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社内外のステークホルダーと関係を深めることを目的としたパブリック・リレーションズの一手法として、企業が主催する様々な形式の「カンファレンス」が注目されつつある昨今。注目のビジネスパーソンたちが登壇し、経営戦略や働き方について考える契機を与えるカンファレンスは、主催企業の企画力や編集力によって大きな影響力を持ちうるイベントとなっています。そのようななか、2019年7月4日渋谷ヒカリエにて、「最強チームを学ぶ日本最大級のカンファレンス 」というコンセプトのもとカンファレンス『PxTX』が株式会社アトラエにより開催されました。
多彩な業界から集結した登壇者による熱いセッションや、チームで体験できるワークショップコンテンツは、どのような狙いをもとに企画されたのか?同時に、カンファレンスを主催するチーム自身には、一体どのような影響をもたらしたのか?
カンファレンスの新たな可能性を模索するため、『PxTX』の企画・運営に携わったアトラエの中村友也さんを訪ねました。
Profile
中村 友也さん(Yuya Nakamura)
2009年早稲田大学卒業。埼玉県出身。新卒でアトラエに入社し、主にGreenの営業チームにて貢献。その後スマートエデュケーションにて未就学児向けアプリ関連事業に従事。起業を経てアトラエメンバーからの熱烈オファーを受けアトラエに復帰。「We Are The Team.」と言える組織を増やすため、日々奔走するなか、2019年7月の「『PxTX』 最強チームを学ぶ日本最大級のカンファレンス」を主宰
「チーム」に焦点を絞り、エンゲージメント向上に資するカンファレンスを
―『PxTX』開催の狙いについて教えてください。
中村友也さん(以下、中村):私たちがカンファレンスで伝えたかったメッセージは2つあります。
1つめは、コンセプトにもある「Team Experience(TX)」の重要性を啓発することです。
私たちは社員のエンゲージメントを可視化するプラットフォーム「wevox」を提供しています。この事業を通して感じるのは、社員一人ひとりのスキル向上だけでなく、チームで働く体験そのものが、エンゲージメント向上につながるということです。
近年の働き方改革において、「Employee Experience(EX)の向上」に注目が集まっています。個々の従業員から見た職場環境の改善や健康面の満足度向上が、働きやすさを考えるうえで大切な指標になっているということです。
しかし、チームにおける適切な指針や環境が伴わなければ、従業員は十分な力を発揮できません。私たちはそのうえで、「Team Experience(TX)」の重要性をもっと広く伝えていきたいと考えたんです。
そして2つめのコンセプトは「行動変容」です。チームを変えるために何をすべきか悩んでいる方々に参加していただくことで、明日からの行動を決めるためのきっかけを提案することが大切だと考えました。
チームを変えていくための行動変容と言っても、そんなに大それたものではありません。会場には、登壇者がおすすめする書籍の紹介ゾーンを設置しましたが、本を一冊読み始めることだけでも、それは行動変容の一つだと考えています。
カンファレンスを通して、できることから一歩ずつ、Team Experience(TX)への意識を高めていく契機をつくりたかったんです。
―「チーム」に強くこだわるのは、なぜですか?
中村:“個”に注目が集まりがちなトレンドにおいても、すべてをひとりの力で完結させることは難しいですよね。私たちは、起業家のイーロン・マスクのようなスーパーマンではありませんし、仮にそうであったとしても、ハイパフォーマーが十分に活躍するためには、それを支えるチームが必要不可欠です。「チームで同じ目標に向かって進むこと」「それを成し遂げた達成感をともに味わうこと」。People Techの領域でビジネスを展開し、日本における「働きがいのある会社」小規模部門で第1位を獲得した私たちアトラエの社員にとっても、チームの大切さは非常に重要なキーワードなんです。
右脳と左脳を刺激し、参加者の行動変容を促すコンテンツ
― 登壇者の皆さんは、各業界を代表する豪華な顔ぶれでした。ゲストはどのように選ばれたのですか?
中村:「行動変容」を促すためのセッションをどう演出できるか議論した結果、「右脳と左脳を揺さぶる体験」が重要だと考えたんです。感情を揺さぶるストーリーと、納得感を促すロジカルな話。二つの要素を満たすことで、参加者の行動を変えることができるのでは、と。
そのアイデアをもとに、右脳に響くスポーツ、エンターテインメントに精通した業界人から、左脳に訴える経営者や研究者まで、幅広いジャンルから候補者を選抜しました。
― 一見すると、直接「チーム」という印象が少ない登壇者も見られますが、テーマとの関連性をどのように見抜いたのでしょうか?
中村:例えば、テレビ朝日「アメトーーク!」のプロデューサー・加地倫三さんの場合、「ひとつの番組をつくるためには100人以上のメンバーが働いており、もはや一企業と変わらない」という話を事前に伺っていました。そして、良い番組をつくるために最もこだわることが「チームづくりであり、番組愛」であると。
メンバーによる番組愛を高めるために彼が努力していることは、企業のチームビルディングのノウハウと共通しています。そして、加地さんの番組の一ファンである私は、番組の中にチーム芸としての一体感を感じたのです。
他にも、今回登壇していただいたゲストの皆さんは業界で“個”のスキル面でも素晴らしいトップランナーばかりですが、同時に独自の“チーム論”を持っていらっしゃる方ばかりでした。
そういった人材を見抜く一種のアンテナは、日々の情報収集のなかで働いていたのかもしれません。
参加者の高い熱量を生み出すカンファレンスにおけるチーム・コミュニケーション
―準備期間に、運営チームのコミュニケーション面で工夫したことは?
