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#24 記者の強みを活かしてヒットを生む。日経クロストレンドの企画術──ゲスト:森岡大地さん

INDEX

聴く「PR TALK」は、PRを実践するさまざまなゲストとテーブルを囲み、膝を突き合わせて「もっとPRの話をしよう」という趣旨の番組です。

ここ最近は、さまざまなメディアや記者の方に来ていただいて「PR」の話をする機会が増えてきましたが、今回は「日経クロストレンド」の副編集長、森岡大地さんにお越しいただきました。

記事や音声、動画などさまざまなチャネルでコンテンツを発信している「日経クロストレンド」ですが、なぜBtoB、BtoC両方の切り口から多様な特集やヒット記事が量産されるのか?人材の強みや編集部の体制まで、日経BP社でさまざまなメディアを歴任してきた森岡さんの視点から、たっぷりとお話いただきました。

今回も、シーンや気分にあわせて記事と音声でお楽しみくださいませ!

ゲストプロフィール

森岡 大地さん
日経クロストレンド 副編集長

2006年東北大学大学院理学研究科天文学専攻修了。同年、日経ホーム出版(2008年に日経BPと合併)に入社。日経トレンディ編集部にて、記者・編集業務に携わる。2013年に日経ビジネス記者。2014年より再び日経トレンディに。19年より日経クロストレンドを兼務し、20年より専任。22年より現職。スイーツ好きが高じ、トレンディではスイーツ・手土産を担当。クロストレンドでは大手から中小、ベンチャー・スタートアップ、さらには個店まで、幅広く取材を行う。私生活では、2児の父として育児と仕事の両立に奮闘中。/ Twitter

▼音声で聴く方はこちら

聞き手:PR Table 久保圭太
語り手:日経クロストレンド 森岡大地さん

多様なバックボーンの人材が集まる編集部体制

PR Table 久保圭太(以下、久保):森岡さんは日経トレンディや日経ビジネスなど様々なメディアを歴任されてきて、現在は日経クロストレンドの副編集長としてご活躍されております。2023年4月からは日経MJも兼務されているんですよね?

日経クロストレンド 森岡大地さん(以下、森岡):そうですね。紙の媒体からWebまでバランスよく色々と経験させていただきました。日経MJとはコンテンツの連携や共同企画などを昨年くらいから進めております。

久保:森岡さんはClubhouseなども早くから活用されていましたが、日経クロストレンドさんは新しい発信手法を試していくのが他のメディアと比べても進んでいる印象があります。現在も雑誌・書籍・Web、イベントPodcastYouTubeなどクロスチャネルで展開されていますよね。

森岡:YouTubeなど動画でのコミュニケーションに力を入れはじめていますし、大規模なイベントも年に一度開催しており、かなり複合的な媒体になってきていますね。

久保:そうですよね。本日はそのようにさまざまなチャネルで展開されているクロストレンドさんならではの企画の切り口などを掘り下げていければと思っています。森岡さんは複数メディアを経てクロストレンドにきていますが、クロストレンドならではの特徴や強みは何だと感じられていますか?

森岡:そもそもクロストレンドが、日経デジタルマーケティング、日経デザイン、日経トレンディネット、日経トレンディ、日経ビッグデータの5媒体の人材が集まってできた媒体なんです。デジタル、BtoB、デザイン、コンシューマなど、多方面から人材が集まってきているので、多様な視点が生まれやすいのだと思います。

それぞれが違う切り口で、新しい視点を持ちながらコンテンツをつくっているので、手前味噌ながら同僚の記事を読んでいても面白いと思うことが多いですね。そういう視点で来るのか、という驚きがいつもあります。それがいいバランスで読者の方に届くといいな、と考えており、そのような多様性が媒体の特徴だと思いますね。

久保:それぞれのバックボーンが違って、強みがミックスされているから色々な切り口での記事が生まれているんですね。

日経クロストレンドでは「マーケティングがわかる 消費が見える」というタグラインを掲げていますが、いわゆる「企業のマーケティング活動」の領域と、「ヒット商品&トレンド」という生活者の消費行動やインサイト、そこに「テクノロジー」の領域が組み合わさっている。だからこそ、それぞれのバックボーンが活きてくるわけですね。

