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フリーランス広報 大崎祐子さん「経営者の脳をインストールする気持ちで、広報ができることを考える」

INDEX

ミレニアル世代(1980〜2000年生まれ)の若手PRパーソンは、日々どんなことを想い、どんな感覚をもってPublic Relationsを体現しているのか——。

PR Table Communityでは、さまざまなステークホルダーとの関係構築に力を注いでいる人たちにフォーカスしていきます。

これからのPRパーソンは、社会の中で多様な役割を果たしていくことができるはず。

彼・彼女らがいま取り組んでいること、感じている課題、これからの在り方など、リアルな声をぜひ、聞いてください。

きっと、次世代に求められるPublic Relationsの在り方——「PR 3.0」につながる道が見えてくるはずです。

今回お話を聞いたのは、会社員としてIT企業の事業戦略の仕事をしながら、副業としてフリーランスで広報に携わる大崎祐子さん。大学在学中からリモートワークを実践し、フリーランスで企業の広報に担当していたご経験を持つ大崎さん。最近では、広報初心者向けの勉強会「#広報ことはじめ」を開催されています。今回は、大崎さんがこれまでたどってきた道のりと未来についてうかがいました。


Profile

大崎 祐子さん Yuko Osaki
1993年生まれ。大学在学中に東京、海外に在住する人と働く「リモートワーク」を企画、営業、広報の領域で実践。その後、若手クリエイターのマネージャーおよび株式会社キャスターの広報を経て、現在は大手IT企業の事業戦略・ブランド推進部門に所属。2017年11月より副業でフリーランスの広報としても活動中。


「やっぱり広報が好き」会社員+フリーランス広報に

― 大崎さんは学生時代から、リモートで東京の会社と仕事をされていたんですよね。

大崎祐子さん(以下、敬称略):はい。熊本の大学に通いながらリモートワークをしていました。どうやってリモートワークをはじめるか、マインドセットのことをブログに書いていたんです。

― 当時から広報の仕事をしていたそうですが、出会ったきっかけは何でしたか?

大学4年生のとき、株式会社キャスターの代表の方に、「広報という立ち位置で仕事をしてみませんか」と声をかけていただいたのがきっかけですね。

広報の仕事と出会い、自分でも「私の興味関心は広報にあるんだな」と気づいたのですが、大学3年生のときに今の会社から内定をもらっていたんですよね。しかも「企画の仕事がやりたいです!」と言って。だから入社前に、いきなりギャップができちゃったんです(笑)。

― その結果、今はひとつの企業でフルタイムで働きながら、フリーランスとして広報のお仕事をされていると。結構、珍しいパターンですよね。

大崎:そうかもしれませんね。本業で働いている会社では、プロモーションやマーケティングに携わっています。フリーランスとして手がけているのは、株式会社インクワイアをはじめ、いくつかの会社の広報戦略づくりのお手伝い。他にもスポットで企業のプレスリリースを書いたり、女性向けレッスンクラブの「SHE likes」さんなどで、広報初心者の方むけに広報の基礎を教える講師の仕事をしたりしています。

― 最近は、会社員として広報の仕事をしていて、そのスキルを活かして副業をするという人は多くなりましたが、大崎さんの場合、そうではないところがおもしろいです。

大崎:内定した企業で別の仕事をしていても、「やっぱり広報の仕事をやりたい」という想いはずっとあって。幸い今の会社は副業ができるので、だったら自分ができることからやってみようかな、とはじめてみました。

Public Relationsは“コミュニケーションの極み”

― そもそも、学生時代に「広報の仕事が好き」と思えたのはなぜだったのでしょう?

大崎:もともと、何かを発信することが好きだったんです。小学生の頃から、学級新聞や卒業文集を作るときに率先して自分から手をあげるタイプで。今でも、ブログやツイッターでの発信が好きです。

人やものをどう見せるべきなのか、届けたい人にどうすれば届けられるか、などを考えるのもすごく好きですね。

自分で試行錯誤して想像した通りに人に届いたときや、「こうなってほしいな」と思ったように物事が動いたりすると、心のなかでガッツポーズをしています。

― 人やものをどう見せるか、という課題感はどんな経験から生まれたのですか?

