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at Will Work 藤本あゆみ×PR Table大堀航「Work Story Awardの5年間を振り返る─わたしたちの働くストーリーはどう変化したのか?」

INDEX

2021年12月、5年間限定のプロジェクトとして立ち上げられたat Will Workが行うプログラム「Work Story Award2021」が終幕を迎えました。あらゆる企業・団体・人の「働く」に関する取り組みを広く社会に伝えるというコンセプトで、毎年20の受賞ストーリーを選出するWork Story Award。PR Tableは5年間、本プログラムのストーリー制作および監修として並走してきました。

今回は、at Will Workの代表理事・藤本あゆみさんとPR Table 取締役/Founderの大堀航との対談を通して、プログラムをご一緒することになった背景から、5年間を終えて今感じている変化などを伺いました。お互いが感じる「働く」価値観の変化や、これからのtalentbookに期待することなどについて、率直な気持ちを語り合います。


Profile

藤本あゆみさん Ayumi Fujimoto

一般社団法人at Will Work代表理事

大学卒業後、2002年キャリアデザインセンターに入社。求人広告媒体の営業職、マネージャー職を経て2007年4月グーグルに転職。代理店渉外職を経て営業マネージャーに就任。女性活躍プロジェクト「Women Will Project」のパートナー担当を経て、同社退社後2016年5月、一般社団法人at Will Workを設立。株式会社お金のデザインでのPR マネージャーとしての仕事を経て、2018年3月よりPlug and Play株式会社でのキャリアをスタート。現在は執行役員CMO としてマーケティングとPRを統括。

———–

聞き手:大堀航 Koh Ohori

株式会社PR Table 取締役/Founder

1984年神奈川県生まれ。大手総合PR会社のオズマピーアールを経て、国内最大のオンライン英会話サービスを運営するレアジョブに入社。PRチームを立ち上げ、2014年6月に東証マザーズ上場に貢献。2014年12月、PR Tableを創業。


「働き方の変化の波をつくる」怒涛の5年間のスタート

大堀:Work Story AwardにPR Tableが関わることになったのは、at Will Workの理事をされていた日比谷さん(日比谷尚武氏)からお話しいただいたことがきっかけです。お話を聞いたとき、うちのサービスとドンピシャだと思いました。ストーリーを通じて社会的ムーブメントをつくっていくという取り組みに、ぜひ乗っかりたい!と。

藤本あゆみさん(以下、敬称略):Work Story Awardは、今まであったいろいろなアワードプログラムにはない視点で、世の中に「多様な働き方」を伝えていきたいと思ったところから始まりました。企業の取り組みをストーリーにすることで、成果だけでなくその過程にも賞をお渡しすることに意味があると。

藤本:このコンセプトを理解して、ストーリーをきちんと世に出してくれる人と一緒にやっていきたいと考えたときに、日比谷さん経由でPR Tableさんにお願いすることになりました。うちも人が少なくて、どんなフォーマットにするのかも決まってないし、ストーリーの使い方も曖昧な状態だったんです。それでも「これはやったほうが良い」と判断して、5年間一緒に船に乗っていただいたことはありがたいでしかないですし、一緒にやっていただかなかったら成り立たなかったなと未だに思います。

大堀:企業ではなく「働く人」が主語であるストーリーを伝えていく、企業での実践事例がストックされていくところに僕らはとても共感しました。社内としても、担当者が毎年のように変わりながら受け継がれてきたところもよかったです。

藤本:一番初めは、ストーリー制作の講座も一緒にやりましたよね。受講した方々から「今までなら出来たことを発表するだけだったけれども、ストーリーとして伝えることの大事さをすごく学びました」と言っていただくことが多くて。私たちも、やりながら手ごたえを感じるとともに、これくらいやらないと世の中には伝わらないんだと感じました。どう伝えるか?というメソッドが企業にないと伝わらない。

大堀:伝えるためのラストワンマイルをご支援できたのは感無量です。

藤本:企業にストーリーをつくってもらうのは、メソッドを教えることと、最後の取材のところの負荷を軽くしたいという意味合いに加えて、PR Tableを知ってもらって、将来的に使ってもらえるきっかけになったらいいなという思いもありました。実際やってみたら、自分たちが一番勉強になりましたね。

