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#27 みんな広報・PRの定義に縛られすぎてない?──ゲスト:大澤直人さん・清水健史さん

INDEX

聴く「PR TALK」は、PRを実践するさまざまなゲストとテーブルを囲み、膝を突き合わせて「もっとPRの話をしよう」という趣旨の番組です。

今回のゲストは株式会社ラフールの大澤直人さん、そして建設テックの事業会社でBtoB広報に携わる清水健史さん。おふたりの共通点は、PR会社で基礎や実務を学び、その後事業会社やBtoBの領域でインハウス広報の経験を積んでこられたこと。そして得た学びやノウハウを積極的にSNSや記事で発信されていることです。

さまざまな視点で広報・PRに携わってきたからこそ感じている課題や疑問をたっぷりお伺いし、座談会形式でカジュアルにお話してきました。そして、27回目にして初の対面収録回となります!

今回も、シーンや気分にあわせて記事と音声でお楽しみくださいませ!

ゲストプロフィール

大澤 直人 さん
株式会社ラフール 経営戦略室 広報PR

広告代理店、PR会社にて、大手菓子メーカーや自動車メーカーなどを中心としたプロモーション支援に従事。その後、広報PR・マーケティング支援のフリーランスを経て、2018年に株式会社ラフールへ入社。現在は経営戦略室にて、組織改善SaaSプロダクト「ラフールサーベイ」採用適性検査「テキカク」のサービス広報PRをはじめ、コーポレートブランディングに従事。note / X(旧 Twitter)

清水健史 さん
BtoB 広報

PR代理店で営業、ディレクター等を担当。その後BtoBの広報に特化し、物流、デジタルマーケ、建設テックの事業会社の広報を歴任。広報戦略、リードジェン、採用広報などに従事。BtoB広報のノウハウを発信することに心血を注ぐ。/ note / X(旧Twitter)

▼音声で聴く方はこちら

聞き手:PR Table 久保圭太
語り手:大澤直人さん・清水健史さん

よくある「広報・PRとはこうあるべき論」に思うこと

PR Table久保圭太(以下、久保):お二人とは普段からよくPRの話をさせてもらってるんですが、いつも気づきが多くてためになる話をしていただけるので、せっかくならそのままコンテンツにしたいなと思って本日は集まっていただきました(笑)

まず大澤さんですが、PR会社を経て現在はラフールというメンタルデータテック®︎企業の広報として活躍されています。PRパーソンと話すとよく大澤さんの名前を聞きますし、地道な発信やメディア露出施策など正統派なPR活動をしっかりやられていますよね。

大澤 直人 さん(以下、大澤):ありがとうございます。最近は、X(旧Twitter)で顔出しして発信をしているのですがフォロワー数が増えたことで、実はそれが足枷になってる部分もあったりします。本日はそのあたりもぜひ相談させてください(笑)

▲フォロワーは1万超え。最初はいけすかない人かと思っていたが、会ったらとてもいいひとだった

久保:清水さんはPR代理店に6年半いらっしゃって、その後BtoBの領域で事業会社の広報を何社か経験されています。まさに「BtoB広報」という領域に特化してnoteやTwitterでよく発信されているので、いつも参考にさせていただいてます。

以前、4時間ぶっ続けのPRセミナーというのもやられていて、知見をアウトプットすることを惜しまない姿勢が本当にすごいなと感心していました。

大澤:ほんとすごいですよね。清水さんのnoteは僕もバイブルにしてます。

清水健史さん(以下、清水):ありがとうございます。最近ちょっと有料にしてしまったんですが、ぜひ読んでいただきたいです(笑)

▼清水さんの記事「BtoBスタートアップ PR・広報基本ガイド -ドメイン別の具体例-

久保:そんなおふたりとも広報・PRに携わって長いと思いますが、これまでの仕事を通じて、PRへの向き合い方や考え方に変化とかって生まれてきましたか?

