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電通 CDC 嶋野裕介さん「結果にこだわるから、手法にはこだわらない。PR×クリエイティブの可能性を拓く」

INDEX

ミレニアル世代(1980〜2000年生まれ)の若手PRパーソンは、日々どんなことを想い、どんな感覚をもってPublic Relationsを体現しているのか——。

PR Table Communityでは、さまざまなステークホルダーとの関係構築に力を注いでいる人たちにフォーカスしていきます。

これからのPRパーソンは、社会の中で多様な役割を果たしていくことができるはず。

彼・彼女らがいま取り組んでいること、感じている課題、これからの在り方など、リアルな声をぜひ、聞いてください。

きっと、次世代に求められるPublic Relationsの在り方——「PR 3.0」につながる道が見えてくるはずです。

嶋野さんが手がけたクリエイティブを、きっと多くの人が目にしたことがあるはず。そのSNSを起点としたさまざまな施策の根底には、Public Relationsの考え方が根づいています。どのようなキャリアをたどって現在地にたどり着いたのか、これまでの道のりと、いま嶋野さんが考える“PR”についてうかがいました。

Profile
嶋野裕介さん Yusuke Shimano

株式会社電通 CDC コミュニケーション・ディレクター
1980年生まれ。東京大学卒業後、電通に入社。マーケティング局、営業局、デジタル局、シンガポール勤務などを経て、転局試験でクリエーティブ局へ。デジタル&PRメソッドを活用したクリエーティブプランニングを行い、「PRIUS! IMPOSSIBLE GIRLS」「#金曜日の新垣さん」「プリウス試乗味プロジェクト」「0点ミュージアム」「フリー素材アイドルMIKA+RIKA」などの制作を手がける。


ある仮説をもち、“3度目の正直でクリエーティブ局へ

― 嶋野さんは、もともとマーケティングの部署にいらっしゃったんですよね。

嶋野裕介さん(以下、敬称略):はい、そうです。大学で専攻していたのが、ブランドマーケティングで。数量的な調査・分析から、「企業のブランドはどうあるべきか?」を考えることがテーマでした。そんなに真面目にはやってなかったですが……。

その後、営業などいくつかの部署を経て、クリエーティブ局に移るための試験を受けたんです。僕、実はその試験に2回も落ちていて(笑)。3回目で、ようやく転局できました。

― そこまで、クリエーティブ局の仕事にこだわったのはなぜですか? 入社当初から志望されていたわけではないですよね。

嶋野:入社当時はちょっとしたミーハー心で志望していましたが、だんだん本気になりました。というのも、自社で制作しているCMのマーケティングデータの分析をしていて、気づいたことがあったんですよ。

― 気づいたこと?

嶋野:ごく簡単にいってしまうと、CMの中には同じ出稿量(=GRP/のべ視聴率)なのに、リーチがものすごく高いものと低いものがあるんですよ。で、その違いは、最終的にクリエイティブの“おもしろさ”で決まっているのではないかと。

― おもしろさ。

嶋野:そう。さらに、結果がよいCMで、自分自身が「おもしろいな」と感じられるものは、特定のクリエイターが作っているものが多かったんです。

広告業界って結局、メディア枠の予算が大きいのに、その効果はクリエイティブによって劇的に変化する。それならば、CM投下量を微調整して0.1%の改善を繰り返す以上に、とにかく“おもしろいCM”を作ることに注力した方が“効率的”だって思ったんです。

― なるほど。データの分析から、仮説を導き出していたのですね。

メディア・リレーションズを必要としない企業も増えていく?

― ちなみに、PRに関してはどのタイミングで学ばれたのでしょうか?

