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働き方は“開発”しないと意味がない。正解なき社員とのリレーションシップ構築

INDEX

「あなたの会社の『働き方改革』、うまくいっていますか?」

こんな質問をされたらあなたはなんと答えるでしょうか。企業は自信をもって「うまくいっている」と答えられるでしょうか。

日本で「働き方改革」が叫ばれるようになって久しいですが、うまく進んでいる企業がどれほどあるのでしょう。「働き方改革」のゴールは何か。いかにして、社員の理想の働き方や多様な働き方を叶え、生産性の高い働き方にシフトチェンジしていくか。

2018年3月16日(金)に行われた、Sansan株式会社が主催する「Sansan Innovation Project 働き方2020」にて、さまざまなゲストスピーカーによるトークセッションが行われました。

その中のひとつ、「キーワードは働き方“開発”~「働き方改革」が必要な理由と、成功のヒント~」では、BUSINESS INSIDER JAPAN編集長 浜田氏をモデレーターに迎え、数々のテレビ・ラジオ番組にてコメンテーターを務める大阪大学の安田准教授、at will work代表理事として「働きやすい社会づくり」に貢献する藤本氏、リクルートで数々の先進的な働き方改革を実践してきた林氏4名が、企業が働き方改革に取り組むべき理由と、成功の鍵となる働き方“開発”についてトークが繰り広げられました。

4名の話をもとに、「会社」と「社員」の関係性をどう構築すればいいのか、働き方改革におけるエンプロイー・リレーションズ(※)のヒントを紐解きます。

———-

エンプロイー・リレーションズ(Employee Relations……企業が従業員と良好な関係を構築するため、企業内で行うPRPublic Relations=パブリック・リレーションズ)のこと。

キーワードは働き方“開発”~「働き方改革」が必要な理由と、成功のヒント~

▲左から浜田さん、安田さん、藤本さん、林さん


Profile

安田 洋祐さん Yosuke Yasuda
大阪大学大学院経済学研究科 准教授
1980年東京都生まれ。2002年東京大学経済学部卒業。最優秀卒業論文に与えられる大内兵衛賞を受賞し、経済学部卒業生総代となる。2007年プリンストン大学よりPh.D.取得(経済学)。政策研究大学院大学助教授を経て、2014年4月から現職。専門は戦略的な状況を分析するゲーム理論。主な研究テーマは、現実の市場や制度を設計するマーケットデザイン。

藤本 あゆみさん Ayumi Fujimoto
一般社団法人at Will Work 代表理事
Plug and Play Japan Director, Marketing / Communications
大学卒業後、2002年キャリアデザインセンターに入社。求人広告媒体の営業職を経て、入社3年目に、当時唯一の女性マネージャーに最年少で就任。2007年4月グーグルに転職。代理店渉外職を経て、営業マネージャーに就任。女性活躍プロジェクト「Women Will Project」のパートナー担当を経て、同社退社後2016年5月、一般社団法人at Will Workを設立。株式会社お金のデザインでのPRマネージャーとしての仕事を経て、2018年3月予定Plug and Play株式会社でマーケティング/コミュニケーションディレクターとしての新しいキャリアをスタート。

林 宏昌さん Hiromasa Hayashi
株式会社リクルートホールディングス 働き方変革推進部
エバンジェリスト
2005年リクルートに入社。住宅領域の新築マンション首都圏営業部に配属。優秀営業を表彰する全社TOP GUN AWARDを、入社4年目と5年目に連続受賞。2010年にマネジャー昇進し、2012年4月にリクルートホールディングスにて、社長秘書を務めた後、2014年に経営企画室室長に。2015年より広報ブランド推進室室長兼「働き方変革プロジェクト」プロジェクトリーダー、2016年4月ワークスタイルイノベーション 働き方変革推進室室長に就任し、現在に至る。

モデレーター:浜田 敬子さん Keiko Hamada
BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長
AERA 前編集長
1989年朝日新聞社入社。前橋・仙台支局、週刊朝日編集部などを経て99年からAERA編集部。女性の働き方・雇用問題、国際ニュースを中心に取材。2004年からはAERA副編集長。その後、編集長代理を経て、AERA初の女性編集長に就任。16年5月から朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして新規プロジェクトの開発などに取り組む。

引用:Sansan Innovation Project 働き方2020」公式サイト


なぜ、日本の「働き方改革」はうまくいかないのか

働き方改革がうまくいかない背景のひとつに、企業が「働き方改革」と銘打ち導入する制度と、現場の働き方との間に存在する大きな隔たりがあります。

実際にBUSINESS INSIDER JAPANが20代、30代に残業に関するアンケートをとったところ、「仕事量が減っていない」、「クライアント対応に追われる」、「上司に付き合っている」といった声が上位を占めたそうです。

