肩書きにとらわれず「個」の欲求と向き合うーー学生とフラットな関係性をつくる、ネットプロテクションズの関係構築
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昨今、超売り手市場となった新卒採用活動ーー。
面接中心の選考により、無意識にあらわれてしまう上下関係。そして、相互理解の不十分によって起こるミスマッチ……。多くの企業が悩むこれらの課題は、日本全体で考えると非常に大きな社会的損失とも考えられます。
課題が尽きない「超売り手市場」のなかで、学生から愛される魅力的な会社になるためには、どうすればいいのでしょうか。
PR Table Communityでは、そんな課題を打ち破る鍵が「Public Relations」の視点にあると考え、新卒採用における「学生との良好な関係構築」のあり方を探究していきます。
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今回は、日本初の決済ソリューション「NP後払い」などを提供し、「つぎのアタリマエをつくる」をミッションに掲げる株式会社ネットプロテクションズ(以下NP)のインターンシップに着目しました。
合言葉は「それ、本当にやりたいの?」
「自分が本気でやりたいこと」を5日間で徹底的に深掘るサマーインターンを通し、メンター(学生のサポートをする社員)と学生は家族のような関係性になる。互いの人生を泣くまで深掘ったり、インターンが終わった後は、ある種の友達関係に変わっていくこともあるといいます。
そんなNPのインターンシップは、2018年には就活生向けクチコミサイト「就活会議」内の「学生が本当に行ってよかったINTERNSHIP 2018 メンターのコミット部門」にて1位を獲得するなど、学生からの評価も得ています。
学生とのコミュニケーションにおいて、企業は往々にして「無意識な上から目線」が生まれがち。年齢や立場、経験値などが全く違う個人が、それぞれの垣根を乗り越えてフラットな関係性を築くのは、難しいことなのではないでしょうか?
そんな疑問をもとに、インターンシップのメンターをつとめた若手社員の方から、学生とフラットな関係性を築くための心持ちをうかがいました。
辻 真理子さん Mariko Tsuji(写真左)
株式会社ネットプロテクションズ カスタマーサービスグループ兼オフィス改善委員会
2017年、新卒でネットプロテクションズに入社。主幹事業「NP後払い」のオペレーション構築を担う傍ら、リソースの20%を使って興味のある仕事ができる「ワーキンググループ制度」を利用し、2018年新卒の新卒研修の企画運営に携わる。現在では主業務の他、オフィスの総務領域や分室の設計等も担当している。
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三上 高広さん Takahiro Mikami(写真右)
株式会社ネットプロテクションズ BtoBグループセールスユニット兼THINK ABOUT ワーキンググループ
ネットプロテクションズのサマーインターンに参加後、マーケティンググループでのインターンを経て、2017年に入社。現在はBtoB後払い決済サービスNP掛け払いのセールスとして事業企画・戦略立案を行いながら、メディア事業(THINK ABOUT)のグロースや新卒採用活動、新人育成などを並行して行っている。
「それ、本当にやりたいの?」ーー個の欲求を掘り下げる5日間
三上さん(以下、敬称略):5日間で新規事業の立案をしてください、という内容のインターンシップを実施しています。弊社の理念である「つぎのアタリマエをつくる」、つまり今後世の中のスタンダードとなるようなビジネスプランを、おおよそ学生5名・メンター2名のチーム一丸となって考えていきます。
メンターはその期間、インターン業務最優先。日々の部署の仕事を他メンバーに任せてもOKという許可を得ています。
ー 最優先業務!メンターもチームの一員として、丸々ワークに参加するのですね。インターンシップって基本的に学生が頑張るもので、社員は見ている、たまにアドバイスする、というイメージがありました。
辻さん(以下、敬称略):私が担当していたチームの学生もそう思っていたようでした。なので、私達がグイグイとチームに踏み込んでいくとびっくりされて、「え?」みたいな(笑)。
三上:始めはだいたいそうですね。ただ関係性が深まるにつれて、むしろメンターぶっていると、「横にいて見ているだけなら、いなくて良いです」なんて学生から言われたりもします。それくらい「メンター」「学生」という境目がなくなっていきますね。
メンターも学生と同様、実施される5日間は24時間インターンのことを考えているくらい、本気で臨んでいます。家には帰っていますし、ちゃんと寝ていますが(笑)
辻:結局、理解するためにお互いを深掘ることに時間を使い続けるので、事業が煮詰まらなくて4日目にめちゃくちゃ頑張ってつくる、みたいな。
ー 事業を考えるのではなく、お互いを深掘ることに時間を使う?