嶋野:たまたま、近くにいた先輩がPublic Relationsを実践している方だったんです。どうメディアとの関係性を築くか、ロビイングをどう展開していくか、第三者からの権威づけをどうするか——。「こういう視点を持って動くことも必要なんだ」と、PRを重要な武器として理解できたのは大きかったですね。

― 嶋野さんは、社内でもクリエイティブPRを推進されているとお聞きしました。現在、ご自身ではPublic Relationsをどう捉えていますか。

嶋野:まさに、クリエイティブとPRをどう連動していくかについての勉強会を、社内で開催したりしています。「“いいPR”ってなんだと思う?」と、問いかけながら。

― いいPRとは何か。

嶋野:人によって当然、答えは異なります。私のような代理店の人間と、専業PRの方とでも見ている世界は全然違います。ただ僕自身は「社会合意をつくり、世の中を少しでもよい方向に変えていく」、それが“いいPR”の定義だと考えています。

社会合意を作り出せるかどうかが、アドやプロモーションとの違いだと思います。

ただ、注意したいのは、クライアントが求めているのは課題の解決であって、PR手法の実行ではありません。私たちプロが目指すものは、結果を出すこと。それを達成できるなら、PRでも広告でもプロモーションでも、手法は何でもいいはずです。

― 確かにそうですね。

嶋野:だからこれからの時代、とくに重要視されていくのは、手法としてのPRではなく“PR視点”だと思っているんです。

とくに最近、SNSを中心として炎上するプロモーションやキャンペーンがあとをたちませんよね。原因は、PR視点の欠如かなと。

― 本当に毎日、何かしらの炎上が話題になっている気がします。

嶋野:たとえば20代前半の女性を対象とした企画で、ターゲット層には違和感なく受け入れられるけれど、周りの人たちが「それは女性蔑視だ!」と声を上げるケースがありました。

これまでは、純粋にターゲットとなる人たちだけのことを考えていればよかった。でも今は違います。ターゲットはもちろん、その周りを囲んでいるさまざまな人たちにも配慮しなければいけません。

そうしたPR視点は、うちでいうとPR局の人間だけではなく、全社員が持つべきだと思っています。極論をいえば、「PR局」とそれ以外の部署の垣根がなくなった方がいいのかもしれません。

― クリエイティブに関わる人たちにとって、PR視点の重要性が増しているということですね。

嶋野:そうですね。デジタル領域やSNSがこれだけ強くなり、企業と個人の距離が近くなっている時代では、クライアントが直接、世の中に発信するケースが増えています。

手法としてのPR——とくにメディア・リレーションズを必要としないクライアントは、これから増えていくのではないかと思います。メディア側も、「SNSで話題になったトピック」を取り上げることが多くなっていますし。

そんな時に欠かせないのが、PRが持つ「世の中視点×クリエイティブ」のジャンプ力。いまの世の中を正しく捉えて、そこに爆発力のあるアイデアをぶつけることができれば、どんなコミュニケーションも成功すると思います。

新車の「新しい車の部品」に着目し、内部的な関係構築に貢献

― 実際にご自身が手がけた仕事の中で、手応えを感じた企画はありますか。

嶋野:ひとつは、2016年に手掛けたトヨタ様のキャンペーンでしょうか。新型プリウスで新しくなった部品40種を、2次元キャラに擬人化した「PRIUS! IMPOSSIBLE GIRLS」です。

プリウスは言うまでもなく、日本を代表する車です。でも当時は決して若者からの支持がそれほど高くなかったのです。まずは、いままでプリウスと遠いところにいた若者ターゲットをふり向かせようと考えました。

そして次に、何をしたら若者向けメディアがプリウスを記事にしてくれるかを考えました。そこで生まれたアイデアが「#プリウス部品を擬人化」でした。

― 確かに、SNSと親和性が高そうです!

嶋野:世の中視点で企画のコアを固めつつ、そこにクリエイティブジャンプとして、設定の細かさ、一流の絵師さんへの依頼、有名声優さんのアサインなど、細部までつくりこむことで、大きな話題をつくることに成功しました。

実際に2万点近い部品のなかから、技術資料や部品の写真からキーワードを抜き出して、ひとつずつキャラクターに特徴を持たせて、どの絵師に書いてもらうかを考えて……という、地道に汗をかく仕事でした。

その結果、SNSでも反響を生み(Twitterトレンド2位)、ウォール・ストリートジャーナルなど海外メディアにも取り上げられて。結果的に、商品に対するイメージ調査の結果が大きく向上しました。

