これまで新卒一括採用が中心だった日本電気株式会社(以下、NEC)は社内の構造改革を契機に、2018年度からキャリア採用の強化に取り組んできました。キャリア採用の目標達成に向けて情報発信の重要性を感じつつも、200以上の事業部(NECでは統括部と呼称)、2万人以上もの社員が在籍していることから、自社サイトを活用した発信だけではリソースとコスト面で限界を感じており、効率よく計画的に採用ブランディングに取り組んでいきたいという課題がありました。
その後2022年7月にtalentbookを導入し、タレント・アクイジショングループとHRBP×talentbookの体制で、採用ブランディングに取り組んでいます。これまでの歩みや成果、今後の展望を、日本電気株式会社 西井 友紀氏、菅崎 理功氏、PR Table の白水 彰一が語り合います。
INDEX
日本電気株式会社
事業内容:ITサービス事業、社会インフラ事業
従業員数:単独 22,036名(2023年3月末現在) 連結 118,527名(2023年3月末現在)
導入目的:キャリア採用強化に伴うジョブの可視化と発信強化、採用活動における魅力づけのための情報コンテンツとして活用
実施施策:記事制作、動画制作(カジュアル座談会)、活用、分析
プロジェクト体制:
タレント・アクイジショングループ:統括・全体窓口
各事業ユニットのHRBP:記事制作
talentbook:採用ブランディングの記事制作における全体ディレクション
■課題
・キャリア採用強化に伴い社員を通して各部門の仕事や雰囲気を紹介したいと思っていた
・企画、構成、取材手配、執筆など、採用活動における情報発信を一人で担う必要があり、記事制作にコスト・工数がかかり負担が大きかった
■導入の決め手
・採用ブランディング施策の企画から記事制作、発信、分析まで一気通貫でサポートしてくれる点
・記事制作支援でコンスタントに記事を発信できる点
・自社採用サイトでも記事を2次活用できる点
・低コストで採用広報を実現できる点
日本電気株式会社(NEC)talentbookページ
https://www.talent-book.jp/jpn-nec
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Profile
西井 友紀 さん
日本電気株式会社 ピープル&カルチャー部門 人材組織開発統括部 タレント・アクイジショングループ ブランディング プロフェッショナル
新卒でNECに入社後、事業マーケティング、営業を経験したのち、全社マーケティング・コミュニケーション部門へ異動。デジタルマーケティング、コーポレートブランディングの経験を積み、2021年度より現職。
菅崎 理功 さん
日本電気株式会社 ピープル&カルチャー部門 HRコンサルティング統括部 パブリックBUグループ プロフェッショナル
新卒でNECに入社後、総務領域や労務・人事制度設計等にコーポレートおよびNECグループ内シェアードサービス会社への出向で携わった後、官公庁へ官民交流。復帰後は官公庁向けビジネスを担当する部門のHRBPを担当し、2023年度より現職。
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聞き手:白水 彰一
株式会社PR Table セールス・カスタマーサクセス部 部長
大学卒業後、大手人材広告会社に入社し、一貫してさまざまな業界・規模の新卒採用戦略に携わる。また九州エリアの営業統括として、営業戦略の構築や組織マネジメントにも従事。2023年1月にPR Tableへ入社後、各セールス部門の営業を経験したのち2023年12月より現セールスカスタマー・サクセス部の責任者に就任。マネジメント業務と並行し、エンタープライズ企業の担当セールスとしても採用ブランディング施策に関わる。
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カルチャー変革の施策としてキャリア採用を強化
白水 彰一(以下、白水):本日はよろしくお願いします。最初に、NECさん全体の採用の組織体制について簡単にご説明いただいてもよろしいでしょうか。
▲日本電気株式会社 ピープル&カルチャー部門 人材組織開発統括部 タレント・アクイジショングループ ブランディング プロフェッショナル 西井 友紀氏
西井 友紀(以下、西井):NECは人事部門が大きく3つに分かれています。1つがCoEと呼ばれる人事戦略を立案する部門、もう1つはHRBP/HRCというビジネス部門の戦略に適した人事を推進する部門、そして3つめが実際のオペレーションを回していく部門です。3つめはNECマネジメントパートナーというグループ会社が担っています。この3部門がタッグを組んで人事業務を推進しています。
採用は私たちタレント・アクイジショングループが全社の窓口としてリードしており、実際の採用業務はビジネス部門と、菅崎さんが所属するHRBP/HRCの皆さんと一緒に進めています。
白水:ありがとうございます。この採用体制になったのはいつ頃からなのでしょうか?
