2023.11.09
事業内容
ITサービス事業、社会インフラ事業
従業員数
単独22,036名(2023年3月末現在)連結118,527名(2023年3月末現在)
2023年9月7日(木)13:00にベネッセi-キャリア社と共催した「ベネッセi-キャリア大学営業直伝!データからは読み解けない Z世代の“リアル”を捉えた採用活動のポイント」より、一部内容を抜粋してご紹介します。
※株式会社PR Tableは2024年11月にtalentbook株式会社へ社名変更しました。
※所属・職位は、記事公開時/2023年11月9日
「Z世代」と呼ばれる24卒・25卒の学生。「キャリアの自律」への関心が高いと言われており、他の世代との違いや価値観の変化を感じるという声も多く聞かれるようになってきました。
特に採用活動においては、学生の価値観や志向性を理解していないままコミュニケーションを取ってしまい、本音がわからず、採用にも結び付かなかったという経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本セミナーでは、スカウト型新卒採用サービス「dodaキャンパス」を運営する株式会社ベネッセi-キャリアの矢竹氏より、アンケート結果などのデータだけでは読み取れない「リアルな情報」を解説いただきました。
大学の教育現場などで実際に学生と接しているからこそわかるZ世代の特徴や、今後の採用活動のヒントなど、見どころ満載だった本セミナー。今回はその内容を一部抜粋してお伝えいたします。
一般的にZ世代とは、1997年から2012年までに生まれた世代のことを指します。矢竹氏曰く、Z世代のど真ん中である就活生の特徴や傾向には、人生の節目となるタイミングでの経験が大きく影響しているそうです。
特に24卒・25卒(2023年4月時点で大学4年生・3年生の学生)は、大学入試のタイミングで大きな変化がありました。24卒の傾向を、影響を及ぼした背景も含めて次のように振り返ります。
矢竹氏:24卒はセンター試験を受ける最終学年、25卒は「共通テスト」と言われる新しい入試の最初の学年です。共通テスト初年度の25卒は、前年傾向もなく対策が取れません。また、センター試験最終学年の24卒は、一浪すると共通テストを受けなくてはいけなくなるため、できればそれは避けたいと考えます。
つまり、進路を決める際に「確実に受かる大学を狙う」という思考が強い2学年になっているんです。こういった背景から、ターゲットとする大学群の幅を広げるのも戦略の一つとなるかもしれません。
矢竹氏:学生の動きとしては、例年どおり夏のインターンシップが山場になります。しかし、23卒生までは8月のインターンシップ参加に向けて動いていましたが、24卒は、6~7月の参加に向けて、3か月ほど前倒しで準備していたという傾向がありました。
秋以降の動きは23卒と24卒に大きな変化はなく、秋・冬のインターンシップ参加意向は年々減少傾向にあるそうです。企業のみなさまにおいては、インターンシップなどの「接点を設けるだけ」の戦略は、秋以降の学生動向にマッチしない可能性が高いと認識しておくことがポイントになります。
では、進学のタイミングで、大学入試環境の変化や新型コロナウイルス感染症の影響を受けた25卒の学生たちには、どのような傾向や特徴があるのでしょうか。
矢竹氏:先ほどもお伝えしたとおり、25卒の学生に関しても「確実に受かる大学」に狙いを定めたという傾向があるので、採用ターゲットの幅は少し広げていただいてもいいかと思います。また、一般入試を受けるのではなく総合型選抜(旧AO入試)で早期に合格を決めた層が増加したという点も、25卒学生の傾向の一つとしてあげられます。(詳細は後述)
彼らは新型コロナウイルス感染症の影響で、高校生活の「青春」の棚卸しがされないまま大学生活をスタートしています。2023年現在、ようやくキャンパスライフを謳歌できるようになりました。そんな彼らには、全体の傾向として以下のような特徴があります。
矢竹氏:25卒の学生は、コロナ禍で大学生活をキャンパスの中で過ごした期間が長くないので、他者に揉まれず、他者比較をしてきていません。もっと言うと、自己理解の深掘りができていないんです。そんな学生たちが夏のインターンシップを経験し始め、ようやく他者比較や他者からの視点を得られるようになってきたというタイミングになります。
もしかすると、過去の学生と比較すると25卒の学生に物足りなさを感じていらっしゃる企業様もいらっしゃるかもしれません。もちろん、魅力的で優秀な学生さんも多くいるかと思いますが、この卒年の全体的な傾向としてこのような背景があるというポイントは抑えておいていただくと良いかと思います。
続いて矢竹氏は、Z世代である学生とのコミュニケーションで意識すべきポイントを次のように解説します。
矢竹氏:Z世代の学生には、社会問題・社会貢献への意識が高いという特徴があります。彼らは、高校生までにSDGsや環境問題に対する探求学習をしており、自然とこれらの領域に対するアンテナを強く持っているためです。面接や学生とのコミュニケーションの中で、学生側からこれらに関する質問が出てくることもあるかと思いますので、意識しておくべき項目かもしれません。
また、成長への関心が高いことと関連しますが、自分だけの個性を追求し「自分らしさ、自分の生き方、自分のやりがい」を重視しています。そして、承認欲求が非常に強いという傾向があります。そんな学生へは、選考中のフィードバックなどが効果的です。
