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サイボウズ 明石悠佳さん「信頼関係の構築は長期戦。ステキだな、と思える価値観の“媒介者”でありたい」

INDEX

ミレニアル世代(1980〜2000年生まれ)の若手PRパーソンは、日々どんなことを想い、どんな感覚をもってPublic Relationsを体現しているのか——。

PR Table Communityでは、さまざまなステークホルダーとの関係構築に力を注いでいる人たちにフォーカスしていきます。

これからのPRパーソンは、社会の中で多様な役割を果たしていくことができるはず。

彼・彼女らがいま取り組んでいること、感じている課題、これからの在り方など、リアルな声をぜひ、聞いてください。

きっと、次世代に求められるPublic Relationsの在り方——「PR 3.0」につながる道が見えてくるはずです。

 

「インハウスエディター」という職種をご存知でしょうか。特定の企業に所属し、企業活動としてのコンテンツ編集・制作に携わる——それはこれまでの「広報」の枠を超えた、新たなPRパーソンの形といえます。サイボウズのオウンドメディア『サイボウズ式』の編集を担当している、明石さんはまさにそのひとり。どのような考え方でお仕事をされているのか、うかがってきました。

 


Profile
明石 悠佳さん Yuka Akashi

サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部 コンテンツエディター
2015年、新卒でサイボウズに入社し、製品プロモーションを1年半経験したのちコーポレートブランディング部へ異動。現在はオウンドメディア 『サイボウズ式』の企画編集をはじめ、ブランディングのためのコンテンツ制作などを担当している。2018年からは、副業でフリーランスのライター・編集者としても活躍中。


出版社志望の大学生が、IT企業に入社するまで

ー 明石さんは、新卒でサイボウズに入られたんですよね。でも、もともとは出版社を希望していたと聞いています。

明石悠佳さん(以下、敬称略):はい、そうなんです。学生時代に書店で働いていたこともあるくらい、とても本や文学が好きで。就職活動中は出版社を志望していました。

自分で何かを書いて伝えたいというよりは、好きな作家さんの想いや考えを、本を通じて世の中に出せる人になりたいと考えていましたね。

—  そこから、なぜIT企業であるサイボウズに……?

明石:編集志望ではありましたが、出版社だけ受けようと思っていたわけではなかったんです。就職活動はせっかくの機会だし、いろんな会社を見てみようと。興味を持った中にIT企業も入っていて、そのひとつがサイボウズでした。

IT業界そのものの印象は、正直なところ……面白そうで素敵な人が多いけど、自分が働くには合わないかなと感じていました。

でもサイボウズに出会って、会社の雰囲気や社長の理念に触れたり、働いている先輩の話を聞いたりするうちに、純粋に「この会社のことが大好きだ」と思うようになったんですよね。

サイボウズ株式会社でコンテンツエディターをつとめる明石悠佳さん

ー とはいえ、もともと文学の編集を希望していたところから、IT企業のオウンドメディア担当になるというのは、けっこう思い切りましたね。

明石:そうかもしれませんね。私も最初は、「オウンドメディア」というものの存在すら知りませんでした。でも入社前に、『サイボウズ式』の創刊編集長と話す機会があったんです。

そこでいろいろなお話を聞いて、そもそも、どうして私は文学の編集がやりたかったのかを考えました。

そこで、私は、私自身が「ステキだな」と思える人々が発する言葉や考え方を、より多くの人に届けられるような“媒介者”になりたかったんだなと気がついたんです。

ー なるほど。

明石:サイボウズという会社には、私が「ステキだな」と思える価値観がたくさんある。その価値観を多くの人に届けるという行為は、出版社で自分がやりたかったことと似ているのかもしれない、と感じるようになりました。そこにたどり着いた瞬間に、とても腹落ちした感じがして。

企業にもこんなメディアがあるんだったら、回りまわって、自分のやりたいことができるのかもしれない。そう考えて、入社することを決意しました。

「会社が伝えたいこと」だけを発信しても、誰にも伝わらない

ー 明石さんご自身のお仕事についてうかがう前に、まず、サイボウズの広報体制がどのようになっているか教えてもらえますか?

明石:はい。私が所属する「ビジネスマーケティング本部」は、BPM部とプロダクトプロモーション部、そしてコーポレートブランディング部にわかれています。

BPM部は、製品の販売戦略を考える部署。プロダクトプロモーション部は、その名の通り製品の認知拡大、理解促進のためのプロモーションを担当する部署。そして企業広報の業務を担っているのが、コーポレートブランディング部です。『サイボウズ式』の編集チームもこちらにあります。

ー 『サイボウズ式』の記事企画以外のお仕事をすることもありますか?

