PRの実践に必要な体制とは? これからのチームのあり方を考える——イベントレポート#11
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“Public Relations”の言葉に集約されるPRという役割。言葉を紐解くと、広報・IR・宣伝・採用など、事細かに役割が分かれています。しかし、企業のなかでこれらは別部署として扱われることも珍しくありません。
組織のなかで多くのステークホルダーと関係構築を行う必要のあるこれらの役割は、独立した部署ではなく関係構築を目指した組織をつくりたいもの。
そこで今回は、PR Table Communityイベント第11弾として「PRの実践に必要な体制とは? これからのチームのあり方を考える」を開催。
豊富な広報経験を持つ石渡佑矢さん(株式会社ストライプインターナショナル/PR本部 本部長)と上村 嗣美さん(サイバーエージェント/全社広報室 室長)をゲストに、モデレーターには、ミレニアル世代のPRパーソンとして当社メディアにも登場いただいた小池 亮介さん(Sansan株式会社/ブランドコミュニケーション部 PRグループ マネージャー)を迎えて、広報が今考えるべき組織のあり方について議論しました。
ステークホルダーとの関係構築の目的を明確にする
現在、ストライプインターナショナルでPR本部の本部長を務める石渡さん。本部長就任から1ヶ月半の今だからこそ語れるPR本部の立ち上げストーリーを、赤裸々にお話いただきました。
▲石渡 佑矢さん——株式会社ストライプインターナショナル PR本部 本部長/早稲田大学を卒業後、輸入車販売店や市場調査会社を経て、国内最大手のマーケティングリサーチ会社インテージに入社。企業のマーケティング・リサーチ・データ分析500件以上に従事し、新商品開発や集客促進、顧客満足度向上、広告効果測定など、様々なマーケティング課題のリサーチを経験。その後、新設のマーケティング部に異動し、マーケティングマネージャー、広報統括マネージャーを歴任。2018年6月、earth music&ecology、koe、メチャカリなどを展開しているストライプインターナショナルに入社。現在、パブリックリレーションズ本部の本部長として全社のPR・マーケティングを統括。
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石渡:私は、前職のマーケティングリサーチ会社を経て、現在はストライプインターナショナルのPR本部で本部長を務めています。本部長になったのは8月、転職したのが6月なので、まずは体制を整えている段階です。
ストライプインターナショナルのPR本部は、3年前にできた部署です。広報・宣伝・CR室・危機管理・ガバメントリレーションズの5つの部署からなり、これらを本部で統括しています。
代表的な部署には、プレスリリースや取材関連の対応を行なっている広報部、CMやグラフィックの制作に関わる宣伝部、お客様からのお問い合わせ対応を行なっているCR室などが挙げられます。
▲小池 亮介さん(モデレーター)ーSansan株式会社 ブランドコミュニケーション部 PRグループ マネージャー/1988年横須賀生まれ。2013年からITに特化した外資系広報代理店にて、広報・PRのキャリアをスタート。BtoBからBtoCサービスまで、IT企業の広報業務を幅広く経験。2017年にSansan株式会社に入社し、広報・PRに従事。800名を超える広報のFacebookコミュニティ「広報たん勉強会」運営メンバー。
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小池:これほど多くの部署で構成されるPR本部って組織としては珍しいような気がしますね。
石渡:そうですね。この組織体制には、代表の石川の動きが大きく関係しています。じつは、石川が京都大学大学院に通っていた時期がありまして。井之上喬氏の著書『パブリックリレーションズ』を東京から京都の移動中に何度も読み、自社のPR体制について熟考した結果、パブリックリレーションズ本部が設置されたと聞いています。
小池:担う業務幅が広いと、コミュニケーションが大変にはなりませんか?
