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全社員を「当事者」にする、D&Iカルチャーのつくりかた [BWBC#1 セッションレポート]

INDEX

2022年5月18日(水)-19日(木)、BUSINESS INSIDER JAPANとtalentbookの共同プロジェクト『Better Workplace Better Culture』(※以降BWBC1)を背景としたオンラインビジネスサミットをメディアジーン社と共催しました。

2日間、計6セッションに渡り、新しい“Relations”を積極的に模索し実践しているビジネスパーソンや経営者に登壇いただき、それに呼応して生まれる企業カルチャーの予兆を探究しました。

本記事では、ゼネラルパートナーズ 広報室室長の佐藤ことさん、サノフィ 皮膚領域戦略部 部長 / D&Iアウェアネスリーダーの名川隆志さんを招き、DAY1に行われたセッション「全社員を「当事者」にする、D&Iカルチャーのつくりかた」の模様を写真つきで振り返ります。

なぜ会社にD&IやLGBTQIA+の取り組みが必要なのか

多様な人材を採用すればダイバーシティを実現できるかもしれませんが、重要なのは、彼ら彼女らが本当に働きやすく、個性を活かせるインクルーシブな組織とカルチャーです。

今回、社会課題を解決する事業を展開するゼネラルパートナーズサノフィの2社よりtalentbookでもストーリーを発信されている2名のタレントをお招きし、それぞれのD&Iへの関わり方と取り組みについてお話しいただきました。

▲ゼネラルパートナーズ 広報室室長の佐藤ことさんはtalentbookの運用責任者も担う

民間初の障がい者専門人材サービス事業を2003年に設立し、現在は”障がい者雇用のプラットフォーム”として、ワンストップで支援を目指しているゼネラルパートナーズ。

はじめに佐藤さんより、障がい者雇用率17.89%、女性管理職40%〜50%などの具体的なデータも交えて社内のDE&Iの状況を解説いただきました。2017年より制度改革が進み、フレックスや時短勤務、リモート勤務などが整っていたおかげで、コロナ禍にもスムーズに適応できたのだそうです。

▲今回リモートでの出演となったサノフィ皮膚領域戦略部 部長 / D&Iアウェアネスリーダーのの名川隆志さん

フランスに本社を置き、世界約100国に事業展開する製薬企業であるサノフィにて、マーケティングを中心とした皮膚領域戦略部を管轄されている名川さん。2021年秋にダイバーシティ&インクルージョン推進のため結成された「D&Iアウェアネス(認知向上)」のチームリーダーとなりました。

サノフィでは、ダイバーシティ&インクルージョンに加えて、“Equity(エクイティ:公平さ)”の推進にも取り組んでおり、多様性を持つ人財が、受け入れられ、個性を活かせる“インクルージョン”の職場環境であることに加え、すべての人に公平な選択肢があり、自由にアイディアが出せる環境職場づくりを目指しているとのことでした。

それぞれ自己紹介を終えて、早速トークセッションをスタート。

D&Iには性別、年齢、障がい、それに合わせた働き方の多様性などさまざまな切り口がある中で、まずは各社の軸となっている考え方や注力ポイントをお伺いしました。

「今年サノフィでは新しいビジョンを掲げロゴも一新した。革新的なことをしていかないと多くの患者さんを救えない。イノベーションを起こすためには多様な人材を受け入れ、インクルーシブにしていかなければならない。その上でアンコンシャスバイアスを取り払っていかなければならないと思っています」(名川さん)

▲新しく発表したサノフィのロゴとビジョン

佐藤さんは「欧米中心にD&Iに“Equity”(エクイティ)を入れていこうとする流れがある中で、日本はまだまだ意識が乏しいので個人的に“DE&I”と言うようにしている」と述べた上で、「差別や偏見は、“知らない”に起因するが、“知らない”がなぜ起こるのかというとインクルージョンがないから。障がい者にしてもLGBTQにしても本来どこの地域にもいるはず。インクルージョンを進めていくことが差別や偏見をなくしていくことに繋がるのではないか」と話しました。

