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Sansan 小池亮介さん「PRの本質を追求し、世の中を動かすことが僕たちの目指すゴール」

INDEX

ミレニアル世代(1980〜2000年生まれ)の若手PRパーソンは、日々どんなことを想い、どんな感覚をもってPublic Relationsを体現しているのか——。

PR Table Communityでは、さまざまなステークホルダーとの関係構築に力を注いでいる人たちにフォーカスしていきます。

これからのPRパーソンは、社会の中で多様な役割を果たしていくことができるはず。

彼・彼女らがいま取り組んでいること、感じている課題、これからの在り方など、リアルな声をぜひ、聞いてください。

きっと、次世代に求められるPublic Relationsのあり方——「PR 3.0」につながる道が見えてくるはずです。


Profile

小池 亮介さん Ryosuke Koike
Sansan株式会社 ブランドコミュニケーション部 広報担当
1988年生まれ。大学院時代は、神戸大学大学院国際協力研究科で教育開発を研究。2013年からITに特化した外資系広報代理店にて、広報・PRのキャリアをスタート。BtoBからBtoCサービスまで、IT企業の広報業務を幅広く経験。2017年にSansan株式会社に入社し、広報・PRに従事。700名を超える広報のFacebookコミュニティ「広報たん勉強会」運営メンバーでもある。


事業会社で、「当事者」としての達成感を得たかった

― PRの仕事を始められて、キャリアはどのくらいになりますか?

小池亮介さん(以下、敬称略): 広報・PR職としてSansanに入ったのは2017年4月です。それまでは、ITに特化した外資系のPR代理店に4年いました。

海外企業が日本でサービスをローンチする、もしくは広報展開をする際にサポートするのが主な仕事。日本に支社・支店がないお客様から、日本の広報担当者様へのサポートまで、幅広く行なっていました。

PRの仕事は本当に面白くて、僕個人としては寝ずに働くのも厭わないくらいでした。

メディアの開拓をはじめ、自分が仕掛けたことで世の中が動く瞬間をみて、情報を伝えることやPRの楽しさを実感し、やりがいを感じていたんです。

事業会社側に移ったきっかけは、会社の内部からPRにもっとコミットしてみたくなったからです。

仕事をしている中で、「もっとこんなことができる!」とか「もっとこうしたい!」と、思いつくことはあるものの、なかなか思いついた通りに行うわけにはいかず……。どこまでPRにコミットできているのか、悩むことが増えていきました。

決定的になったのは、2016年末。某サービスの日本ローンチを担当していて、プレスイベントが終わった後にクライアントのみなさんがすごく喜んでいる姿を見たときです。

もちろん、自分もみなさんと同じくらいコミットしたつもりでした。ただどうしても代理店にいると、「当事者」としてもう一歩踏み込んだ喜びまでは達せないんじゃないか、と。今度は事業側の立場でコミットしてみたいという気持ちが生まれてきたんです。

― それで、事業会社の広報への転職を意識したということですね。そこでSansanを選んだ理由をお聞きしてもいいですか?

小池:実は他にもいくつか候補があったのですが、社員と話をしてみて、一番グッと来たのがSansanでした。

当社のサービスは、法人向けの名刺管理Sansanと、個人向けのEightの2本柱。交換した名刺の情報を、いかにビジネスシーンで有効活用していくかというところに着目しています。

名刺はお互いがはじめて出会った「出会いの証」だと言えます。それをきちんと管理することによって、いままで活用できていなかった“出会い”そのものを、価値あるものに変えていく。それが僕たちのミッションだと思っています。ある種、伝統作法になっている名刺交換にテクノロジーを当て、新しい価値に昇華する。そんな魅力的なITの使い方に惚れ込んだのもあります。

PRとクリエイティブ職がひとつのチームに

― 現在所属している、Sansanの広報部門について教えてください。

小池:広報は僕を含めて2名(*2018年2月現在)です。特に役割分担は決めておらず、PR戦略の立案やリリース作成、社内のネタ探し、メディア対応などの基本的なことはもちろん、SNSの運用や危機管理対応から、スポークスパーソンの登壇やインタビューの立ち振舞のチェック・フィードバック、文言統制、さまざまな施策のストーリー作成などまで幅広く担当しています。

