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お役立ちコラム

2026.1.28

なぜ6割の学生がAI面接を拒むのか。誠実な対話が変える採用CX

執筆:talentbook株式会社 共同代表取締役 大堀航


事業内容 

ITサービス事業、社会インフラ事業

従業員数

単独22,036名(2023年3月末現在)連結118,527名(2023年3月末現在)

「内定を出したのに、また辞退された」

採用担当者のそんな声が、あちこちから聞こえてきます。

2026年卒の内定辞退率(2025年10月1日時点)は65.7%(※)。毎年、内定を出した学生の半数以上が辞退しています。せっかく時間とコストをかけて選考を進めても、最後の最後で「やっぱり行きません」と言われる。この繰り返しに、疲弊している企業は少なくありません。

なぜこんなことが起きているのでしょうか。

リクルートマネジメントソリューションズ社が昨年発表した調査データの結果から見える「採用CX」の重要性を元に、これから企業に求められる新常識を解説していきます。

※参照:リクルート「就職みらい研究所」

 

学生が求めているのは「誠実さ」と「対話」

 

リクルートマネジメントソリューションズが2026年卒業予定の学生685名を対象に実施した「採用CX(候補者体験)に関する意識調査(2025)」を見ると、興味深い結果がいくつも見えてきます。

選考参加意欲に最も影響を与える要因は何か。

答えは「誠実さ」でした。しかも2年連続で1位です。

「納得感」でも「実力発揮感」でもなく、「誠実さ」。学生は選考プロセスを通じて、企業が自分を大切に扱ってくれているか、対等な関係を築こうとしているかを、敏感に感じ取っています。

そして、学生からの評価が最も高い選考プロセスは「個人面接」。参加しやすさ以外のすべての観点で、個人面接が高く評価されています。面接で学生が重視しているのは、1位「誠実さ」、2位「実力発揮感」、3位「納得感」という結果でした。 

 

 

調査を担当した渡辺かおり氏はこうコメントしています。

「候補者は、採用担当者や面接者の一挙一動から企業姿勢を敏感に読み取っています。これは、候補者が就職活動を『単なる選抜の場』ではなく、『自らの未来を託せる企業かどうかを見極める場』として捉えていることの表れと言えます」

学生が知りたいのは、企業の「すごさ」じゃない。
自分がそこで働く姿をイメージできるか、本当に大切にされるかなんです。

 

志望度を上げるTOP5はすべて「対話」に関するもの

 

さらに注目すべきデータを挙げていきます。

「本選考中に志望度が上がった理由」を見ると、TOP5はすべて「対話」に関するものでした。

  1. 自分自身のために十分な時間を割いてくれた
  2. 自分のことをよく理解しようとしてくれた
  3. 企業や仕事内容について、知りたいことを十分に教えてくれた
  4. 選考の合否理由について、納得のいく説明をしてくれた
  5. 自分に合った配属先や業務内容を一緒に考えてくれた

共通しているのは、企業が学生一人ひとりに向き合い、対等な関係で対話しているということ。
つまり、学生が求めているのは「誠実な対話」です。

 

AI評価にはまだ強い抵抗感がある

 

一方で、採用の効率化を追求する企業も増えています。その象徴が「AI面接」です。

では、学生はどう感じているのか。

AI面接を経験した学生が対人面接と比較してどう感じたか。「妥当感」「実力発揮感」「納得感」「誠実さ」——これらすべての項目で、AI面接は「感じにくい」と回答した割合が50%を超えました。

 

 

以下データをまとめると、面接で「人に評価されたい」と答えた学生が63.0%いたのに対し、「AIに評価されたい」と答えたのはわずか15.8%という結果が出ています。 

 

 

人に評価されたい理由としては、

  • 社員に直接会うことで、企業や社員の雰囲気を知りたい
  • 人の面接のほうが、自分のことをうまく伝えられそう

学生は情報収集と見極めの両方を求めています。そして、それはAIでは得られないと感じている。

企業が評価場面でAIを活用することに「悪い印象」を抱く学生は28.6%。AI活用度が高い学生であっても、22.8%が悪い印象を持っています。人生の重要な局面で、評価基準やロジックがわかりづらいAIに評価されることへの抵抗感は、想像以上に強いようです。

もちろん「AI面接」そのものを否定するわけではありませんが、
効率化と引き換えに、企業は学生の信頼を失っている可能性があるかもしれません。

「選び合う」採用CXという新常識

 

ここまで見てきたデータが示しているのは、採用のあり方が根本から変わってきているということです。

企業が学生を一方的に選ぶのではなく、学生も企業を選ぶ。
互いに相手を理解し、納得して前に進む。これが「選び合う」採用です。

そして、この「選び合う」関係を実現するのが、採用CX(Candidate Experience/候補者体験)という考え方です。

採用CXとは、学生が企業と接するすべてのタッチポイントでの体験の質を指します。認知から応募、選考、内定、入社前、入社後まで。一貫して質の高い体験を提供することで、学生の満足度とエンゲージメントを高める。

