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採用マーケティングが優秀な人材との出会いを加速させるーーイベントレポート#19

INDEX

近年、優秀な人材の採用が非常に困難な時代になってきている中で、主体的な情報発信で求職者と「出会い」「選ばれる」ための自社採用力を高めることが急務となってきています。

そうした中、採用候補者と長期的なリレーションを図り、適切な情報を届けるためには、マーケティング思考を取り入れた採用活動をより強化し、加速させる必要があるのではないでしょうか。

今回、採用マーケティングを最前線でリードしている4名のゲストを招き、実践する上での考え方や、各社の参考事例について語っていただきました。採用マーケティングの本質、そして採用活動の未来とはーー。


▼ゲスト
高橋 信太郎さん(Indeed Japan株式会社 代表取締役/ゼネラルマネジャー)
千葉 修司さん(アドビ システムズ 株式会社 エンプロイーエクスペリエンス シニアマネージャー)
渡邊 大介さん(株式会社ヒューマンキャピタルテクノロジー 取締役)
山田 裕一朗さん(Findy株式会社 CEO)

▼モデレーター
菅原 弘暁(株式会社PR Table 取締役)


「採用マーケティング」の本質と課題とは

▲今回、会場としてウィングアーク1stさんのスペースをお借りしました。

 

菅原 弘暁(以下、菅原):最近、採用ブランディングや採用広報など「採用〇〇」といった言葉を使ったあらゆる手法が生まれていますが、「採用マーケティング」という言葉に関しては、皆さんどうお考えでしょうか。

高橋 信太郎(以下、高橋)さん:Indeed Japanでは、去年の5月頃からオウンドメディアリクルーティングというプロジェクトを進めています。オウンドメディアを拡充させ、「欲しい人材」はどんな人なのか、自社はどんな会社なのか、きちんと求職者に情報を提供していくことが、良い採用に必須であると、提唱していくプロジェクトです。

8割以上の求職者が、就職・転職の際に気になる企業のオウンドメディアを訪問しています。企業ホームぺージへの訪問は84%、採用ページへの訪問は82%です。これはかなり重要な接点であることがお分かりいただけるかと思います。

それにも関わらず、必要な情報がきちんと掲載されていなかったり、自社の魅力が伝えきれていないと、応募への可能性が低くなってしまいます。基本ですが、企業の採用ページは、新卒・バイト・中途に関わらず、しっかりと作らなきゃいけないですね。

今、世の中の仕事探しは、“ フリーワードの時代 ”

これまでは「業界」や「職種」など、カテゴリから辿って仕事を探す人が多かった。しかし今は、自分が持っている能力や、やってみたい仕事を、自由に自分なりのキーワードを入力して検索しています。さらに、仕事や職場に求められる要素も多様化しています。それに応える内容が書かれていないと、うまくキーワードでマッチングしないことになります。

要するに、webはこれまでの紙媒体時代における求人の流れとまったく違うんですよ。ここを理解しないと、採用マーケティングの入り口には立てないかなと思います。

高橋 信太郎さん(Indeed Japan株式会社 代表取締役/ゼネラルマネジャー)——1989年リクルートに入社。求人広告事業の営業として、年間MVPを多数受賞。新規事業開発室に配属後は、ゲーム情報誌を創刊。その後、リクルートの子会社であるメディアファクトリー(現 株式会社KADOKAWA)に出向し、ゲームの新流通開発などエンターテイメント事業で活躍。2001年まぐクリック(現GMOアドパートナーズ)に転じ、ネット広告をはじめとしたインターネット事業を手掛ける。06年代表取締役、13年GMOインターネットグループ常務取締役となる。16年4月よりIndeed Japan株式会社 代表取締役/営業本部長に就任。17年10月より現職。

 

菅原:見落としがちですが、大事なことですね。検索してホームページを見に行ったのに、情報がないなんて「出会い方」として最悪ですから。千葉さんは、どう思われますか。

千葉 修司(以下、千葉)さん「採用マーケティング」というのは“ ただの言葉、あくまで概念でしかない ”と思っていて。

この間、メルカリの石黒(石黒卓弥)さんと採用マーケティングを始めたきっかけについて話をしました。採用候補者の方が知っているメルカリと、社員が知っているメルカリは違う。これをどう埋めようか考えた結果、社内報を外に出し始めたところから、mercanはスタートしたそうなんです。

