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PRの本質を追い求めて(前編)──探究と実践の日々から見出した「人」の力

INDEX

働く人のストーリーを通じて、企業の魅力を発信する「talentbook」。サービスを創案し、株式会社PR Tableを創業した大堀 航は、学生時代にPR(パブリック・リレーションズ)と出会い、探究・実践を続けてきました。企業が自ら情報発信できる方法を模索し、起業に至るまでの心情を振り返ります。


Profile

大堀航 Koh Ohori

株式会社PR Table 取締役/Founder

1984年神奈川県生まれ。大手総合PR会社のオズマピーアールを経て、国内最大のオンライン英会話サービスを運営するレアジョブに入社。PRチームを立ち上げ、2014年6月に東証マザーズ上場に貢献。2014年12月、PR Tableを創業。


知ってもらうにはどうすればいい?素朴な疑問から「PR」に出会った

▲大堀がPRの仕事に興味を持つきっかけとなった本『PR会社の時代:メディア活用のプロフェッショナル』

大堀がPRという仕事に興味を持ち、その重要性や可能性に気づいたのは大学時代。ある一冊の本を手に取ったことがきっかけでした。

大堀「留学先で知り合ったスイス人の友人と一緒に、日本のアートイベントに出展する機会がありました。どうせなら、自分たちのプロジェクトを多くの人に知ってもらいたい。そのためには、広報の知識が必要だなと考えていたときに出会ったのが、『PR会社の時代:メディア活用のプロフェッショナル』という本でした」

PR会社・プラップジャパンの創業者、矢島 尚氏が書いたその本は、当時就職活動を控えていた大堀に大きな影響を与えました。

大堀「本には『社会の一部である企業は、いろいろなステークホルダーと良好な関係を築いていく必要があり、PRはそのためにある』と書かれていて。PRとは何かを知ると同時に、これからの時代、もっと重要な役割を担っていくだろうと直感しました」

PRの仕事っておもしろそう!もっと勉強したい!──そう強く感じた大堀は、株式会社オズマピーアールでアルバイトを始め、大学卒業後にそのまま入社することを決意します。

大堀「PR会社での仕事は主に2種類あって、1つは、新製品の記者発表会などを開催し、世に広めていくスポット的なPR。もう1つは、企業とリテナー契約を結び、広報担当者と一緒にPRの戦略や手法を考えていくもの。僕は、企業とより密に長期的に関われる後者の仕事の方が好きでしたね」

なかでも大堀にとって印象深いのが、老舗の種苗会社を担当したときのこと。当初は、新しい品種が発売された際にプレスリリースを出す、というごく一般的なPR手法を取っていました。

大堀「でもそれだと、業界紙にしか興味を持ってもらえず、一般の人に響くようなニュースにはならない。どうやったらこの会社の魅力を、もっと多くの人に知ってもらえるのか。いろいろと模索していくなかで、会社にはたくさんの研究員さんがいて、それぞれに想いを持って働いていることに気づいたんです。

彼らがどんな人で、どんなことにやりがいを感じているのか。それらを聞き出し、プロフィールシートとしてまとめ、『この会社にはこんなおもしろい人がいるので、是非取材してください』と記者たちに渡してみることにしました。

すると、複数の全国紙の人物紹介欄に取り上げられ、会社自体を知ってもらうきっかけにもなったんです。人という資産がPRコンテンツになり、会社の魅力を伝えることができるのだと、強く手応えを感じた出来事でしたね」

PR会社からの卒業とベンチャー広報への挑戦

▲株式会社レアジョブに広報担当として入社

種苗会社の経験を経て、PRという仕事の奥深さを知った大堀。PRパーソンとして、さらなる成長を遂げたいと、転職を決意します。

大堀「PRという仕事のテーマは、やはり『いろいろなステークホルダーとどんな関係性を築くか』。PR会社だと、関係を築けるのがどうしてもメディア関係者や企業の広報担当者に絞られてしまって。その先にいる企業の社員さんやお客様が、どんな考えを持っているのか、どんな反応を示すのか、もっと知りたいと思うようになったんです」

より多くのステークホルダーと関わるには、事業会社の広報職が最適だと考えた大堀。セカンドステージとして選んだのは、オンライン英会話サービスを手掛けるベンチャー企業・株式会社レアジョブでした。

大堀「当時のレアジョブは、まさに広報チームを作ろうとしていたフェーズ。PRの仕事をゼロベースでやっていきたいと思っていた自分にとって、お客様や社内のメンバー、投資家とのコミュニケーションを統合して考えられるポジションは、とても魅力的でしたね。広報以外の視点を知るためにも、ユーザー獲得やマーケティングチームの仕事も兼務させてもらいました。

入社当初は、会社への理解を深めながらもそれまでの経験を活かしてメディア・リレーションズを担当しました。スカイプを使って英会話が学べるサービスがあるということを、ビジネス誌や英語学習メディアに取材してもらったり。また、ベンチャーだったので、創業背景などを経済紙やウェブメディアに露出していきました」

これまではPR会社の人間として企業の広報担当者やメディアとのコミュニケーションが中心でしたが、一広報担当として社外への発信をしていく中で、次第にPR会社とは異なる視点が見えてきました。

大堀 「これまでPR会社では、一緒に働く仲間はみんなPRコンサルタントだったので、ほぼ同じ職種の人としか働いていなかったのですが、レアジョブに転職してからは、コーポレート、マーケティング、開発、CS、法人営業と様々な職種の方と一緒に仕事をするようになりました。