大澤:そうですね。ここ一年くらいで“ひとり広報”っていうキーワードを聞くようになりましたが、会社の規模が小さいと、広報任されたけど何したらいいかわからないとなってしまいがちですよね。そのときに、プレスリリースやメディアリレーションズの業務を主にしすぎて、結局PRの目的ってなんだったっけ?ということを忘れてはいけないな、と。

たとえば経験談で言うと「〇〇新聞に載りました!」と社内に告知したけど反応がいまいちで、「自己満だったのかな?」と温度差を感じたことがありました。つまり掲載の結果だけを見るのではなく、もっと事業に目を向けたりとか、それこそ各部署にどう貢献できているのか、みたいなところまで考えていけると良いのかなと思いますね。

久保:PRの目的を忘れず、捉え方をもっと拡張しても良いんじゃないかということですよね。清水さんは広報・PRに対して考え方が変わってきた部分などはありますか?

清水:私はPR代理店にいたときにメディア露出を叩き込まれたんですが、もっと色々できることがあるんじゃないかと思って、BtoBのスタートアップに転職したんです。

でも最近思うのは、PRにもたとえばメディア露出が好きな方や、キラキラ広報を嫌がる方、カンヌを獲るためのPRをやりたい方など色々な流派があったりする。それぞれ考え方が違ってもいがみ合うことなく、どれもパブリック・リレーションズでいいんじゃないかって思うようになりましたね。

久保:僕は2018年にPR Tableに入社したとき、“PR3.0”と提唱してカンファレンスをやったりしている時期で、PRの概念を論じたり探究する機会がとても多かったんですよね。そこでPRの思想をインストールしたあとに、マーケやカスタマーサクセスを経験したことで、PRの思想がすべての仕事に活きるし、繋がると思えるようになったんです。結果的にPRの仕事をずっとやっている感覚があった。

今はPRの概念に縛られたり、領域を狭めすぎなくてもいいし、そのときのフェーズによって役割を変えていけばいいんだろうな、と考えられるようになりましたね。

▶️参考記事:PRの探究から実践へ。2021年PRと向き合って気づいた7つのこと

求められていることのギャップにどう向き合うのか

久保:一方で難しいのが、今話したように経営者や会社が求めているPRの定義も結局広いので、求められていることとギャップが生まれてしまう懸念があるということ。その辺りはお二人どう向き合っていますか?

大澤:僕は現職で4年経ってるんですが、「自分はこれだけやっているのになんで評価されないんだろう?」と思った時期に、一度業務委託に切り替えさせてもらったことがありました。でも振り返ると、当時は経営陣とあまり会話ができてなかったんです。なんでこうなってしまったのか、膝を突き合わせて話したら、お互いの正義があったことに気づけた

そこで目線を合わせられたので、今では週次で定例したり、外から拾ってきた情報をフィードバックしながら軌道修正をしていけるようになりました。よく、経営者がわかってくれない、とか、上司がわかってくれないという悩みを聞きますが、結局もう少し会話してみては?という返しになってしまいますよね。

久保:清水さんは、あえて事業会社を選んで泥臭くPRをやろうとされているイメージがあるのですが、その中でPRの役割づくりや、成果を出す苦労はされなかったですか?

清水:苦労はしましたね。5-6年前はBtoBの広報もあまり多くなかったので、そこを極めたいと思って志望したんです。しかし、私も「新聞に取り上げられました」とかは特に評価されないな、と感じたことがありました。

そこでもっと何か貢献できることはないかなと思い、リードジェネレーション(※見込み顧客を獲得するための活動)にトライしてみることにしたんです。認知を獲得するため、と考えれば広報活動の一部と捉えられますからね。また、ステークホルダーをメディアだけでなく、業界や同業者、管掌する行政などに幅を広げることで、より価値を出せるようになったなと感じますね。

久保:先ほどお話したこちらの記事にまさに書いてある内容ですよね。

▲BtoBだと顧客の主な情報入手経路がメディアではないケースも多い(清水さんnoteより画像引用)

清水:BtoBのカスタマーサクセスと話をしていると、口コミで導入を決めたケースなどもよく聞きますし、行政が導入を促していただけることも動機になります。そういった状態を作り出すにはどうしたらいいのか、という風に考えていきましたね。

