んでおります。

その中で、私どもが大切にしている価値観が三つあります。

まず、トップダウンとボトムアップ双方向のアプローチということです。当然、トップからのコミットメントというのは、方向性を示すという意味でも非常に重要です。
ただ、一人一人が全員参画型の企業をつくる、エンゲージメントを高めていく、これを考えていく際に、やはりそこにはボトムアップのアプローチが非常に重要になってきます。一人一人が経営に参画をしている、そういった意識を醸成する仕掛けづくりがいかにできるかといったところです。

そして、二つ目。一人ひとりの役割と期待値を明確化するということ。自由と自律ということもありますけれども。一人ひとりが「何を」「いつ」「どう」やらなければいけないのか。それを明確に理解しているところから、自律が生まれると思っています。

そして、三つ目。最初から完璧を目指さないというところです。アジャイル型に行っていくということ。小さな試作・検証を繰り返しながら、常に自分自身のバイアス、発想の転換に気づく。「~だからできない」という発想から「どうすればできる」という発想に変えていくということを大切にして、今まで経営をして参りました。

市場を取り巻く環境変化

宮川:実際に、今、市場をとりまく環境はどういうふうになっているのか。まず、「デジタル化」と「市場変革 スピードの加速」です。
VUCAワールドと言われたりもしますが、私たちは今、イノベーションの時代に入っています。過去も、常にイノベーションというのは、時代、時代ごとに行われていましたが、何が違うかというと、そのスピードが加速しているということです。


では、そうなったときに、企業・組織として何を考えていく必要があるのか。まず、テクノロジーによって様々な自動化が進んで、仕事の仕方そのものが変化をします。そして、各企業が一番に考えなくてはいけないことは、今までの階層型の組織。

他の企業がまだ持っていない強みをいち早く市場に持っていくスピード感のある経営をしていくという中で、今までの階層型の組織について考えることは重要です。
自分の部署があって、部長がいて、その下がいて、その下がいて……。下の人が部長と話したいときは、直接話せず、また階層を上がっていかなければいけない。そういうやり方をしていたのでは、今の市場変革のスピードに、会社として取り残されてしまいます。
よりフラットなカルチャーを持った企業の中で、異なる部署の方々も、時には社外の方も一緒になって、一つのものをダイナミックにつくり上げていく。そういった、よりフラットな、ダイナミックチーミングが非常に重要になってくるかと思います。
そして、新しいものを市場に持っていくという観点から、ダイバーシティの必要性、考え方。女性・男性、年齢層、こういったことだけではなくて、考え方・経験のダイバーシティ。こういったものが企業として勝ち残っていくために、今、一番必要であり、さらに重要性が増しているものかと思います。

そして「労働人口の変化」と「終身雇用の崩壊」というところです。日本では今、5世代が共存をしている状態です。その中で、5世代がいるということが企業としての弱みではなく、強みに変えていける。
このダイバーシティの必要性という背景から、5世代いることが企業としての強みになり得るはずです。その企業づくり・組織づくりをいかに進められるか。様々な世代、バックグランドを持つ方の強みというのを、いかに企業として生かせるか。
そして、終身雇用の崩壊というところでは、すでに日本でも終身雇用の崩壊がはじまっています。その際に、皆さんの企業から一番はじめに出ていってしまう人材はどういう人材かというと、一番優秀な人たちです。そういう人たちが新たなるチャレンジ、新たなる機会を求めて、いち早く出ていってしまいます。

では、会社として何を考える必要があるのか。会社として、社員一人ひとりにどのような価値観を提供して、どのような目的で事業を行い、どのような体験・経験をその人たちに与えることができるか。

カスタマーエクスペリエンスという言葉はよくありますが、エンプロイーエクスペリエンス(社員の体験)という観点で、その人がその会社に残ることでのその人にとっての価値観。その人のライフミッションと企業にいることとの繋がりがどうなっているのか。こういったことまで、今の時代、考える必要が出てきているかと思います。
さらに、今、コロナの様々なニュースが昨年の3月から世間を賑わせています。ニューノーマルに対する新しい働き方。先日、非常に面白い記事を拝見しました。やはり、今、このニューノーマルに対応できない働き方をしている企業は、人材がどんどん流出しているそうです。その中で、どのように社員の感情・気持ちと寄り添った経営をしていけるか。そういったところが今まで以上に時代として求められている。