▲株式会社PR Table セールス・カスタマーサクセス部 部長 白水彰一
西井:キャリア採用の強化へシフトすることになったのが2018年度で、その時にCoE組織の中にキャリア採用業務を推進するタレント・アクイジショングループが立ち上がりました。
白水:新卒一括採用だったところからキャリア採用を強化することになった背景は何だったのでしょうか?
西井:当社は2010年代から構造改革を進めてきましたが、そのなかでカルチャー変革の必要性を強く認識し、2018年から推進してきました。それまでのNECは、同質性の高い企業文化でしたが、新しい知見や自社には無い知識、スキルを持つ人材を取り入れることで組織を活性化させ、カルチャー変革を促す施策の一つとしてキャリア採用の強化が始まりました。
白水:キャリア採用の強化やタレント・アクイジションの発足など、他社に先駆けて取り組まれた印象があります。実際にキャリア採用を強化していくにあたって、立ち上がりや運用期を含めて、苦労された部分などあれば教えてください。
▲日本電気株式会社 ピープル&カルチャー部門 HRコンサルティング統括部 パブリックBUグループ プロフェッショナル 菅崎 理功氏
菅崎 理功(以下、菅崎):2018年頃からそうした動きが始まって、僕は2019年にHRBPにジョインしたのですが、正直に言うとキャリア採用を経験したことがありませんでした。
でも当時のHRに多くキャリア採用の方が入ってきて、キャリア採用のイロハを僕らに伝えてくれました。また、タレント・アクイジショングループにはキャリア採用のノウハウをお持ちの方がたくさんいたので、いわゆるジョブディスクリプション(JD)の作り方ですとか、インテークミーティングの大切さとか、エージェントさんとの連携の仕方とか、キャリア採用の一連の流れが1~2年でかなり整備された印象があります。
西井:当初はキャリア採用をする部門向けに、採用トレーニングも実施するなど、キャリア採用の必要性や有効性を社内の皆さんにも理解してもらおうと進めてきました。
白水:なるほど、キャリア採用のノウハウを1〜2年かけて社内に浸透させていったんですね。御社ほどの規模になるとさまざまな職種のJDをつくるのには苦労されたんじゃないかなと思いますが、いかがでしたか?
菅崎:採用要件を決める部分は、タレント・アクイジショングループの皆さんが丁寧にリードしてくれました。JDをつくるミーティングには、必ず僕らビジネス側のHRとハイアリングマネージャー、タレント・アクイジショングループのメンバーが同席します。
そして採用媒体に登録している実際の候補者さんのデータを検索しながら、「この条件で検索したらこのくらいヒットするのか」「この条件だと市場に全然いないけどどうする?」といった議論を基本的にすべてのJDで行っていきます。ビジネス側だけではわからない部分も多いので、採用部門の方とともにブラッシュアップをし続けていますね。
250統括部2万2千人の仕事内容・カルチャーを可視化するためにtalentbookを導入
白水:キャリア採用の目標達成をめざす上で、talentbookの導入を検討しようと思った背景についても教えてください。なぜ採用ブランディングが必要だと思ったのですか?