大堀:Work Story Award は当初から5年と決まっていたので、PR Tableも最初から5年間関わるつもりでした。あのとき、5年後の当社はもっと大きくなっていると思っていましたけど(笑)

藤本:3年だと短すぎるし、10年だと長すぎるから、5年だと決めて。2016年からスタートしたので、2020年に東京オリンピックを経てリモートワークが一気に広がって、5年後の2021年は働き方が大きく変化しているだろうと当時はイメージしていました。

都市から地方へ、大企業から個人へ。感じた変化

大堀:PR Tableのサービスでストーリーに出てくる人が、最初は男性ばかりだったんです。それが特にこの2~3年で女性が半分以上になって、男女関係なく活躍している人を出していくという流れに変わったなと思います。

藤本:Work Story Award自体も、前は都市部の企業が多かったのが、地方企業が増えたり、自治体が増えたり、ストーリーのバリエーションも増えて、多様化してきている感じはします。

大堀:そうですね。実際、取材に応えてくださった方が、自分がやってきたことや仕事のやりがいを振り返って言語化できたことで涙するといった声をたくさんもらったので、やって良かったなと思いますね。人の数だけストーリーがあるので、本当は働く人全員のストーリーをもっとつくりたいです。

藤本:一次選考を通過したすべてのストーリーを選考委員の方には読んでいただくので、毎回「え?こんなに読むの?」って言われます(笑)。選考会では、毎年20個の賞を選ぶのですが、そのうちテーマ部門賞の10個は審査員全員で選びます。全会一致のケースもあれば、見事にバラバラの時もあって、いろいろな人のいろいろな視点が入って面白いです。

特にWILL部門(“こうしたい”というWILL(意志)によって働き方が変わっていったストーリー)は毎年本当に多様で、パッションの塊みたいなストーリーばかりで。2021年は無添加グミをつくったお母さんの話でしたし、2019年はミカン農家の話でした。一応選考委員の方々向けにスコアリングシートをつくっているのですが、どれにも当てはまらないものも多いですね。

▲WorkStoryAwardの特設サイトには、5年×20個の100の“働く”ストーリーが掲載されている
https://award.atwill.work/stories2021/

大堀:M-1の審査員みたいですね。

藤本:はい(笑)。全部通したいと思ってしまうほど、毎回WILL部門が楽しみでした。

大堀:地方企業や個人に広がっていったきっかけは何だったのですか?

藤本:特にプロモーションしたわけではないですね。4~5年目でぐっと地方率が上がったんですが、これは働き方改革の広がりと似ているなと思います。5年前は1都3県を中心に議論や取り組みが展開されていて、地方はもう少し時間がかかると思っていましたが、ここ1~2年でぐっと変わってきました。私たちが何かしたというよりは働き方に関する興味関心が全国的に広がったことが大きいと思います。

大堀:確かに働き方改革が言われ始めたのは2016年くらいですよね。

藤本:そうです。まだあの時は「1億総活躍」と言われていて、その後に働き方改革法案が可決されて、ちょうど過渡期でした。

大堀:藤本さんは、そういった国の動きも含めて、企業の流れは良い方向に変わっていると見ていますか?

藤本:思っています。もっと時間がかかるかなと思っていたんですが、ちゃんとみんな変化してきている。オリンピックのタイミングでテレワークが広がるかなと予想していたのが、もう少し早い段階でいろいろな働き方の話が出てきています。

企業の大きさや業種に関わらず、ポジティブに良い変化をしているなと思います。5年前はみんなそんなに柔軟な働き方をしていないし、企業も今みたいに副業推奨している企業が少なかった。そういうところを見ると、すごく変わったなと思います。

社内に眠る“宝物”を掘り起こすきっかけに

藤本:5年前、自分がどんな働き方をしていたか覚えていますか?