そして、この市場変革に対応し得る組織づくりをして、社員の一人ひとりのエンゲージメント。このエンゲージメントという言葉は、モチベーションとはちょっと違うんですね。
モチベーションというのは、単に、一人がやる気がある状態。そのやる気がある方向性というのは、様々なベクトルがあると思っています。ただ、エンゲージメントというのは、会社が行きたい方向性と、個人が行きたい方向性のベクトルが合っていること。

だからこそ、今、パーパス経営というのが非常に叫ばれています。こういった中で、イノベーションをいかに促進できるかというのが、今、組織に求められている一つの命題かと思います。

必要とされる能力の変化

宮川:「49%」。こちらの数字は何の数字かというと、日本の労働人口が人工知能やロボット等で代替可能となってしまうパーセンテージです。日本は特に製造業が多い関係で、他の諸外国よりも数パーセント大きくなっています。

そういったコンテキストの中で、従来の必要とされていた能力はどういうものか。例えば、知識・専門性がある、オペレーション能力が高い、上から指示されたことを着実に遂行できる人たち。これは、当然、今でも優秀な人たちだと思いますが、このほとんどは、AIやロボットに取って代わっていけるものになると思います。

では、それに加えて、新しい時代にはどういった能力が必要になってくるのか。

一つ目は、点と点を線で繋ぐ力。今後は、データドリブンな世の中にどんどんなっていきます。その中で、出てきたデータと人の感性をいかに繋げられるか。
二つ目は、新しいものやアイディアを自分自身から生み出す力・創造力。
三つ目は、個人商店ではなく、スピード感をもって自分自身の強みを生かしながらいかにチームへ還元できるか。チームとしての能力を最大化できるか。

この三つは、今まで以上に社員のエンゲージメントが高くなければできないことです。つまり、自発性・自律性、そして人間的であること。これが、今の時代をリードできる人材になっていきます。そして、企業としては、どうしたらこれらの力を養っていくことができるのかを考えていかなければいけない時代に入っているかと思います。

「働きがい」を支える基本構成3要素

宮川:その中で、弊社では、働きがいを支える要素として、大きな要素を三つあげています。

一つが「カルチャー(企業文化)」。そのカルチャーというものを戦略的に支えるための「仕組み・制度」。そして、今日はZoomでやっていますけれども、そういったインフラを支える「テクノロジー」。この三つが揃って、はじめて会社としてイノベーションを起こしていけると考えています。

まず、弊社のカルチャーについてのお話から進めていきたいと思います。冒頭でもお伝えしましたように、弊社、すべての根底に私どものカルチャーがあり、すべての向かう方向の先に私たちのパーパスがあります。では、その二つが何なのか。

まず、パーパスについては「すべての人に開かれた未来を」。

どこにいてもネットワークの力を通じて、医療・教育、こういったものがすべての人に開かれたものとする世界を創造していこうと考えています。
そして、私たちが非常に大切にしているカルチャーを「Conscious Culture」というふうに呼んでいます。Consciousという言葉には「意識がある」という意味があります。

Conscious Cultureとは「自己理解」「他者への理解」及び「自分が他者に与える影響について目を向けて理解をして、意図的に一人ひとりが行動する。それによってチーム、お客さま、そしてより大きな日本社会にとって最高の体験を生み出していく」。
こういったことを私たちのカルチャーというふうに位置づけています。そのカルチャーを促進するために、どのような取り組みをしていくか。
ここから弊社のケーススタディに入っていきます。まず、コラボレーション文化を醸成して、浸透させるために、価値観のワークショップを開催しています。そして、ただ上から価値観を浸透させるだけではなく、一人ひとりがその価値観について考える、そういったワークショップを行っております。後ほどのスライドでご紹介します。

そして、弊社の人材戦略の根底にある考え方として、People Dealという考え方があります。これは何を意味しているかというと、「人同士の契約」。
会社と社員の相互的な契約によって、はじめてイノベーションは加速できる。つまり、会社が一方的に何かを与える、社員が一方的に何かをするのではなく、そこには双方向の関係性がなければいけません。その中で、「会社が提供するもの」と「社員に期待をすること」を明確にする。
この考え方がPeople Dealの考え方になっています。簡単な言葉で言い換えると「会社が提供するもの=機会・裁量」「社員に期待をすること=自律」です。