三上:はい。「それ、本当にやりたいの?」「本気で自分がやりたいなと思うものをやれている?」と、互いの根っこを徹底的に深掘ります。これまでの人生とか、なぜそういう考えに至っているのかを話しているうちに泣いてしまうなんてこともありますね。
辻:自分の人生に向き合うのが初めてという学生さんもたくさんいるので、泣いてしまう気持ちもわかります。メンターはそのサポートと、仮面を被っている初対面の5人を、泣くくらい素が出せるチームにしていくためのお手伝いをします。
学生が5日間で自分の想いを言葉にして、5人分の本気をひとつにする。その過程を見届けるので、難しいことではありますが……。
もちろん、最後までうまく形にならないこともあります。でも、根っこの欲求から逃げないことで「自分が本当にやりたい事、幸せってなんだろう」という問いに向き合えるインターンシップになっているのではないでしょうか。
▲インターンシップの様子
ー なぜそこまで「本音」を掘ることにこだわるのですか。
辻:NPは事業においても組織風土においても「つぎのアタリマエをつくる」ことを追求しているのですが、それは、全員が本気でやりたいことでないと、「つぎのアタリマエとなる事業」なんてとても続かないと考えているからです。一人ひとりの気持ちが乗ることを前提にして事業をつくっていこうという考えが、インターンシップにも組み込まれています。
三上:弊社の7つのVisionの中に「志を尊重する」があるように、個の想いをかなり大事にしています。ひとりの人間としての欲求というか、本気になれるような想いが仕事と重なることではじめて人は輝けるし、それが結果的に会社のパワーになっていくと考えているので、普段の業務でもよく意思を問われます。だからこそ、同じようにインターンシップでも学生に対して問いかけているというのはありますね。
ー 学生とメンターの関係性はとてもフラットだとお聞きしましたが、メンターが学生のことを引き出しに行くだけではなく、学生もまたメンターのことを引き出しに来るのでしょうか?
三上:引き出しに来ますね。
たとえば僕がチームから一歩引いたところからアドバイスするなど、メンターっぽい動きをしてしまっていたとき。学生の方から「それって本当はどう思ってます?」と、グイグイ引き出しにくるので、ドキッとしますね。
「今ちゃんと楽しめてますか?」なんて言われると、確かにちょっとカッコつけちゃってたわ、と反省したり(笑)。
― 面白いですね。メンターのほうから「それ本当に思ってる?」とフィードバックを送るだけではなく、学生からもそのようにフィードバックされるというのは。
辻:むしろ私たちメンターもフィードバックは欲しいので、ありがたいですね。
みんなが本当にやりたいことを引き出すために、まずはフラットな関係性を目指したい。そんなフラットな状態をつくるためには、言いにくいことも含めどんどん言ってほしいんです。
▲インターンシップの様子
「メンター」と「学生」ではなく、「人」と「人」として付き合いたい
ー 言いにくいことといえば、新規事業をつくる上で、ビジネスの細かい部分が分からない学生も多いんじゃないかなと。経験に即したアドバイスをするとき、どうしても「先輩風」が吹いてしまいがちだと思うんです。先輩風を吹かさずにアドバイスを伝えるために、お二人はどのようなことを気をつけていますか?
