国内を代表する銀行持株会社であり、国内外の全グループ従業員数6万人を有する、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)。同社を取り巻く環境はすさまじく変化を繰り返しており、デジタル化や少子高齢化、グローバル化などによる社会的ニーズの多様化を踏まえた構造的な改革を実施している。
同社では2019年に打ち出した5ヵ年経営計画で「次世代金融への転換」を掲げ、経営基盤となる人事戦略においてもコミュニケーションを軸とした新たなカルチャーヘの変革を進めている。
会社として大きく変わろうとする中、社員に向けて効果的に経営のメッセージを伝え、さらに社内の人材の魅力やカルチャーを社外へも広くアウトプットできる場としてtalentbookはいかに活用されているのか。そして、talentbookを通じた社内への情報発信でどのような変化が起こったのか。グローバル人事業務部の中村 真悠子氏とグローバルキャリア戦略部の原島 渚氏に話を伺った。
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導入背景
・人事施策の社内広報に取り組んでいたものの、社員の働き方やライフスタイルの変化により、これまでの手法だけではグループ従業員全体へ届けられていないという実感があった。
・経営メッセージを社員に向けて発信する機会や方法が限られていた。
・トップダウンによる方針の発信だけでなく、その裏側にあるストーリーを社員の目線で発信するボトムアップのコミュニケーションにも価値があるのではないかと考えていた。
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効果
・社内外に記事が読まれることで、社員の業務への責任感がいっそう高まった。
・社員の自社へのエンゲージメントが向上した。
・社員がキャリアを考えるきっかけの創出につながった。
・社員同士の交流が生まれ、社内コミュニケーションの活性化につながった。
INDEX
加速する組織変革。果たして経営メッセージは社員全員に届いているのか?
従来の人事から社員への情報発信は、社内広報誌やポータルサイトでの展開が中心でした。
採用面では採用サイト(オウンドメディア)を運営し採用ブランディングを強化していますが、社内に対する情報発信においては特にそうした媒体を人事は持っていませんでした。
2019年に発表した新人事戦略では大きな方針転換があり、グループ社員に対して経営のメッセージをこれまで以上に丁寧に届けていく必要がありましたが、経営メッセージを社員にわかりやすく伝える機会や手段が限られているなと感じていました。
伝え方についても、経営側からの一方的な発信では、受け取る社員によって理解度や受け止め方が異なっているのではという懸念もありました。
グループ全体で本気で変わろうとしている時、社員から共感を得るには、トップダウンによる方針の発信だけではなく、その施策の舞台裏に迫るストーリーを社員と同じ目線で伝えていくことも必要なのではないかと考えました。
また、どんなに良いものを作っても見てもらえないと意味がありません。
業務で多忙な現場の社員にヒアリングして見ると、一人ひとりにきちんと伝わっているという実感が得られず、そんな中でtalentbookの存在を知りました。
talentbookのコンセプトと私自身の想いが重なる部分に興味を惹かれたのもありますが、経営陣の発信するメッセージをトップダウンで社員に伝えるのではなく、会社が目指すビジョンを体現している社員の言葉を通して発信することで、他の社員にも熱量が伝わっていくのではないかと考えました。
身近な人が出ているコンテンツは職場で話題になりやすく、社員の見たいという気持ちを引き出すのではないかと思ったんです。
また、自らシステムを構築し運用する必要がないという、導入に対するハードルの低さも魅力的でした。web上でオウンドメディアを運営しようとすると、スキルを持った人材やまとまった予算の確保が必要となり、決断や導入に時間がかかりますが、その点talentbookはクリアでした。
導入に際しては、新しく開始する社員参加型プロジェクト「M-DIM」*のコンセプトをオープンに発信していける画期的な手段だということを社内の各方面にプレゼンして回りました。
