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クモの糸と保育園ーー「今を幸福に生きる人」を育むバイオベンチャー Spiberの信念

INDEX

世界で初めて、人工合成クモ糸の量産技術を確立。かつてNASAや米軍すらも開発を諦めたその偉業を成し遂げたバイオベンチャーが、山形県鶴岡市にあるSpiber株式会社。

鋼鉄の340倍もの強靱性があると言われるクモ糸は、枯渇資源に頼らないタンパク質でできており、様々な産業に応用可能な”夢の素材”として世界中から注目を集めています。

この革新的な技術、事業を支えるのが、現在約180名のチーム。うち6割が研究者で、7割が県外からの移住者。1割は海外からの移住で、夫婦や子連れで鶴岡へ来るケースもあります。

平均年齢35歳、既婚率4割。子育て世代が多くを占める従業員から上がったのが「英語に対応した良質な教育を子どもに受けさせたい」「家で過ごす配偶者と子どもを孤立させない環境がほしい」といった声でした。

その声を聞き、子どもの教育サポートを含めた「営む」ための保育施設「やまのこ保育園」を、2017年9月、内閣府が主導する企業主導型保育事業により開園。(2018年10月には全天候型子ども施設「KIDS DOME SORAI」内に分園となる50人規模の新園もオープン予定)

しかし、同社が保育園を開園する理由は、従業員からの働く環境への声が上がったからというものだけではなかったのです。

Spiberが保育園を運営する意義とは? そしてなぜ企業主導型の保育事業を選んだのか?

そこにあるSpiberらしい地域社会とのコミュニケーションや、未来を考えた企業としてのさまざまな視点を、やまのこ保育園園長であり、Spiber文化・環境室Officemanegerの遠藤綾さんにお伺いしました。


Profile
遠藤綾さん Aya Endo

やまのこ保育園 園長/Spiber文化・環境室Officemanager
1980年生まれ。大学の研究機関で子どもをテーマに研究・実践に従事。その後、アートマネジメント会社で表現を媒介としたまちづくりの現場に携わる。2013年から国際NGO「SOS 子どもの村JAPAN」広報として、社会的養護の社会化のための情報発信を行う。2016年にSpiberと出会い、鶴岡に家族で移住。一男一女の母。


キーワードは「教育」と「コミュニティ」

スパイバーが運営する、やまのこ保育園 園長の遠藤綾さん

ー 従業員の希望もあって、「やまのこ保育園」をつくることになったのですよね。当時、どのような課題を抱えていたのでしょうか?

遠藤:平均年齢が35歳と若い会社で、すでに子育て中の従業員もいますし、これから結婚・出産フェーズに入る方もいます。すると、どうしても子どもの預け先が必要になります。
鶴岡は自然豊かでとても魅力的な場所ですが、海外からの移住者が子どもを地域の保育園に預けようとすると、言語の壁がありました。通訳をつけて対応していましたが、それも人数が増えてくると大変です。

また従業員の6割が研究者として働いてますが、教育に関心が高い人が多く、自分の子どもに良い教育を受けさせたいというニーズがありました。

さらに移住者だと気軽に頼れる家族や友人が居らず、どうしても地域から孤立しがちです。安心して仕事に打ち込むためにも、配偶者と子どもに寂しい思いをさせたくないとの声もありましたね。

やまのこ保育園のようす

ー 通常、企業が保育園を作るとなるとまず思い浮かぶのが、従業員の子どもだけが入園できる「事業所内保育所」です。ところがSpiberは、地域の子どもや他企業で働く両親の子どもも受け入れ可能な「企業主導型保育所」を選ばれています。何か理由があるのでしょうか?

遠藤:地域の子ども達も受け入れることが、会社としての地域貢献にもつながると考えました。また私たちの会社は、さまざまなサイエンスベンチャーが集まるサイエンスパークにオフィスを構えているのですが、ここは開発中エリアということもあり一般の人が入りづらい場所です。もっと地域の皆さんにも親しみを持っていただけるようになればという思いもありました。

ー そうなんですね。もともと地域との関わりがあって、地域貢献を意識されるようになったのでしょうか?

遠藤:以前から地域の方とのコミュニケーションは日常的にありました。地元企業の方に技術面のサポートをいただくなど、鶴岡のみなさんに教えてもらったことが開発にも活かされています。

ー 潜在的に地域社会とのコミュニケーションをお持ちだったのですね。

遠藤:「やまのこ保育園」の定員は現在のところ15名ですが、そのうち7割が当社従業員の子ども、3割が地域の子どもです。当園では、安全な食材、地元の食材にこだわった給食を提供していて、米も野菜も地元の農家さんのものを使わせていただいています。ありがたいですね。

園庭は小さな地球。Spiber流の保育理念

やまのこ保育園のようす

ー 「やまのこ保育園」の特色に、英語と日本語が混ざり合う環境、異年齢(縦割り)保育、布オムツ使用を挙げられています。どのような保育理念を掲げ、子ども達と関わっているのでしょうか?

