#14 広報のしごとの誤解をどう解いていく?-日比谷さんとPRの話をしよう(後編)
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日比谷さんと、もっとPRの話をしよう
聴く「PR TALK」はPR TableのPR/Evangelist クボケイタと、取締役/Founderの大堀航がテーブルを囲み、様々な業界で活躍するゲストをお招きして「もっとPRの話をしよう」という趣旨の番組です。
今回は、PR Table創業メンバーであり、at WIll Workをはじめ様々な取組みでご一緒してきたkipples代表の日比谷尚武さんをゲストにお呼びして、はじめてTwitterスペースで公開収録を実施。
広報・PRパーソンの方にも、非広報の方にも届けたい内容でしたので、対談記事として前編・後編にまとめました。ぜひ音声と文字あわせてお楽しみくださいませ!
▶︎前編「PRパーソンはどんなキャリアを目指せばいい?」はこちら
▼後編を音声で「聴く」方はこちら
放送ハイライト
- 広報と他部門との壁について(0:10~)
・SansanでマーケとPRをやってみてわかったこと
・広報と経営の両方が歩み寄る必要がある
・暗黙知でやっている仕事をどう言語化するか - スタートアップでPRが活躍するには(7:56〜)
・エージェンシーからの転職が増えている
・社会的意義への手触り感
・経営者は広報のポテンシャルを知ることが大切 - エンディングトーク(13:00〜)
・マルチ憑依力について
・ソーシャルセクターの広報を支援する人を増やしたい
・日比谷さんはPR業界の宝
聞き手:PR Table 取締役/Founder 大堀航、PR/Evangelist 久保圭太
ゲスト:kipples代表 日比谷尚武さん
広報と他部門との壁をどう取っ払うか
久保:最近、日比谷さんは広報以外の人たちに広報の仕事を伝える活動に力を入れられてますよね。それこそ共著で出版された書籍「BtoBマーケティングの基礎知識」でも「広報」のパートを担当されています。
日比谷:僕自身、Sansanではマーケティングの仕事から始めて、メディア露出がきっかけで問い合わせが増えたことから広報のことを勉強したら、奥深くて大事な考え方だと気づいていったんです。でも周りを見渡してみると、話が通じるマーケや経営の人が意外と少なかった。ロジカルで合理的に意義を説明するのが難しいと思いながらモヤモヤを抱えていました。
当時の僕は恵まれた環境だったのでうまくハイブリッドできたけど、会社によってはマーケと広報が分かれていて広報の立場が弱いという話もよく聞きます。数年前からは採用広報が流行り出して、広報を雇いたいっていう相談を経営者から受けるようになってきた。そんなことを積み重ねていきながらも「広報の仕事って案外知られてない?」というのがここ5-6年の手応えです。
航:広報の人たちだけでなく、経営やマネジメント層へのアドバイスも多くされていますよね。
日比谷:広報の人にいくら経営の考え方をキャッチアップしてもらおうと思っても、マネジメントや経営の経験がないとハードルが高いなと気づいたんです。そこで、同時に経営側にも広報のことを理解してもらわないと定着しないと思い、VCの方々にお願いして投資先の経営者に広報のレクチャーを始めるようになった。すると徐々に広報の大事さを理解してくれて。営業目的でやってたわけではないのですが、結果的に程良いタイミングで相談をもらえるようにもなっていきましたね。
久保:経営者が広報の大事さを語る風潮は以前より高まってきている感じがしますよね。今回、書籍を書いたのもそういう動きのひとつってことでしょうか。
日比谷:そうですね、マーケ視点から見た広報とはなんぞや?とか、他部署とどのように連携するとお互いハッピーになるのか、という視点で書いたつもりですね。
航:非広報の人たちに広報を伝えるっていうことを、日比谷さんは日本でトップクラスにやられている方だと感じます。
日比谷:スタートアップ界隈ではそうかもですね。あまり難しいこと言ってるつもりないし、全部同じことをいろんな角度で言ってるだけなんですけどね。
航:これまで暗黙知でやっていたり、職人的なことなので伝達が難しいと思われていた広報の仕事を言語化していたものって案外なかった。だから僕らも「PR Tableブログ(※)」をはじめたというのもありました。
日比谷:当時(2013年頃)は情報も人の流動性もまだブラックボックスな時期だったかもしれないですね。
※PR Tableの前身として創業者の大堀航らが趣味ではじめたPRパーソン向けのブログ
スタートアップでPRが活躍するには
航:最近は情報もキャリアもオープンになってきて、オズマピーアール時代の仲間たちもベンチャー企業に転職したりというケースが増えてますね。