例えば、個人個人のキャリアを弊社に落とし込んで考えると、会社というのは、その個人が自分の描きたいキャリアを実現できるような機会や、様々なキャリアパスを用意しています。
ただ、社員に期待をするのは、会社が社員のキャリアをどこかへ連れていってくれるのではなく「自分のキャリアに対する自分のオーナシップをはっきり持ってください。自分がどこに行きたいのか、そのために何のサポートが欲しいのか、しっかりと自己認識してほしい」という裁量と自律の関係を言っています。

働き方改革でいうと、会社はいつでもどこからでも働けるような機会・裁量、そして制度とテクノロジーを提供しています。ただ、社員に期待をすることは、いつ、どこで働いていたとしても、同じ生産性を保って、結果をきちんと自分自身の中でコミットメントを果たすということをしてほしい。これがPeople Dealの考え方になります。

さらに、社員に期待することを、シスコでは六つの行動指針として設定しています。冒頭でお話をしました、価値観のプロジェクト。これが、この六つの行動指針。これ自体は、グローバルで落ちてきたものです。それを一人一人が自分で腹落ちできる言葉に落とし込んで考えて行動していく。こういった位置づけで、コロナ禍ということもあり、すべてオンラインでワークショップを行いました。
私たちの六つの行動指針。元々グローバル企業ですので、英語でグローバルから落ちてきています。ここに書いてある言葉は、それを日本語に直訳したものです。これを自分たちの言葉で言い換えるとどういう意味があるのか。これをオンラインで議論してもらいました。

例えば「Give your best」ベストを尽くそうということについて。
このチームでは「デジタルを超えたあたたかい世界」という意訳。そのままの言葉ではなく、本当にそれが何を意味するのかということを議論した結果、出てきたものという形になっています。オンラインでデザインシンキングができるようなツール(今回はmiro)を使いまして、このセッションをやりました。
最終的に、日本におけるすべてのチームがセッションをやりました。それをさらにタスクフォースが、日本として一つのものに落とし込んだ。これが、最後に出てきているこちらになっています。

経営戦略の一環であるダイバーシティ

宮川:そして、カルチャーの二つ目、ダイバーシティについてです。まず、弊社では、ダイバーシティというのは、人事戦略ではなくて経営戦略の一環として位置づけています。
これは冒頭で申し上げたとおり、今の時代、ダイバーシティを持つことが企業としての強みになり、それが企業としてのイノベーションを本当の意味で起こしていけると考えているからです。
この推進方法も、先ほどの三つの指針に基づいています。

リーダーがトップとなって推進をするダイバーシティのトップダウンのアプローチ。そして、アンバサダーと呼んでいますが、社員のボランティア。ボランティアが草の根的に横から広げる、もしくは下から上にボトムアップで広げるダイバーシティの活動。この二つ、双方向性を非常に重要視しています。
今現在、シスコでは六つのダイバーシティの活動グループがあります。Connected Women・女性社員の活躍、働き方改革、障害者が社会に適応しやすい環境整備、若手社員の活躍と革新的なアイディアの推進、PRIDEというLGBTQ、ボランティアネットワーク。

この六つの活動について、社員が自由に自分たちの思った活動を日々行っております。弊社ではダイバーシティのことをインクルージョン&コラボレーションと呼んでいますが、I&C Monthというものがあります。
1カ月の中では、様々なゲストスピーカーなどを呼んで、アンバサダーたちがすべての企画を行ってくれています。

そして、役員チームは、六つの活動においてのスポンサーになっておりまして、適宜、必要なサポートを行っているというのが、弊社のダイバーシティの取り組みになっています。弊社の中で、今、非常に強調しているのが「強いチームづくり」です。個人が個人として力を発揮するのは当たり前なんですが、チームとしていかに力を発揮できるかということに注力しています。

その中で、弊社がグローバルで行った研究の中に、ベストチームスタディというものがあります。弊社の中で最も良い成果を上げている、うまく機能しているチームを、グローバルで何十チームか集めました。そして、それ以外の一般的なチームも集めて、サーベイを行いました。

ベストチームが特に強かった三つのポイントがありました。
一つ目は、一人一人が自分の強みを毎日生かせていると感じているかどうか。
二つ目は、チームメイトがチーム内の信頼関係・心理的安全性があるチームかどうか。
三つ目は、同じ価値観を共有しているかどうか。