西井:全社の採用サイトのリニューアルを進めていく中で、インタビューコンテンツの必要性を感じていました。BtoBの業態で数多くの事業体があり、どの部門でどういう業務をしているか、どんな人が働いているか、採用候補者の方からすると実際のイメージが持ちづらいと感じていました。でも、当時は私1人で担当していたため、約2万人もの社員がいるとインタビューできるのはごく一部で……。
さらにリクルーターからは「部門の紹介をしたい」「部門の人の活動やキャリア、どんな仕事をしているのかを伝えたい」と相談されたのですが、当社には10のユニット、20~30ほどの部門があり、それをさらに細分化すると200以上の統括部になるんですよ。それらの記事を1人でつくるのはさすがに無理だなと(笑)。どんなに頑張っても短期間で20人くらいのインタビュー記事を制作するのが限界だったので、どうしようかと考えた時にtalentbookには制作支援オプションがあると知り、心強いなと思ったことが決め手になりました。
▲2023年12月現在、talentbookでは、20統括部、総勢44名のNEC社員が話してくださった内容を記事化(制作中含む)
NEC様 talentbookページ:https://www.talent-book.jp/jpn-nec
西井:実は、私が以前にインナーブランディングの仕事をしていた際にtalentbookのことを知り、人材一人ひとりにスポットライトを当てて企業の魅力を紹介するという手法に共感していたんですね。その当時も、当社にはやりがいを持って働いている方がいっぱいいたのですが、なかなかうまく外に表現できてないという課題を感じていた経験も後押しになりました。
菅崎:僕はキャリア採用の他社事例について情報収集する中で、選考中の候補者様へ送信するメールに社員インタビューを掲載している事例をたくさん目にしたのがきっかけです。面接を受ける側の気持ちに立ってみると、自分が受けようと思っている部門の情報が載っているのは、とても参考になるなと。そうした企業と当社を比較したときに、「あれ、うちには武器がないじゃん。これはまずいな」と焦りました。とくに政府・官公庁向けの事業を担うパブリック領域は、プロジェクトの事例をなかなか外に出せていなかったので、それを補うためにも現場社員のインタビュー記事が必要だなと感じたんです。
そこで西井さんに相談した際、talentbookを教えてもらいました。僕らも潤沢に予算があるわけではない中、「この金額でここまでやってくれるんだ!だったらやるしかない」と直感的に感じましたね。
記事や動画発信によって生じた社内外のポジティブな変化
白水:魅力を感じていただいた制作支援オプションをご利用いただき、当社が記事コンテンツの企画から制作までサポートさせていただいていますが、その点についてはどう評価されていますか?
西井:最初の想像だと、流れ作業のように取材や制作が進むのかなと思っていたのですが、そうではなく、しっかりサポートしてくださる印象を持ちました。
菅崎:本当に流れ作業ではなく、心が通ったやりとりをさせていただいているなと。僕らは採用以外の業務もしているので、対応が不足していたり、スピードが遅くなってしまったりすることもあるのですが、そんなときも優しくフォローしてくださるのをありがたく思っています。かつ、talentbookで制作していただく原稿はほとんど直す必要がなく、いつも安心、安全のクオリティで助かっています。僕らもなるべく現場の原稿確認の負担を減らしたいと思っているので、しっかり内容をチェックしているのですが、とくに赤入れすることなく現場へお渡しできています。
西井:talentbookの導入時のプロジェクトにはHR部門の方にも入っていただき、記事の企画から制作まで関わってもらったのですが、HRの方も「丁寧にサポートしていただき、やりやすいです」と言っていました。記事のクオリティも素晴らしく、私の上司からも「これはいい記事だね」と評価され、このプロジェクトを継続する決断をしました。
白水:実際に制作された記事を社内でどのように活用しているか教えていただけますか。たとえばJDに組み込んだりしていますか?