石渡:それぞれ、ステークホルダーごとに、目的を明確にして関係構築する必要がありますね。社内はもちろんのこと、ユーザーや金融機関などの存在も常々考えているので難しいと感じることはあります。
社長直下の組織で頻繁にコミュニケーションを取りに行く
次に、ケーススタディとして自社の広報体制をお話いただいたのは、サイバーエージェントで全社広報室の室長を務める上村さん。一人広報として奔走した時期や現在の組織体制について語っていただきました。
上村:わたしは、サイバーエージェントの社員数がまだ30人ほどだった頃に、新卒で入社しました。広報立ち上げ当時はひとりで、今までほかの企業に移ることなく一社で広報担当を続けています。
▲上村 嗣美さん-サイバーエージェント 全社広報室 室長/法政大学在学中より、設立2年目のサイバーエージェントで内定者インターンを開始。 2000年に同社へ入社、社長秘書を経て同社一人目の広報専任として広報部署を立ち上げ。 BtoB広報からBtoC広報まで担当し、08年より広報責任者としてサイバーエージェントグループの広報統括と企業広報を担当。社員数30名から4,500名に拡大する過程と、それに伴い変化する広報活動に取り組んできた経験を活かし、宣伝会議主催「広報リーダー養成講座」講師 経済界主催「経済界アカデミア」講師など。著書は2016年2月『成長をかけ算にする サイバーエージェント 広報の仕事術』(日本実業出版社)
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上村:わたしが新卒で入社した頃は、まだ設立2年目。社長直下で広報組織を立ち上げたのは2005年です。組織拡大によって事業内容も変わり、広報に求められるミッションや期待されることの変化に合わせ、必要に応じて組織を分けていきました。
全社広報室と別の組織として宣伝本部がありますが、そちらのミッションはサービスの認知拡大とユーザーの獲得です。宣伝本部では、宣伝活動やマーケティング、CM制作、サービスのSNS運用などを担っています。この組織内にも広報担当がいますが、「AbemaTV」などは約20チャンネル24時間コンテンツを配信しているので、恋愛リアリティショーや将棋、バラエティなど番組ごとのリリース配信なども担当しています。
小池:すごい…PRすべきコンテンツの量がとても多いですね。業務量も増えて大変じゃないですか?(笑)
上村:大変なのは間違いありませんが、番組ごとにターゲット層も少しずつ異なるので、サービスの利用につなげるためにそのターゲットに伝わる媒体や内容を出していくということをしています。
全社広報室は、ミッションがまったく異なります。経営と事業のバリューアップがミッションとして、企業広報や技術広報、事業広報など個々が担当領域を持ちながら、全社視点で経営環境・事業環境を良くするような広報活動を行っています。それぞれ事業担当役員に確認しながら、全社機能の役員と社長と連携しながら進めるような組織体制になっています。
小池:そうなんですね。では社長とも、頻繁にコミュニケーションを取りながら進めているのでしょうか?
上村:はい、随時場面ごとにすり合わせを行なって、経営視点での意見をいただいています。また役員会のフィードバックを元に、広報の戦略や戦術を考えて、必要であれば役員や社長に確認を取るようにしています。
PRは経営者と現場の声をしっかりと聞いて、関係を保つ役割
各企業にケーススタディをお話いただいたあとは、パネルディスカッションへ。事前に用意した5つの議題に、広報部を率いる観点からの意見や考えを語っていただきました。
1 . チームで目指しているゴールはありますか?
石渡:経営層の思い描く世界や実現したいことを、コミュニケーションとPRによって実現することが目標のひとつです。なので、ゴールはないかもしれません。まだまだ組織も大きくないですし、これから成長させていきたいところではありますね。
小池:なるほど。それは、経営層や社長の思い描くゴールに向かって走っている、ということでしょうか。
石渡:トップが掲げる目標も事業部や店舗の声もどちらも大事です。短期と中長期それぞれで目標を掲げて達成する方法を考えています。これからはもっとワクワクするPRのできる会社にしていきたいですね。広報や宣伝自体を目的化するのではなく、関係構築のできる本質的なPRを追い求めたいです。
小池:お話を伺うなかで感じたのですが、石渡さんの思う広報とPRの違いってどのようなことですか?
石渡:ステークホルダーと強い関係を築くことそのものがパブリック・リレーションズだと思います。広報は、マーケティングなどと同じく関係構築を実現する機能なのではないかなと。
小池:ありがとうございます。上村さんはいかがですか?