マルケトもそうなんですよ。「良い方と出会いたい、良い仲間作りをしたい」と思って、必死に動いているだけ。その一環で、人の手だけでは相手のタイミングに合わせて適切な情報を一人一人に届けるのが難しいので、テクノロジーの力を借りています。つまり、あくまで手段という位置づけであって、「採用マーケティングをやろう」と思って始めた施策はないんです。

一方で、マーケティングとは、態度変容、つまり相手の気持ちを変えていくことの連続。だからこそ、こうしたエッセンスを入れることで、よりよい採用に繋がるという考えです。

 

千葉 修司さん(アドビ システムズ株式会社 エンプロイーエクスペリエンス シニアマネージャー)——2003年、早稲田大学政治経済学部卒。大日本印刷で人事総務を担当後、マーサージャパン、アクセンチュアにて、組織・人材マネジメント分野、特に営業支援のコンサルティングに従事。その後、セールスフォース・ドットコム、そしてマルケトにて、営業部門の生産性向上をミッションとして、組織人材開発施策企画・運営(Sales Enablement)を担当。現在はアドビにてHRBPや採用マーケティングなどを担当。休日は3人の娘と過ごし、10年目に入ったお米屋ボランティアにも汗をかく。

 

菅原:山田さんは、3年前から「採用マーケティング」を提唱され続けていますよね。

山田 裕一朗(以下、山田)さんそうですね。2016年10月に米国で開催された『HR Tech Conference』に参加した際、「採用マーケティングの時代がくる」と思ったのがきっかけです。そこから、『Findy Score』という求人票採点サービスを作って起業しました。

今はピボット(方向転換)して、エンジニアの転職や、フリーランスエンジニアの企業とのマッチングに「採用マーケティング」 の要素を持ち込んで、サービスを作っています。例えばエンジニアのスキルや求人の評価を行うアルゴリズムを開発し、マッチングの精度向上に取り組んでいます。

人事にとってなかなか理解し辛い分野であるエンジニアの技術力を偏差値化することで、企業と求職者の相互理解が向上したり、スキル偏差値と年収の相関関係も見えてくるようになりました。今後も採用マーケティングとして大事な数値化や見える化を意識して、機械学習などのテクノロジーを取り入れながらサービスの開発を進めていきます。

山田 裕一朗さん(Findy株式会社 CEO)——同志社大学卒業後、三菱重工業生産技術、ボストン コンサルティング グループを経て、創業期のレアジョブ入社。レアジョブでは執行役員として人事、マーケティング、ブラジル事業等を担当。その後、Findyを創業し、「ハイスキルなエンジニアのプレミアム転職サービスFindy 」と「AI求人票採点サービスFindy Score」をリリース。求人票の解析・アルゴリズムづくりが趣味。

 

菅原:山田さんは、レアジョブ時代に、マーケティングと採用の両方を経験されていますよね。採用担当者が、マーケティングを覚えるのと、マーケティング担当者が人事・採用を覚えるのと、どちらが早いと思いますか。

山田さん:ウェブマーケティングと採用を担当していたのは、レアジョブで執行役員をしていた時代ですね。採用マーケティングに関してだけで言うと、マーケティングから採用のほうが入りやすいと思います。

というのも、レアジョブ時代に『Indeed』を導入していたのですが、Google Adwardsを使っていたマーケターからすると比較的に容易に使い始めることができます。

ただ、個人でTwitterやブログを書いて発信して、バズらせることのできる人なら、人事出身かマーケティング出身か関係なく向いていると思います。個人で発信して、反応をみて試行錯誤してみるのが良いですね。

渡邊 大介(以下、渡邊)さん:今は採用マーケティングやコンテンツマーケティングなど、あらゆる概念がバズワードになりすぎてしまって、“体裁だけ整えて、中身が無いもの”が増えてきているなと正直感じますね。