大澤:ラフールで、中途入社のオンボーディング項目に「広報」の項目を入れてもらったんですが、この話全部しましたもんね(笑)セールスやカスタマーサクセスメンバーに、こういう部分で貢献したいという意思を伝えて、協力体制を作っておかないと情報が回ってこないなと思ったんですよね。そのためにどういう風に伝えたらわかりやすいのかなと思ったときに、清水さんのnoteをそのまま使わせてもらいました。

▲ ラフールの広報オンボーディング資料(一部抜粋)

久保:それぞれの会社の中で成果を出すためには、「広報・PRはこうあるべきだ!」とむやみに伝えるということではなく、もう少しブレイクダウンして対話していったりとか、本当のステークホルダーって誰なんだろうということを考えていくことが大事だということですね。

PRパーソンはどうすればより価値を高めていける?

久保:最近、日経新聞で「広報の転職、年収12%上昇」という記事が出ていたり、Markezineの「マーケターの年収を大公開」という記事では「広報・ブランディング」というカテゴリで危機対応やCSRのスキルが相対的に年収が高いというデータなどが出ていました。

この辺りを踏まえて、お二人はPRパーソンの市場価値をどうすればもっと高めていけると思いますか?

大澤:広報・PRのベースの知識はありつつ、何かの業界に特化したPRパーソンとか、より経営の近くで戦略設計にまで入れるようになると良いのかなと。たとえば新しくプロダクト作りますってなったときに、市場の動向を知ることは必ず必要になる。誰のどんな課題を解決するのか?という観点においてPRパーソンは長けている印象なので、上流からもっと入っていけると価値が高められるんじゃないかなと思いますね。

久保:このスキルを身につけようと思っている、みたいなものってありますか?

大澤:それでいうと「経営」について理解しなければならないよね、とよく言われますが、最近とあるイベントに参加して、その粒度が粗かったことに気づきましたね。

そこで経営者の方が、「広報はもっとPLとか会社の数字を知らないといけない」というお話をされていました。どこで会社として投資して急拡大させるのかを逆算して、いつ何を仕込むのかまで語れないと、経営と同等のレベルでは話せないねって話をされていて、自分の浅さに結構ヘコみましたね。もちろん、それができたら結構なプロフェッショナルだとは思うんですけど。

久保:自分で独立されたり、事業を作られたりするPRパーソンも多いですよね。そこで経営の思考を学ぶと、もしまた事業会社に行っても活躍できるのかもしれないですね。

清水:PRパーソンの価値を高める、という観点でいうと、私はPR代理店にいたときとは逆のことをやっている感じですかね。

たとえば代理店時代にメディア・リレーションズを売り物として営業していたときには、「必ず露出されるのか」「売上に繋がるのか」というお客様からの質問に対して、「中長期でやるものなので」とか「出るか出ないかわからないんですよ」ということを結構言っていました。ダメな営業だったと思うんです。

それを踏まえて、今はメディア露出、ホワイトペーパー、セミナーやカンファレンスなどの施策を実行していくことで、リードやMQL(※確度の高い見込み顧客のこと)にどれくらい繋がるのか、というようなことを意識しています。

つまり、ある程度は数字で追える部分まで責任範囲を広げる、というのが体感として市場価値を高めてくれるのではないかなと思いますね。

▼この辺りの考え方が学べる清水さんの最新作
https://note.com/shimizu_pr/n/n686f1b79c56a

清水:また、最近転職活動をして感じたことは、行政とプロジェクトをやった経験などはメディア露出の実績の数字を言うよりも話を聞いてくれましたし、評価や受けが良いですね。プレスリリースや記者発表みたいな話はどの広報さんも話すので、そこにプラスαみたいなものが求められるのかなと思います。Markezineさんの記事とは体感は少し違って、横の幅か縦の幅を広げるっていう感覚ですね。

久保:実際、PRパーソンの面白い仕事は増えてきている気がしますよね。行政もそうですし、地方の仕事とか。それらを掛け合わせて広げていっていいということですね。

自分なりのPRを言語化することで、新しい価値観に触れるのが大事

久保:いろんなPRパーソンの集まりが最近増えてきて、こういう議論も定期的にされているなと思いますが、そういう場には意識的に行かれたりしていますか?