明石:そうですね。去年は創業20周年企画である動画制作プロジェクトに入ったり、『サイボウズ式』でも、記事企画だけではなく、イベントの運営をしたりインターン生のマネジメント業務をしたりしています。

私たちの仕事は、サイボウズを知らない人に、サイボウズという会社が大切にしている価値観について知ってもらい、「いいな」と思ってもらうこと。そのためには、ただ情報を発信するのではなく、サイボウズの価値観や想いを「ストーリー」に乗せて伝えていくことを大事にしています。

ー 実際に企業の中でコンテンツエディターとして仕事をしてみて、どんな実感をもっていますか?

明石:編集とは「つなぐ」仕事なんだな、とすごく感じています。

サイボウズ株式会社でコンテンツエディターをつとめる明石悠佳さん

たった1本の記事を作るにも、編集部内で「誰に」「何を」伝えたいのかを考えるところからはじまり、読者のみなさんや取材対象者の方々はもちろん、ライターさんやカメラマンさん、社内の人たち……本当にありとあらゆるところに目を向け、気を配って進めていく必要があります。

それらをすべて「つなぐ」のが、私たち編集者の役割なんだな、と。

ー その「つなぐ」仕事をするうえで、明石さんが意識していることはありますか?

明石:会社が伝えたいこと、自分が言いたいことをそのまま企画にしても、読者の方には伝わらない、ということです。

これは『サイボウズ式』の編集長から、くりかえし教わっていることなんです。企業のコンテンツを発信していくうえで大切なのは、“ブランドジャーナリズム”の視点だ、と。

つまり「サイボウズが伝えたいこと」と、「世の中の関心事」と重なる部分を探って、そこを企画にしていかないといけないんですよね。

ー 本当に、おっしゃる通りですね。

明石:そしてそれだけじゃなくて、さらに「企画担当者としての自分の想い」も重ねていきたいなと思っていて。

ー はい、はい。

明石:「サイボウズが伝えたいこと」と「世の中の関心事」、そして「自分の想い」。この3つの重ねることができれば、熱量のあるいい記事が生まれるんじゃないかなと考え、企画を立てています。

サイボウズ株式会社でコンテンツエディターをつとめる明石悠佳さん

「企画ってなんだろう?」ひたすら考え続けた1年

ー ちなみに、この1年の間に手がけた中で、印象に残っている企画などはありますか?

明石:自分の中で「多様性」について考えている時期があって、それをどうやって世の中に出していこうかと考え、大好きな作家の山崎ナオコーラさんと、脳科学者の茂木健一郎さんとの対談を企画したことがありました。

ただ単純に「多様性についてどう思うか」というテーマでは企画にはならないので、それをどうしたら世の中の人に面白く感じてもらえるか、すごく悩みましたね。

調べていくうちに、山崎さんは「世の中の多様性を肯定する」というテーマで活動されていることを知りました。でもそれをそのまま取材しても、ストレートすぎるなと。

— そうかもしれませんね。

明石:そしてたまたま、茂木さんが書かれた多様性に関するブログを見つけたんです。このおふたりに対談していただいたら、何か化学反応が生まれるんじゃないか——そう思いました。

そのとき、「あ、これが企画っていうものなのかな」と感じたんです。

誰かのことを「嫌い」とか「受け入れられない」って、決して悪いことじゃない──茂木健一郎×山崎ナオコーラ

▲明石さんが企画・編集を担当した『サイボウズ式』の記事。

 

ー 難しいですよね。独りよがりの企画だと読者とコミュニケーションが取れないし、そもそも取材対象者に理解してもらえなかったら、その時点でダメですし。

明石:そうですね。編集部に入ったばかりの頃は、自分が最初に立てた企画とアウトプットにズレが出てしまって、「あれ? こんなはずじゃなかった」となってしまうこともありました。

今思うと、「誰に何を伝えたい企画だったんだっけ?」というポイントが、自分の中で腑に落ちていなくて。ただの“企画っぽいもの”になってしまっていたんだと思います。

企画を立てる段階で、「どうして自分がこの企画をやりたいのか」「誰に何を伝えたいのか」をとことん突き詰めて考えることが大事だと、そのとき改めて知りました。そこさえしっかり抑えていたら、どんな関係者にも「これを伝えたいです」と、自信をもって言えますから。

回りくどく、時間もかかる。それが信頼関係につながっている

ー お話を聞いていると読者目線をとても大事にされていることが伝わってくるのですが、一方で「サイボウズとして伝えたいこと」についてはどう考えていらっしゃいますか。企業としてメディアを運営する価値を、どこで測っているのか。