菅崎:talentbookには記事を自由に分類できる機能があるので、各部門ごとに分類し、そこへのリンクを全てのJDに追加しています。あとは、社内の人材公募制度の募集要項にも記事を活用させていただくこともありますね。
白水:御社のtalentbookデータを分析すると、記事の滞在時間も長く、読了率も高いですし、記事内に設置しているCTAボタンのクリック率も良い傾向にあります。さらに、HPから記事への流入も、記事に載っている方の名前を検索して読んでくださる方も増えていますね。効果について実感されていることはありますか?
菅崎:新卒採用で印象的なことがありました。昨年若手座談会の動画を公開したのですが、そこに出ている一人の方から「先日新卒社員から『若手座談会の動画を見て入社しました』と言われたんですよ〜」という報告があって。嬉しい気持ちになったと同時に学生さんもしっかり見ているのだと驚かされました。
▲talentbookと共に制作した、官公庁向けビジネスを担当している3名の若手SEによる座談会動画
白水:どういう検索ワードで御社のtalentbook記事に辿り着いているかを見ると「NEC 新卒採用」が結構あるんですよね。なので、学生の方が検索をして動画に辿り着いているのはポジティブな部分だなと感じますね。
菅崎:キャリア採用でも「あのコンテンツを見てました!」という人がいますね。また、僕はキャリア採用の方の入社後のフォローアップ面談も担当しているのですが、最初の面談では必ず「ぶっちゃけどうして入社したんですか?」と聞くようにしているんです。そうすると入社後なので色々と率直にお話いただけるのですが、「記事などの情報や面接の雰囲気も含め決めました」という話が上がることも多いので、情報は武器になるなと毎回感じています。
▲NEC様のキャリア採用ページでも記事を活用(https://jpn.nec.com/recruit/dept/rsfinance/index.html)
菅崎:さらに、採用だけではなく、社員のエンゲージメント向上にも良い影響が出ていると感じています。「部下をインタビューに出したいんだけど!」と相談してくれる方がいたり、インタビューで登場した社員のモチベーションが上がったのを体感したりしているので、社外の広報だけではなく、社内のエンゲージメントを上げるためにも活用させていただこうと考えています。
記事が公開されたら、部門のMicrosoft Teamsで記事を共有するのですが、結構反応があるんですね。他の投稿と比べても「いいね!」とリアクションが多いんです。自分の仕事や仲間の情報が外に出るのは、皆さん嬉しいみたいなんですよね。
▲部門のMicrosoft Teamsで記事を共有した際の様子
菅崎:ある部門の部長が「あの記事見た?」と他のメンバーに声をかけていたり、労いの場で「みんなこんな頑張っているんだから宣伝してね」と話していたり、会話のきっかけにもなっています。社員のことを発信していくことが採用にも寄与しますし、社内のエンゲージメントも上がるし、いい連鎖が起きているなと感じます。
白水:リクルーティングも、インターナルのエンゲージメントも表裏一体だなと思いますよね。うまくご活用いただいている印象です。
「選ばれる企業」になるため、これから挑戦したいこと
白水: 今後のNECさんのキャリア採用に向けた取り組みや展望について、メッセージをお願いします。
西井:当社の2025中期経営計画において、人事領域では「選ばれる企業」をとくに意識して進めています。talentbookのインタビューを通じて、社員が自社のいいところに気づく場面が多いのですが、それをわれわれもしっかり咀嚼し、明文化して、NECのストーリーをみんなが語れるように、全社をリードしていく役割を果たしていきたいなと思っています。
菅崎: 幸いビジネスが好調なので、まだまだ採用を続ける予定です。そのためにもしっかりと武器を持つことが重要なので、鮮度が高く、その人のエモーショナルな部分が伝わるような記事を出していきたいです。NECの良さは「人」なので、talentbookのような人にフォーカスした発信がマッチしていると思います。
「人の良さ」をインタビューや、新しく取り組んでいる1分動画などのコンテンツを通して伝えていけるように、ご協力いただけたら嬉しいです。
白水:引き続き、採用ブランディングの伴走パートナーとしてご支援させていただきます!本日は貴重なお話をありがとうございました。