二人三脚でとことん寄り添い、魅力を引き出していく──C Channelの「あたたかな」インフルエンサーマネジメント
INDEX
さまざまなコンテンツを発信し、人々の注目を集める「インフルエンサー」。特に美容のジャンルで活躍するインフルエンサーを支え、魅力をより増幅させていく仕掛けとしてのプラットフォームを展開し、マネジメント事業まで広く行っているのが、女性向け動画メディア『C CHANNEL』を運営するC Channel株式会社です。
インフルエンサーという特殊なスキルを持つキャラクターをときに育て、活躍を後押しするにあたり、企業として一体どのような関係構築を行っているのでしょうか。マーケティング・PRチームの浜内久乃さんと、コンテンツ制作チームの佐久間実空さんのお二人に話をうかがいました。
Profile
佐久間実空
C Channel株式会社
コンテンツ制作編成部 コンテンツ制作チーム
テレビ番組制作会社に入社。アシスタントディレクターを経てディレクターに。バラエティ番組・美容番組・旅行番組の制作に携わる。2017年C Channel株式会社に入社。世界中のコスメを動画でレビューする新コンテンツ”コスメ部”の立ち上げを経験後、YouTube制作部門の立ち上げに参加、多数のインフルエンサーをマネジメント・プロデュースを経て、現在はコンテンツ制作編成部で自社コンテンツの制作に従事。
浜内久乃
C Channel株式会社
メディア運営部 マーケティング・PRチーム
大学卒業後、IT企業に入社し広告代理事業の営業を担当。2012年にZOZOに入社し、デジタルマーケティングや新ECサイトの立ち上げ業務に従事。その後、マイナビやDeNAにてデジタルマーケティングのみに留まらず、TVCMを担当するなどマスマーケティングまで幅広く経験。現在はC Channelにて広報業務を担当。
※肩書き・プロフィールはインタビュー当時(2020年2月)のものです。
多くの美容系インフルエンサーをサポート
─ 「C CHANNEL」では数多くのインフルエンサーが活躍していますが、会社としては、インフルエンサーの皆さんとはどのような形態でかかわっているのでしょうか。
浜内久乃さん(以下、浜内):私たちが運営する女性向け動画メディア「C CHANNEL」は分散型をとっており、Instagram、Twitter、FacebookなどさまざまなSNSに公式ページを持っています。また、当社はインフルエンサーの事務所機能を併せ持っているんです。契約形態はさまざまで、包括的な専属契約もあれば、YouTubeでの活動のみマネジメントする限定的な契約の仕方もあります。同時に「C CHANNEL クリッパー」として、他の事務所に所属しながら自主投稿をしてくれる方たちにも活躍いただいています。
─ さまざまな契約形態があるのですね。代表的なインフルエンサーの方をご紹介いただけますか?
浜内:当社専属インフルエンサーの一人で、今爆発的に人気があるのが「ひよん」です。「C CHANNEL」は2020年4月で5周年を迎えるのですが、実は彼女は立ち上げから一緒に活動をしてきた仲間なんです。最初はアシスタントとしてアルバイトで働いていました。あるとき、動画に出演するはずだったモデルさんにが急遽出られなくなってしまった際、たまたま現場にいたひよんが代役を務めたことがあって。その動画から人気が出て、今や「C CHANNEL」で人気No.1のインフルエンサーに育ったという経歴の持ち主です。
─ 社内からインフルエンサーが!シンデレラストーリーですね。人気の秘密はどこにあるのでしょうか。
浜内:動画は静止画に比べ、発信者の個性が如実に表れると思います。手前味噌ですが、ひよんは常にまわりに感謝していて努力も怠らない。嫌みのない人柄のよさ、かわいらしさに親しみをおぼえてもらえたのかなと分析しています。
佐久間実空さん(以下、佐久間):彼女は身長も155センチと、ちょっと小さめです。YouTubeではそういったコンプレックスを、「私なりの脚を長く見せるコーディネート術」などの企画にして出し続けてきました。そういうところが、同じように悩んでいる視聴者の共感や信頼を生んで人気が出たのだと思います。
浜内:今でこそ大人気の彼女ですが、初期の頃はファンミーティングやイベントをしても集客が思わしくなくて、本人も自信をなくしていました。ですが、YouTubeに挑戦したことで認知が急速に広がり、ファンの数が伸びたんです。いまではセレクトショップを立ち上げたり、書籍を出版したりするほどになりました。
─ ひよんさんは社内発のインフルエンサーということですが、C Channelが発掘したインフルエンサーの方もいらっしゃるのでしょうか。
佐久間:例えば、昨年C Channelにジョインしたプラスサイズモデルの「桃果愛」は、「ぽっちゃりさんだと締まり色のダークトーンを選びがちだけど、カラフルなファッションを楽しむ素晴らしさを発信したい!」という思いがありました。今までのぽっちゃりさんの価値観を変えるようなインフルエンサーになりたいという彼女の思いを受けて、「ネオぽちゃ」というネーミングを提案してみたんです。
インフルエンサーの悩みに寄り添い、密なコミュニケーションを
─ C Channelに所属することで、さらに飛躍する可能性があるということですね。個人の実力に加えて、どのようなマネジメントをすることで成果が出せるのでしょうか。
浜内:まず他の事務所と異なる強みとして、私たちは自社で「C CHANNEL」というメディアを持っています。「女性向け動画No.1メディア」ということで、インフルエンサーの皆さんには安心感も持っていただけていると思います。そしてもうひとつ、コンテンツマネジメントのノウハウを持っているという点も、インフルエンサーの方にとっての大きなメリットになっているのではないでしょうか。