大堀:あまり覚えてませんが、今振り返るとめちゃくちゃな働き方をしていたと思います(笑)働き方とか、価値観の多様化ってよく言われますが、企業の方々と対面で接していると、本当にみんな価値観が違って、柔軟に対応していく必要があるということに気づき出していると感じます。

藤本:そうですね。前だったら社員一人ひとりも「こんなこと言ってはいけない」と思っていたことも、働き方や副業について「こういうふうに変わってほしい」と言ってもいいんだという方向にこの5年間ですごく変わったと思います。ダメな部分は、どんどんダメだと言われてしまいますし、ただでさえ、少子高齢化で人の取り合いになっている中で、エンゲージメントを高くしないといけないということについてもこの数年間でより企業が気付いてきて、多様性に向き合わないとその先にはいけないという感覚はより強くなっていると思います。

大堀:Work Story Awardでもたくさんの事例が出ていて、いろいろなストーリーを見ることで他の企業の情報もどんどん入ってくるので、おっしゃる通り、労働市場で優位性を確保するための、社員1人ひとりとの向き合いを重視しようとしていますよね。

僕らはまさにそういったメッセージを出しています。バイアスなく、サングラスを外して社員と向き合う。社員それぞれの価値観を知り、柔軟性を持てる企業が選ばれると。最近導入してくださる企業を見ていても、そうした危機感は持っていると感じますね。

藤本:危機感ですよね。ただ、今は危機感であっても、そのうちそれが当たり前になっていくのが自然だと思います。1人ひとりに向き合うところがスタートみたいな。そうすると、Work Story Awardがなくても日々向き合うようになる。

大堀:アワードとかがなくても、向き合うことはやってほしいですよね。

藤本:向き合っていくと、いろいろな情報や宝物が社内にいっぱいあることに気づくと思うんです。宝探しを楽しむみたいな感じになってくるといいですね。

大堀:ですよね。それがまさに人的資本、1人ひとりの資産になって、その資産にレバレッジが効くことで企業も成長していくみたいなことを楽しめるといいんでしょうね。

PR Tableは最初、企業の広報担当者がもっと気軽に会社の資産を掘り起こしできたらいいなという考え方でスタートしたんですが、やっていく中で、社会全体としてもそういう風潮になってきた。やっと社会と合ってきたかなという感じはするんです。ただまだまだキャズムを越えていないとは思いますが。

藤本:もともと「辞書をつくりたい」という話をしていたじゃないですか。1億2000万人の辞書をストーリーという形にしようと。でもそれは発掘する必要があるので、企業がそれを発掘できるような仕掛けが必要なのかなとは思ったりします。

大堀:きっかけがないと掘り起こさないですよね。うちは、導入のきっかけづくりとしては、「採用が強くなります」とか「会社のエンゲージメント向上、文化がもっと醸成されます」と言っていますが、もっと内発的な動機で掘り起こされていくといいなというのはずっと思っているところです。

藤本:でもこの5年間でPR Tableからtalentbookに進化されて、使われている企業さんも変わってきて、どんどん強化されているなという印象です。プラットフォームとしての多様さと強力さは、年々頼もしさを増しています。

▲talentbook導入企業は累計1000社を超え、これまでに5,000以上のストーリーが掲載
https://www.talent-book.jp/

大堀:藤本さんの5年間にはどんな変化がありましたか?

藤本:ものすごく変わりました。5年前はメディアに1回も出たことがなかったですし、外に出していくことの重要性も知ったことで、自分自身のコミュニケーションスタイルも変わったと思います。

Googleを辞めた後、at Will Workを立ち上げる時にお金のデザインと並行して2つの正社員みたいな働き方になったり、全員リモートでプロジェクトを進めることになったり、他の会社でもアドバイザーをやったり、いろいろ初めてだらけで面白い5年間でした。

▼2018年4月に藤本さんをインタビューした記事
「広報の仕事は何か」ではなく「自分はいま何をすべきか?」を問う

大堀:僕らも怒涛でした。特に2021年は体調を崩してしまい、3ヵ月くらい会社を休んでた時期もありました。でもそこで自分の考え方や、一緒に働くメンバーの見方がすごく変わったんです。自分自身が凝り固まった価値観と考え方を持っていたんだと認識できて、そこでようやく自分も時代に則した生き方、考え方に変わることができた。