採用CXの3ステップ:「出会う→深まる→選び合う」

この採用CXは、3つのステップで設計できます。

STEP1:出会う
学生が自分のロールモデルとなる社員に出会い、「この会社には自分の未来がある」と感じる段階です。ここで重要なのは、限られたスター社員だけでなく、多様な社員のストーリーを可視化すること。学生は自分に近い価値観を持つ先輩を見つけることで、初めて「ここで働く自分」をイメージできます。

STEP2:深まる
ロールモデルとの対話を通じて、企業理解が深まり、腹落ちする共感が生まれる段階です。事前に社員のストーリーを知っているからこそ、面接での会話はより本質的になります。「この人と働きたい」という感情が生まれるのは、この段階です。

STEP3:選び合う
企業と学生が互いの価値観や期待を確認し合い、納得して前へ進む意思決定をする段階です。複数のロールモデルとの接点により、学生は「自分はここで大切にされる」と確信できます。

この3ステップすべてにおいて、鍵となるのが「ロールモデル」との出会いです。

実際、talentbook社の調査では65.8%の学生が「社員のストーリーが入社意向に影響する」と回答しています。自分と似た価値観を持ち、自分が目指したいキャリアを歩んでいる先輩社員。その人のリアルなストーリーを知ることで、学生は企業への信頼を深めていくのです。

 

talentbookが考える「採用CX戦略」

 

私たちtalentbookは、この「選び合う」採用CXを実現するためのプラットフォームを提供しています。

考え方の核にあるのは、多様なロールモデルを可視化することです。

限られたスター社員だけでなく、さまざまな職種、年次、バックグラウンドを持つ社員のリアルな働き方を発信する。そうすることで、学生は自分に近いロールモデルを見つけることができます。

 

実践事例:JCOMの「つくって、届けて、対話する」

J:COM様には、母集団形成と内定承諾率の向上を目的としてtalentbookを導入いただきました。

課題はコンテンツ制作のボトルネックでした。従来の方法では、多様な社員の声を学生に届けることが難しかった。でも、AIを活用した社員インタビュー生成ツールにより、たった3ヶ月で18本のロールモデル記事を公開しています。

▶︎【事例解説】コース別採用&全国にリクルーターがいる企業が、with AIで学生フォローの質を高めた方法
 

横浜銀行様でも同様に、記事公開までの期間を最大2ヶ月短縮し、発信頻度を向上させることで、エントリーシート提出数が21%増加、という結果が出ています。

重要なのは、効率化しながらも、一人ひとりのリアルな言葉や価値観をちゃんと捉えること。効率化は手段であって、目的は「学生が共感できるロールモデルとの出会い」を作り、そして「対話する」ことです。

そして、制作したロールモデル記事は、採用プロセス全体で活用できます。

  • 認知段階:SNSや採用サイトで多様な社員を紹介し、幅広い学生との出会いの入口を創出
  • 興味・応募段階:ロールモデル診断などで、学生一人ひとりに合った社員を提案
  • 選考段階:説明会では学生の関心に合わせて関連記事を紹介、面接では配属先の先輩社員の記事を共有
  • 内定段階:近い年次の先輩記事を届けることで不安を解消

このように、一貫したコンテンツ基盤があることで、「会う前に知る」「会った後に深める」という体験を作ることができます。

そして何より大切なのは、これが「誠実さ」を体現する採用設計になっているということです。

学生一人ひとりの関心や価値観に寄り添い、その人に合った情報を届ける。時間をかけて相互理解を深める。企業が本気で学生と向き合っているという姿勢が、すべてのタッチポイントから伝わる。

これこそが、調査でも明らかになった「誠実さ」の正体だと思います。

 

「誠実さ」と「対話」を中心に置いた採用設計へ

 

内定辞退率65.7%という数字は、採用市場の危機を示しているように見えるかもしれません。

でも、見方を変えれば、これはチャンスでもあると私は感じています。

従来の「効率重視」「企業主語」の採用から脱却し、「誠実さ」と「対話」を中心に置いた採用設計へと転換できる企業が、これからの時代に選ばれる。

AIやテクノロジーの活用は重要です。でも、それは手段であって目的じゃない。人と人との対話の質を高めるために使うべきもので、対話を代替するものではありません。

63.0%の学生が「人に評価されたい」と答えているのは、単なる保守的な考えじゃない。
自分の人生を左右する重要な場面で、ちゃんと自分を見てほしい、理解してほしいという、当たり前の願いです。

学生と企業が本当の意味で選び合える未来。それは、お互いが対等な関係で向き合い、納得して前に進む関係です。

これからもtalentbookでは、「誠実な採用」のあり方を突き詰めていきたいと思います。


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