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人を“混ぜる”コミュニティで、メンバーみんなが主人公になれる場をつくる──6curry・YOPPYさん

INDEX

デジタルツールの普及によって、オンライン・オフライン問わず人と人がつながれるようになった昨今。コミュニティのあり方は多様化し、会社や家族以外に居場所を求める人の声も多く聞かれるようになりました。

そんな中、所属する一人ひとりが納得感をもって関わり続けることができるコミュニティを実現しているのが『6curry』です。

「1日1杯カレーが食べられる」という会員システムでありながら、カレーを食べるにとどまらず多彩な活動が活発に行われるコミュニティは、どのようにつくりあげられているのでしょうか。ブランドデザイナー・YOPPYさんに、コミュニティづくりの秘訣についてお話しいただきました。


Profile

YOPPY
6curry ブランドデザイナー

1988年 鳥取県生まれ。千葉大学工学部卒。大学在籍中にクリエイティブユニット「ナマケモノ」を結成。MTI企画職から面白法人カヤックにデザイナーとして転職。2012年に「イキルことはツクルこと」をモットーに㈱イキモノを設立。 2015年4月よりNEWPEACEの立ち上げに参画。その後、㈱れもんらいふと1年兼業。 現在は、6curryのブランドデザイナーとして、見た目のデザインだけでなく、コミュニケーション・行動・感情など、人が関わるすべてのコトをデザインしている。また、SHE Inc.ではアートディレクターを務める。ブランドリニューアル・銀座拠点ディレクション・SHElikesでデザイン講義を担当。

※所属・職位はインタビュー当時/2020年4月


カレーのように「人が混ざる」ことで生まれる新しいコミュニティ

─ 今日は渋谷の6curryKITCHENにお邪魔していますが、カレーが本当においしそうですね。

YOPPYさん(以下、敬称略):ありがとうございます。食のクオリティには相当こだわっているんです。日替わりのおかずも出しているので、毎日来てもらっても飽きないんですよ。私自身、6curryでカレーを食べるようになってからは、他のカレー屋さんにまったく行かなくなりました。

─ このカレーが1日1杯食べられるというだけでも幸せですが、さらに会員制サービス「6curry」ではどんなコミュニティが展開されているのでしょうか。

YOPPY:6curryは「新しい生き方を選んだ人が孤独にならない場所をつくる」コミュニティです。

最近では複業を選ぶ人や、男女問わず出産や介護を機にキャリアチェンジする人などが増え、働き方が多様化しつつあります。一方、社会のシステムは従来のままで、柔軟に対応できていない部分も大きいように感じます。そのなかで、新しい生き方を選んだ人が社会から孤立しやすい状況が生まれているのではないか、と感じていたんです。

そこで私たちは、今の自分に付随する所属や肩書きからいったん解放され、フラットな関係性の中で人と人が交流できる場所をつくりたいと考えました。

▲写真提供:6curry

─ カレーを通してそれを実現しようとされたのがユニークです。

YOPPY:6curryのコンセプトは“EXPERIENCE THE MIX.”。「さまざまな具材やスパイスを混ぜてつくられるカレーのように、いろいろな人が混ざって何かが生まれるのって楽しいよね」という発想が根底にあるんです。

これを合言葉に、初めて会う人同士が混ざり合って会話を楽しみ仲良くなったり、誰かのアイデアから始まったチャレンジをみんなで応援したりして、楽しさを分かち合えるコミュニティが6curryです。

最初のうちは1杯無料のカレーを目当てに来る人も多かったのですが、いまやカレー提供時間以外にも集まって活動する会員もいて、もはやカレーは集まる口実のようになっていますね。もちろん、とことんおいしいカレーをつくるために全力で活動して、自信作を提供してはいるのですが……。

─ 「1杯のカレー」を入り口にして、その先にコミュニティが広がっているんですね。コミュニティ内ではどんな活動をされているのですか?

