#20 応援される「ひとり広報」のマインドセットを紐解いてみた─ゲスト:プレシャスパートナーズ北野さん・kipples日比谷さん
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聴く「PR TALK」は、PRを実践するさまざまなゲストとテーブルを囲み、膝を突き合わせて「もっとPRの話をしよう」という趣旨の番組です。
今回は、“人とのつながりで成果を呼び込む”をテーマに「ひとり広報」という書籍を出版されたプレシャスパートナーズの北野さんと、“コネクタ”として人のつながりを作り続けてきたkipplesの日比谷さんをゲストにお迎えしてお送りします。
「ひとり広報」の出版に至った背景や裏話、北野さんが「ひとり広報」としてメディアや他社広報の方との関係づくりで意識しているマインドセットをたっぷりとお話しいただき、書籍を読んだ方もこれからの方も必聴の内容となりました。記事と音声でぜひお楽しみください!
ゲストプロフィール
北野 由佳理さん
株式会社プレシャスパートナーズ
執行役員CMO 兼 経営戦略室室長
1990年生まれ、島根県出身。
大学卒業後、2013年に新卒で株式会社プレシャスパートナーズに入社。大手企業を中心にアルバイト・パート領域の採用コンサルティング営業を経験し、2017年4月に広報部の立ち上げに伴い異動。経営戦略室室長を経て、2020年4月に執行役員に就任。現在は経営戦略・広報部門の責任者を務めている。/ Twitter
日比谷 尚武 さん
kipples 代表
「人と情報をつなぎ、社会を変える主役を増やす。」をテーマに、セクターを横断するコネクタ。広報、マーケティング、新規事業の支援、コミュニティ作り、官民連携促進を中心に活動。 一般社団法人at Will Work理事 ・一般社団法人Public Meets Innovation理事・Project30(渋谷をつなげる30人)エバンジェリスト・公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会 広報副委員長・ロックバー主宰、他 / Twitter
▼音声で聴く方はこちら
聞き手:PR Table PR室 久保圭太、川島飛鳥
語り手:プレシャスパートナーズ北野さん、kipples代表 日比谷さん
メディアの協力があったから生まれた「ひとり広報」
PR Table久保(以下、久保):本日は「ひとり広報」という書籍を北野さんが出版された記念ということで、この機会に改めてPRについての考え方や想いを深掘りしてみたいなと思い、お呼びさせてもらいました。日比谷さんは、PR TALK2回目の登場(前回記事)となりますが、今回ご一緒にお話しいただけるということでよろしくお願いします。
プレシャスパートナーズ北野さん(以下、北野):ありがとうございます!日比谷さんには、社外の広報の先輩としてよく相談に乗っていただいています。
kipples日比谷さん(以下、日比谷):僕がコンサルする企業でもひとり広報の方が多かったりするんですが、その中で先輩の話を聞いてみたいとか、ピンポイントで悩みの相談があったときに紹介するのが北野さんなんですよね。
久保:以前にMarkezineの記事でも「ひとり広報」をテーマに対談されていましたが、最近キーワードとしてもよく聞くようになってきましたよね。今回出版された本の内容を改めて教えていただけますか?
北野:たとえ部署にひとりしかいない広報でも、社内や社外、メディアの方とのつながりを活かして成果を最大化させていきましょうという内容の本です。特徴としては、メディアの方々151名にアンケートをとっていますので、今現場で起きていることが知れる内容になっているかなと思います。
日比谷:アンケートすごいですよね。これだけ北野さんの呼びかけに協力しようと思ってくれる方がいるということですもんね。
北野:本当に協力していただける方が多くてありがたかったです。何人も対面やお電話でもヒアリングさせてもらったんですが「私たちももっと広報の方と関係を良くしていきたいから協力したい」と言ってくれるメディアの方がいらっしゃったのは印象的でしたね。
久保:よくある広報のノウハウ本と違うと感じたのは、先輩の広報やメディアからの激励のメッセージが最後にたくさん載っていて、身近な方が寄り添ってくれているような印象を読んで受けましたね。
PR Table川島(以下、川島):北野さんが積み重ねてきたノウハウやマインドセットを惜しみなく出されていたので、本当にありがたいなと思って私も読ませていただきました。
ポジティブな変化は“経営者からの相談が増えたこと”
久保:今回出版するに至ったきっかけは何だったのですか?
北野:普段お付き合いをしているライターの方のお知り合いに、たまたま広報の本を出版したいという編集の方がいらっしゃって。「北野さん、本出版してみない?」とお話をいただいたのがきっかけですね。心のどこかでは同じような立場の方をサポートしたり、助言できたらいいなとは思ってましたが、まさか本を出版することになるとは思っていなかったです。
久保:出版もまさに、“人とのつながり”が生んだひとつの成果ですよね。日比谷さんもひとり広報のご経験があると思いますが、このテーマに関してご自身としてどのように捉えていましたか?