「あなたはこういう風に見られていた」「客観的にはこんな風に映っていた」と伝えたうえで、次のアクションや成長のステップを示してあげる。すると、学生はフィードバックを通して、自身の成長や「自分は認められている」と感じ、そういう対応をしてくれた企業への満足度や好意度も向上すると考えています。
矢竹氏は、学生のファーストキャリア支援をする中で、Z世代の就職活動には次のような特徴が見えてきたと言います。
矢竹氏:さまざまなキーワードが出ていますが、デジタルネイティブである彼らは調べることが得意ですが、就職活動においては情報過多で決断ができません。そのため、「信頼できる第三者からの信頼できる情報」を求めているというのが特徴の一つとしてあげられます。第三者の口コミなども確認したうえで、安心した状態で就活を進めるという傾向は特に強いかもしれません。
就職活動におけるZ世代の特徴には、「受験生と大学の変化」も大きく関わっていると言う矢竹氏。入試の変化の部分は前述のとおりですが、大学受験に関して、もう一つポイントとなる変化があったと言います。
矢竹氏:これまでの大学入試といえば「1月にセンター試験を受験して、そこから入試を受けて最後まで頑張って合格を勝ち取る」というイメージが一般的でした。ただここ数年は、総合型選抜(旧AO推薦)で12月までに合格を決める学生たちが国公立・私立共に増加傾向にあります。
2022年度のデータによると、私立大学における総合型選抜・学校推薦型の入学者数は全体の約6割を占めています。国立大においては約18%となっていますが、この割合を30%まで引き上げるという目標※を掲げています。
※参考:一般社団法人国立大学協会:国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン
大学・学部選びでも「入試方法が自分に合っていること」「合格が早く決まること」「受験のしやすさ」など、コスパ・タイパ※のよさという視点が生まれていると矢竹氏は言います。そしてこれらの背景から、大学の学生募集の活動も変化しているそうです。
※タイムパフォーマンスの略。かけた時間に対する満足度を表す言葉。
矢竹氏:アップトレンドとしては、信頼できる人からの推奨・評判は、口コミも含めてかなり重視されるようになってきています。また、大学側も高校生と継続的に接点をつくり、志望意欲を高めるコミュニケーションを取るという動きがあります。
ダウントレンドとしては、一方的な情報発信を行っているオウンドメディアが挙げられます。いわゆるイベントや入試情報を告知するだけの単発的なコミュニケーションは、高校生には響かないんです。
大学の学生募集においても、リアルなストーリーを積み上げていく情報発信や、高校生にとって心地よいコミュニケーション設計に取り組むようになってきています。
では、このような学生たちの人生の節目での経験と変化が、どのように採用活動に影響するか、次のように解説いただきました。
・入試方式/受験回数
一般入試よりも推薦入試を選択する傾向が強い。推薦入試では、受験する大学を絞るため、一般入試と比較して受験回数が少ない。
就活に当てはめると……多くの企業にエントリーする動きは減少し、少ない数に絞り込んで選考を受ける傾向が強い。
・選抜内容/大学選択基準
志望理由書を提出するため、偏差値を基準とした大学選びだけではなく、入学後の学習環境や、何を学んでどう成長できるかなどを重視する。
就活に当てはめると……入社後の働く環境や、自身が成長できるかという観点を重視する。
・募集広報手法
資料請求数をKPIにおいた広報戦略から、学生の興味関心、行動ログに合わせたコミュニケーション戦略へ変化。大学は数か月間かけてアプローチしている。
就活に当てはめると……アプローチされることに慣れている。企業からのコミュニケーションも、自分の興味関心とマッチするタイミングだと心地よい。
矢竹氏:これまでの採用手法では、「集めて、ふるいにかけて見極める」というプロセスが当たり前でした。しかし、今後の採用戦略において重要なのは「共感し合う、見極め合う、確かめ合う」というステップを踏むことです。
採用戦略設計においては、次の3つのポイントを押さえておくと良いと思います。
1.いいものだけを発信してもZ世代には響かない。説得力や信頼性のある情報への変換が必要
「リアル」が伝わる情報発信が学生に響きます。口コミ等でネガティブな情報が存在する場合もあると思いますが、それを企業の課題として開示し、解決に向けてどのように取り組んでいるかを見せることで信頼を得ることもできます。企業側も口コミをうまく活用しましょう。
2.働きやすさは前提で、「育成・成長」がキーワード
研修制度の開示だけでなく、社員の成長ストーリーを伝えることで、学生にとっての自己成長ややりがいの定義とすり合わせが可能です。人材開発部門とも連携するなどして、どのように成長できるのかを具体的に伝えていくことも重要になります。
3.選考の過程で対話を通じて、信頼関係を築く
「あなたを見ている」というメッセージを伝えたり、演出をしたりしましょう。また、インターンシップや選考過程でのフィードバックを行い、学生が成長を感じられる実体験を提供することも重要です。
人生の節目でもある大学進学のタイミングで、さまざまな環境の変化を経験した学生たち。
社会人という新たな節目を迎える今、企業のみなさまと同様、彼らも本気で就職活動に取り組んでいます。
本記事が、Z世代の採用における戦略設計の参考になれば幸いです。
矢竹 秀行氏
2007年にベネッセコーポレーションに新卒入社。入社時から、大学入試・大学教育支援、企業様の人材開発支援に従事する。2016年よりベネッセi-キャリアに所属。現在は、DR営業部部長として大手企業~中小企業など幅広い企業様向けに新卒採用の支援を行っている。