辻:「学生」ではなく「ひとりの人間」として見ること、でしょうか。
社会人と学生の違いって、情報量と経験の差でしかないと思っていて。考え方や人間性は、むしろ学生さんのほうが優れていることも全然あります。
「人」対「人」としては対等だということを前提に考えると、マウンティングみたいなことはできません。
三上:ワークの中で知識や観点が足りなければ「こういうビジネスモデルがあるよ」と、知っている僕らが武器を渡す。それだけです。
結局は「人」と「人」同士ですし、みんな自分の人生に真剣に向き合っている。そう考えると、「学生」、「社会人」って、ただの肩書きでしかないんですよね。
― 肩書きって無意識に“溝”みたいなものを生んでしまうと考えていたのですが、正確には「人」に向き合っていないから、無意識に溝が生まれるのかなと思いました。
三上:おっしゃるとおりだと思います。僕たちも最初は「メンター」と「メンティー」という肩書きで関係性が始まります。ですが、新規事業をつくるために「人」の本音を掘り始めたころに、言葉で作られた肩書きの壁が取り払われる感覚はありますね。
― きっとおふたりはご自身の役割のことを「メンター」という言葉で認識していないですよね?
三上:あまりしていないです。メンターとメンティーだから立場を対等にしなきゃ、という発想がそもそもないというか…。
メンターとメンティーという言葉が頭にあるから、上下が生まれるだけなのではないでしょうか?言葉が思考を定義するという言葉の通り、使う言葉によって心持ちって変わってくると思うんです。
三上:「学生」、「社会人」という言葉を使って親子のような関係を思い浮かべてしまうと、行動も無意識につられていってしまうと思っていて。
― 私たちは往々にして、役職や会社名でマウンティングしてしまう時があります。そういう時こそ「人」対「人」、一個人としての関係性に立ち返ってみようという視点は面白いですね。
三上:そうでないと、その人の本来のパワーや”馬鹿力”みたいなものが引き出せないんですよね。「親/子」とか「上司/部下」ということを意識すると、人は無意識に双方にその役割をとってしまうので、本来の自然な力を出すことができません。
メンターと学生、お互いを最大限に引き出し合いたい。だからこそ、「メンター」「学生」ではなく「人」と「人」として付き合いたいんです。
逆に言うと「人」を見ていないから、メンター、学生という肩書きをわざとつくって甘えあうのではないでしょうか。
「フラットではない」社会人は、「人」として見ていない
ー ちなみに今回「企業と学生のフラットな関係構築」を探究するなかで、学生に近い方の意見も聞いてみたいと思っていたんです。お二人は入社2年目とのことでしたが、学生時代に「先輩風」を吹かせてくる社会人に会ったことはありましたか?
辻・三上:ありました(笑)
ー 差し支えなければ、お二人が就職活動をしていた当時「なんだ、この人」と感じてしまった、フラットでない社会人の話をお聞きしたいです。
三上:自分たちのことしか考えていない社会人はちょっと……。
僕自身が内定辞退を申し出たときに「三上くん、覇気なくなったよね」と言われたことがありました。ずっと進路相談をしてもらっていた内定先の方だったので、辞退自体はすごく申し訳なかったんです。
でも、その発言から1対1の人間ではなくて、組織の一員かどうかでしか見ていない気持ちが透けて見えて……。なんだかすごく残念な気持ちになりましたね。
辞退したことで僕個人の気持ちは整ったし、むしろ覇気に満ちてるわ!みたいな(笑)。
― 「人」ではなく「学生」として見ている大人は、採用活動という企業活動が終わった瞬間に縁が切れてしまうパターンが多い気がします。
三上:まさにその通りでした。逆に、目の前の学生がどうすれば幸せになれるかを考え、自社、他社問わずおすすめの環境を紹介してくれる社会人は素敵だなと思いますね。その人がいる会社に入ることはー手段でしかないので、そこで自分の会社ばかりを暗に押し付けてくるのは、もったいないと思います。
辻:私は、自分の表面的な部分しか見てもらえていない時がとても嫌でした。
学生のときって、自分の気持ちをうまく表現できなかったり、ロジックをうまく通して話せない部分もあると思うんです。
そういうときに「この子は今こう言ってはいるけど、本当はもっと考えていることがあるはずだ」と、うまく表現できない本音を引き出そうと傾聴してくれる方もいれば、喋ったことをそのまま穴をついてくるみたいな人もいるじゃないですか。
三上:論破したいだけ、みたいなね。
辻:氷山の一角だけではなく、根っこにある真意を知ろうと歩み寄ってくれる人は、学生・社会人問わず嬉しいですよね。
― 「それ、本当に思ってる?」さきほどのインターンの話と通じるものがありますね。
三上:彼らにもかつて学生だった時代があり、同じような立場で、物事を悩み、考えた時があると思います。その当時に立ち返れず、その人の横にいる「学生」しか想像できない。
「学生」ではなく「人」を見れない人は、おそらく仕事をしていてもその人の良さを十分に引き出せないと思うんです。
「個」の欲求に向き合う環境づくり
ー 「一人ひとりの志を大切にする」企業理念から内省と、自己理解を大切にしたインターンシップを設計するなど、NPさんって個人の思いを大切にする企業の考え方が、取り組みとして落とし込まれている会社のように思います。
三上:一人ひとり違った「個」の志を掛算した結果、「次のアタリマエ」となる事業が生み出されるという考え方を重んじています。そのために、個の欲求をすごく大事にする社風を持っています。
ー 個人の思いを大切にする社風が落とし込まれている取り組みは、他にもあるのでしょうか?