YOPPY:オープン当初から続けているのは「1日店長」です。農家さんとコラボしてオリジナルメニューをつくって出したり、ちょっと変わり種だと、ヘッドキュアという頭皮ケアの技術を持った会員が1日店長になって、体験会を開いたりしたこともありました。

もちろん特殊な技能を持っていなくてもいいんです。6curryで出会って意気投合した女性二人が、唐揚げとハイボールを出す「ハイカラバー」をオープンしたこともあります。

▲写真提供:6curry

その後、自然発生的に生まれたのが「部活」です。1日店長よりゆるく気軽に参加でき、申請書を出せば会員なら誰でも立ち上げることができます。漫画部、スイーツ部、雪山部など、同好会のような感じでわいわい楽しんでいます。

─ 店内に案内が貼ってありますが、本当に学校の部活のポスターのようですね。

YOPPY:さらに、もう少し踏み込んで6curryとして活動してみたいという会員向けに、2020年の2月から「6curryLAB」を立ち上げました。ここでは運営メンバーも会員も一緒になって、6curryの課題解決、新しい企画アイデアの考案から実行まで行っています。

6curry編集部に加わってnoteの記事を書いてもらったり、レトルトカレーやアパレルなどオリジナル商品の販売促進企画を一緒に考えたり。こちらから仕事をお願いするというよりは、会員さんのやりたいことを実現するきっかけになるといいなという思いで活動しています。学校でいうと生徒会のような感じですね。

─ 部活に生徒会、わかりやすいですね!

YOPPY:どんな風にコミュニティに加わりたいかは会員さんによって違うので、熱量に応じた関わり方を用意するようにしています。

また、部活やラボに参加していなくても、会員になった時点で大きな役割が担えます。お店に入ってすぐのところに、ウェルカムスタンドというカウンターがあるんですが、そこで新しく来た人を迎え入れて、コミュニティやメニューのオーダー方法についてなど、6curryで体験できることを案内するガイド役がいるんです。これは会員であれば誰でも担える役割なんですね。

─ 格別にやりたいことはない、という会員さんでも、コミュニティの中で役割が与えられるんですね。

YOPPY:「人を混ぜる」というのが6curryの大切なスタンスなので、新しく入った会員さんも、ただカレーを食べて帰るのではなく、コミュニティの中に入っていけるように工夫しているんです。会員の皆さんもそれがわかっているので、気軽に話しかけて顔見知りになるようにしてくれています。そうやって、次に来たときには誰かしら顔見知りがいる、という安心感をつくっているんです。

みんなが主人公になれる場所を、みんなでつくっていく

─ 6curryのようないわゆるサードプレイスの重要性が昨今クローズアップされていますが、そのよさって一体なんなのでしょうか。

YOPPY:会社組織や家族といったコミュニティの中では、自分自身が心から望んだとはいえない社会的な役割がついて回ることもあります。家庭で言うなら、お父さんらしく・お母さんらしくあらねばならないといった縛りですね。

もちろんそれも大切で、役割があるからこそ社会の中で安定して立っていられるんだと思います。一方で、自分の人生というものもある。

6curryでは、なんの利害関係もしがらみもない新しいつながりが生まれます。年齢も性別も超えて、普段の生活圏だったら出会わないような人とつながることができる。その中で過ごしていると、自分が本当にやりたかったことが見えてくるんですね。

必ずしも「何か新しいことをしたい!」という推進力の強い意志を伴うことばかりではなく、たくさんの生き方に触れることによって今までの自分を見つめ直すきっかけが生まれる、それだけでも大きな変容が生まれるんです。

─ サードプレイスで新しい視点を得ることができれば、普段生活している風景もちょっと変わって見えてきますよね。

YOPPY:そうなんです。さらに6curryのいいところは、何かやりたいことがある人がいたら、会員みんなで全力で応援するところです。「がんばって」「応援してるよ」と声をかけるだけでなく、他店舗の視察に同行してあげたり、SNSでイベントの拡散を手伝ってあげたりと、労力を使ってサポートし合っているんです。

─ 運営でシステム設計をしなくても、自然にそういった空気が醸成されているのはすばらしいですね。

YOPPY:私たちボードメンバーも、会員さんに改めて6curryの価値に気づかせてもらうことが多いんです。1日店長を体験したことで、自分でお店を持ってみたいと気づいた会員さんもいます。

誰かの人生の中で、6curryがポジティブな変化のきっかけづくりに貢献できたことは、運営メンバーにとってもこのうえなく嬉しいこと。せっかくなら、会員誰もがポジティブな体験ができる場所にしていこう、と舵切りをしました。