また、もうひとつの私の仕事としては、炎上しないよう、キャラクターの絵柄にも細心の注意を払いました。絵師さんの中には若干、過激な絵柄を描かれる方もいましたが、そこは僕が徹底して「これはダメ!」と。プロジェクトの後半には、僕、「風紀委員」と呼ばれていたくらいです(笑)

― そうした細部のこだわりも、PR視点のひとつですよね。全方位への配慮。

嶋野:結果は賛否両論ありましたが、いわゆる“炎上”はひとつも起きませんでした。

また何より、部品をつくっている工場の方がものすごく喜んでくれたそうです。

― なるほど……! なかなか、そこまで部品一つひとつにスポットライトが当たることはないですもんね。

嶋野:ちゃんとモノづくりの現場の方に届いたのは、うれしかったですね。「うちでつくっている部品はこれだ!」とね。ある意味で、インターナルコミュニケーションとしても有効な施策でした。

― このプリウスの事例は、きっと嶋野さんにとって「いい仕事」だったのだなと思うんです。ご自身の中で、「いい仕事」かどうかを判断する基準はどこにありますか?

嶋野:クライアントである企業にとって、中長期的な幸せにつながることですね。

一発のキャンペーンで話題をつくることができたとしても、将来的に企業ブランドが傷ついてしまっては意味がありません。

ときどき、流れてくるCMやキャンペーンをみて思うことがあるんですよね。「この商品、次の展開はどうする気なんだろう? 話題にはなってるけど、ブランド価値をあげてないんじゃないの?」とか(笑)。

短期的な成果を追うのではなく、本当にその企業のためになっているのかどうか、時間軸を意識した視点が重要だと思います。

 

「結果を出す」を考えつくすことでPRは進化する

― ここまでは、嶋野さんご自身の仕事にフォーカスしてお話を聞いてきました。最後にぐっと俯瞰して、「日本のPR」全体についてのお考えも聞かせてください。海外のPR事例にも通じていらっしゃいますが、比較するとどこに大きな違いがあるのでしょうか。

嶋野:海外のPRに触れて感じているのは、とにかく徹底して“Result(結果)”を重視する傾向があることです。いかに世の中が、人々の行動が変わったのかで評価される。

― そこは、先ほど出てきた“いいPR”の定義と近いですね。

嶋野:ただひとつ違うのは、結果さえ出ていれば、アイデアは二番煎じでもOK、というところですね。

― アイデアは重要視されないのですか?

嶋野:そうなんですよね。僕のようなクリエイティブの人間からすると「0点」のアイデアだとしても、です(苦笑)。

他の誰かがすでにやっていたアイデアと同じ手法を使って、パブリシティをとって……。でもその結果、社会が動いて新しい法律ができた、なんていう事例もありました。結果が出ているかどうか。それがすべてなんです。

― 結果的に、「世の中がよくなればOK」という。

嶋野:そうそう。合理的ですよね。海外審査の時もアイデアが重視されていない時点で僕は憤慨しましたけど、あくまで結果がでている以上は、否定はできないですよね。

ただその一方で、結果を出すための手法がなんでもいいなら、もっと広告クリエイティブやPaid Mediaを使いこなせばいいじゃないか、とも思うわけです。

そこは、日本中のPRパーソンがもっと柔軟に考えてもいいところだと思います。先日、世界最大の独立系PR代理店ネットワーク エデルマン(Edelman)が、PRにとどまらず、クリエイティブ、有料メディア(Paid Media)、コンサルティング領域への進出を強めると宣言しました。

「広告はこう、PRはこうあるべき」と、捉われる時代ではなくなりました。

PRパーソンも大いにクリエイティブなアイデアを使って、世の中を変えることにチャレンジしていきたいですよね。「結果がすべて」って、潔よくてPRパーソン向きの言葉だと思いませんか?

これからの時代に必要とされる“PR視点”とは

企業と個人の関係性が近くなり、毎日のように、どこかの企業が打ち出したキャンペーンやプロモーション施策が“炎上”してしまう現在。特定のターゲットと向き合っていればよかった時代は終わり、「社会に対して全方位の配慮をする」Public Relationsの視点が必要とされています。第一線でさまざまなクリエイティブを生み出している嶋野さんのお話を聞き、その重要性を改めて確信することができました。(編集部)