上村:ゴールとして設けているのは、経営と事業のバリューアップ。経営環境を良くする——つまり企業やサービスの信頼度や知名度の向上・採用につなげたり、事業環境を良くしたりすることなどが挙げられます。
たとえば、サイバーエージェントではマッチングアプリを提供しているのですが、数年前はマッチングアプリ自体の社会的な理解が乏しい状況でした。そこで私たちがまず行ったのは、サービスの認知拡大ではなく、今、マッチングアプリが非常に利用されていて、安心に使えるような取り組みがなされていることの伝達でした。たとえば市場規模だったり、どれくらい結婚したカップルが誕生しているかだったり。安心安全に利用できるための取り組みといったことですね。
こういった、事業環境の向上はPRの大切な仕事のうちのひとつです。そのため、広報が現場と連携して企画を考えることも多いです。事業ごとに広報担当が1名つき、現場のメンバーと企画や運営の設計を一緒に行っています。
当社にはさまざまな事業がありますが、私たちの組織は金太郎飴のごとく誰しもが何に対しても対応できるという組織ではなく、採用広報、BtoB事業である広報、技術広報といった具合に、あえて担当分けをして個人の得意分野を活かし集中できるよう組織づくりを意識しています。
小池:クリアするべき課題に対して、それぞれがスペシャリスト的に動いているんですね。
上村:そうですね。ときには、広報担当者同士で企画して、事業部をまたいで生み出す企画もあります。
小池:すごいですね。メンバーの活動内容を把握し、サポートするのも大変じゃないですか?
上村:週に一度、各事業や広報担当の動きの共有のほか、役員会フィードバックを元に経営目線の擦り合わせを行うとともに、必要に応じて、それを受けて広報ですべきこと、意識することなどを話し合い全員が全社目線でも考えるようにしています。
また、半期に一度、2〜3時間の合宿を行なって全員でグループ目標を考える時間を設けているんです。それによって意思統一でき、その後もみんな同じ意識を持って働けますから。
小池:経営者との目線合わせは大事ですよね。
上村:たとえ、ひとつのサービスに貢献できていたとしても、全社視点で見たときにマイナスになっては意味がないので、その目線合わせはとても大切です。
石渡:うちの会社も、広報部と社長の定例会議を週に一度、設けています。そこでは、会社として発信するメッセージ、取材対応の内容などを組み立てて連携を取っています。宣伝部が別部署であるので、広報部との連携も密に行うようにしています。ポイントは、時間は短くてもいいからコミュニケーションの頻度を密にすることです。
小池:それぞれ、経営層と社員の距離は比較的近い組織体制なんですか?
上村:満遍なくではないですが、会社全体を通してみると経営層と社員の距離は近いと思います。それに、私たちの全社機能は毎回役員会のフィードバックがもらえるのはありがたいことだと感じています。
石渡:うちも近いですね。高頻度で連絡を取り合っています。
小池:事業部同士の連携はどのように取っているのですか?
石渡:発信を強化すべきブランドについては、広報部と事業部で定期的にミーティングを行い、タイミングや発信方法を互いにディスカッションしながら計画しています。
小池:受け仕事というよりは、並走するようなスタンスに感じられますね。
石渡:まさにそうですね。事業のことがわからないと広報部だけではなにもできないので、ヒアリングと意見交換を繰り返して一緒にプロジェクトを回しています。
上村:当社では、基本的に広報担当は事業部内に座席を置いているので、事業部と一体になって広報活動を行なっている感覚を持っています。ただ、人事や法務、経理などの全社機能との連携も必要なので、適宜コミュニケーションを取っています。
小池:サイバーエージェントでは、いつから広報が事業部にコミットする体制に切り替わったんですか?
上村:10年以上前にアメーバブログが立ち上がったタイミングですね。後発サービスということもあり、初めて専任広報を付けて広報とプロモーションを行なうことで、認知拡大に成功して。そうしたら、ほかの事業部でも広報担当者を付けはじめていったんです。ただ、それが進むと全社の統制ができなくなります。さらに広報担当の育成の面からも、全社広報室という組織ができました。
2 . 組織・チームを作るうえで最も大事にしていることは?
小池:チームビルディングを行うえで意識していることはなんでしょうか?
上村:どんなチーム構成にするか、ですね。私たちの部署では、外部からの広報担当の採用をしていません。社内から、未経験でもいいから事業への理解や会社へのロイヤリティの高さがある人材にチームに入ってもらっています。あとは、社内での評判が良いことも重要なポイントです。広報はあらゆる部署や人とやり取りする仕事なので、社内人脈が高いと働きやすいですしね。スキルや経験は後からつけられるので、そこまで重視していません。
また、一人ひとりがやりがいと納得度を高く仕事ができるよう、個々に合わせて目標と役割を設定しています。自分が責任を持つべき役割が、仕事への責任感につながると考えているからです。それぞれの強みをつくりながら、正当な評価を受けられるようなチームであることを意識して目指しています。
小池:広報に限らず、マネジメントに関わるならば意識しておきたいことですね。それぞれのメンバーの強みは、どのようにして把握しているのですか?