「人を混ぜて楽しいことを生み出していこう」からスタートし、今では「みんなでみんなが主人公になる場所をつくる」とビジョンを掲げるようになりました。次の半期では、「カレーを食べに来てみんなで混ざる」というところから、部活やラボなどを通じてもっと自分の好きなことを披露したり、誰かの夢を叶えることに参加したり、という活動までステップアップすることを目指しています。

まるで文化祭のように、「一緒にやる」ことで体験の価値が生まれる

─ 今6curryは、会員数約500名と順調に会員数を伸ばしています。コミュニティとしての“ホーム感”は大切だと思いますが、一方で固定されすぎて新しい風が入らなくなってしまうと、ひずみの一因となり得る気がします。6curryではコミュニティの“オープン”と“クローズ”についてどのようなバランスを取っていますか?

YOPPY:私たちが一番に大切にしているのは、あくまで会員制コミュニティとして場所の安心・安全を守ることです。そのために、基本的には会員の同伴なしには、非会員が「6curryKITCHEN」に入店することはできないシステムになっています。6curryの会員が「この人は大丈夫」と判断した人しか連れてこないんですね。

そうでないと、「おいしいカレーを食べるつもりでやってきたら、やたらと知らない人に話しかけられて戸惑ってしまう」ということが起きてしまいます。6curryの文脈をまったく知らない人には楽しめないんですよね。お客さん同士のトラブルも、紹介制をとることで一切起きていません。

会員の皆さん自身が、6curryでいろいろな人と出会うことの価値を尊重して守りたいと考えてくれているので、コミュニティの安心・安全が保たれているんです。

会員さんの一人が話してくれたのですが、「6curryには、今まで知り合ったことのないような個性・属性を持つ人たちと出会えるオープンな面と、来たときにまるで家に帰ってきたような安心感が得られるアットホームな面、その両方がある。どちらかを備えたコミュニティはたくさんあるけれど、両方を併せ持っているのは6curryしかない」と。まさにそのバランスを、みんなで大切に守っていますね。

▲写真提供:6curry

─ バックグラウンドがばらばらの人が集まっているのに、家に帰ってきたような安心感が得られるというのはすごいですね。コンセプトを共有しているというだけで、そこまでのつながりを感じられるものなのでしょうか。

YOPPY:一度来店して、自分には合わないからと会員にならない人ももちろんいますし、忙しくてなかなか来られずコミュニティの中に混ざることができなくて辞めてしまう人もいます。

でも、日々のコミュニケーションやさまざまなイベント、部活などで、6curryの“混ざる体験”を充分に楽しんでいただけたら、継続するんですね。大切なのは「みんなでやる」ということなんです。

カップカレーをデリバリーのみで販売するゴーストレストランを立ち上げたのが6curryの始まりなんですが、実はボードメンバーに飲食店経験者が一人もいなかったんです。そこで「カレーで何か新しいこと、面白いことをしませんか」と飲食店経験者を一般公募してラボを設立し、一緒に開発を行ったという経緯があります。

「コミュニティをつくる」というより「一緒に何かをつくろう」という仲間集めが出発点だったので、6curryの根底には“共創”の考えがあるんだと思います。

誰かがつくったものを再現するだけでも、それはそれで楽しいんです。でも、自分がつくる側に回ることで、その体験は自分のものになる。高校の文化祭みたいみたいなものですね。「みんなでやること」、それだけで価値が変わるんです。

─ 文化祭前日に、みんなで大道具の色を刷毛で塗る。数時間の作業でも、やるのとやらないのとでは大きく変わりますよね。

YOPPY:そうなんです。6curryでは、ドリンクのメニューを決める際にも、会員みんなの投票制にしているんですよ。自分が投票したドリンクが選ばれたら嬉しいものです。そういうちょっとしたことでも「みんなで参加する」方法を考えるようにしています。

─ コミュニティが育つにしたがって、いつ間にか特定の会員が牽引して周りが追従する状況に陥ってしまう可能性はないのでしょうか。

YOPPY:恵比寿店と渋谷店に店長はいるのですが、1日店長も頻繁に実施していますし、カウンターの中にはスタッフではなく会員さんが立つことも多いんです。リーダー的な存在が固定されていないからこそ、ゆるいままつながっていられるコミュニティなのかなと思いますね。属人的な要素がないんですよ。

