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-小学館集英社プロダクションの採用戦略- ペルソナに合わせたコミュニケーションフローの構築

INDEX

talentbookのユーザー企業様をお招きして、コンテンツを軸にした人事・広報戦略を語っていただくUser Live 。
第3回目となる今回は、株式会社小学館集英社プロダクションで採用候補者との最適なコミュニケーションづくりを模索している久末氏をお招きし、目的/ペルソナに合わせたコミュニケーションフローの構築についてお話いただきました。

採用候補者の入社意向度を高めるのが非常に難しいという課題を感じていた久末氏。試行錯誤しながら「PR」の考え方を採用に活かし、ミスマッチを防ぎ、内定辞退率も減少に導いた採用戦略の実践事例をご紹介します。


◆プログラム

1.採用組織や戦略を見直すようになった背景
2.目的/ペルソナに合わせたコンテンツの発信計画
3.コンテンツ活用からはじまる採用候補者とのコミュニケーションフロー構築
4.PDCAを回したからこその実績/今後の展望

◆登壇者

久末 真一
株式会社小学館集英社プロダクション/エデュケーション事業本部 エデュケーション事業推進室 キャリアデザイン課

採用支援、就職・キャリア支援などHR分野の企業を経て、2011年7月株式会社小学館集英社プロダクション入社。 保育事業領域で育成、採用業務に携わる。その後、教育・保育領域の人に関する業務を横断的に担うキャリアデザイン室を立ち上げる。 採用候補者、従業員、アルムナイとの最適なコミュニケーションづくりを模索している。

菅田 一輝
株式会社PR Table/アカウントエグゼクティブ

2012年に株式会社キャリアデザインセンター(総合人材系サービス)へ新卒入社。求人広告・新卒紹介事業でセールス兼キャリアアドバイザーとして、約1,000社・約500名の就職・転職支援を行う。 2020年に株式会社PR Table入社。当初は新卒採用支援のアプリ事業に携わり、その後CSチーム→プロダクトチームへと異動。現在は大手企業を中心にセールスとして活動中。

1.採用組織や戦略を見直すようになった背景

PR Table 菅田(以下、菅田):本日進行を努めさせていただきます菅田と申します。採用活動のよりリアルな部分を深掘りさせていただき、皆様に何かを得て帰っていただければと思います。

小学館集英社プロダクション 久末様(以下、久末氏):本日はよろしくお願いします。弊社はメディア事業とエデュケーション事業の2軸で動いているのですが、私がメインで動いているのがエデュケーションの部門となります。保育園、託児所、ショッピングモールや百貨店などに入ってるドラキッズ、ミキハウスキッズパルなどの幼児教室、学童・児童館など広く教育に関わっている施設を運営しています。

菅田:ではまず、採用組織・戦略を見直すきっかけになった背景や理由について教えていただけますか?


久末氏:弊社では事業部制を敷いており、求める人材も雇用形態もまちまちということもあり、これまでは事業部ごとに採用活動を展開していました。ただ共通する部分もありますし、もう少し効率よく動けば採用コストを抑えられるのではないか、と考え始めたのが戦略を見直すきっかけですね。

その頃にtalentbookの話を広報に力を入れている他社の方から聞いて、とても興味を持ったことを覚えています。

菅田:ありがとうございます。次に時系列的な変遷について見ていきましょう。

久末氏:まず2014-2015年にかけてコストの見える化ができていないという課題に対して、ATS(応募者管理ツール)の導入を進めました。それが見えてくると課題が明確になってくるので、次にPRやウェブ広告、ウェブマーケティングなどを活用した採用にチャレンジしていきます。

2017年頃から、共通化できる業務の洗い出しをしていく中で、単一事業部でやるよりも複数でやった方がいいのではないかということで横断部門の話が出てきました。
その後、2018年くらいから準備をはじめて、2019年にtalentbookやMarketoの導入に至りました。

菅田:オフラインより、オンラインでの採用活動には元々積極的だったのですか?

久末氏:オンラインやデジタルには決して強いとは言えなかったと思います。教育だと施設や教室があるので、その地域の方に来ていただく上ではどちらかというとオフライン寄りでしたね。ただウェブをもっとうまく使えるはずという考えが、当時自分の中にあったのだと思います。

菅田:こちらは課題と改善案で整理した図となります。2015-2016年にかけてオウンドメディアリクルーティングの考え方であったり、採用にPRの観点を持ち込んでコンテンツ発信を始めるに至った元々のきっかけは何だったのですか?