この研究結果から、すべてのチームにおいても、これをいかに浸透していけるかということを考えてチームづくりを行っています。

シスコの取り組み~行動・チームへの貢献~

宮川:私どもが持っているプロセス・制度について、いくつかご説明をしていきます。
まず、弊社のパフォーマンスの定義についてお話をしたいと思います。弊社では、パフォーマンスを出しているという定義が、ビジネス成果を上げているというだけではありません。

ビジネス成果を上げていることはもちろんなんですけれども、行動面。先ほど出てきた行動指針に基づいた行動をとっているかどうか。そして、チームへのインパクトを与えているか、チームへの貢献をしているか。

この三つが揃ってはじめて、パフォーマンスを出しているというふうに定義しています。こういった行動指針が絵に描いた餅になるのではなく、それぞれの人の評価に対しても、こういった仕組みを取り入れて、ビジネス成果、自分さえ良ければ良いという社員ではなく、チームとして自分がどう貢献できるのかを考えるような仕組みづくりを行っています。
そして、弊社は外資系なので、これは非常に昔からあるものになりますが、ジョブ制度の確立です。職能給ではなく、職務給です。その業務に対しての役割を明確化し、業務に対しての報酬を支払っていくということを明確化しています。そして、その報酬に対しても、Pay for Performance。いわゆる成果主義。これを徹底しています。
例えば、一番フロントラインに近い営業職ですと、いわゆる基本給部分とインセンティブ、これが50・50、半分半分になっていることもございます。それだけ、自分自身の成果というのが報酬に反映されるという給与体系を持っております。

次は、弊社のパフォーマンスマネジメント。人材開発についてどういった考えをしているか。まず、1on1の文化です。1対1で頻度の高いマネージャーとチームメンバーとのコミュニケーションを非常に重要視しています。過去には、5段階評価で、年に1回その評価を行う、年の真ん中には中間レビューを行う、こういうプロセスを持っていました。
今では、このパフォーマンスマネジメントのプロセスは廃止しました。今までの制度というのは、1年間、過去を振り返るパフォーマンスに対するフィードバックでした。そうではなくて、本当にその人の力を最大化したいのであれば、今、その事象が起きている段階できちんと本人にフィードバックする。
例えば、5段階評価中2くらいの評価をもらいそうな人であったら、その人が2から4や5になるために、段階、段階でどういったサポートをしていけるか。そういったきちんとしたコーチングとフィードバックを上司が行います。
過去を振り返るパフォーマンスマネジメントから、未来の行動変容へのマネジメントへ変革しています。

そして、会話の内容も上司から部下に、何かを上から下に伝えるのではなく、お互いのパフォーマンスを最大化させるためのパートナーシップを重要視します。あくまで上司であることは役割です。偉いわけではありません。上司の役割というのは、個人、個人の力を最大化させること。これは、より横のパートナーシップ的な関係という位置づけをしています。

シスコの取り組み~頻度の高いコミュニケーション

宮川:上司と部下、1対1の1on1。これは、対面でやることが一番望ましいです。弊社でも、週1回くらい、対面での1on1をしてくださいとガイドしていますが、実際に部下が非常に多かったときに、毎週実施できない場合もあります。それを補完するためのツールとして、チームスペースというツールを弊社では導入しています。
その中で、Check Inという機能があります。これは、毎週必ず全社員が入力をしていくものです。いわゆる感情と業務を繋ぐものです。具体的に何を入れていくかというと、まずは左側。先週の振り返りです。これは「あなたは先週、自分の強みを毎日発揮しましたか?」という質問。これを5段階評価で入れていきます。

そして二つ目「あなたは大きな価値を発揮しましたか?」これも5段階評価です。上司は、その人が3をつけた、4をつけた、5をつけたというのは、あまり関係ありません。普段、だいたいデフォルトで3をつけている人が4になったり、2になったり、そうしたときにそこにどういうことが起きたのかを見ていく。そのために、定点観測をしています。
次の二つの質問が非常に面白い質問です。「先週、あなた自身がワクワクした、エネルギーを得た出来事は何ですか?」逆に「先週、やる気を削がれた出来事は何ですか?」ということを記述式で聞いていきます。

そして二つ目「今週の優先すべき業務は何なのか」プライオリティだけを書いていきます。最終的に三つ目「マネージャーとしてどのようなサポートをすれば良いですか」という質問項目が入っています。
この中で何をしようとしているかというと、アイスバーグ・氷山のモデル。私たちは一般的に、仕事の自分とプライベートの自分を二分しがちです。特に日本人の場合は二分している場合が多いです。