日比谷:今まで「BtoB/IT広報勉強会」というのを7-8年やってきた中で、ひとり広報の悩みはよく聞いていました。これまではそういう場を使ってハウツーをそれぞれが勝手に学んでいましたが、これを読めばいいよ、とオススメできるものができたのは良かったですね。ひとりで広報をやるときのマインドセットがまとまった書籍ははあまりなかったですから。
北野:広報の正解は会社それぞれにあるので「これが正解です」とは言いたくないんです。こういう手段もあって、このマインドは大事にしようねっていうのをこの本を通して伝えたかった。私もこれまで先輩方から教えてもらったことを、恩送りするようにシェアしたい。そんな気持ちで書かせてもらいました。
久保:出版してみて、周りからの反響はいかがですか?
北野:企業研修をしてほしいという声などもありましたが、一番嬉しい変化だったのは経営者から直接「広報について教えてほしい」とか「広報ってなんで必要なんですか?」というお話しをいただくことが増えたことですね。
久保:本の中でも経営陣とのコミュニケーションの重要性について書いてますが、それを経営者が読んだときに気づきも多そうですよね
北野:実は今回、本を出版する裏目的として、広報の方だけでなく経営者の方々、そしてメディアの方々にも届けたいと考えていました。広報がどのようなことを思っていて、どのように動いているかなどを知っていただけたらなと。
久保:以前、日比谷さんに来ていただいたPR TALKでも「広報と経営者はもっと歩み寄るべき」というような話をしていただきましたよね。
日比谷:そうですね。正直、現場の広報向けのノウハウを伝える機会は多いからあまり心配はしていなくて、個人的には経営者向けに伝える機会があまりないのでそっちに力を入れたいと思っています。なので、北野さんの本を読んでそういう声が届いている、というのは驚きでもあるし、とても良い傾向だなと思いますね。
久保:PRパーソンが「社長、これ読んでくださいよ」って本を薦めてくれてるといいですよね。
出会う人にとって、かけがえのないパートナーであり続ける
久保:本の主軸になっている“人とのつながりで成果を呼び込む”を実感できたエピソードで印象に残ってることなどはありますか?
北野:まずは、この本を出版できたこと。たった5年の広報キャリアではありますが、これまでの集大成をまとめられたのは良かったです。
そしてもうひとつ、本の出版記念パーティーを他社広報やメディアの方がサプライズで開催してくれたことです。人との関係性を大事にしていたからこそ、多くの方が集まってくれたのは印象的なできごとでしたね。
日比谷:実は僕も参加させていただいたんですが、メディアの方もたくさんいらっしゃって、同窓会みたいになってましたね。ベテランの記者の方もたくさん集まっていてすごいなと思いました。
久保:お話を聞いていると、北野さんは本当に応援される方なんだなと。横のつながりの温かみを感じますよね。
日比谷:おっしゃる通り、メディアはフラットな立場で応援に来てくれているんですよね。キャリアはそこまで長くないかもしれないけど、その中でも信頼関係を築くことはできるんだなと。メディアとの距離感を意識しすぎて、馴れ合わないように距離を置こうという人や、無理に近づこうとしてぎこちなくなってしまう人も多いと思うんですが、北野さんは自然と信頼関係が築けているのがすごいなと思います。
久保:ひとつぜひヒントをいただきたいんですが、北野さんがそうした信頼関係を築くために、ご自身としてどういうこと心がけてるんですか?
北野:私が勤めるプレシャスパートナーズの企業理念である「出会うすべての人々にとって、かけがえのないパートナーであり続ける」そのものかなと思っています。
広報の前は、元々営業をやっていたのですが、そのときもお客様にとって何が最適なのか、パートナーとして歩んでいくという考え方を持っていました。目先の売上は獲得できても、長期で信頼を獲得するためには何が良い判断かというのは違いますから。それと同じように、メディアにとって一番良いことはなんだろうと考える。どっちが上とか下の関係ではなく、お互いがビジネスパートナーとして同じ方向に歩むことを常に考えているというのはありますね。
▼プレシャスパートナーズの企業理念
日比谷:言われてみたら確かにそうだよね、と思うものの、いざリリース出すとなると前のめりになってしまったり、半年間連絡しないままになってしまうことも多いと思いますよ。
北野:私もすぐにうまくいったわけではありませんでした。すぐに結果がでる営業から、すぐ結果が出ない広報になったばかりの頃はあせってしまってそういう失敗はありましたね。
川島:中長期で信頼関係を築くのはとても難しいですよね。でも、北野さんでも最初からできたのではなく、少しずついい関係性って何だろうと考えて今に至ったんだなと思い、勇気づけられる方も多いと思います。
久保:日比谷さんもまさに“コネクタ”として人のつながりを作り続けてきたと思うんですが、関係づくりにおいてこれまでどんなことを意識されてきましたか?
