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#23 社長の隣に、編集者を。“推される企業”のつくりかた──ゲスト:WORDS・竹村俊助さん

INDEX

聴く「PR TALK」は、PRを実践するさまざまなゲストとテーブルを囲み、膝を突き合わせて「もっとPRの話をしよう」という趣旨の番組です。

今回は、「コンテンツ」や「編集」という切り口からPRの話をしてみようということで、顧問編集者の会社、株式会社WORDSの代表取締役・竹村俊助さんにゲストでお越しいただきました。

竹村さんは、書籍編集者として『メモの魔力』などさまざまな書籍を手がけられ、2018年にWORDSを創業。ご自身でも『書くのがしんどい』という著書を出版されている、いわば編集のプロです。

なぜ出版社を経て、顧問編集者の会社を立ち上げられたのか? そしてこれから”推される企業”になるためにはどういう発信や考え方が重要となるのか? 書籍からWEBまで幅広く編集されてきた竹村さんの目線からたくさんのヒントを語っていただきました。

今回も、シーンや気分にあわせて記事と音声でお楽しみくださいませ!

ゲストプロフィール

竹村 俊助さん
株式会社WORDS 代表取締役

経営者の顧問編集者。ダイヤモンド社等を経て2018年に独立。『メモの魔力』前田裕二著、『福岡市を経営する』高島宗一郎著、『佐藤可士和の打ち合わせ』佐藤可士和著など書籍の編集・執筆。SNS時代の「伝わる文章」の探求をしています。著書に『書くのがしんどい』(PHP研究所)。ポテトサラダが好き。/ Twitter

▼音声で聴く方はこちら

聞き手:PR Table 久保圭太
語り手:WORDS 竹村俊介さん

なぜ、“顧問編集者”の会社をつくったのか

PR Table 久保圭太(以下、久保):WORDSさんは“顧問編集者”をやられている会社ということですが、“顧問編集者”とは具体的にどんなお仕事なのでしょう。

WORDS 竹村俊助さん(以下、竹村):顧問税理士とか顧問弁護士のように、経営者のアドバイザーとしての編集者ですね。キャッチコピーは「社長の隣に、編集者を。」。経営者の隣で言葉を司り、メッセージをうまく伝える参謀として編集者をする仕事ですね。

久保:まさに「顧問」として経営者に伴走しているということなんですね。竹村さんは元々、出版業界にいらっしゃったんですよね。

竹村:そうですね。出版業界にいて、ダイヤモンド社を辞めたあと1、2年はフリーのライターをやっていました。その間に作った本が、わかりやすいところだと前田裕二さんのメモの魔力などです。

そんな風にライターやフリーの編集者で動いていたら、あるときにgumiの國光さんという経営者からフィナンシェというSNSをローンチする際に「自分の想いを伝えたいんだけどうまく書けない」という相談をもらいました。そこで話を聞いてまとめたものをnoteで出したら、3,000くらいスキがついて話題になったのです。

▶︎僕はインスタやFacebookがそろそろ終わると思っている(該当記事)

思想やストーリーをまとめるとこんなに喜んでもらえて、コンテンツとして読まれるなら仕事にできそうだなということで、顧問編集者として株式会社WORDSを立ち上げたという経緯ですね。

久保:そういうきっかけだったんですね。僕もそのnoteを読んだ記憶がありますが、あとから竹村さんが仕掛けられていたことを知りました。

ちなみに余談ですが、竹村さん著書の書くのがしんどいに書かれていた「コンテンツメーカーではなくメディアになればいい」という部分が個人的にとても刺さりまして。まさにこの番組とかもそういう発想から生まれていたりします。面白いコンテンツや人って外にたくさんいらっしゃるし、そういう人とコミュニケーションとりながらそれこそ編み物のように作品をつくっていくことを意識していたので、とても共感しましたね。

“推されるモード”に入る企業の共通点とは

PR Table 久保圭太(以下、久保):先日、竹村さんが呟かれていた「企業がうまくいくためのキーワードは“推し”なのではないか。そして推されるかどうかの分水嶺が“コンテクスト”なのではないか」というツイートが非常にパブリック・リレーションズ的だなと思いました。こうしたことを思ったきっかけは何だったのでしょう。