冒頭でお話をした、今のエンゲージメントという観点で考えた場合、私たちの業務に出てくる行動や結果は、私たちの様々な価値観や信念、会社外で起こった出来事にすごく依存してくると思います。その中で、特に今のコロナ禍において、ワークライフバランスというのは、今後存在しなくなると私は考えています。よりワークライフインテグレーションになっていく。

その中で、パーソナルなことでも、プロフェッショナルなことでも、強みというのはそんなに変わらない。人ひとりとしての人間の強みというのは変わらないはずです。社員一人ひとりを仕事の人として見るのではなく、ホールパーソン、ひとりの人間として見ていく必要があります。それが、その人の強みを最大化するという意味で必要になってくると思います。

普段、わざわざ、自分がエネルギーを得たことややる気を削がれたこと、いちいち上司との1on1の中でなかなか言わないと思います。ただ、こういったツールがあることによって、今までのアイスバーグの水面に近い、表出している部分が少なかったところを、少しずつ水面を下げていき、上司として見られる部分というのを信頼関係の中で増やしていくことができる。そのためのツールとして利用しています。

シスコの取り組み~カルチャーと制度を繋ぐ

宮川:そして、私たちの持っている制度、カルチャーと制度を繋ぐというところ。私たちはお互いに感謝をし合う。こういったことを非常に大切にしています。 

Connected Recognitionという現場から現場への報奨制度があります。通常、報奨というと、上から下へ、上司から部下へ、社長から社員へ、そういったイメージがあると思います。ですが、この制度では社員同士が自由に贈りあうことができる報奨制度を行っています。だいたい5,000円くらいまでであれば、上司の承認なく、お互いに贈りあうことができます。
そして、これが全世界の社員に公開されているツールの中で可視化できます。誰が誰に何を贈っているのか、どのような理由で贈っているのか。また、その誰かが誰かに贈ったものに対してコメント等ができる形になっております。お互いを賞賛しあう文化というのを助長しています。

もう一つ非常に似た制度があります。これは、私たちの感謝の文化と世の中への貢献。こういった価値観を繋いでいくということです。同じように感謝の意を表するとTokenというものが送られます。Tokenを送るたびに1ドル寄付されるという形で、Living Ciscoというものを行っています。
さらに、より働きがいのある企業を目指していますが、働きがい、エンゲージメントには終わりがないと思っています。私たちには、常に成長の機会があり、常にその時代に合わせた形でアップデートをする必要があると思っています。

弊社でも、従業員のエンゲージメントサーベイを毎年行っています。今は合宿はできませんが、そのサーベイの結果があがってきた時点で、役員でオンラインでデザインシンキングなどの手法を用いて「今後どうしていくべきか」ということを話し合っています。
2020年には、冒頭でお話をした全員参画型の私たちの行動指針を日本語にして、自分たちの腹落ちできる言葉に落とし込んでいく。こういったことが、こういった役員の議論の中で出てきたものになっています。

コロナ禍におけるテレワークの悩み及び対策

宮川:最後に、コロナ禍において、皆さんもお困りのことはたくさんあると思います。皆さんがよく困っていること、だいたいこの五つに総称できるのではないかと思いますので、ご紹介をさせていただきます。そして、それらに対する弊社が行ったこと、弊社が大切にしていることをご紹介していきたいと思います。

まず、一つ目、職務内容。その社員が行っている業務が在宅で行えるのかどうか。

二つ目、職務環境。住宅事情の中で、家族がどういう構成になっているのか。1LDKのお家で小さな赤ちゃんがいる3人家族のような構成はままあるかと思いますが、日本の場合は特に住宅環境における様々な悩みがあると思います。

そして、三つ目、生産性と労務管理の問題。これは、二分されます。一つは、社員がサボっているという恐怖感。もう一つは、社員が長い時間働き過ぎてしまうということ。

これは実際に日本の中でいくつかデータが出ています。サボる人は本当に少ないそうです。日本の場合は、ほとんどが長時間労働のほうに触れているという事実が分かっています。ただ、個人的には、多くの会社というのが、あまりにサボってしまうのではないかというところに重きを置きすぎているような気がしています。