部活も同様です。複数の部活に入るのは自由ですが、部長を務められるのは一人一部だけ、というルールにしています。そうしないと、まとめるのが得意な人がいくつも立ち上げることになってしまいますし、見切れなくなって消滅してしまうとテンションが下がってしまいますから。

メディアの取材が入った際も、取材を受けてもらう会員さんは特定の人に偏らないようにしています。

─ 自然に役割が分散するように工夫されているんですね。お話を伺ってきて、会員から自然発生的に生まれるアイデアや活動でコミュニティが活性化する一方で、要所要所でコミュニティのあり方を守る運営の工夫がなされていると感じました。YOPPYさんはブランドデザイナーとして6curryに参画していますが、どのようなスタンスで運営に取り組んでいますか。

YOPPY:私はもともとデザイナーだったので、当然グラフィックデザインも手がけていますが、その仕事の割合は全体の20〜30%です。6curryでは、どうすれば複雑なシステムをわかりやすく見せられるか、どうすれば会員さんがもっと混ざる体験ができるかといった方策を、デザイナーとしての知見を活かして考えています。

6curryのボードメンバーには私のほかに、カレープロデューサー、コミュニティクリエイター、ブランドプロデューサーの3名がいるのですが、それぞれ肩書きはついているものの、役割は溶け合っていますね。領域問わずに4人で考え、運営に取り組んでいます。6curryLABメンバーの会員さんたちにもどんどん発案してもらいながら、コミュニティをよくしていく活動をしています。

何かをやりたいというモチベーションはみんなにある。それをカタチにしていきたい

─ とても良い流れが生まれている6curryですが、これから実現していきたいことはどんなことですか。

YOPPY: もっと会員数を増やしていきたいですし、熱量を高めるための工夫をこれまで以上に進めていかなければなりません。タイアップなども含め、みんながやりたいことを実現していく仕掛けを今は考えているところです。

仕事ではないので会員さんに活動の強制もできないですし、私たちは場を開いて、みんなが混ざるような仕掛けを用意しているだけなんですが、みんながそれに乗って楽しみながら、自分らしい生き方を見つけてくれているというのが今はただただ嬉しいですね。

会員みんなでつくりあげてきたコミュニティだからこそ、みんなにスポットライトを当てるべく居場所をつくっていきたいと思っています。

─ 今、ゆるやかなつながりで居場所をつくることが非常に求められているように感じます。ある意味、こういったコミュニティの変容は、これからの時代を生きていくうえでの社会課題なのかもしれませんね。

YOPPY:SNSが普及して私たちの日常に入り込むようになってから、「いいね」の数を気にしたり、批判ばかりのタイムラインを眺めたりすることが多くなりました。リアルな自分には関係ないはずなのにネガティブな気持ちに陥ってしまうこともよくあります。

これは個人的な意見ですが、SNSは自分が好きなことを主張できる素晴らしいツールである反面、相互に開かれているからこそ、外部からのトゲを受けやすいんですよね。

だからこそ最近はオンラインだけではなく、オフラインでリアルに楽しいことができる場所を求める風潮が高まっているんじゃないでしょうか。

私の場合は6curry、そして個人的に手がけるデザインの仕事を通して自己実現ができていますが、もし6curryをやっていなかったとしたら、きっと自分がやりたいことを実現できるコミュニティを求めていたんじゃないかと想像するんです。

「コミュニティに関わって何かをやってみたい」というモチベーションを多かれ少なかれ誰もが持っていると思いますが、6curryは、カレーを食べてみたくて来てみたら自然にコミュニティに巻き込まれていった──そんな感じでいいと思うんですよね。互いに巻き込み、巻き込まれながら、自分のやりたかったことを見直す。新しくやってみたいことを見つける。そんな場所をこれからも広げていきたいと思っています。

▲写真提供:6curry

小さなきっかけと背中を押す仕組みがコミュニティを活性化させる

取材の中で「カレーは集まる口実になっている」という言葉が印象的でした。小さなきっかけから、自然と混ざって応援し合える空気がある。持続的なコミュニティに欠かせない要素が詰まっていることを感じました。

6curryは、昨今の新型コロナウイルスの流行を受けてオンラインでのコミュニティ運営をスタートさせています。「withコロナ時代」における新しいコミュニティのあり方を先導を切って模索する過程も応援したいです。(編集部)