とにかく、企業としてのコミュニケーションに関わることすべてに携わっているイメージですね。

当社の広報部門は、「ブランドコミュニケーション部」という部署の一部なんです。この部署自体は、クリエイターの集まりなんですよ。5人くらいのプロダクトに紐付かないデザイナー、ディレクターと、編集者やイベント担当がいて、そこに僕たちも所属しています。

― どうしてブランドコミュニケーション部に広報が?

小池:普通そう思いますよね、いい質問です!(笑)もともと広報は独立した部署だったんです。しかし、会社として目指していることや持っているブランドメッセージを、もっともっとしっかり伝えていきたいという想いが強くなり、2016年にブランドコミュニケーション部が立ち上がりました。言ってしまえば、広報という仕事もブランドメッセージを伝えるためのひとつの手段でしかないので、本質の部分にしっかりと向き合い、メッセージを正しく届けたいという会社の意思表示でもあります。

ちなみにブランドコミュニケーション部の部長は、広告代理店出身のクリエイターです。クリエイターと広報、一見違う職種ですが、見ているゴールが同じためお互いの役割についてとても理解が進んでいますね。「広報には広報のやり方があるから、あとは任せた!」という感じでやらせてもらえています。

マザーハウスとの出会いから、ずっと片思いしている感じ

― 前職から一貫してITサービスのPRをされていますよね。もともとTech系事業者への転職を考えていたんですか?

小池:それは特にありませんでした。自分が世の中にPRして恥ずかしくないプロダクトやサービスであれば、ITじゃなくてもいいかなとは思っていましたね。

― 商材はなんでもいいから、世の中の常識を変えるような?

小池:はい。ちょっとさかのぼりますが、大学院時代にマザーハウス(※)でアルバイトしていたことがあって。

そこで働く人たちと、すごく溝があったんですよね。彼らのように熱意を持って、「自分たちのプロダクトで世界を変えていく!」というところに、憧れを抱いたというか。そこに惹きつけられたというのはあるかもしれない。未だに、片思いしてるような状態なんです。

当時は関西唯一の店舗で、人数が足りないから、何でもやらせてくれました。初めてプレスリリースを書いたのも、1件だけ記事に取り上げてもらったのもマザーハウス時代です。

※)マザーハウス:https://www.mother-house.jp/

― それは一つの成功体験ですね。もともと学生時代、PRやマーケティングの勉強をされていたんですか?

小池:いえ、広報やマーケティングに対して特別に興味があったわけではありませんでした。ただ自分の存在によって、世界になんらかの作用を起こしたいとは思っていましたね。広告や宣伝という形ではなく、相手が納得して自ら動いてくれる方法を探しているうちに、広報・PRの仕事にたどり着きました。

学生時代は開発援助や貧困問題に興味があったので、国際協力を勉強していたんです。しかしアカデミックな世界に、自分は馴染めなかったんですよね。机上でのデータ分析に終始するのではなく、もっと“現場”をみたいと感じるようになって。

それでモヤモヤしていた時期に、たまたま募集していたマザーハウスのアルバイトを始めました。

― マザーハウスではどんなお仕事をされていたんですか?

小池:純粋に、大阪の路面店で、販売員としてバッグを売っていました。でも接客のアルバイトをすること自体が初めてで。最初はめちゃくちゃ緊張していて、お客さんにも売れ筋のバッグしかすすめられませんでした。

最初のうちは「こんな機能があって、こんなに素晴らしい商品なんです!」と、1から10まで全て話して接客していたんです。でも、全く売れない。話を聞くお客さんも納得しておらず、なんだかいつも迷惑そうで……。

そこで当時の店長に、「お客さんと何時間話してもいいから、相手とちゃんと向き合いなさい」と言われたんです。言葉尻だけじゃなくて、目線、服装、相槌だったり、相手が出しているサインを嗅ぎ取ってコミュニケーションをとることが大事だよと。そこから、相手が本当に話しかけられたい言葉は何なのか考えるんだよ、という話をされました。