各チームごとで追ってるKPIが違う中で、広報チームの役割や情報発信の意義を説明する必要があるなど、情報発信以前に取り組むべきことがたくさんあったんです。理解を得るためにも、社内説明会など丁寧にコミュニケーションをしました」

オウンドメディアへの挑戦とPRパーソンとしての成長

▲レアジョブ時代の仲間たち/上場を経験

従来の「企業広報」という枠にとらわれず、レアジョブという会社やサービスのPR手法を模索していた大堀。そんななか、現在の「talentbook」にも繋がる、ある試みに挑戦することになります。

大堀「2013年当時、オウンドメディアというものは今ほど世に浸透していませんでした。でも、ユーザーの声や社員の活躍などをコンテンツにして、自社で継続的に発信することが今後は必要じゃないかと考えたんです。

社員の取り組みや想いの紹介が良い採用に繋がったり、既存ユーザーの成功事例を紹介することが、他のユーザーの学びや新規入会に繋がったり。メディア露出を目指すだけじゃなく、自社でしっかり情報発信する施策を試してみることにしました」

メディアやPR会社を頼るのではなく、自分たちでコンテンツを作り、自分たちのメディアで発信しよう──大堀がそう考えた背景には、こんな理由がありました。

大堀「メディア・リレーションズのメリットのひとつは、メディアに取り上げてもらうことで、いわば世の中のお墨付きを得られること。でも、メディアに取り上げられるほどではないけど、社内に眠るちょっといい話って、たくさんあるじゃないですか。そうしたコンテンツを作って発信することで、誰かの目に留まり、広がっていく。この『種まき』こそ、僕が目指す『ステークホルダーとの関係構築』に繋がると思ったんです」

オウンドメディアを立ち上げ、多くのコンテンツを発信し始めた大堀たち広報チーム。半年ほど経つと、社内外から嬉しい反応が得られるようになりました。

大堀「まず社内では、マーケティングチームが『そのコンテンツを使いたい』『こういうコンテンツが欲しい』と要望をくれるようになったんです。僕たちがユーザーの役に立つコンテンツを作ることで、ユーザーだけでなく他の部署の役にも立てたと感じ、嬉しかったですね。

PRの仕事で一番大事なのは、やはり社内の協力と理解を得ること。それがあってこそ、情報発信ができるのだと改めて実感した出来事でした。

ユーザー側でいうと、頑張っている方を記事にして紹介したり、イベントに呼んで話してもらったり、という施策をたくさん行いました。すると、コンテンツ化されたユーザーがSNSなどでシェアされ、その方自身もブランディングされていくんですよね。なかには本を書いて出版した方もいて、『人』がレアジョブの魅力を体現している状態になったんです」

「人」が会社やサービスの魅力を伝えるコンテンツになり得る──PR会社時代に立てた仮説は、小さな一歩だが証明に近づいたと大堀は自信を強めました。そして、レアジョブがその後上場を果たしたことも、「良いプロダクトと利用してくださる方々、そこにしっかり向き合える社員がいれば、大きな挑戦ができる」と大堀の背中を後押しすることとなったのです。

ベンチャー広報向けのブログ発信をきっかけに、PRサービスでの起業を決意

▲自身がもつPRノウハウを情報発信していたブログ「PR Table Blog」

レアジョブの広報として実績を上げる傍らで、大堀は個人としての活動もスタートさせます。それは、同じようにベンチャー企業で広報を担当する人に向けた、ブログの発信でした。

大堀「広報・PRって、何をどうすればいいのかわからないと悩んでいる方のために、自分がPR会社で学んだこと、レアジョブでの試みが少しでも役に立てばと思い、ブログを書くことにしたんです。広報担当って頑張りがなかなか評価されづらく、報われないポジションでもあるので、励まし合いたいという気持ちもありました」

PRのノウハウを詰め込んだブログは、次第に同業者からの支持を集めるようになります。記事のなかで大堀は、メディアだけに頼らず、自社で情報発信することの重要性を繰り返し伝えていきました。

大堀「PRにおいてメディア・リレーションズは重要な基礎ではありますが、メディアとの関係性構築も容易いものではありません。何よりも、社内に眠るちょっといい話を一番知っているのは社内にいる自分たちです。自分たちが伝えたいことを確実に伝えられる方法を持つこと、自分たちで情報を棚卸して、整理して、発信していく方が、ステークホルダーとの関係性の質も数も増えていく、ということはよく書いていました」

自社で作ったコンテンツがきっかけでメディア取材に繋がるケースもあるし、マーケティングに活用されて効果を上げることもある。PR業界にとって、今後はコンテンツ作りが大きなキーワードになる──そう考えた大堀は、次第にPRやコンテンツに関わるサービスを作りたいと考えるようになります。

大堀「PR会社で働けば、いろいろな企業の支援はできます。でも、やはり担当社数に限界がありますよね。『PRってこうすればいいんだ』とわかるサービス、広報担当を手助けできるサービスがあれば、もっとたくさんの企業を支援できると思ったんです」

2014年6月、レアジョブが東証マザーズへの上場を果たしたことをきっかけに、大堀も自らが描くPRの形を実現しようと退職を決意。

2014年12月、弟の海と共にPR Tableを創業し、「talentbook」のプロトタイプとなるサービスを立ち上げます。(後編に続く