日比谷:僕は広報をやりながらコネクタとかエバンジェリストの仕事をしてきたんですよね。ただ、広義の“社会との関係づくり”という意味では、違う立場や環境にいるが人たちと、それぞれの事情を鑑みながらWin-Winの関係をつくったり、いいタイミングでコラボレーションするとうのは広報の考え方と一緒だなと思っていました。
広報でやってることをメタ化して捉えれば、違うステークホルダーを橋渡しして合意形成する、というのは色々なことやる上での基本なんですよね。コミュニティづくりとか交渉とかマネジメントとかに応用できると思って意識するようにしていますね。
ひとり広報はひとりじゃない
久保:僕は、ひとり広報だけどひとりじゃないんだなってこの本を読んでいて思ったんですよね。ひとり広報だからこそ、周りの人とのつながりをより作らなければならないし、それをしていくことで応援される存在になる。まさにそれを体現しているのがこの本なんだなと、今日の話を聞いて改めて納得しました。
北野:ひとりでできることは限界があって、組織でやったほうが最大化されると思っています。ただ、ひとりしかいないのが現実なのであれば、こちら側からいろんな人を巻き込んでいくのが必要だと思うので、それが少しでも伝わったらうれしいなと思います。
久保:今後この書籍を通してどんなつながりを作っていきたいですか?
北野:この本に共感してくださった方と新しくつながっていきたいですね。ひとり広報はとても不安が大きいと思うんです。メディアから連絡が返ってこない、やり方があってるかわからない。そうしたときはいろんな方に話を聞いてほしいし、そういった場をもっと提供できるようになったらいいなと思っています。
久保:ぜひ北野さんが業界の中で「ひとり広報」を引っ張っていってほしいです。
北野:実はちょうど11月からもうひとり弊社に広報が入社し、ようやくチームになりました(笑)
久保:それは北野さんが成果を出して、会社が大きくなった結果なので嬉しいことですよ!ぜひ今後もひとり広報経験の有識者としての活動を楽しみにしています。
最後にPRパーソンに向けたメッセージはありますか?
北野:広報・PRの正解はそれぞれの会社にあると思います。ぜひ経営者としっかり話をして、自分なりの広報活動をしていっていただけたらいいなと思います!
日比谷:ひとり広報に悩まれて試行錯誤されてる方はまだまだたくさんいらっしゃると思います。ぜひ皆さん少しでも自分の考え方やノウハウを発信してもらえると良いなと思っています。
また、ひとり広報の実態調査について現在「日本パブリックリレーションズ協会」でも企画を進めています。ひとりで頑張っている方向けのコンテンツを増やしていこうと思っていますし、ひとり広報でも入会できるように整えています。ぜひPR協会の資格試験や活動にも興味があればきていただきたいです!
久保:これを聞いて(読んで)いただいたPRパーソンは、まず「ひとり広報」の書籍を手にとっていただき、そしてPR協会にも入会いただくというセットでぜひお願いできればと思います(笑)では、本日はお二人ともありがとうございましたー!!
書籍を読む>>>人とのつながりで成果を呼び込む!ひとり広報
パーソナリティーのご紹介
久保 圭太
株式会社PR Table / PR室マネージャー /Evangelist
北海道札幌出身。二児の父。 PRSJ認定PRプランナー。 ITベンチャー企業にて広告企画営業、人事戦略、PRの責任者を経て、2018年よりPR Tableに参画。 カンファレンス企画や自社オウンドメディア運営を統括し、Public Relationsの探究活動を行う。その後、PRコンサルタントとして顧客向けのオウンドコンテンツ企画・活用支援に従事。2020年よりCS組織の立ち上げを経て現職。
川島 飛鳥
株式会社PR Table / PR室
茨城生まれ離島好き。大学生時代に自由が丘のイベント企画運営を学び、2017年にPR Tableにインターンとして入社。翌年に初の新卒として、マーケティング・インサイドセールを担当しチームの立ち上げ期を経験。その後、AE・カスタマーサクセスを経て、2021年7月よりPR室へ異動。2022年に地元の茨城にUターンし、古民家ワーケーションゲストハウス“水戸宿泊交流場”のPRも担当。地域と地域、地域と人、人と人の関係性のデザインを軸に奮闘中。