― 現場でコミュニケーションの取り方を学ぶなら、接客業はうってつけかもしれませんね。

小池:相手の目線ひとつから、何を欲しているのかを考える。極論、PRパーソンは1回接客業をやったほうがいいとさえ思っています。

「伝わりにくい時代」のコミュニケーション

― マザーハウスで接客業に携わった経験が、現在の広報・PR業務を考える原点になっているんですね。

小池:自分が伝えたいことを、「相手が聞きたい形」でちゃんと伝えるということ。相手が欲しくもない情報を届けている限り、それはコミュニケーションが取れていないのと一緒です。きちんと相手が腹落ちした状態にならないと。それは、広報・PRの仕事でも同じですよね。

― 確かにそうですね。

小池:今はただでさえ、情報が「伝わりにくい時代」です。世の中に出回る情報量は、これからも増え続けるでしょう。みんな、ほんの数週間前に話題になったニュースも、ほとんど覚えていないですよね。

そんな中で、人々に“態度変容(Behavior Change )”をうながし、社会を動かしていくのがPRの役割だと思っています。そのためにも、きちんと「伝わる」コミュニケーションを目指していかないと。

さまざまなPR施策の先に、たとえばSNSでアクションが起きるとか、面白いイベントが開催できて人がたくさん集まるとか。「メディアに何件、記事が掲載されたか」ということではなく、“その先”が重要なんです。「いかに人が、世の中が動いたのか」という。

― それは小池さん個人としても、会社としても大事にされているポリシーですか?

小池:はい、自分自身が理想とするPublic Relationsのあり方でもあり、Sansanの広報として求められていることでもあります。

さらに当社の場合、代表の寺田(寺田 親弘氏/代表取締役)が、誰よりも圧倒的な“広報・PRマインド”を持っているんですよ。僕自身、寺田から受けた影響もかなり大きいですね。

正攻法はない。その都度ゼロベースで考えていく

― 将来的なキャリアを、どう描いていますか?

小池:僕自身は、やはりコミュニケーションの部分をより深めて行きたいですね。いま持っているスキルでいうと、まだ足りないところがたくさんあるんです。

例えば、SNSで人のインサイトを読み解くのもまだまだだと思うし、イベントを完璧にハンドリングできるかというと、それもまだ十分ではなくて。広報・PRの立場として必要なスキルを、いまの仕事を通して吸収したいな、と。

そしてゆくゆくは、がんばっているのに、うまく世の中に情報発信できていない人や企業を支えていけたらと考えています。

― 最後にあらためて、小池さんは「これからのPR」をどう捉えていますか。

小池:個人的な意見としては、本来の意味でのPR=Public Relationsの概念がスタンダードになって、その考え方にもとづいた企業の情報発信が行われる世の中になるといいなと思っています。

そのためにも、僕自身はコミュニケーション領域でさまざまな取り組みにチャレンジしたい。そのナレッジを共有し、業界の役にも立っていければいいと考えているんです。いま一緒にがんばっている若手のPRパーソンと一緒に活躍できると、純粋に楽しいだろうなと思うので。

ただ、PRにおいて「これが正攻法だ」というのはないと思います。相手のことを考え、どうすれば“伝わる”のかを、その都度ゼロから考えることが必要なのではないでしょうか。

コミュニケーションはあくまで手段であり、人を、そして世の中を動かすことが目的です。

それは人間が生きていくうえでも本質的な部分だと思うので、PRという今の職種に巡り会えたのは、本当にラッキーだったなと思いますね。

 


 

PRの本質にあるもの

PR=パブリック・リレーションズに必要とされるスキルや仕事内容は、その時代によっていろいろ変わってきます。これからも、さまざまな変化が生まれていくことでしょう。しかし本質的な“コミュニケーション”の部分は普遍的なものーー改めてそのことに気づかされるインタビューでした。