森岡:そうですね。BtoBとBtoCは、媒体単位で見ると切り分けられていることが多いんですが、何かをつくって、消費者まで届けるという工程を考えると、すべて包含されているはず。クロストレンドとしては全領域をしっかり追っていきたいという思いがあり、BtoBがわかる人材もBtoCがわかる人材も両方いるのは強みだと思いますね。

久保:そうした中で、森岡さんご自身の強みはどこにあるとお考えですか?

森岡:私は経歴にあるように、日経トレンディではBtoC領域で、主に消費者のメリットを考えることが長く、ヒット商品・トレンドは広く見ているつもりです。また、日経ビジネスというビジネス誌も経験してきました。両方の視点で記事をつくっていけるというのは、自分なりの面白いところだと思っています。また、最新テクノロジーや流行り物はトレンディ時代から好きだったので、新しい領域に興味を強く持っている部分もあります。toBとtoCの橋渡しに加え、テクノロジー好きということで、クロストレンドにちょうどいい人材だな、と思っております(笑)

「特集」を軸に記者がチャレンジできる仕組みづくり

久保:日経クロストレンドの副編集長として、具体的にどんな役割を担っているのでしょうか?

森岡:副編集長というとNo.2かのように思われますが、実際の役割は外部からの見え方と少し違うかもしれません。日経クロストレンドでは、1週間にわたり、1テーマ複数本の記事で構成していく「特集」というコンテンツがあります。その特集をデスクとして回していける人材を「副編集長兼デスク」として見ています。比較的多くないと回らないので、副編集長も複数人置いていますね。

久保:「特集」の企画があり、単発記事としての「インサイド」、そして1テーマの続きものとしての「連載」があると思いますが、これらの更新サイクルを編集部全体でうまく回していっているということなんですね。

森岡:今、読者の方はこういうテーマが気になっているのではないか、このような内容であれば役に立つのではないか、というニーズに応えていく「特集」が軸になっています。加えて、もう少し機動的に、より旬なものや、まだニーズが測りきれていないようなものは「インサイド」という単発記事を出して反応を見ていきます。そこで読者の方から強い反応が返ってきたら、「特集」で深掘りしていくということもありますね。

同じように「連載」も、1つのテーマで数年続ける長いものもあれば、数ヶ月で完了する短期のものもあり、ここでも新しいチャレンジができます。「インサイド」や「連載」で色々試しながら、しっかり「特集」に還元していく。逆に、「特集」でしっかり読んでいただいたものは、継続的に情報を出していかなければならないので、それを「インサイド」や「連載」で追いかけていったりもします。これらのサイクルをぐるぐる回しているようなイメージですね。

久保:面白いですね。記者からしても、いろんな企画を出していく仕組みづくりが整っているな、という印象です。御社の記者の方と話していても、非常に雰囲気や記者同士の関係性が良いなと感じましたね。

森岡:みんなで集まって話し合う企画会議がありますし、それ以外に情報のやりとりをこまめに行っている印象はありますね。

また、特に「インサイド」は担当記者がこういう切り口でこういう記事を出したいという思いがあって提案してくるものなので、世の中に悪い影響を起こすものでない限りは、あまり「NO」と言わないようにしています。意義があって出したいという想いがあるならやってみよう、という感覚が強い。「インサイド」でこまめにチャレンジができるので、自主的に動けているところはあるのかなと思いますね。特段すごい仕組みがあるわけではないですけれど。

久保:自分のやりたい企画にチャレンジできる場がある、というのは非常に大きいのかなと思っています。あとはやはりそれがどういう結果になるか、公開してみないとわからないじゃないですか。御社の場合、有料会員に向けた数字のKPIも大事だと思うのですが、そうした数字も毎日見られているというのもお伺いしました。そのPDCAをしっかり回していくところで成功体験を積めるのは大きいのかなと思いました。

森岡:そうですね。数字の振り返りは全員参加で毎日夕方に行っています。記事の良し悪しというよりは、そのテーマが読者にちゃんと響いたのか、といったところを自分で確認する場が毎日あるので、感覚は掴みやすいなと思います。

▲毎週、興味深いテーマの「特集」が展開されています!