名川さんが以前、社内でD&Iのどんなトピックに興味があるかサーベイを実施してみたところ、突出してLGBTQが低い数値がでたとのこと。

「ここのアウェアネスをあげることにチームでも注力した。社会全体、つまり企業内にも約10%はLGBTQがいることを知っているかどうか、が大事。このトピックについて私もこれまでは傍観者だったが、プロジェクトがきっかけで評論家になり当事者になっていった」とチームでの取り組みについてお話しいただきました。

インクルーシブな組織の状態はミックスジュース

続いて2つ目のトークテーマ「インクルーシブな組織づくりの工夫」へ。

まさにDE&I アウェアネスのチームが立ち上がり、さまざまな取り組みを実践されている名川さんに具体的な取り組み内容についてお伺いしていきました。

「昨年大きく3つのことをおこなった。1つがe-ラーニング。グローバルでやっているものを日本でも展開した。2つ目が外部講師などを招き、LGBTQIA+についてのオンライン社内講座の実施。3つ目が、社内SNSでのニュースレター配信です」(名川さん)

「そもそもD&Iとは何なのか」「なぜ日本人にD&Iが必要なのか」など、誰もが抱いていそうな疑問を題材にしていったというニュースレター配信。「インクルージョンって何なの?』というテーマの配信では、ダイバーシティはさまざまな果物が盛られているフルーツバスケットで、インクルージョンはそれらがうまく混じり合ってできた美味しいミックスジュースです、と比喩を使って説明し、とても好評だったといいます。

▲フルーツバスケットとミックスジュースを例えにしてD&Iについてわかりやすく解説いただきました

それに対し佐藤さんも「ダイバーシティはイメージできても、インクルージョンはなかなか理解が難しい部分なので、こういうわかりやすい説明があると共通認識が持ちやすいですよね」と頷きました。

さまざまな施策を行ったうえでの手応えをお伺いすると「実際のところ傍観者の状態からすぐに当事者になるのは難しいので、まずは評論家になってほしい。キャッチーな内容で興味をもってもらい、その先の当事者になってもらえるまで諦めずに続けたい」と決意を語りました。

▲モデレートを担当したのはPR Table PR室マネージャーの久保圭太

続いて、佐藤さんがゼネラルパートナーズで行っている施策について質問。 「会社全体の意識をあげたのが2017年に第二創業期としてクレドを策定したタイミング。このときに制度なども見直した。それまでは”障がい者の就労支援をしている中小企業”というイメージだったが、そこから社内のカルチャーや働きやすさの意識が変化していった。その結果、より多様な人材が入社してくれるようになり、社員から会社へのさまざまな意見が出てきて、改善の良いサイクルが生まれるようになったんです」(佐藤さん)

▲2017年に策定したゼネラルパートナーズのクレド

イノベーションを起こすために多様性が必要不可欠

そして最後のテーマとなる「D&Iカルチャーをどう生み出すのか」へ。

「これからはやはりボトムアップ型の施策が社内でも求められている。まず先頭に立った人が課題を自分ゴトとして捉えて動き、背中を見せる。それを見た人が自分もこうしたいと動きだすのが理想ですよね」(名川さん)

本業が忙しい中、なぜ名川さんはプロジェクトに本腰を入れられたのかを問うと「そもそも仕事とプロジェクトを分けて考えているうちはうまくいかない」と前置きをした上で「DE&Iは本業に活きると思っている。たとえば今のプロジェクトがなかったら自分のチームで心理的安全性を体現できなかったかもしれない。メンバーにも伝われば、それがカルチャーになっていくのだと思う。当事者意識は伝染していきますから」と力強く語りました。