明石:もちろんステークホルダーの方々は全方位的に意識していますが、なかでもとくに私たちが向き合おうとしているのは、まだサイボウズを知らない、興味がない方たちです。

そう考えると、自分たちが言いたいこと、伝えたいことを全面に出してしまうと、何も伝わらないんですよね。

サイボウズ株式会社でコンテンツエディターをつとめる明石悠佳さん

だからこそ「サイボウズの言いたいことだけを伝える企画になっていないか?」という原点に立ち返って、ひとつの企画を進めるのにも、メンバー間でめちゃめちゃディスカッションします。

ー 本当に徹底して、「読者」の方と向き合っているんですね。

明石:はい。実際にメディア運営に関わるようになって、メディアとは、ものすごく時間がかかる信頼関係の構築の仕方なんだなと改めて思っています。

今あるサイボウズ式と読者の方々の信頼関係は、これまでの編集長をはじめ、メディアに関わってきた人たちが5年以上の年月をかけて培ってきたもの。

だから私もその一員となった今、その信頼関係を崩してしまわないように、真摯に一つひとつの企画に向き合う必要があると感じています。

信頼は築くことは難しいけれど、崩れてしまうのは一瞬だと思っていて。まだまだ未熟者なので、初心を忘れずに丁寧に記事を作っていきたいです。

ー ちなみに、数値的なKPIなどはありますか?

明石:具体的な数値目標は設けていません。それよりも、1PVの価値をとても大切にしています。たとえ読んでいる人が少なかったとしても、その人たちの心に響いてくれたら、すごく大きな価値のある1PVになるという考え方です。

数値的なことより価値観的なところに重きを置いているので、SNSの反響などを見ていますね。どんなコメントがついているか、どういう人にシェアされているか、など……。

ー ステークホルダーには社員のみなさんも含まれると思いますが、社内で、『サイボウズ式』はどのような受け止め方をされているのでしょうか。

明石:社内の人間も、けっこう記事を読んでいると思います。私自身がこの会社を理解するうえでも、『サイボウズ式』のアーカイブ記事はめちゃくちゃ役に立ちました。

サイボウズという会社が、現在進行形で進化している。その過程で生まれる価値観や考え方などを、私たち編集部が言語化し、コンテンツとして残していくのはすごく大事なことですよね。

サイボウズ株式会社でコンテンツエディターをつとめる明石悠佳さん

会社として、これからどんな面白さを届けられるか?

ー 明石さんご自身は、サイボウズ式の編集者として活躍するかたわら、フリーランスのライター・編集者としても活動されていますが、個人のキャリアについてはどう考えていますか?

明石:副業をはじめたのはここ数ヶ月のことなので、まだどうなるかわからないというのが正直な気持ちです。ただ、サイボウズの中でのキャリアでいうと、次のステップではもう少し、「サイボウズのブランディング」の観点を強く意識した記事の企画やイベントを作ってみたいなと思っています。

ー もう少し、「会社視点」を意識するということ?

明石:そうですね。この1年は、どちらかといえば「編集」という仕事を学ぶ1年だったので、自分が会いたい人に取材するなど「自分自身の想い」が強く出ている企画が多かったんです。

なのでこれからは、マーケティングなどの視点も取り入れつつ、「サイボウズという会社は、今どんな面白さを世の中に伝えられるのか」を考えていきたいな、と。まだまだ勉強中ですが……。

ー まだ入社4年目で、副業もはじめられたばかり。これからが楽しみですね。

明石:サイボウズで編集の仕事をするようになって、改めて、「編集」というのは考え方であり、手段ではないんだなと思うようになりました。

世の中に伝えたい価値観を、どういう媒体にのせて、どうやって伝えたらいいのか。それこそWeb上のコンテンツだけではなく、イベントを開催してリアルな場をつくるのも編集ですよね。

うちの編集長は最近よく、「ブランドエディター」という役割を作りたい! と言っているんです。

企業のもつ価値観をいろいろなカタチに編集して、広く社会へと届ける役割。私はそうした“媒介者”でありたいなと思っています。

PRパーソンとして、コンテンツの「読者」と向き合う

彼女が何度も「読者」と口にするたび、ちょっとだけ新鮮な感覚を感じていました。「ターゲット」でも「お客さま」でも「ユーザー」でもない。サイボウズ式の「読者」と向き合っているんだ、と。編集者として、それは当たり前のことなのかもしれません。でもPublic Relationsの視点で考えると、さまざまなコンテンツを通じて会社の価値観や在り方を“媒介”していく役割は、PRパーソンの新しい道になっていく。そんな気がしました。(編集部)