別に、もともとある(悪い)ものを化粧して、良く見せることではないんですよ。どこかの記事を真似したかのような、インタビュー記事はたくさんありますが、それはただのコンテンツの貼り付けであり、採用マーケティングでは無いものが多い。

マーケティングの基本に「4P」という考え方がありますが、まず一番大事なのはプロダクトです。コーポレートブランディングにおいては、プロダクト=会社であり、プロダクト=従業員です。この一番重要な要素に対する働きかけが無い状態で、プロモーションをいくら打っても、ひたすら失敗してしまう。採用マーケティングは、突き詰めていくと、“良い会社作り”に行きつくと僕は思いますね。

 

渡邊 大介さん(株式会社ヒューマンキャピタルテクノロジー 取締役)——2006年サイバーエージェントに入社。広告部門で大手ナショナルクライアントの広告を担当し、MVPを二期連続で獲得。その後、新規事業→人事採用・育成責任者を経て現職。 マーケティング思考を取り入れた数多くの新しい人事施策を同社で実践。昨年より行われたリクルートとの新規事業創出プログラム「FUSION」でグランプリを獲得し、HCT社の起ち上げに参画。

もう一点、採用担当者の評価は難しいですよね。事業部から「これだけの人数が欲しい」と言われて、その「数」という要件を満たせば評価されるのか。あるいは社員の才能を開花させれば評価されるのか。効果測定が難しいものが多い。

また、結果までの経過時間の長さ、の問題もあります。採用した人材が果たして本当にその会社にとって優秀な人材なのか、それは3年後、あるいは5年後になってみないとわからないこともあります。そうなると、採用担当者のモチベーション維持は簡単ではない。

僕は採用担当者が、『Marketo』や『Indeed』などをうまく使って、採用おける各種ステップを数値化できるようにするのが良いんじゃないかと思っています。その各種中間指標で採用担当者をきちんと評価し、一方で経営的なKGIとそれらの中間指標を照らし合わせていく努力をする必要がとても大切です。

採用マーケティングが上手な会社「日経新聞・セプテーニ・村田製作所・キヤノン」

菅原:さきほど「4P」の話がありましたが、確かにプロダクトはまず大事だと思います。 欠陥の商品を、プロモーションで良くみせようとするのは、詐欺行為じゃないですか。まずは、良い会社を作るということですね。お化粧をせずに、ありのままで良い会社を。

それでは次に、「あまり知られてないけれど、採用マーケティングが上手な会社」を聞いてみたいなと思います。スライドでは、皆さんから事前に頂いた、会社さんのロゴを並べています。メルカリさん、サイバーエージェントさんはよく聞きますね。日経新聞さんは、どのような部分が上手なのでしょうか。

 

菅原 弘暁(株式会社PR Table 取締役)——2011〜2015年 大手総合PR会社(株)オズマピーアール、内1年間は博報堂 PR戦略局に在籍。その後、国内最大級共創プラットフォームを運営する会社でPR・ブランディングに従事し、2015年9月より(株)PR Tableに参画。2016年12月より現職。250社以上の広報コンサルティング、500本以上のコンテンツ監修など、PR Table初期の事業立ち上げを経て、2017年12月から「PR Table Community」をリリース。その後、2018年11月には国内初となるPRの大規模カンファレンス「PR3.0 Conference」をプロデュースする。

山田さん:エンジニアの採用ですね。日経新聞さんには、たまたまなのですが、高校の同級生が10年間ほど勤めているんです。彼から話を聞く限り、エンジニアが働きやすい組織作りをした上で、発信にも力を入れています。

エンジニア界隈でも、フロントエンドにおいて高い技術を持っていると、認知されているんですよ。 だからこそ、ちゃんと優秀なエンジニアを採用できて、内製化を進められている。また、比較的スーツで働いていそうなイメージですが、実際にオフィスを訪問してみると、Tシャツで出てきたりするんです。ちょっとびっくりしますが、意外とライトな感じで、今っぽくなっているんですよね。

エンジニア採用のお手伝いもしていますが、ユーザーからの人気が非常に高い。彼らが培ってきたブランドも含めて、評価されています。

菅原:こういう歴史がある企業の話、いいですね。次に、セプテーニさん、気になります。

渡邊さん:僕がサイバーエージェントに入社したのが2006年くらいなんですが、そのときネット広告業界では、サイバーエージェント・ オプト・セプテーニの3社が内定者確保を競い合っていたんです。