中村:開催日が近づくにつれて登壇者を徐々に発表し、チームメンバーの期待値を高め続ける工夫をしました。
運営における責任者は私ですが、あらゆる報告の場では「みんな」を主語に使うようにしていました。登壇者を選ぶときは、メンバーのみんなに喜んでもらうことを意識していましたし、当日配るお弁当一つを選ぶにしても、みんなが笑顔になれるメニューを探しました。
チームみんなに協力してもらい、チームみんなでつくりあげたイベントになったと感じています。
―関係者を巻き込み、熱量高くイベントを成功させるための秘訣は何だと思いますか?
中村:「仕事を楽しめるかどうか」というのは人によりますが、「楽しい仕事なら頑張れる」という点に関しては万人一致すると思っています。登壇者の面々は、社内みんなが話を聴きたいと思える方を選んだという側面もありますし、「我々、運営チーム自身が楽しめること」を前提にすべての準備が進みました。
カンファレンスの内容に関して私を含めたコアメンバーを中心に、コンセプトからゲストまで議論し、社員全員に様々なお願いごとをしながら具現化していきました。
士気高く準備を進め、当日も満足のいく結果が残せたのは、一人ひとりが責任感を持ちながら、一つのチームとしてこのカンファレンスに挑めたからでしょう。
ステークホルダーとの「関係構築」の起点としてのカンファレンス
― 一方で、カンファレンスを通じて社内外のステークホルダーと関係構築を図るうえで重要なことは何でしょうか?
中村:「WHY」に対する意識を強く持つことですね。今回、ご多忙を極めておられる方々にご登壇いただいたのですが、それは私たちが「なぜこのカンファレンスを開催したいのか」を丁寧に伝え、考え方に共感していただくことができたからだと考えています。
おそらく「Team Experience(TX)」「行動変容」というコンセプトが、各業界で第一線を張る方々にとって、響きやすいものだったのではないかと感じますね。この2つのコンセプトは、コアメンバーで深く議論した末にたどり着いたものでした。当初から伝えたい内容は大枠で決まっていたものの、「誰に、どのように伝えたいのか」を考え抜いた結果、導き出されたものです。コンセプトへの徹底した追求もまた、ステークホルダーと意思疎通を図るうえでは重要なプロセスのひとつだと言えるでしょう。
― カンファレンスに関わったステークホルダーとは、今後どのような関係を築いていきたいですか?
中村:登壇者のなかには、wevoxを導入してチームをつくろうと提案してくださった方や、企業同士でのパートナーシップを検討し始めた方がいらっしゃいます。スポンサー企業の皆様のなかにも同様の動きが出てきており、今回のカンファレンスを起点に、皆様とより深く関係を築いていきたいです。
参加者の方々には、このカンファレンス参加を通じて、アトラエのファンになっていただけたら嬉しいですね。アトラエではwevoxのほか、企業成長につながる採用を促進する「Green」や、ビジネスパーソンのマッチングを叶える「yenta」などのサービスも展開しています。カンファレンスへの共感とともに、アトラエのサービス自体にも興味を持っていただければ、良好かつ継続的な関係を築けるのではないかと期待しています。
―『PxTX』のウェブサイトには「See you in 2020」の文字がありますが、今後の展望は?
中村:これは「2020年もでっかいことをやるぞ!」という意思表明です。社内では「野外でイベントをやりたい」「次回は来場者を一万人呼ぼう」なんて話題で盛り上がっていて……。どうしようか、悩んでしまいますね(笑)
今回は第一回目の開催でありながら約750名超の方々にご参加いただき、参加者の満足度は100点満点中84点と課題はあれども、成功と言えるスタートを切ることができました。
セッション会場の外に設けられたワークショップ会場も大盛況で、せっかくご来場いただいたのに参加できない方もいらっしゃいました。今回可視化できた来場者のニーズに応えるために、今後は小規模な形での定期開催も行なっていきたいと考えています。
また、カンファレンス開催という点では、wevoxからGreen、yentaなど他事業部への横展開も今後あるかもしれません。広くメッセージを訴求し、来場者の皆さんとの関係構築を含め、他企業との関係性をより深めるための主軸としても、カンファレンスという場を活用していきたいですね。
カンファレンスによる業界の越境、メッセージの発信が企業にもたらすもの
今回、初のカンファレンス主催を通じて「Team Experience(TX)」の重要性を発信したアトラエwevoxチーム。アトラエのチームが届けたメッセージは、多様な業界を越境し、多くの登壇者と参加者、スポンサー企業から共感を集めました。
また、チーム一丸となって「楽しむ」ことを意識したというカンファレンスの準備期間は、まさに今回のテーマに重なる、「社内チームの体験」として価値を持つものとなったようです。
カンファレンスは、主催企業が「何を大切にし、どのような課題に取り組むか」を伝えるための有効な手段のひとつ。自社らしい表現の在り方を突き詰め、進化させ続ける『PxTX』に、今後も注目していきたいと思います。(編集部)