久末氏:元々、前職で求人広告に携わっていたので、採用で媒体を使う経験はありました。
ただ、媒体で伝えることができない部分があるとずっと感じていたのですね。
私は展示会などに行くことが好きなのですが、プロダクトを見るだけでなく、現地で企業の方からお話を聞くことがとても面白くて「この企業で働きたい」と毎回感じるのです。

でも、そういった部分って求人媒体には出てこない部分ですよね。それならばどこで表現するのかと考えたときに、自社のホームページをブラッシュアップして発信してみようというところに至ったのだと思います。

菅田:次が、御社と接点を取った後からOB、OGに至るまでの変遷の図(収益サイクルモデル)ですね。御社の中で何か大切にされていることはありますか?


久末氏:MA(マーケティングオートメーション)ツールを入れる際、まずこれを作成しました。採用において大事な点は、エントリーから入社後、さらには退職後も含めた全体像から考えることだと思うのですよね。

採用活動は、まず候補者にエントリーしてもらうというところから。選考を経て内定・入社と、企業と採用候補者の関係は、当然そのあとも続きます。退職しても会社のことを好きでいてくれたりということもあると思いますし。

企業と候補者の接点で考えると様々な分岐があります。いま施策を練っているのは全体の中でどの部分のことなのかどこに繋げるのが目的なのか、そのように全体を捉えた上で考えることが大切なのではないかと思います。

菅田:接点がない状態で期間があく方に対しても情報を共有することで、またレールに戻ってくることがあるということですよね。かつ手動ではなく、いかに自動でやるかという点が重要ですよね。

久末氏:手動だとやりきれないですからね。個人の解釈でアプローチをしても、実はこちらの片思いかもしれないですし、本当は両思いなのに私たち側が自信を持てなくて声をかけられずに機会を逃してしまうこともありますから。その点がうまく擦り合わせられるといいですよね。

菅田:テーマとして、候補者も企業も「双方が納得のいく就活&採用」を目指してやられていたということですね。

菅田:ここで、ATS、コンテンツ、MAツールという打ち手を整理すると以下のようになります。これは3つどれが欠けてもうまくいかないというイメージですか?

久末氏:そうですね。求職者との関係性を見える化するためにはOMROS(現在は「クラウドハウス」に名称変更)のような採用管理ツールも必要だと思い、今年から活用しています。

久末氏:MAツールを入れても、それだけだと届けるコンテンツがないですし、talentbookでコンテンツを誰にいつ届けるか手動でやるには限界があるので、3つのツールがうまく補完しあっている気がします。

菅田:毎回応募をしてくださいというようなアプローチではうまくいきませんので、応募につながるようなフェーズにあったストーリーでアピールするなど、まずはShoProさんを好きになってもらえるような仕掛けを作っていくイメージですね。

久末氏:あとタイミングもとても重要です。ホームページを見たり、メールの開封など、そういった行動に合わせてアプローチを選択してくれるものがMAツールだと思っています。

<各ツールの導入事例>

■OMROS(クラウドハウス)
https://www.omros.jp/case-shogakkan

■Adobe Experience Cloud
https://jp.marketo.com/customers/shopro.html

■talentbook
https://product.talent-book.jp/voice/shopro/

参考:採用フローの全体像(イメージ)

菅田:ここで一点、質問が来ています。「Q.ツールの導入による効果測定はどのように行われていますか?」という内容です。

久末氏:基本的にはATSを入れると、応募数や選考数、内定、不採用の数は全部見えてきますよね。元々、MAツールを入れた理由としては歩留まり改善というところがあります。応募が100人あるけれど10人しか面接していなかったら、会えていない90人とどうしたら会えるのかというというところです。何の目的で入れて、それがどこまで改善されたかというところが効果測定だと思っています。

菅田:ツールを入れて直接的に何人採用できたという部分ももちろんあると思います。
ただその手前の部分の効果測定かなと私も思っていて、応募いただいてから最終選考に進むまでの歩留まりの改善要因として、手動ではできなかったアプローチがMAツールで出来ると思うのですね。そういったところでKPIを図るのではないかなと思います。