そして、四つ目、雑談から得られる情報・知見。会社に行っていたときには、上司や同僚との会話や、トイレで会った人、お茶のコーナーでちょっと話したこと、ポスターなど、様々な情報が自分で意識をしなくても気づかないうちに入ってきます。ただ、今のコロナの時代、これがすべて意図的にやらなければいけなくなってしまいました。それをどうやってやっていくのか。

最後に、先の見えない不安感・恐怖、そして特にひとり暮らしの方の孤独感。こういった問題があるかと思います。

それぞれ見ていきたいと思います。まず、職務内容について。アイディアを出す場づくりというのを、弊社としては重要視しています。自分のやっている業務というのは、その本人が一番よく分かっています。人事が勝手に何かを決めるのではなく、社員一人ひとりを、新しいプロセスをつくっていく中に入れていくということ、含めていくということ。
それによって参画意識が醸成できていくと思います。そして執務環境。これは、会社として金太郎飴のように、全員に対して同じ対応をするのではなく、一人ひとりのニーズへの対応が、今の時代は求められてくるかと思います。全員同じではなく、個々の事情を意識した共感力のあるマネジメントが、今の時代に必要なことかと思います。

そして、生産性・労務管理、雑談から得られる情報・知見。生産性については、個々の役割を明確化することが自律を生む一番の鍵かと思います。いつまでに何をどのようなクオリティでしなければいけないか。これが明確に分かっていれば、それを達成するというのは、あとはやるだけなので、そこまで難しくありません。いかに上司とチームメンバーが共有をして、明確化できるかというのが非常に重要だと思います。

そして、繋がり。この時代だからこそ、お互いに繋がりあうことが非常に重要になってきます。弊社では、あえて、雑談時間を意図的につくるということ。

そして、リフレッシュ・遊びの要素をあえて入れることによって、心身の健康がより保たれて生産性の維持をし易くなる。この二つを逆の発想で意識しています。
生産性向上というと、どうしても、どんどんいろんなものを効率化して詰め込むという発想になりがちですが。あえて、リフレッシュや遊び、そういった会社の普通の業務ではない要素を取り込むことが重要だと考えています。

そして、最後、孤独感等。やはり、仲間意識の醸成というところで、信頼関係、Vulnerabilityとも言われていますが、弱さも見せ合えるような信頼関係、密なコミュニケーションを築いていく。

弊社では、これに対応するワークショップをいくつか行っています。こういった中で、オンラインであっても、お互いのチーム力を高め合っていくことは、たくさんできると考えています。

実際にやった取り組みの一例をご紹介します。幸福学の前野先生をお呼びしてレクチャーをしていただきました。これは、冒頭でご紹介をしたアンバサダー・ボランティアによるオンラインでの飲み会。皆さんソフトウェア等も使いながらいろいろな仮装をして、遊びの要素も入れてやっています。

新たなる試みとしては、裏方も含めてすべてオンラインで入社式を行いました。私自身、入社式というのは、絶対に対面で実際に行わなければいけないものという固定観念がありました。
実際にやってみると、オンラインの入社式のほうがとてもアットホームでした。会社と新入社員という上下関係ができず、非常に良いアットホームな会になりました。今までの自分自身の固定観念を改める、非常に良い機会になったと思っています。

あとは、ベストプラクティスの共有。人事が「テレワークを効果的に行うためにこういったことをやったらどうですか」というのはもちろんなんですけれども。それ以上に、様々な状況に置かれている社員が、それぞれいろいろな工夫をして、今、仕事をしています。
その中で、それを他者に共有することによって、そこからお互いに学びあう場。こういったものをつくっていくことを非常に重要視しています。

そして、トップの役割というところで、トップは繰り返し同じメッセージを共有していくこと。これが非常に重要だと考えています。

まとめ~今までの経験から学んだこと~

宮川:最後に、冒頭のスライドに戻ります。やはり、私たちの行うことの根底にカルチャーがあり、向かう先にパーパスがあるということ。カルチャーというのは信頼関係です。
まず、その中でトップダウンとボトムアップ、双方向のアプローチをして、一人ひとりの参画意識を促すということ。

そして、一人一人の役割と期待値を明確化していくことで自律を促すということ。

三つ目に、最初から完璧を目指さず、アジャイルに試作検証を繰り返すこと。小さな失敗も繰り返しながら、前に進んでいくこと。

こういったことが、弊社として、今までの経験から学んだ非常に重要なことかと思っています。以上が、私からのプレゼンテーションとさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。