ですが、サイバーがインターネット総合商社っぽいことをやり始めてからは、正直なところサイバーの勝率が高まっていたと思います。そのような中、僕の感覚ではオプトさんは、真っ正面からサイバーと戦う戦略をしてきたんですが、セプテーニさんは違ったんです。

以前、セプテーニの担当役員の方と話をしたところ「戦略の本質はいかに戦わないか。サイバーと戦って疲弊するよりも、サイバーに行かない(行くつもりがない)人の中からセプテーニにマッチする人材を選抜する」と言っていて。その考え方自体に負けたなと思いましたね。

菅原:軍師がいますね(笑)。

渡邊さん:賢いですよね。マーケティングとして考えるのであれば、既存顧客の情報からペルソナを導き出し、新規マーケットに働きかけることは、当然の考え方です。しかしながら、それがあまり出来ておらず、思い込みで「こんな人間がうちの会社にはマッチする!」と決めつけて動いている方が多いのが採用の現場だと思うんです。

そんな中、セプテーニさんは、新卒で入って活躍している人材を科学して、それに合致する人を正確に狙いにいっている。また、マネージャーの育成モデルを、自社で開発し、外向けにリリースまでしています。アドテクの会社なのに、HRテックみたいなことまで出し始めるくらい、研究が進んでいるんです。

だからこそ、社内のジョブディスクリプションも明確に書けるんだと思います。また、サイバーみたいに、全方位戦略で、商社や電通さん、リクルートさんとも戦っていたら、やっぱり疲弊してしまうので、やはり非常に賢い戦い方なんじゃないかと。

菅原:村田製作所については、いかがでしょうか。

千葉さん:村田製作所さんは2015年あたりから、新卒採用活動にデジタルマーケティングを取り入れてらっしゃるんですよ。WEBサイトのリニューアル、SEO対策、YouTube動画配信、ターゲットに対して表示される広告・ウェブ・メールの出し分けをするなど、施策を一気に始められたんです。その結果半年間で、大きな成果が見えたそうです。

さらに今は、採用活動において、自社製品のNAONAを使い始めています。面接官と採用候補者の間に、Amazonエコーみたいなツールを置くんです。面接が終わると、音声データを解析。「どれだけ動機づけのコミュニケーションと、見極めのコミュニケーションができたか」「感情がどう高まったか」などを見て、その結果をもとに改善を進めています。先進的な取り組みをされていて、感銘を受けた事例ですね。

渡邊さん:これだけ歴史のある大企業が本気を出してくるってすごいですね。

千葉さん:しかも、人事部だけではなく、マーケティング部門の方が動いているそうです。「マーケティング部門の人材をアサインするからプロジェクトをやろう」って始めたそうです。すごいですよね。

菅原さん:最後にキヤノンマーケティングジャパンの事例は、いかがでしょうか。

渡邊さん:今はサイトが閉じられていて、検索しても出てこないんですが、2010年1月にキヤノンマーケティングジャパンが出されたプレスリリースがすごいんです。

2008年のリーマンショックの後って、学生さんへの「内定切り」が相次いで、話題になりました。そんな中、キヤノンマーケティングジャパンは2010年1月から3月までの業績を見た上で、今年の新卒採用を行うか否かを判断するという決断を、PDFにしてリリースしたんですよ。(リリースは2010年1月にされたもの。当時は多くの企業がこのタイミングで採用サイトをオープンし、情報合戦をしていた)

本来これは、「業績の見通しがつかない」というリアルを世の中に晒す行為なので、不名誉な事かもしれない。ですが、彼らはありのままに公表しているんです。

“このまま見切り発車で採用活動を続けることは、学生のみなさんに迷惑をかけてしまうかもしれない”、“新学期が始まったばかりの4月から面接を行うことで、学生のみなさんから学ぶ機会を奪っているのではないかって。