佐久間:所属のクリッパー・クリエイターへのアドバイスとして伝えるように心がけている言葉が、「視聴者の目線になって企画を考える」です。やりたい企画がたくさん発想できることはとても素晴らしいのですが、「誰がこの情報を求めているのか」を見失うと、独りよがりの企画になってしまいます。少し厳しい話ですが、発信側になる以上、受け手がいるということを考える。夢物語を一緒に追いかけるのではなく、現実的な話を伝えるマネジメントが、より成果の出るコンテンツを生んでいるのではないでしょうか。
─ マネジメント側が現実的な目線を持つ……。インフルエンサーが見えない視点から企画を判断するという意識が求められるわけですね。
佐久間:そうですね。個人的な話なのですが、私はもともとテレビ局でディレクターの仕事をしていたので、美容に関して最初は完全に素人だったんです。激務で肌がボロボロになってしまった当時、たまたま目にした元C Channel所属の美容系インフルエンサーのベースメイク動画をYouTubeで見て、「こんなちょっとしたテクニックで肌が綺麗に見えるなんて……!」と感動して。そんな経験があるので、「初心に帰る」ということはマネジメントをする上でいつも意識しています。
浜内:あくまでユーザー目線を保ちつつ、蓄積された膨大なデータによる客観的な分析を徹底的に行っています。バズっているコンテンツを分析しながら、インフルエンサーの個性ややりたいこととミックスした企画を担当が一緒に考えていく。当然リスクマネジメントについても徹底しています。
─ 攻めと守りのバランスも大事なんですね。それにしても、インフルエンサーの一人ひとりと、かなり密にコミュニケーションを取っていますね。
佐久間:YouTuberやインフルエンサーの事務所としては後発ではあるので、クリエイターとの距離を近づけるコミュニケーションは自然と意識しているのかもしれません。その結果クリエイターから「あたたかさ」に好感を持ってもらえることも多く、所属の決め手になったと言ってもらえることもあります。大手事務所の場合、ある程度システマチックに対応するなど一律のマネジメントしているケースもあると思いますが、当社は少数精鋭だからこそ、1on1で信頼を築くことができているのかな、と。
インフルエンサーは「商品」ではなく「パートナー」
─ お話を聞いていると、C Channelとインフルエンサーの関係性が、ある意味とても“対等”であるように感じられます。
佐久間:そうですね、本当に二人三脚でやっています。「兄弟・姉妹」という感じでしょうか。インフルエンサーの魅力を把握し、表面上の目標ではなく、10年後、20年後にはどうなっていて、「どうやって人生を締めくくりたいのか」といった深いところまでとことん話し合うこともありますね。
─ とはいえ、インフルエンサーとはあくまで個人の活動であり、孤独感を強めてしまうケースもあるのではないか、と想像してしまいます。
浜内:コンテンツに対していいコメントがつくこともあるし、そうではないこともあります。そんなとき、どうしても精神的に不安定になってしまうインフルエンサーも出てきます。自信を失ったときこそ、私たちがどこまで寄り添い支えられるか。一番大事なのはその部分だと考えています。
絶対にインフルエンサーを「商品」として見てはいけない。当然企業として利益を出さなければなりませんが、コミュニケーションで成り立つビジネスにおいて、その目線で良い結果は生まれません。いいときだけではなく、どんなコンディションであろうと一緒に乗り越えていくという姿勢がC Channelらしさだと思います。
心を動かすメディアを実現するために、インフルエンサーのオンリーワンの魅力を引き出す
─ インフルエンサーやコンテンツに対する「愛」がひしひしと伝わってきます。今後もメディア事業とインフルエンサーマネジメント事業に携わっていくうえでの将来像をお聞かせいただけますか。
浜内:「C CHANNEL」は日本だけでなくアジア圏にも展開しており、今後もより世界で愛されるブランドに育てていくのが目標です。そのために、人の心が動かされるようなメディアでありたいですね。私自身、個人のSNSアカウントで所属クリエイターやユーザーの方とコミュニケーションを取っています。「C CHANNEL」のCは「コミュニケーション」のC。その意味を忘れずにいたいです。
佐久間:「情緒価値」を大切にしたコンテンツを発信していきたいですね。私たちにとっての情緒価値とは何かと言うと、「コンプレックスに訴えかけること」なんじゃないかと考えています。コンプレックスって、一番人の感情が突き動かされ、自分ごと化されやすい部分ですよね。「C CHANNEL」はもともと、「女の子がコンプレックスを前向きに捉えられるようなコンテンツをつくろう」という目的をもとに活動を始めました。
今ではF1層の女性が抱えるコンプレックスのデータが大量に蓄積されるようになっています。それをもとに、さまざまなインフルエンサーたちの魅力と掛け算しながら、より良質なコンテンツに育てていきたい。これほど情報が溢れている時代のなかで、信頼できるインフルエンサー・信頼できる企業の発信するコンテンツには、大きな説得力や価値があると私たちは確信しているんです。
マネジメントの裏にあったきめ細かいパーソナルリレーションズ
日々SNSをチェックしていると、「C CHANNEL」の動画コンテンツを目にする機会が頻繁にあります。初めのうちはなんとなく動画を眺めていましたが、次第にひよんさんを始めとするインフルエンサーの存在が身近に感じられるようになり、いつしか彼女たちの発信するコンテンツを信頼し、日々のメイクの参考にするようになっていました。
今回の取材を通して、彼女たちの活躍の裏にはC Channelの綿密なマネジメント=パーソナルリレーションズが存在していたことを知りました。女性たちから支持されることで大量のデータが蓄積され、ときに友情を超越するほど濃い関係を築いたインフルエンサーと良質なコンテンツをつくり、適切なチャネルを通し発信していく。この循環で、さらに多くのファンを獲得していく──。C Channelの「人をとことん大切にする」コミュニケーションがなせる技なのだと、改めて感じさせられました。(編集部)