2.目的/ペルソナに合わせたコンテンツの発信計画

菅田:次は、採用のターゲットに合わせたコンテンツの発信計画です。
「コンテンツ発信」に関して、talentbookの導入前後の状況をお聞きできればと思います。


久末氏:広報の部門もありますので、元々発信はしていました。採用に関する情報発信は、事業部ごとに情報量や頻度の差はあったと思っていまして、発信の方法としては採用ホームページがあればそこから、なければ必要な時だけ求人広告を出すという状況でした。

talentbookを導入してからで言いますと、教育部門としてではなく、ShoProとして発信するスタンスで運用していきたいと考えていたので、コーポレート部門やメディア部門を巻き込みながら発信していきました。各部門の皆さんに協力いただきながらキャリアデザインで取りまとめて動いていました。

菅田:実際にタレントブックを導入いただいてからの3年間を表した図がこちらになります。

菅田:初年度はコンテンツを貯める実践期、2020年は特に広報との連携強化、2021年現在は他事業部にも横展開していただいております。
会社としてのコンテンツ・資産という部分を意識されているのかなと思っておりますが、それぞれの年度でのコンテンツ、ペルソナも含めて、どのようなところに焦点を当てて、どのような狙いを求めていたのかもお聞かせください。

久末氏:初年度で言うと、会社として発信するところが狙いだったので、まず社長に出ていただこうと思いました。

久末氏:「こういう思いでやっている」というのを発信したかったので、経営層やマネジメント層が多かったと感じますね。単一部門、教育部門のコンテンツだらけとならないよう、色々な部門から出ていただくというところを意識したのが初年度です。

菅田:社内の方からの反応はいかがでしたか?

久末氏:社長や役員のところは、打ち合わせの時に見てくれているという話は聞きました。
商談の時に目にとまるので、盛り上がって関係構築に繋がるとは耳にしました。

菅田:人にフォーカスを当てて、幼少期やプライベートな話もあるので、雑談ネタにもなるかもしれませんね。

久末氏:保育部門は採用のボリュームも大きかったことと、MAとの連携も試行錯誤していたので、結果的にコンテンツも多くなっていきました。
活用のための工夫としては、応募に対するサンクスメールでも、ただ単に「応募ありがとう」ではなくて、採用担当者のコンテンツを付けることで、担当者の人となりを感じてもらえた上でのありがとうというメールが届けられるので、温かみもあるのではないかと思いますね。

菅田:次が2020年で一番記事制作を頑張っていただいたところですね。

久末氏:広報が出しているプレスリリースを、ただのお知らせや報告で終わらせず、そこに携わっているタレントの話を加えたいと思いました。おはスタがリニューアルするタイミングで、記事も書いたりしましたね。
もう一つは、ノウハウ機能を使ってエデュケーション部門で働いている人たちの紹介をしていきました。事前質問を用意して回答を入力してもらうことで記事を量産することができました。

菅田:ここに関しても裏側を発信して、温度感を伝えると言いますが、そこでギャップを埋めていくようなイメージでしょうか?

久末氏:採用サイトでも社員の声を掲載していますが、掲載できる人数にも限界があります。色々な社員がいますので、採用候補者にとって自分に近しい価値観やロールモデルの人がいるはずだと思うんです。なので、ノウハウでたくさんの社員を紹介することで、カルチャーマッチした人との出会う可能性が広がると思っています。結果、歩留まり改善にも繋がっているのかなと。

菅田:いわゆる身近な人からの声が重要になってきていることと、社員に声を通じてカルチャーを伝えていけるというところがtalentbookのコンテンツの特徴でもありますね。

3.コンテンツ活用からはじまる採用候補者とのコミュニケーションフロー構築

菅田:ここからはコミュニケーションフローの構築ですね。逆三角形のピラミッドを見ながらお聞きできればと思います。
貴社の場合、「認知・興味施策」と「選考のナーチャリング施策」でいかに温度感を高めていくかというかというところの2点でやられているかと思います。


菅田:「認知・興味施策」においてはターゲットによって記事の内容を変えていらっしゃるのかと思いますが、ナーチャリングの部分で工夫している点などはありますか?

久末氏:ナーチャリングですと、例えば幼児教室に興味のある人がエントリーしてきた場合、事業責任者のコンテンツやお仕事をフォローしていただける先生のコンテンツをお届けしています。
エントリー後に採用担当について紹介して、開封してくれた方には責任者のコンテンツ、職場や仕事の内容に関するもの、受付中のイベントに関する情報が流れていくような感じです。

開封してくれていない場合ですと、こちらが急かし過ぎてしまったかなと反省し、そもそも弊社がどういう会社なのか、イベントや選考への参加を目的とするのものではないコンテンツを少し期間を空けてお届けしたりします。
そこから読み始めてくれたなということであれば、受付中のイベントを案内したりしていますね。