竹村:これまで十何社か顧問編集者をやらせてもらいましたが、新規のクライアントさんと話しているときに「WORDSさんがお手伝いしているところって、みんなが応援されるモードになってますよね」ということを言ってもらえてうれしかったんです。

応援されるモードに入ると、お客様もくるでしょうし、哲学をわかった人が入ってくれて採用にも効く。投資家や株主さんも「応援しよう」っていうモードになっていく。採用、消費者、投資など、すべてが良いスパイラルで回っていく。そういう意味で“推されているかどうか”ってすごく重要なんじゃないかと思ったんですよね。

久保:PRっていろんなステークホルダーとの関係構築だともよく言われますが、色んな方面と関係性がよくなって応援されるようになっていくというのは、まさに“推されている”状態なのかなと思います。実はそういう状態を、WORDSさんは作り出しているのではないかということですよね。

では、推されるかどうかにおいて“コンテクスト”が大事、というのは具体的にどういうことでしょうか?

竹村:説明がすごく難しくて、“大きな川の流れのようなもの”なんですよね。

たとえばスープストックトーキョーさんを例に出すと、売っているもの、つまりコンテンツはスープだと思うんです。スープ自体はコンビニにも売ってるし、いろんな店があるけど、それでも「スープストックのスープが飲みたいな」と思う人がたくさんいる。駅前にあるからとか美味しいからとか機能的な理由ももちろんあるとは思うんですが、スープストックで食べたいんだっていうのは“推しの効果”なんじゃないかと思うんですよね。

ストーリーが好きとか、醸し出す空気感とか雰囲気がいいとか、コンテンツじゃなくて「コンテクスト」で選んでいる。スープが美味しいというのも大事なんだけど、これからはそこに至るまでのストーリーとか、その企業がどういう「人格」をしているのかをしっかり伝えて共有していくというのが大事だと思っています。

久保:とてもよくわかりますね。機能性や価格とかだけで選んでいるんじゃなくて、もしかしたら無意識的にストーリーや想いなどのコンテクストを含めて選んでいるのかもしれないですよね。よくパーパス経営とか言われますけど、ビジョン・ミッションを掲げているだけではなく、そこに川の流れのように一貫性を持ったストーリーやコンテクストがあるのかが重要ということですね。

▼現スマイルズ取締役社長の野崎さんにPR Tableが過去に取材した記事

久保:竹村さんが支援される際は、やはりそういった点を意識していたりするんですか?

竹村:そうですね。僕らのクライアントさんはまだまだスターバックスとかマクドナルドのような大きな企業というより、「これから頑張っていくぞ」という企業が多いんです。そういった企業は「経営者の言葉」で伝えるのが文脈をつくるうえで効果的だと思っているのでそこに特化しています。

なぜ「経営者」にフォーカスするのか?

久保:まさに今日はそのあたりも深掘りしたいと思っていました。

当社では「採用広報」目的でコンテンツ制作の支援をすることが多いんですが、働く人=タレントと捉えて、“社員”から企業の魅力を伝えるストーリーを重視してつくっています。竹村さんの会社は“経営者”にフォーカスしていますよね。その方針は創業時から変わらないのでしょうか?

竹村:会社の発端としては國光さんから始まってはいるんですが、そもそもダイヤモンド社で書籍をつくっていたときも、経営者という「個人」と対峙することが多かったんです。たとえば、本の著者で「株式会社〇〇著」よりも、社長の名前を出した方が読みたくなりますよね。やはり会社が主語になるよりも社長自身が主語で、経営者の人柄や想いを知れたほうが面白い。僕らが面白いと思うってことは、読者も面白いって思うはずなので。今のところは経営者に特化している感じですね。

久保:そういうことなんですね。一方で、経営者の想いが大事だよねって言いつつ、なかなかそれをどう表現したらいいかわからない、経営者が全然発信してくれない、と悩んでいるPRパーソンも多いと思うんですよね。そういうタイプの経営者と対峙するときに、どのように工夫してストーリーを引き出したり、コンテクストをつくっていくことをやられているんでしょうか?