当社のビジョンは、「働く人の笑顔が連鎖する世界をつくる」というものですが、会社の事業としても、働く人が笑顔になるものを提供したいですし、自社で働くメンバー1人ひとりもそうなってほしいなと思っています。この1年で企業環境ががらりと変わったので、特にそれを自社で感じている今日この頃です。

藤本:いろいろな人が言っていますけど、本も読んで「そうだよね」と思っていたとしても、実際にぶち当たらないと本当の意味ではわからないと思います。そういうことを経てちゃんと行動と思考とプロダクトが合致してくると、すごく強いですよね。

終わりがあるからこそ、全力で走れた

大堀:最初から5年で終わらせるとは聞いていましたけど、本当に終わるんだなって。終わりがあるというのが新鮮でした。

藤本:みんなに言われました。でも、終わりがあるからスピードを意識できるし、この5年間でどれだけ変化の波を大きくできるかを考えられるという意図もありました。これはat Will Workという団体だからできたことではあります。

4年目が始まる前くらいから、「どう終わらせるか」をみんなで考えはじめて。初めは、部分的に続ける話も出たんですが、最後の最後、2021年のカンファレンスが終わった後の理事合宿であっさり「終わらせよう」という結論になりました。やってきたことのアセットを誰かに引き継ぐという意識はあるのですが、たとえば「Work Story Awardが6年目もあります」というのはちょっと違うよねという話だと思って。

物事には終わりがあるということ、区切りがあるからこそ、次の5年なり10年が考えられるというコンセプトを世の中に伝えたいねと。理事はみんな同じ考えでした。5年間一緒にやってくると、ここまで一緒になるんだなと、新鮮な驚きがありましたね。

大堀:最後の表彰式は、感慨深いものがあったのかなと投稿を拝見して感じました。

藤本:ありましたね。1個ずつ発表していく度にどんどん終わっていく、カウントダウンみたいな感覚で、最後の挨拶のときにはしんみりしましたね。もっと「終わった!走り抜けた!」みたいなすっきりした気分になると思ったんです。でも、「終わっちゃったな」という寂しさのほうがいっぱいで。

振り返ると、もっといろいろなことができたと思うし、6年目や7年目があったら、もっとこれもできるよね、みたいなことはありますが、それもいったん全部忘れようと思っています。いったん5年間でやると決めたところはできているはずなので、その中で気づいたこと、これもできたらよかったよねというところは、これから整理してどこかに提案したりしてもいいかなと思っています。

大堀:最後に、talentbookに対して期待やメッセージは何かありますか?

藤本:本当にストーリーって奥が深くて、それこそ1億2000万人の辞典だとしたらもっといっぱいつくれるじゃないですか。なので、まだまだ発掘してほしいし、どんどん届けてほしいです。それが次の誰かの何かにつながると皆さんも信じていますし、私たちも信じているので。その力をより高めていってもらいたいです。

大堀:ほんと辞典はつくりたいですよね。「エモーショナルな四季報」と言ったり、「選手名鑑」という言い方もしたりしてきましたが、そうやって働く1人ひとりの思いや努力の過程が残っていくということを、僕らはずっと「面白い」と思っていたいです。

藤本:通勤電車でみんなが死んだような眼をしているというのは、確かにそうかもしれないですが、でも24時間365日ずっと死んでいる眼ではないと思うんです。波はありながらも、人生の中で大きな割合を占める「働く時間」がより良いものであったと思えたり、次のことを頑張る活力になったりする。そういった“働く”ストーリーを、talentbookを通してこれからもたくさん世の中に生み出していってほしいと願っています。

▲撮影協力:at will work共同代表理事である松林大輔さんの会社「ストリートスマート」の東京オフィスをお借りしました。

“働く”ストーリーのこれから

藤本さんの話を通してとても印象的だったのが、社内に眠る情報や人的資本を”宝物”と表現していたことです。“働く”ストーリーを一緒につくり続けた5年間は、まさに“宝探し”のような日々だったのかもしれません。

5年間で、わたしたちの働き方は予想もしていなかった形で大きく変化しましたが、それぞれの“働く”ストーリーはこれからも続いていきます。Work Story Awardの志を絶やさぬよう、これからもtalentbookが引き継いでいけたら幸いです。(編集部)