▼7/3〜展開中の最新特集:「N=1マーケ」の成功法則
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00852/?i_cid=nbpnxr_index

▼特集ページ一覧
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/feature/?i_cid=nbpnxr_top_osusume_toku

久保:記者が企画を組み立てるときや、森岡さんが企画を考えるときは、PRパーソンからの持ち込みや、コミュニケーションをとっていく中で生まれるものも多いのでしょうか?

森岡:そのまま持ち込まれた企画を議題に挙げるというのは個人的にはあまりないですね。どちらかというと雑談などをしている中で、業界の新しい動きがこうなっている、というのがヒントになるケースが多いように感じます。パッケージ化された企画というよりは、ちょっとした情報がフックになって、新しい変化に気づくことが多いかなと。

久保:ひとつのストレートニュースを取り上げるというよりは、業界や時代の流れがあって、ここがトレンドだよねっていうところにヒントがある感じですよね。

森岡:そうですね。例えば、業界が違う方のお話をいくつか聞いている中で、根底にあるトレンドを抽象化していくと共通項が見えてくるといったこともあります。業界をまたいで横断的に課題になっているポイントが、企画になることもありますね。

久保:森岡さんはデスクとして査読もしながら、ご自身で取材もやられていると思います。月に何本くらい記事に携わって公開されているんでしょうか?

森岡:ライターさんに書いていただいたものや寄稿いただいたものを編集するのに加え、自分で執筆するものを合わせると10本強くらいでしょうか。それ以外に、若手などが書いた記事の査読がぼちぼちある感じです。

とはいえ、副編集長兼デスクもバリバリ前線にいないと回らない小さな媒体なので、現場も大好きな私としては、すべてできる(副編集長という)ポジションは、非常にありがたいなと思っています。

PRパーソンとメディアはどう手を取り合っていけるのか

久保:この番組は主に広報・PRパーソンが聴いたり読んだりしているんですが、森岡さん的に、こういうコミュニケーションや情報をもらえるとありがたいな、というのはありますか?

森岡:そうですね、クロストレンドはカバー範囲がとても広くて、業界やジャンルを絞っているわけではありません。また、商品が生まれる前からお客様に届くまでの全方位をカバーしている媒体です。ですので、自分ひとりでは情報を集めきれないんです。

まさに広報の方は、業界に関して情報を収集している方だと思うので、自社のことをおっしゃっていただくのもありがたいですが、業界の潮流や周辺領域で今何が起きているか、などを「今こんなことが起きてます」と軽く伝えていただけると、私も勉強になるし気づきになります。そこで興味を持ったら、もう一段深掘りしていくことができる。ぜひ気づきみたいなものがあれば、気軽に送っていただきたいと思います。

私の業界や身の回りではこういう「変化」が起きていて、ひょっとしたらこの背景にこういうことがあるのかもしれませんね、という気づきが意外に本質的だったりするケースもあります。

久保:なるほどですね。これも毎回聞いていることなんですが、PRパーソンとメディアの関係づくりに悩まれている方も多いと思っています。そもそも役割は違うと思うのですが、森岡さんはどういう形でPRパーソンと関係をつくっていくべきだと感じられていますか?