日比谷:確かにそうですよね。僕はいくつかVCの広報アドバイザーもやっていて、採用の相談に乗ることもあるのですが、スタートアップに応募してくる方でPR会社出身の若い方もすごく増えています。PR会社がブレゼンスを高めて、新卒で入社する方が増えたのもあると思いますよ。それで自然と流動性が高まっていったのかなと。
航:僕は2012年に当時ベンチャーだったレアジョブに転職したのですが、周りにそういう人がほとんどいなかったので「なんでベンチャーいくの?」とめちゃくちゃ聞かれましたね(笑)
久保:スタートアップ自体のプレゼンスが今よりも低かったですしね。
航:でも社会的意義性の高い仕事をしたいっていう方は、PRの力で非連続に物事が変わっていくスタートアップは手触り感があってとてもオススメしたいです。
日比谷:PRの採用ニーズ自体は増えているけど、広報に何をしてもらうか、どんな目標で動くかなどの受け入れ側がまだまだ弱いと感じています。広報のポテンシャルがわかっていないまま、狭い業務範囲だけを想定して仕事させようとする経営者の方がまだいる。そこを払拭しないとPRの活躍の場が増えないし、PRの力を世に知らしめることができないので粘り強く発信しようと思ってますね。
久保:本田哲也さんがやられている「SCALE PR ACADEMY」第3期でも、初回講義の「マルチ憑依力」というテーマでご登壇されますよね。
日比谷:そうですね。「マルチ憑依力」というのは、多様なステークホルダーの視点やインサイトをまるで憑依するかのように深く理解し、柔軟に対応していくための力のこと。
僕自身、パラレルキャリアを歩みながら、様々な立場で複数プロジェクトに絡んできました。そこから見えてきた景色を、僕なりの視点でお話したいと思っています。
▶︎5/31に開催された「SCALE PR ACADEMY」のレポートはこちら
日比谷さんはPR業界の宝
久保:最後に、PRパーソンに向けたメッセージなどはありますか?
日比谷:「非広報に広報のことを伝える」のベースにあるのは、エコシステムをつくりたいという思いです。その延長として、「ソーシャルセクターの広報を支援する人を増やしたい」とも考えています。僕の周りで、広報コンサルとして独立したけど、経営したり安定して仕事を得るところに苦労しているという相談も多いので、そういう人たちを支援したり環境をつくりつつ、その一環としてソーシャルセクターの仕事も紹介していきたいと思ってます。
実を言うと、これはPR Table創業時に僕が実現したいと思ってたビジョンのひとつだったんですよね。ソーシャルセクターとフリーランスPRのマッチングをしたいなと。回り回って、まだその課題が解決されていないなと思っているので僕なりのやり方で支援していこうと思っています。そこらへんのアイデアをお持ちの方や、手伝ってくれる方がいたらぜひご連絡いただきたいですね。
久保:エモいお話をありがとうございます。航さん、今日は日比谷さんとお話してみていかがでしたか?
航:僕のメンターでもあり、命の恩人でもあり、兄ちゃんでもある日比谷さんですが、やっていることがずっとぶれてなくてスタンスが変わらないのが本当にすごいと思っています。もっともっと日比谷さんには情報発信いただいて、日比谷さんというブランドを日本中に広めていきたい。PR業界の宝として、これからも担いでいきたいと思います(笑)
▶︎日比谷さんのTwitter
▶︎日比谷さんが運営されているコミュニティ「BtoB/IT広報勉強会」
(前編「PRパーソンはどんなキャリアを目指せばいい?」はこちら)
ゲストプロフィール
日比谷 尚武さん
kipples代表
「人と情報をつなぎ、社会を変える主役を増やす。」をテーマに、セクターを横断するコネクタ。広報、マーケティング、新規事業の支援、コミュニティ作り、官民連携促進を中心に活動。 一般社団法人at Will Work理事 ・一般社団法人Public Meets Innovation理事・Project30(渋谷をつなげる30人)エバンジェリスト・公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会 広報副委員長・ロックバー主宰、他 / Twitter
パーソナリティーのご紹介
大堀 航
株式会社PR Table 取締役 / Founder
大手総合PR会社のオズマピーアールを経て、国内最大のオンライン英会話サービスを運営するレアジョブに入社。PRチームを立ち上げ、2014年6月に東証マザーズ上場に貢献。2014年12月、PR Tableを創業。
久保 圭太
株式会社PR Table / PR室マネージャー /Evangelist
北海道札幌出身。二児の父。 PRSJ認定PRプランナー。 ITベンチャー企業にて広告企画営業、人事戦略、PRの責任者を経て、2018年よりPR Tableに参画。 カンファレンス企画や自社オウンドメディア運営を統括し、Public Relationsの探究活動を行う。その後、PRコンサルタントとして顧客向けのオウンドコンテンツ企画・活用支援に従事。2020年よりCS組織の立ち上げを経て現職。