大澤:実は僕は大人数いるイベントとかが苦手で、少人数で話したいので見定めてしまい、あまり行けてないんですよね。

久保:確かにこういう話は割と少人数じゃないと話せないですよね。でもみんな考えていることだと思いますし、同じような課題意識を持っている方は、ぜひ大澤さん、清水さんに声かけてみてほしいですね。

大澤:最近、新しく人に会うことが少なくなっているなという危機感があって、気持ちいいところにしかいかなくなっている自分がいることに気づきました。

久保:僕も定期的に、お腹が痛くなるくらいの緊張をつくることが大事だと思って意識しているんですが、PRパーソンがそうしたヒリヒリする感覚を得るためには何をしたらいいと思いますか?

大澤:最近、書籍出版の提案をしていて出版社の方と会う機会が多いんですが、経験がなくて慣れないことをやっているので、自分の引き出しは増えていく感覚はありますね。

久保:清水さんはどうですか?

清水:ヒリヒリするかどうかわかりませんが、なるべく自分なりのPRを言語化して出していくということは意識していますね。セミナーをやるとか記事を書いてまとめて人に見てもらうことは大事だなと思います。

久保:言語化できなかったら結局できていないってことだし、言語化してフィードバックもらえばさらに気づきが得られますもんね。

大澤:でも、それはめちゃくちゃ勇気がいることですよね。

久保:広報・PRはこうあるべき論の人たちがいる中で、世に出すのは勇気がいるじゃないですか。特にはじめたばかりの方はなかなかアウトプットするのも大変だと思うけれど、それをやることが、一段成長に繋がるよ、ということですね。

大澤:懐疑的な意見も、そういう観点があるんだなという学びにもなるので、発信することは自分と違う価値観に触れられるということに意味があるのかもしれないですね。頭でっかちにならず、行動量で深さを追求したいなと思いますね。

久保:うまく締めていただきました(笑)では最後に、それぞれPRパーソンにお伝えしておきたいメッセージなどはありますか?

大澤:PRの知識やお作法はあるに越したことはないけれど、もっと自由でいいんだと思います。会社から求められていることに、PRとしてどう貢献できるかを意識して動けると、市場価値も一緒に上げていけると思うので、ぜひ視野を広げていってもらえればなと思います。

清水:PRパーソンの動き方として、抽象と具体の両方が大事だなと思っています。経営に資するために、パーパスなどの上位概念からアプローチすることも大事だと思いますが、大きく掲げたことが形としてどういうアクションになるのかというのがわかっていないと、掲げてはみたものの達成しなかったねとなってしまうかもしれない。

私は振り返るとメディア露出を6年半やってきたことは役に立っているので、これだけは広報の業務の中でもできる、という得意領域をつくれると、上位概念にも取り組みやすいのかなと。これだけは自信があるというものをぜひ身につけていきましょう!

久保:お二人に興味を持った方は、ぜひお気軽にDMしてみてください(笑)それではお二人とも、本日はありがとうございました!

▶️大澤さんのX(旧Twitter)はこちら
▶️清水さんのX(旧Twitter)はこちら

▲収録終わりにご飯を食べながら裏PRトークしました(左:大澤さん、右:清水さん)

パーソナリティーのご紹介

久保 圭太
株式会社PR Table PR室 室長 /Evangelist

北海道札幌出身。二児の父。 PRSJ認定PRプランナー。 ITベンチャー企業にて広告企画営業、人事戦略、PRの責任者を経て、2018年よりPR Tableに参画。 カンファレンス企画や自社オウンドメディア運営を統括し、Public Relationsの探究活動を行う。その後、PRコンサルタントとして顧客向けのオウンドコンテンツ企画・活用支援に従事。2020年よりCS組織の立ち上げを経て現職。

▶︎タレントページ:https://prtable.com/ourtalent/kkeita