辻:NPにはワーキンググループという取り組みがあります。業務時間の20%を使って自分の興味のある全社横断業務に手を挙げてチャレンジしていくという制度なのですが、まさにインターンシップもワーキンググループと同様の思想で設計されています。
ワーキンググループを通して事業を立ち上げてみたり、研修を主催してみたり…そのように自分から心を傾けられる何かに力を注いでいる時に、人は一番パフォーマンスが出るし、結果的に事業も大きくなると考えています。
― 「個」の欲求を掘り下げるために、社員同士が語り合うみたいな場もあったりするんですか?
三上:オフィスコンセプトは「働くより、話そう」。通称ABT(Activity Based Talking)と呼んでいる通り、“対話“が生まれやすいオフィス設計にしています。スタンディングでふらっと集まれるテーブル、いま取材を行っているこのフラットなソファも、みんなで輪を囲めるようにとの願いが込められているんです。
あとは合宿なんかもそうですよね。2日間まるまるお互いを深堀り、ひたすら内省・自己理解することに時間を使います。お互いの違いを知り、受け入れ、コラボレーションするにはどうしたらいいかを、ひたすら考える合宿をやったりします。
辻:「言葉が思考を定義する」の話のときに思い出したのですが、以前「バディ」と呼ばれる取り組みをしたことがありました。
社内で新卒が各部署に入っていくタイミングで、先輩との関係構築について考える機会があったんです。先輩、後輩という言葉を使ってしまうと、教える、教えられるの関係になるし、「先輩のくせにこれも出来てないのか」なんて、変なラベル付けによる弊害が生まれてしまうのがよくないなと思っていて。
その時に実践してみたのが、先輩、後輩ではなく「俺らは一緒に成長するバディだ」と。「バディ」という言葉を新たに立てて、関係性を塗り替えてみたことがありました。
― 「バディ」だと急に横並びになりますね。
三上:先輩後輩含めみんな成長中だし、お互いに支え合うし、一緒に進んでいくものだという意味を込めた「バディ」です。新卒3人・先輩1人のグループで呼び合っていたのですが、先輩・先輩という概念がぶっ壊れたので(笑)言葉を変えてみると、フラットになれてすごく良かったですね。
とはいえ無意識に上下関係を生み出してしまう自分たちもいるので、まだまだやれることはあるなと思います。
「それ、本当に思ってる?」肩書きではなく人として見ることが、フラットな関係性を築く
“ Public Relations ”によって企業価値を高めていくためのヒントは“ Personal Relations ”の中にある。
そう考えている私たちにとって、ふたりが度々おっしゃっていた、ひとりの“人”として見ることは、日々の業務の中で“ Personal Relations ”を意識するために忘れてはいけないお話だなと思いました。
「後輩との距離が縮まらない……」「求職者の本音を引き出したい……」
そう思ってしまうのは、無意識に肩書きに囚われているからかもしれません。
そんな時の合言葉となるのが、インターンで嫌というほど発しているという「それ、本当に思ってる?」ーー肩書きではなく、“人”としての本音に目を向けることが、フラットな関係性を築く第一歩になるのではないでしょうか。(編集部)