大崎:私は大学時代に、ハヤカワ五味ちゃんのマネージャーをしていたことがあって。どうすれば彼女にとってプラスになるか、どう発信すれば次のアクションにつながるかなどを、より戦略的に考えるようになりました。

当時、彼女は「女子大生」、「起業家」、「ランジェリーブランド」という目立つポイントがあって、そのせいか取材依頼をいただくものには色眼鏡でみるような、どうしても私たちがモヤモヤしてしまうものもあったんです。

多くの人が見る、ネームバリューのある媒体さんとはいえど、そういう取り上げられ方をして彼女にとって何かバリューがあるのかな、って。だからこそ、彼女にとってプラスになる取材しか受けないようにしていました。

― ただメディアに掲載されればいいというわけではない、という視点ですよね。

大崎:そうですね。

― そうしたメディア・リレーションズに関して、危機管理やブランディングの視点はどうやって身につけていきましたか?

大崎:当時、インターンとして他の企業でもお手伝いしていたので、そのメンターの方たちがアドバイスしてくれました。

― 当時の経験が、広報のお仕事の原点に?

大崎:マネージャーとして担当したメディア・リレーションズは、私の広報の原体験になっているかな、と思います。また当時はリモートワークや個人的に考えたことをブログに書いてたのですが、日々ブログを書くうちに、よく読まれる記事やキャッチ―なワードなどがわかってきて。PDCAを回していたら、私自身が取材依頼をいただくようになったんです。

このメディアでこういう風に話をすれば、次はこういうところから声をかけていただけるんだな、とわかってきたんですよね。取材を受ける側の視点を養えたことも大きかったです。

― 大崎さんはちょっと変わった道筋から、PRにたどりつかれたんですね。今、ご自身ではPublic Relationsをどう捉えていますか?

大崎:難しいですね……。コミュニケーションの極み、でしょうか。

私たちは仕事やプライベートかかわらず、誰かと関係を構築するときに、「誰に対して何をどう伝えるか」って何気なく意識していると思います。たとえば、先生と話すときはこういう言い方がいいかな、自分の親に結婚の報告をするときは心配しないように伝えたほうがいいな、上司に伝えるときは背景ふくめて丁寧に伝えよう、とか。自然と使いわけていると思うんです。

私にとってパブリック・リレーションズは、個人のコミュニケーションと同じように、会社や組織のコミュニケーションをステークホルダー別に丁寧に“使いわける”イメージです。

もうひとつは、自分のことだけでなく相手のことを敏感に感じることも大切にしています。

個と個のリレーションを超えてパブリック・リレーションズを構築するのが上手な人が増えると自然と良い関係が構築されて、社会はどんどん良くなるんじゃないかなって思います。

広報として見ているのは、会社の「温度感」

― 現在はフリーランスのPRパーソンとして、いくつもの企業に携わっていらっしゃるんですよね。企業の広報戦略を立てるにあたり、どのようなところを見ているか教えてもらえますか?

大崎:定期的にオフィスに行ったり、各社のSlackのチャンネルに入ってみたりして、社内のコミュニケーションの温度感をみています。まずはその会社の社員さんがどういう人たちなのか、ふわっと感じとっていますね。

― 会社の雰囲気を見ている。

大崎:そうですね。この会社の課題はいま何なのか、何が足りていなくて、誰が何を言うべきなのかを考えたり分析したりします。

また戦略を考えるうえで、広報担当者が起業家や経営者の気持ちを受け止める、理解するのもすごく大切だと思います。

― 経営者の気持ちを理解するとは?