広告代理部門に勤めていた当時、これを見て「やられたな」と思いましたね。最初のタイトル『訳あって、今年の採用活動に出遅れます。』という言葉も文面も、こなれているんです。辞めますではなく、出遅れます。広告系人材が介入している匂いがしますよね。

もし仮に、この先の東京オリンピック前後くらいにリーマンショック級の不況が起きた場合、そうした事態をも逆手にとって、どう反射的に対応できるのか。早ければ早いほど良いので、それを成し得る採用マーケティングチームを作れている企業は強いんじゃないかなと思います。

オウンドメディア黄金期のその先へ。「採用マーケティング」の未来予想

菅原:Twitterの質問にもお答え頂ければと思うのですが。「採用マーケティングを考えると、会社作りが重要。登壇者の方々は、良い会社作りの為にどんなことから着手したのでしょうか」と。

千葉さん:まず出来ると思うのは、入社前と入社後の従業員のリアルな体験を知ることじゃないでしょうか。例えば、採用の面接もそうですが、入社が決まってからの人事部の対応や書類のやり取り、入社後のオリエンテーション、3ヶ月間の新人研修、そして半年後、1年後に社員はそれら経験をどう捉えているのか。それを聞きに行くんです。

その中で、特に課題感があるところから着手していく。巻き込まないといけない人が多いですし、耳の痛いフィードバックもある。ドキドキするかもしれないですが、良い会社作りをする上で、地に足が付いていて、やりやすい方法だと思います。

高橋さん:僕も採用の最終面接だけでなく、入社後2ヶ月くらい経ったら全員と振り返り面談をやりますね。そして、入社前後のギャップを把握し、事業部に掛け合って、改善していくんです。僕の立場だと、話が通じやすいので。それを毎回やっていくと、PDCAが回って、確かに改善している実感がありますよ。

山田さん:会社を良くする方法や採用の課題って、他の会社をみたら、その答えがあると思います。

ただ、大体採用や組織の状態がうまくいっていない会社は「うちの会社の問題は特殊です」という話から始めるんです。ですが、聞く限り、大体特殊じゃないんですよ。ちょっと規模の大きい会社に行けば、実は答えがある。

リクルートさん然り、いつの時代もトップランナーは、採用のプロセスや入社後活躍するための人事制度とか、必ず発明していて。僕はレアジョブ時代、サイバーエージェントさんが株主でしたが、課題について彼らに相談すると、すごく参考になりました。身近なところに答えはあるので、早く聞いて見つけちゃう。それはいい会社にする上で、一番簡単な方法だったりします。

菅原:次が最後の質問ですね。「2025年以降の採用マーケティングはどのように変化していると思いますか」。

今は、採用マーケティングをちゃんとやり切っている企業が、労働市場で勝ち抜いている傾向があると思います。それは、やっていない会社が多いから。ですが、例えばオウンドメディアをみんなが始めたなら、採用マーケティングは今のままなのか、もしくは別のものになっていくのか。

高橋さん:オウンドメディアでの採用が当たり前になっていると思います。企業はそれぞれのきちんとした情報を、自社の責任において、シェアしているはず。同時に、求職者の方も、自分のポートフォリオをインターネット上に置き、発信する時代になっているでしょう。だからこそ、マッチングもかなり素早くできるようになっているんじゃないかな、と。

菅原:一瞬でマッチング出来てしまうからこそ、転職のハードルは低くなりそうです。そうなると、引き留める力もそうですし、引き寄せる力がより必要になっていきますね。

千葉さん:2つの融合があるかなと思っていまして、1つはデータの融合、もう1つは、マーケティング対象者の融合ですね。データは、おそらく入社後のデータが5年程あれば十分貯まると思うんです。評価のデータ、パフォーマンスのデータ、トレーニングに向けたデータ、勤怠のデータ、他にもありそうですが。

それらがデータベース化されて、どういう人を採用すべきか明確になり、マッチングのスピードがとんでもなく早まっていく。その進化は止められないだろうと思います。

2つ目は、マーケティングの対象者が、採用候補者、お客様、投資家、パートナー企業など、融合していくだろうと考えています。我々も好きな企業の株やサービスも買いますよね。つまり、投資家、パートナー、お客様、採用候補者まで、いかようにもスイッチングする時代になると思いますよ。