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*M-DIM:Mizuho Diversity & Inclusion Monthの略称。社員が多様な考えを吸収し、多様な意見を議論・発信し、他者とのつながりを広げることで意識や行動を変え、「社員の多様性を活かした新たな企業価値の創造」を促進することを目的としたグループ内・グローバル一体で行われる社員参加型のプロジェクト
「〈みずほ〉で仕事ができてよかった」コンテンツ公開をきっかけに高まる自社へのエンゲージメント
過去、採用広報を除いて、活躍する社員を紹介するコンテンツは社内での発信がメインでした。外部に発信する機会があったとしても、紹介できる社員は一部のハイパフォーマーに限られてしまうのが実状でした。
しかし、talentbookを活用することで、これまで取り上げられていなかった様々な職場で熱意と専門性をもって会社に貢献している社員を紹介することができるようになり、実際に取り上げられた社員からは「出てよかった」「昔の上司が連絡をくれた」という好意的な反応があります。
なかには自分のストーリーをSNSでシェアしたら、100件以上の反響があったという社員もいました。
何より、こうした社員が「自らに光があたる」経験をすることで自己肯定感を高め、会社へのエンゲージメントが高まっていると感じています。
普段自分が何を考えて仕事をしているのか、信念のようなものをじっくり考える機会はあまりないと思うのですが、他者に向けてやりたいことや目指していることを“宣言する”ことで、自分の仕事やキャリア志向、価値観を見つめ直す良いきっかけになっていると思います。
それが結果として、「〈みずほ〉で働いていてよかったな」と実感する瞬間につながっているようです。
また、talentbookでの発信を重ねることで徐々に社内からも他の社員の話をもっと読みたいという声が届き始めました。
自身のキャリアへの考え方や所属する部門での働き方、培ってきた専門領域の今後の可能性など、自分の職場以外の人の話を聞きたいという声は、社員がキャリアを考えるきっかけにつながっている証拠でもあり、導入して良かったなと思う点です。
グループ6万人の注目が集まるメディアに。そして、〈みずほ〉のタレントの魅力を社外に届けていきたい
現時点ではグループ全体の多様な社員の活躍を推進するみずほFGグローバルキャリア戦略部ダイバーシティ・インクルージョン推進室で運用をしていますが、将来的にはグループ会社の人事や広報、そして人事以外の各部署とも連携してコンテンツ展開できたら面白いと思います。
スマホやタブレットで自宅や外出先からも閲覧できますし、時間や場所を選ばない点も社内で好評です。talentbookをグループ社員全員が見ているメディアに育てていけたらと考えています。
金融機関というと、「真面目」「堅い」というイメージを持っている方もいると思いますが、社内にはある意味“金融らしくない”多様で魅力的な人材もたくさんいます。
ですが、実際は社内にそのような人材がたくさんいても、社員からは身近な職場以外の状況は見えにくいと思うんです。
人事にいるからこそ、多様な人材の魅力や〈みずほ〉で実現できるキャリアの幅広さという風景がよく見えるもの。
だからこそ、私たちが今人事という立場から見ているこの風景をオープンにどんどん伝えていくことで、様々な可能性が全社員にあるということを周知していくことが私たちの使命だと捉えています。
コンテンツ内容や発信時期を柔軟に企画できるのも、社員の理解を深める効果があると感じています。
採用広報では、募集職務やキャリアタイプを軸にしたコンテンツを中心に、定期的にコンテンツを更新していますが、talentbookでは色々なテーマでコンテンツを企画し、それぞれのタイミングで発信していく事ができます。
様々なタレントのストーリーを通して、仕事やキャリアの魅力だけでなく社内のカルチャーも紹介していけるプラットフォームとしてとても期待しています。
近年では、若手社員の早期離職も課題の一つですが、会社の一部の側面を見ただけで判断し、離職につながっているケースも少なくないと思います。だからこそ、本当の〈みずほ〉をもっと伝えていきたいですし、いろんな側面から〈みずほ〉の顔を知ってもらいたいですね。
いろんなタレントを見て、いろんなキャリアの形を知って、〈みずほ〉でやりたいことが実現できるんだということを広く知らせていきたいという想いです。
▼みずほフィナンシャルグループのtalentbook