上村:「なにをしているときが一番楽しい?」「どんなことで強みを発揮できると思う?」と率直に聞いています。まだ見つかっていない人には、働くなかで考えてもらいつつ、さまざまな機会を用意して強みを見つけたり伸ばしたりしてもらっています。
上村:あとは、必要に応じて1〜2ヶ月に一度、30分の個人面談を行なっています。事業上の戦略で変更があったときには広報の目標設定を変えたり、アクションを確認をしたり、あとは普通に困りごとを聞いたり……。頻度高く話してすり合わせすると軌道修正ができるので、気がついたら自然に回っていることが多いですね。半年くらい過ぎてから軌道修正しようとすると大変なので、自走できる環境をつくりながら、タイミングを見極めるようにしています。
石渡:上村さんのおっしゃる通り、モチベーション維持は大事なことですよね。広報だけに限った話ではないですが、人は「やりたいこと」と「やらなきゃいけないこと」しか取り組まないですし、その場合はやりたいことのほうが能力的に伸びるので。
やりたいことを知るコミュニケーション。経験はあったら望ましいけれど後から付いてくるし、好きなことなら勉強もするはずなので、あとは本人がやりたいことを把握するためのコミュニケーションが必要です。
小池:モチベーション維持確かに大事ですね。一方、広報メンバーのなかには、モチベーションの源泉が見つからない人もいると思うのですが、源泉を探り当てる方法はありますか?
石渡:上村さんが仰っていた「なにをしているときが楽しい?」の質問は大切ですね。仕事だけに限ったことではなく、プライベートで楽しいと感じることさえあれば良いんですよ。それらはいずれ、仕事のファクターと紐づくはずですから。ディスカッションの機会を増やすことによって、源泉を見つけられるようにしています。
上村:小さな成功体験を積み重ねる体験づくりをするのも効果的ですよね。本人にとっては難易度の高くないことだとしても、良いアウトプットができたり誰かに喜んでもらえると、楽しさややりがいを感じられますから。そういう意味では、「マネジメントをしよう」と思い過ぎなくても良いのかもしれないですね。
石渡:あと、モチベーションは、業務内容だけではなく働き方や人の対応・発言などにも左右されます。つまり、自分の対応が周囲に不快感を与えるような対応をしていないかどうか意識する必要があると思いますね。たとえば、部下から話しかけられたら手を止めて話を聞くとか、フィードバックはプラスに捉えてもらえるよう言葉選びに気をつける、とか。
3 . どんなマネジメントをしている?
小池:すでにマネジメントの話が出てしまったのですが、マネジメントに関連しておふたりがKPIとして置いている指標を教えてください。
上村:広報部署全体のKPI設定はやめました。半年ごとの合宿で定める定性的な目標だけです。当社の場合、事業も多岐にわたりますし、市場の変化スピードも速く、適切なKPI設定が難しい。だから、個人の目標は設定しますが企業の広報として追い求める指標は置かず、半年ごとに「広報でどういう状況をつくるか」という目標のみに絞りました。
4〜5年前くらいまでは、記事件数や広告換算費で定量的に評価していたのですが、算出時間がもったいないうえ、本質的ではないと感じるようになったのでやめてしまいました。大切なのは、経営や事業に広報が貢献できているかどうか。それだけです。
小池:KPI撤廃。なかなか踏み切れない企業も多いですよね。実際に変えてみてどうでしたか?
上村:メンバー全体の納得度が上がりました。そのタイミングごとに、広報に求められていることや期待されていることを一人ひとりが意識しているので、納得して働けています。
石渡:うちも、広告換算値をKPIに、みたいなことは意識していないです。前職で広報の仕事をしていたときに、テレビのテロップに2秒会社名が映っただけで「あれは2億円の価値がある」と言われたのですが、「嘘だろう」と思ったので(笑)。
トラッキングとして掲載数は追いかけていますが、それを数値化して落とし込むことはないですね。ただ、個人的にはリサーチ会社出身なので、いずれ効果測定の方法を確立したいと感じています。データドリブンPRを実現したいと思っています。
小池:新しい指標ですね。ぜひ開発してほしいです。
4 . チームに、どんな人材を求めますか?