竹村:経営者の方でも「僕は前にでるタイプじゃないから」とか「広報に任せてるから」とか言われることも多いんですけど、僕は「会社の一番のスポークスマンになり得るのが経営者ですよ」と伝えています。

それこそ外の世界と接点をたった一点つくるのであれば、経営者が一番効果もある。もし「僕なんてたいしたことなくて、社員がすごいんだよ」とか「商品がすごいんだよ」と言うのであれば、それを経営者自身の口から言っていただけると、一番みんなハッピーになると思うんです。

経営者自身がスターになったり、インフルエンサーになる必要はない。会社のスポークスマンになっていただけるだけでいいんですよ、と言うと「じゃあひと肌脱ぐか」みたいになってくれる経営者さんは多いです。

あと平時ではなく、今って変革の時代じゃないですか。AIの出現などもあり、これから会社がどうなるか、世界がどうなるかみんなわからない。そうした緊急時はやっぱりトップが一番先頭に立って引っ張っていく姿勢が大事なんだと思います。

平時であれば広報が機能として情報発信するのはいいと思うけど、こういう時代だからこそ経営者が先頭になって発信していくこともありですよね、という伝え方をしています。

久保:これまで、経営者の発信によって会社がすごく変化した事例などありますか?

竹村:少し前の話ですが、glassy株式会社さんという広報誌の作成などをしている印刷会社さんの事例があります。

実際の事業は、社内報の受注をして印刷で儲けるビジネスモデルなんですが、印刷会社というのを隠して、表にはインナーブランディングの会社という見せ方をしていました。

取材していくと、創業者であるお父様から後を継いだ印刷事業が伸びなくて悩んでいるときに、「大きい会社の社内報を受注すれば毎月大量に印刷することができるのではないか、と気づいたことがきっかけであるということがわかったんです。そしてたまたまJALさんが最初の大きなお客さんになってうまくいった、という話でした。

この「なぜ社内報事業を始めたのか?」という過去のストーリーを公開したことで、社外の人たちからの反響もありましたし、意外に効果があったのが「社内」でした。社長がずっと表に出していなかった印刷への思いを表に出したことで、印刷業に誇りを持てるようになった、と。社内のモチベーションも上がったという事例ですね。

▶︎36歳で印刷会社の社長になった僕が、減り続ける売上をなんとか立て直した話

久保:まさに先ほどおっしゃっていた推しの仕組みと一緒で、コンテンツが効いてくるのってひとつの方向だけじゃないですよね。採用にもインナーにも効くし、応援される人たちが増えていくっていうイメージですよね。

竹村:すべての企業活動のど真ん中に経営者がいて、その周りに社員がいて株主がいてユーザーがいて、採用候補者がいる。経営者を中心に事業が広がっているので、経営者が発することで360度に効果があるんだろうな、というのは思いますね。

顧問編集者って何に効くんですか? ブランディングですか? 採用ですか? などと聞かれるんですけど、その辺の「KPI」がちゃんと示せないのは弱点ではあります。全部に効きますみたいな感じですよね(笑)。西洋の薬というより、漢方に近い。

talentbookもきっと採用だけじゃなくて、いろんなところに効くと思うんですけど、わかりやすいのが「採用広報」っていうことですよね。

久保:そうですね。経営課題として多くの企業が抱えている採用目的で使われることが多いですけど、実際には社内にこんな変化がありました、とか株主からこういう反応がありました、とか、これでメディアの取材が決まりました、といった副次的な効果はありますよね。

「はじめまして」に最も適しているのはテキスト

久保:いろんな媒体を使って発信されてきた竹村さんの視点から見て、これから企業の情報発信はどうなっていくと思いますか? Webコンテンツが増え続けて、PRパーソンもどこで発信したらいいか迷っていると思うんです。

竹村:深めていくうえでは動画や音声は効果あると思いますが、最初の「はじめまして」はテキストが適しているかなと思います。まずは気軽に使えて、ユーザーも多いTwitter。その次にnoteとかブログで自己紹介をする。そこで接点ができたらYouTubeやイベントとかをやればいい。

どういうコンテンツを作ればいいか、と良く聞かれるのですが、そうではなく「どうすればユーザーや採用候補者とコミュニケーションをとれるか?」に発想を変えたほうが良いと思っています。ぜんぜん知らない人に「こっちの世界」に来てもらうには、まずテキストでコミュニケーションをとって、ストーリーを伝えて、ファンになってもらうのが大事。