遠藤:私たちが育みたいのは、「地球に生きているという感受性を持つ人」そして「今を幸福に生きる人」です。

世界情勢が移り変わる中でどう生きればよいのか考えたときに、人間だけではなく自然や他の生き物も含めた地球と共に生きていく感受性や、今この時を幸福に生きていくための力がある人、という答えにたどり着きました。

ー そうした保育理念は、どのように決められたのですか。

遠藤:「未来の人間像」を、経営陣とディスカッションしながら作っています。よい人材――競争に勝てる人材という意味ではなく、世界を少しでもよくしていくために、自ら動けるような人を育てていきたい、と。

ー 具体的にそれをどのような保育で実現しようとされていますか?

遠藤:私たちは、園庭を小さな地球に見立てています。世界には太陽の光が差さない地域も水が足りない地域もある。それらを実感するため、子ども達が遊ぶ水は雨水を使用します。

タンクに溜まった雨水を使い切ったらおしまい。そうすることで、どう遊びを展開するか考えますし、水が有限であることに気づきます。

水だけでなく全ての物が有限であると感じる経験を、子どもの頃から積み重ねていってほしいですね。

ー まさに持続可能な開発に取り組むSpiberならではですね!

遠藤:また「今を幸福に生きる」ことも大事で、私たちが考えるのはただ幸福に生きることではなく、今この時を幸福に生きるということです。そのためには自分が欲しい自由と、相手の欲しい自由とをお互いに調整し合うことが重要になります。

私たちは0歳・1〜2歳・3~5歳の異年齢保育を採用し、違いがあたりまえにある環境をつくっています。社会に出て、チームメンバー全員が同じ年齢ということはないですよね。子どもたちが互いの自由のために対話することを大切にしています。

例えば、あえてクラスにハサミを一挺しか置かないことで、子ども達は自分の番が来るまで待つことや、「これと交換しない?」とか「使う?」と声をかけあうようになっていきます。

物事が有限であるという感受性と、互いの自由のために対話し、調整する能力は、Spiber社内でも重要視しています。自分のエゴをどこかに置いて、チーム目標を共有しながら対話する力はとても重要なスキルです。子どもたちも同じように、自分の気持も相手の気持ちも大切にしながら、関係をつくっていくことができると思います。

スパイバーが運営する、やまのこ保育園 園長の遠藤綾さん

ー 働くために預ける場所として労働環境面をフォローするだけではなく、会社の理念や経営思想が一体になった保育園を作り上げていることに、強い信念を感じました。

遠藤:私たちがやるからには、“Spiberらしい”保育園にしないと意味がありませんからね。Spiberの従業員が思いを持って運営し、「やまのこ保育園」で働く保育士や栄養士もSpiberの一員であるということに誇りを持てるような園にしていきたいです。

そして、いずれは未就学児だけではなく、小学校以降の教育までつなげていけたらと考えています。これからの未来を見据えた教育を、鶴岡の地でいろいろ試しながら実践していきたい。

Spiberの事業とやまのこ保育園。将来的には、双方がセットになって、移住したいと思ってくださる方が増え、地域の貢献につなげられたらーー。

子ども達と関わることは、未来と関わること。保育園を運営することが、Spiberの理念にもある、世界の平和に貢献していける人を育むことにつながっていると思います。

スパイバーが運営する、やまのこ保育園 園長の遠藤綾さん

利他と利己の循環がPublic Relationsの鍵

バイオベンチャーのSpiberが保育園を運営していると聞いて、はじめは「なぜ?」と思いました。おそらく若い社員の方が多いので、労働環境を整えるための開園なのだろうと思っていました。

しかし取材を通して強く感じたことは、Spiberが保育園を運営することは、従業員や地域貢献のためだけではなく、企業理念である「会社は社会のためにある」の究極の体現であること。さらには未来の人材育成や地球環境にまで配慮し、未来を創造していること。単なる福利厚生としての施策とは捉えられませんでした。

「やまのこ保育園」は、確かに採用時のひとつのインセンティブにもなり、社員の福利厚生にもなります。しかしそれ以上に、Spiberが望む人材を育む教育機関にもなりうるーー。そしてそれは、同社が先端技術で実現しようとしている、未来の人と地球の幸せにもつながっていくのです。

Spiberは企業として、取り巻くステークホルダー全てに対してPublic Relationsを実践しながら、これからの未来を見据えているーー良いPublic Relationsとは、利他と利己の循環にあると教えてもらったように思います。(編集部)

(写真提供:すべてSpiber株式会社)