森岡:私は読んでくださる方にどんなメリットや価値を提供できるのか、を中心に考えています。広報の方とメディアの役割や立場は違うものと理解した上で、じゃあどのような内容であればそれぞれのメリットになるのかを考えていけば、本来あまり齟齬は生まれないものなのかなと思っていますね。

また、今は情報の流路が変わってきていますよね。企業はオウンドメディアやSNSでも発信ができますし、最近ではプレスリリースも消費者に直接届くようになってきて、メディアを介さない情報の流路というのもどんどん増えてきています。企業としては、どういう流路で発信するのか考えていると思うので、その中のオプションのひとつがメディアというのが正しいのではないかと。

私としては、クロストレンドならではの切り口で記事をつくり届けることで、読者の方に正しく届くとこんないいことがある、といった意義を提示していかなければいけないと思っています。

企業もメディアも情報伝達の仕方を模索していると思いますし、お互い悩んでいるもの同士、せっかくなら一緒に考えられる部分があるのではないか、とお伝えしたいですね。

久保:個人や企業が直接ステークホルダーに伝えられる時代になって、PR=パーソナル・リレーションズの時代だよね、と僕らも提唱しているのですが、ひとつの向き合うステークホルダーとしてメディアがいて、一緒に仕掛けていく仲間として捉えていきましょうと話したりしているのでおっしゃる通りだなと思いましたね。

森岡:もちろんメディアとしては読者の方を向いているので、そこに合致しなければ記事にはしません。それは、(情報やテーマが)読者のニーズとマッチングしなかったというだけなのだと思います。読者にメリットが出せる切り口さえつくり出せれば、一緒に伝えていけるのかなと思いますね。

最適な表現手段をメディアとして模索していく

久保:最後に、森岡さんご自身としてこれから挑戦していきたいことなどはありますか?

森岡:そうですね。若手記者もどんどん面白い記事を出してきていますので、負けないようにしないといけないというのがひとつ(笑)。そして、私たちも情報の「伝え方」をもう少し考えなければいけないな、と思っています。

コンテンツを生みだすということについては非常に力を入れていると自負しています。ただ、それを媒体の形も含めて、どう伝えていくかというところに編集者・記者はもう一歩踏み込んでいく必要があるのかなと思っています。もちろんSNSの活用も進めていきますし、音声・動画などによるコミュニケーションや表現手段もまだ課題が山積みなので、引き続き模索していきたいですね。

久保:まだまだ変革期であり過渡期だなと思いますよね。この音声配信もそうですが、何がどう消費者に届いていくのか、まだまだ変化していくと思います。これからどうなるか楽しみですよね。

森岡:そうですね。あとは毎年7月に日経クロストレンドFORUMという大規模イベントを実施しており、今まさに絶賛企画中です。これからサイトもオープン予定なのでぜひ楽しみにしていてください。私自身もかなり興味深いゲストの方々に来ていただくセミナーを企画しています。

▼参加受付中!【7/19-20開催】日経クロストレンドFORUM 2023
https://xtrend.nikkei.com/info/18/00006/00201/

また、ぜひ「インサイド」の記事を見ていただいて、どの記者がどのような記事を出しているのかも気にしていただきたいですね。「この記者はこのネタが好きなんだ」など、記者の興味関心が透けて見えてくると思います。せっかくなので、そのあたりも楽しんで読んでいただけると、面白いんじゃないかなと思います。

久保:ありがとうございます!ぜひこれをきっかけに、森岡さんのTwitterもチェックいただき、「今こういう現象が起きているよ」という気づきがあれば、コミュニケーションをとってみてください。それでは本日はありがとうございました!

関連情報

■日経クロストレンドの森岡さんプロフィールページ
https://xtrend.nikkei.com/authors/18/tmorioka/

■森岡さんのTwitterアカウント
https://twitter.com/tmorioka7

パーソナリティーのご紹介

久保 圭太
株式会社PR Table PR室 室長 /Evangelist

北海道札幌出身。二児の父。 PRSJ認定PRプランナー。 ITベンチャー企業にて広告企画営業、人事戦略、PRの責任者を経て、2018年よりPR Tableに参画。 カンファレンス企画や自社オウンドメディア運営を統括し、Public Relationsの探究活動を行う。その後、PRコンサルタントとして顧客向けのオウンドコンテンツ企画・活用支援に従事。2020年よりCS組織の立ち上げを経て現職。

▶︎タレントページ:https://prtable.com/ourtalent/kkeita