つまり“コミュニケーションをするためにはどういうコンテンツをつくればいいか”、という順番が大事なんだと思います。

久保:テキストの力を語る説得力がやはりありますね。「これからは動画しか見られない!」っていう人たちの層も一定数いると思うんですが、一方でテキストの力も絶対あると思っていて、それこそ書籍や紙の価値も見直されていると思いますし、まだコミュニケーションをとるには適しているということですよね。

竹村:動画とか音声って好きになってもらうのはいいと思うんですけど、良くも悪くも「におい」があるというか。すごくいいことを言ってるのにうまく喋れないことで伝わらないのはもったいないですよね。テキストがいいのは、冷静に何回も書き直せるし、良くも悪くも無味無臭なので、想いや考え方がフラットに伝えられるんですよね。特にビジネスの場面や採用の場面は効果的なんじゃないかと。

久保:おもしろいですね。つい認知をとるためにインパクトを狙いたくなると思うんですよね。でも実はもう少しフラットにテキストでコミュニケーションをとる方法を考えた方が良いよ、というのは竹村さんならではのアドバイスだなと思いました。

経営者の発信で、この世界をよくする

久保:これから考えられているWORDSとしての活動や、今後の展望などありますか?

竹村:昨日も、とある経営者の方から「なんで顧問編集者を続けられているんですか?」と聞かれて改めて考えてみたんです。

ビジネスが中心にある資本主義の世界において、企業のトップである経営者は重要なポジションにいる。それこそAppleやGoogle、トヨタなど大きな企業になると、経営者の一挙手一投足で経済やお金が動きます。それなのに、裏に隠れていて何を考えているかわからないことも多い。だからこそ「怖いな」って思うこともあるし、どういう方向に世界を動かしたいのかがあまり伝わってこないと思っています。

今、WORDSが支援しているのは中規模の会社が多いですが、ゆくゆくは大きな企業の経営者の伝えるという機能をお手伝いすることで、より世界がよくなったりとか、採用に関してもうまくマッチングできてみんながハッピーになる世界がつくれたら、と。野望に近いですけど、経営者の発信というのが、この世界をよくするうえで最短距離な気がするなと思ってます。

良いメッセージを発信した企業に人が集まるようになれば、私利私欲に走るような企業はメッセージが発信できなくなってうまくいかなくなる。つまり、やっていることは経営者の発信をスムーズにすることですが、結果的に世の中が良い方向に転んで行ったりするのかなと思うんです。

久保:世界をよくする、という大きな野望に向かっていっているわけですね。編集者が集まるといわゆる“編集会社”、となりがちなのに、WORDSさんはコンセプトやビジョンの掲げ方で、すごくビジョナリーに見えるし、新しく見えますよね。

では最後に「書くのがしんどい」と思っているPRパーソンへのメッセージなどはありますか?

竹村:本の前書きにある「書くな、伝えろ。」ですね。

書こうとすると「どうやったらいい文章が書けるんだろう?」「どうやったら面白くなるだろう?」と考えてしまいますが「伝えよう」とすることが大事なんです。伝えようとすると、誰に伝えるのかを考えなければならない。そうすると自然と書けると思います。「書くな、伝えろ」が最後のメッセージですね。

久保:たしかに、伝えることはみなさん普段からやってるはずですもんね。なんだか書けそうな気がしてきました。素敵なメッセージをありがとうございました!

▼竹村さんの著書「書くのがしんどい」

関連情報

■WORDSのコーポレートサイト
https://words-inc.co.jp/

■竹村さんのTwitterアカウント
https://twitter.com/tshun423

パーソナリティーのご紹介

久保 圭太
株式会社PR Table PR室 室長 /Evangelist

北海道札幌出身。二児の父。 PRSJ認定PRプランナー。 ITベンチャー企業にて広告企画営業、人事戦略、PRの責任者を経て、2018年よりPR Tableに参画。 カンファレンス企画や自社オウンドメディア運営を統括し、Public Relationsの探究活動を行う。その後、PRコンサルタントとして顧客向けのオウンドコンテンツ企画・活用支援に従事。2020年よりCS組織の立ち上げを経て現職。

ストーリー:はじめて感情がグルグルした仕事がPRだった。だから僕はこの会社の一員になった