先日、中途の方向けの座談会を開催したのですか、その中に、いつの間にか大学生新卒採用の方がいらっしゃって沢山紛れていたんです。面白いなと思いまして。新卒採用、中途採用、経営採用云々というものも地続きになっていく変化を感じましたね。

これらの変化の背景は、個人の働き方・キャリアの考え方、情報収集の方法が大きく変わっているからだと思うんですが。

渡邊さん:そういう時代だからこそ、オープンであることは重要になると思いますね。例えばサイバーエージェントは、ほとんどすべての社員がFacebookやTwitterのアカウントを持っていて、堂々と「勤め先はサイバーエージェントです」と書いている。

マイナスに働くこともありますが、基本的にはプラスに働くことが多いんですよ。みんな「楽しく働いている」と、勝手に投稿してくれますから。その結果、楽しく働きたい人は入社するみたいな、会社のブランドに繋がっています。

SNSを通して、他の企業から引き抜かれてしまうことやコンプライアンス上のリスクを恐れて、ソーシャルメディア禁止の会社はあると思うんですが。今の時代の流れの中で、囲い込むほど、優秀な人はどんどん逃げていってしまいますよね。

千葉さん:アドビでも、SNS投稿をする際には「#Adobelife」というタグを入れるなど、工夫していますね。

菅原: そろそろ質疑応答の時間に移りたいと思うのですが、質問したい方はいらっしゃいますか。

会場からの質問:僕は新卒で入った会社がベンチャー企業で、ホームページはしっかり作り込んでいたのですが、基本的に良い事しか書いていなかったんです。だからこそ、入社後のギャップを感じてしまって……。僕のような経験をしている方は、ホームページを信用しなくなって、口コミサイトを見にいきます。すると、口コミまで強化する必要性が出てくると思うのですが、皆さんはどうお考えですか。

高橋さん:求職者の方が、会社を決める際に第三者の意見を参考にするのは、自然なことだと思っていて。僕らだって、レストランを探す時は、食べログの評価を気にしますから。

かといって、評価の操作をしている噂がたてば、誰もそのレストランには行かなくなる。だから「操作はするべきではないですし、為すがままであるべきだ」というのが僕の見解です。

千葉さん:口コミサイトに書いている方の多くは、会社に合わなかった方も多いと思うんです。私は昔、外資系コンサルティングファームで勤めていましたが、口コミで「無茶苦茶キツくて辞めました」としばしば書かれていました。ですが、1つのモデルとして良いなと思ったんですよ。

極端ではありますが、「すごいキツくて、鍛えられた。キャリアとしては役にたった」という意見もやっぱりあるわけです。読んだ側としては、良いところと悪いところが分かった上で、それでも飛び込みたければ入社を選べる。なので、変に操作はせず、口コミを通して、合う・合わないを伝えていくのも1つの手法かと思います。

渡邊さん:操作はするべきじゃないというのが前提なのですが、口コミの良い会社は、卒業生との関係が良いわけで、「卒業生のマネジメント」が上手なんだと思います。 リクルートさんであれば、元リクルート同士で仕事もしますし、元リクルートとしてのプライドみたいなものを持っている。そこからまた採用効果が生まれたり。めぐりめぐって効果があるものだと思うので、卒業生との接し方は重要ですよね。

“採用マーケティング”は「出会い」「選ばれる」ためのひとつの手段に過ぎない

今回、採用マーケティングを最前線でリードしているゲストの方々にお話を伺ってわかったこと。

それは、時代が変化していく中で、採用にマーケティング思考を取り入れることが必然の流れであったということ。そしてこれからもその手法は変化していくのだ、ということです。

ただし、手段に捉われてばかりで本質的に”良い会社づくり”をしていかなければ、いくら優秀な人材に出会ったとしても逆に信用を失ってしまう時代です。

“採用マーケティング”はあくまでもその手段のひとつに過ぎないのかもしれません。

ご来場頂いた人事や経営者の方々と共に、優秀な人材と「出会い」「選ばれる」ための方法を、今後も探求していけたら幸いです。(編集部)

▲イベント終了後に登壇者の皆さまで集合写真。ありがとうございました!