大崎:極論を言うと、その人の脳をインストールするような感覚です。

その経営者はどういうコミュニケーションが好きで、今どんなことを課題に思っていて、次のフェーズのために何を考えているのか——その人の思考を徹底的に自分に叩き込むくらいじゃないとダメだなと思っています。

経営者の考え方やキャラクターの傾向はいろいろありますが、自分をひとりの社員・業務委託のメンバーと捉えてしまうと、本当の意味で経営課題に向き合うマインドを持つのってなかなか難しいんですよね。

だから自分も「経営者視点」に立って会社の課題に向き合うと、その会社の事業を伸ばすための提案ができるようになる。経営者の良きパートナーになれるんじゃないかと思っています。完全にインストールすることは難しいかもしれませんが、経営者の友人たちが読んでいる本や記事を読んでみたり、と日々努力はしているつもりです。

― その他、広報として見ているポイントはありますか?

大崎:やはりコミュニケーションの状態です。会社が抱える問題の多くは、コミュニケーションが原因なことも多いと思うんです。誰かと誰かのコミュニケーションが上手く行かず案件がスタックしていたり、経営者の意図ががうまく伝わっていなかったり、それによって経営者自身が焦っていたり。

もちろん経営にかかわる数字を見ることもありますが、その会社の課題は経営者の発言のテンションや言葉の使い方など小さな部分から見えてくることが多いですね。

― そこからまた戦略を立てていく?

大崎:そうです。たとえば人が足りていないのであれば採用広報する。人材不足が解決できたなら、今度は事業を伸ばしていくフェーズになる。その状態に応じて、手法はいろいろあります。

― お話をうかがっていると、広報の仕事をメディア・リレーションズだけでなく、事業をどうスケールさせるか、採用をどうするかなど、すべて一貫して捉えているんですね。

大崎:そうですね。私の場合、その会社の経営課題を考えて、広報として何ができるかというところに落とし込んでいます。もちろん広報だけでは解決できないことも出てきますが、事業の拡張や採用活動など、関わる領域は自然と広くなりますね。

「広報」を軸に10年、20年先のキャリアを考える

― いろいろとうかがってきましたが、改めて、広報の仕事をするうえでの大崎さんのポリシーを教えてください。

大崎:そうですね。その企業の価値観に共感できるかどうか、という点は重視しています。自分の考え方や価値観、信念を曲げるような仕事の仕方はしない。自分に嘘をついている感覚になってしまうので。

― 今後のキャリアについては、どう考えていますか?

大崎:いま25歳なのですが、20代のうちは広報の仕事をやり切りたいですね。バリバリ働きながら子どもも育てたいと思っていて、そのためにどの分野で自分のキャリアを積んでいくかを考えた結果、広報にたどり着いたところもあるんです。

でも、専門性はまだまだ深掘りできていないな、というのが直近の課題で。もっとノウハウを勉強して磨きをかけていきたいです。広報という軸があれば人事や経営との掛け算もできますから、この先40歳、50歳まで続けられるかな、というのがやっと見えてきたところです。

― これからもきっと、さまざまな会社やサービスを支援されていくのでしょうね。

大崎:自分が「いいな」と思える会社やサービスの広報をやっていきたいですね。「ここからここまでの仕事を外注したい」という考え方ではなく、「会社にとってプラスになることだったらなんでもやってください」と言ってくれる企業とご一緒したいと思っています。

広報の仕事は、会社を、そして社会を良くするためにあるものですから。

戦略的な思考をもとに、広報の仕事を捉える

学生時代からリモートワークで仕事に取組み、ハヤカワ五味さんのマネージャーを務めるなど、若手ながら多様なご経験をもつ大崎さん。プロフィールを拝見したとき、特別なスキルを持つ方、というイメージを抱きました。しかし実際にお話をおうかがいしてみると、相手とコミュニケーションを適切に深めながら、ご自身の仕事に落とし込んでいくことを愚直に実践されているのがわかりました。

「経営者の脳をインストールする」「会社をよくするためにできることを、戦略的に考える」という行動軸は、とても印象深いもの。彼女のPublic Relationsの実践は、これからの若手PRパーソンにとってもひとつのヒントになるのではないでしょうか。(編集部)