これに対し佐藤さんは「まずはトップダウンでメッセージを出したとしても、それと同時に意見を聞く姿勢を示すことが大事」と自社でのエピソードを交えて展開。 「現場から意見や提案が上がってきたら、期待に応えることが大切。当社でも当事者の社員から指摘をもらって、社長から女性社員だけへのバレンタインのお返しがなくなったり、婚姻にまつわる社内制度は同性カップル間でも使えるようにした。変わったことを実感できると、また意見を出そうと思ってカルチャーに根付いていくんです」(佐藤さん)

さらに「D&Iカルチャーが根付くことによってどんなメリットがあり、どんな変化が会社にもたらされることを期待しているか?」との問いに対してもそれぞれの意見を述べていただきました。

「多様な人を採用し、インクルーシブなカルチャーを作ることでイノベーションが生まれれば、患者さんの暮らしがもっと良くなる。Howだけでなく、“何のためにやっているのか”というWhyの部分がしっかり社員に伝わっていくことがゴールですね」(名川さん)

名川さん自身、売上が高い製品に関わっているのもあり、自分達が変わらないと会社も変わらないという使命感からそうした意識を持つようになったとのこと。

一方、事業として企業側に障がい者雇用の支援を行い、D&Iに対するメリットを伝え続けてきたゼネラルパートナーズが、D&Iの価値を特に感じたのはコロナ禍に入ったタイミングだったといいます。

「2年かけて準備してきた在宅環境の整備が完了すると同時にコロナ禍になり、緊急事態宣言が出る前に完全在宅に切り替えて社員の安全を確保できた。元々弱い立場の人のためにやってきたと思ったことが、実は会社としての強さに繋がり、DE&Iはパワーだと改めて思った。この視点を多くの企業にもってもらえるように事業に取り組んでいきたいですね」(佐藤さん)

D&Iに完璧を求めず、継続していくことが大切

最後に本日の総括として、登壇者ひとりずつメッセージをいただきながらエンディングへ。

名川さんからは「DE&Iは1日で終わらない。日々当事者意識を持ってやり続けていきたい。一緒にがんばりましょう!」という力強い激励のメッセージをいただきました。

佐藤さんからは完璧なD&Iを実現することはできない。日々いろんな取り組みの中で指摘をうけることがあると思うが、継続していくことが大事。失敗は恥ずかしいことではないですから」と視聴者に寄り添うメッセージで締めていただきました。

今回のセッションを通じ、D&Iは一朝一夕で実現できるものではないですが、まずは自社の事業や組織に向き合い、課題を見つけて一つずつ取り組んでいくことの大切さに気づけたのではないでしょうか。

それぞれスピーカーのお二人のキャリアや取り組みはtalentbookのストーリーにも掲載されておりますので、ぜひ興味を持った方はこれを機にご覧いただければと思います。

▼佐藤さんストーリー
「選択肢が増えればみんなが働きやすくなる。会社と社員の魅力を発信する広報室長の想い」

▼名川さんストーリー
「全社員を「傍観者」から「評論家」、「当事者」へ。サノフィ流・D&I実現へのアプローチ」

佐藤さん、名川さん、この度はご登壇いただき誠にありがとうございました!

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■登壇者プロフィール

佐藤古都
株式会社ゼネラルパートナーズ コーポレート部門広報室室長

ダブリン大学トリニティカレッジ心理学部卒。電通イーマーケティングワン(現:電通デジタル)、TBWA\HAKUHODOを経て、障害者の就労を支援する「ゼネラルパートナーズ」にて2018年2月から現在まで広報室長を務める。D&Iやソーシャルビジネスに関する講演を大学等で行うなど、社内外でのD&I推進に取り組んでいる。

名川 隆志
サノフィ株式会社 皮膚領域戦略部 部長/D&Iアウェアネスリーダー

医薬情報担当者(MR)、人事採用担当、営業企画、プロダクトマネージャー、営業所長を経験し、現職はマーケティングを中心とした皮膚領域戦略部を管轄。また2021年秋にダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進のため結成されたプロジェクトでリーダーを務め、社内の意識向上を目指して活動中。