石渡:重要な要素は、好奇心旺盛であることでしょうか。オン・オフ問わず、情報を集めるクセがあったり情報収集が好きな人は向いていると思います。
最近は、働き方改革でオン・オフを切り替えようって言われていますが、オフで経験したことが仕事に活きることって絶対にありますから。そういう意味では、時間やお金を自分の好きなもの・ことに費やせる人は情報を多く得られるので良いかなと思います。
小池:仕事に前のめりになるためにも良いのかもしれないですね。
石渡:そうですね。うちの会社では朝礼で1分間スピーチの時間を設けているのですが、気になったものをお互いに知ることで興味や好奇心が刺激されると感じています。
上村:当社でも、定例会議うち20分ほどは雑談の時間です。あとは、雑談の時間に、人それぞれの性格やタイプも把握できるので、プロジェクトで人材配置を行う際の指標にもなります。
小池:Sansanでは、ストレングスファインダーを実施し、シェアをする社内制度があります。たとえば、チームを編成するときに、アイデアドリブンの体質の人と慎重さを持った人とを合わせることでうまくいくんですよね。
上村:たしかに、アイデアだけあっても推進できないとどうしようもないですもんね(笑)。
5. これから目指す、チームのあり方は?
上村:今取り組んでいることではありますが、社内にあるネタを拾ってどう露出するか、だけではなく、広報発で時流をとらえたネタを企画・実施するとともに、それを発信することにより、事業に貢献することです。
サイバーエージェントは、事業ごとに組織も異なるうえ、子会社も「サイバーエージェント」という冠がついていない会社が多いことからわかるように、独立性が高い運営をしています。だからこそ、広報が媒介して事業や組織をまたいだコラボレーションを生み出すことで新しい価値をつくっていきたいですね
小池:プロジェクトマネージャーとしての仕事も担っていくのですね。大変なことのように思いますが、そこまでできるものでしょうか?
上村:「広報」という仕事というと、プレスリリースを書いたり取材を受けたり、情報設計をしたりするのが仕事と思われがちですが、それだけにとどまらず、自ら仕事を大きくすることに個々が取り組んでいかなければと思っています。企業のバリューアップやリソースの掛け合わせによって生まれる新しい価値など、広報の集合体だからこそできることがまだまだあるのだと思います。
小池:なるほど。石渡さんはいかがですか?
石渡:情報連携と実働連携が肝になると考えています。広報の仕事していると、しっかりメディアを通じて発信するような大きなネタなのに、気がついたら担当部門から既に情報が出てしまっていたりするんです。せっかく広く知ってもらえるのに機会を損失してしまっているので、もったいないなぁと。
広報が加わることによる適度なリードの方法を構築していきたいですね。目標を達成するためには誰がどのタイミングで何を発信するのか。それらを設計する役割を担っていきたいです。
小池:つまり、事業アクションにコミットできるようなPRパーソンを求めている、ということでしょうか。
石渡:そうですね。そもそも、事業部の戦略や扱っている内容がわからないと誰とも話ができないので、しっかりキャッチアップはしておきたいところです。そのうえで、同じ立ち位置で話せるだけの関係構築も必要だと思います。
小池:事業にコミットした企画をつくったり、事業のミッションを立てられたりできるような人物が求められているんですね。
パブリック・リレーションズを担う、組織体制の形はさまざま
「広報」という同じ職種であっても、会社や事業によって立ち位置やスタンスはさまざま。組織体制も、会社のフェーズや規模、業種業態によって変わってきます。
ただ、事業が向かっている方向性を認識し、報せるべき情報を見極め、社内外の情報の交通整理を実践する。そうした根本にある役割は共通のもの。経営に直結し、会社の梶取りをするために必要なチームでもあるのです。
パブリック・リレーションズはステークホルダーとの関係構築。その役割を担うチーム、そして一人ひとりのPRパーソンは、社内外に関わらず、人と人、人と情報をつなぐ潤滑油のような存在であり、その良好な関係を循環させていくプロフェッショナルです。今回は、そんな3人のPRパーソンから、良好な関係構築の学びをいただいたイベントになりました。(編集部)