菅田:行動変容によってパターンを作ることが、本当に難しいのですよね。

久末氏:本当にやりながらという感じですね。MAツールを使っている人が周囲になかなかいなかったので、ユーザー同士の繋がりが非常に重要でした。
あとはマーケティング、デザイン思考、組織文化などにも興味がありまして、関連する書籍で学んだことは参考になっているかなと思います。


菅田:施策による定量・定性の変化とPDCAにについてです。
先ほど話にもあがった選考数や遷移率などもありますが、Twitterの反応にも変化があったんですね。

久末氏:保育園の園長先生や幼児教室の先生の記事などは、Twitterで広告も展開していましたので、定期的にいいねや、シェアなどの反応がある印象はありました。
また定性部分についても、「ありがとう」などのフォローメールなどに対してのレスや候補者とのコミュニケーションでどれだけ話題になるか、という点も見ていました。

4.PDCAを回したからこその実績


菅田:最後に導入効果の紹介となります。応募から選考までが150%向上されたということですが、中途と新卒合わせての数字でしょうか?

久末氏:数字としては合わせたものになります。導入した時期が新年度が始まってからの4月以降でしたので、初年度はエントリーのピークが過ぎた新卒採用より中途の改善が大きかったと思います。
昨年度はインターンシップの時期からコミュニケーションが取れたので、新卒採用においても改善に繋がったのではないかと思います。

菅田:すごい数字だと思うのですけれども、要因としては適切なタイミングで適切なアプローチができたことが大きいでしょうか。

久末氏:前年までは人の手でやりきれない部分がありましたが、漏れが少なくなった気はしていますね。
例えば、イベントで出会ってたくさんお話しができて印象に残った方だときっと優先的にお誘いしていくと思います。逆に、あまりお話し出来なかったりすると私たちからのアプロ―チの頻度は少なくなると思います。ですが、その中には、実は私たちのことをすごく調べていたり理解していただけている方もいると思うのです。

そこを自動的にメールを送ること、アクティビティに合わせてメールを送ることで、機会損失なくフォローができていたことが良かったのかなと思います。
あとはより刺さるコンテンツや、いいタイミングで送ることかなと思っていますね。

菅田:うまく行かない時こそ、悪いところに穴を塞ぐようなイメージなのですかね。

久末氏:ウェブ広告を運用し始めたときに言われたことなのですが、いくら広告で集客してもランディング先の採用ホームページが整っていなければ成果にはつながらないと。
採用サイトを整え、続いて集客施策にウェイトを移しいろいろな広告も実施してきましたが、さらにその先には色々な選択肢がありますよね。

さらに見てもらう人を増やすために広告費を増やすか、または来ている人の満足感を高めるためにコンテンツを改善するという選択肢もあります。
集客のための広告に費用多くを投下してしまいがちなところを、コンテンツ拡充と集客施策の強化のサイクルを常にまわすことが大事だと気づいたのは大きかったですね。

5.今後の展望

菅田:最後に、これまでを振り返ってみての学び・気づきを教えてください。

久末氏:採用活動に閉じた考え方をしないほうがいいということは学びましたね。
企業と「個」のコミュニケーションを考えるということと、業界問わずアンテナを立てて学ぶことも大切だと思います。あとは、よく見せようとせず「正しい姿、ありたい姿を表現する」と自然と伝わっていくというようなイメージでしょうか。


久末氏:今後取り組んでいきたいところとしては、「一人一人がPRパーソン」というところに集約されると思います。
縦割りになると、自分の担当以外のところまで目がいかなくなりがちです。そうではなく、一人一人が採用担当者であるという自覚を持つようにしていきたいです。

菅田:2つ目の「PRの可視化」というのは僕らもチャレンジしている領域ですね。

久末氏:そうですよね。取り組みの背景を知っていたり、思い入れがあれば効果も肌感があるのですよね。ただ、施策の成果を判断する人がそこまで理解するのは大変だと思います。だからこそ、何かしらの数字で見せる必要があると思っています。

「後継者育成」に関しても、やっていることをただ引き継ぐという形にはしたくないですね。意図も含めて、ちゃんとPDCAが回る形で引き継ぎをしたいなと思います。そういう考えを持つ人を周りには増やしていきたいですね。

まとめると、ShoProと個人の関係性を良好にするような仕事をしていきたいと思います。
会社と「個」の関係性を考えるようなコミュニケーションの軸を定めて、これからも発信していきたいですね。