なぜこのようなギャップが生じているのでしょうか。

「日本のマクロ経済はバブル崩壊後、労働生産が低迷するという負のスパイラルに陥っていました。当時の日本では、労働者の時間当たりの賃金は安かったため、多くの企業が資本投資を設備から人へと移行していたのです。

しかし、設備が不十分だと労働が人に集約し、一人当たりの生産性はどんどん下がることになります。また技術革新も起こりません。最近、このサイクルに歯止めがかかり、設備に投資する企業が増えてきました。

そうすると一人あたりの生産性が高まり、さらに賃上げ圧力がかかります。いま負のスパイラルが正へと転換し始めています」(安田氏)

生産量が高まれば、残業しなくてもすむはず、仕事量も減っていくはず。しかし実情はそう簡単に変わっていません。旧態依然とした企業風土が、やはり根強いということでしょう。

続いて安田氏が、ぜひこの言葉を覚えて帰ってほしいと述べたのが「ブラック均衡とホワイト均衡」でした。それこそが、日本の「働き方」が変わらない要因といえそうです。

「残業問題の原因のひとつは『ブラック均衡』です。いくら企業が制度を導入しても、他の人たちが残業をしている状況が変わらなければ、ひとりだけ定時退社するのはハードルが高いもの。残業せずに何かしらの不利益を被ってしまうことを、心理的に割に合わないと感じてしまうんです。

定時退社の奨励、あるいは残業へのペナルティといった制度を導入しても、それは始まりに過ぎません。ブラック均衡からホワイト均衡へ、どうジャンプしていくかを考えない限り、働き方改革は絵にかいた餅にすぎないのです」(安田氏)

経済学の視点から語られる生産性の数値化や、働き方改革に関する分析は非常に興味深いものでした。

企業は働き方改革のための新しい制度を取り入れる前に、現場にいる社員の声に耳を傾け、「ブラック均衡」に陥らないように、既存の働き方や仕事のやり方を見直す必要がありそうです。

働き方を“開発”するという発想

林氏は企業の経営者や社長から働き方改革に関する相談を受けるとき、「何のために働き方改革をするのですか?」と問うそうです。すると、「ダイバーシティを推進していきたい」、「生産性を向上させたい」、「残業時間をもっと減らし、従業員を幸せにしたい」など、さまざまな答えが返ってくるといいます。

「本来、目的に合わせて働き方改革の施策を打たなければなりません。ですが、方針や制度だけが進められて、業務プロセスの見直しがされていない。優先すべきは方針や制度の設定ではなく、いい結果を出すための仕組みづくりです」(林氏)

では、その仕組みはどのように作ればよいのでしょうか。ここで、働き方を“開発”するという発想が鍵になってきます。

「他社の事例で、導入しやすそうなものがあれば『まず、やってみる』。ただし、それを会社単位でやらないこと。組織単位で始めてみて、うまくいかなければなぜうまくいかないのか、どうすれば自分たちに合う仕組みになるのか、というように働き方や制度を都度見直していく。

このように、具体的な方法論を目的に合わせて働き方を“開発”していくことが大事だと思います。働き方改革は新規事業開発とほぼ同じなんです」(藤本氏)

横断一律で方針や制度を組織におろすのではなく、トライアンドエラーを繰り返しながら働き方を“開発”するということが、ますます重要視されていきそうです。

リスクを恐れず「まず、やってみる」

失敗を許さない文化が、いまだ根強く残る日本の企業。やるリスクとやらないリスク、どちらかを選択しなければならない場面において、挑戦を避けることも少なくないようです。

働き方改革には、コストも時間もかかります。やってみたことが失敗に終わるかもしれませんし、新しい何かにつながるかもしれません。

社員と良好な関係を構築していくエンプロイー・リレーションズの取り組みに、明確な正解はありません。しかし、小さな一歩でもはじめてみない限り変わることもないでしょう。

働き方改革を進めて当たり前、進められない企業は淘汰される恐れもあるこの時代。「会社」と「社員」が試行錯誤をしながら、働き方“開発”をしていく。そうした前向きなトライアンドエラーが、これからの組織には求められていくのかもしれません。

[ 構成 : 水本このむ ]


「Sansan Innovation Project 働き方2020 」(主催:Sansan株式会社)
https://jp.sansan.com/lp/sip2018/