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経営者は正しくステークホルダーに向き合えているか?サステナブルな社会を実現するために必要なこと [BWBC#1 セッションレポート]

INDEX

2022年5月18日(水)-19日(木)、BUSINESS INSIDER JAPANとtalentbookの共同プロジェクト『Better Workplace Better Culture』(※以降BWBC1)を背景としたオンラインビジネスサミットをメディアジーン社と共催しました。

2日間、計6セッションに渡り、新たな“Relations”を積極的に模索し実践しているビジネスパーソンや経営者に登壇いただき、それに呼応して生まれる企業カルチャーの予兆を探究しました。

本記事では、アドウェイズ代表取締役社長の山田翔さん、シニフィアン共同代表の村上誠典さんをスピーカーに招き、ナレッジワークCEOの麻野耕司さんにモデレートいただいたセッション「サステナブルな社会を実現するこれからの企業経営とは」の模様を写真つきで振り返ります。

なぜ企業にサステナビリティが求められるのか

はじめに、モデレーターの麻野さんより本セッションに臨むうえでの自身の「サステナビリティ」に関する思い入れとして、セールスフォース社の「1-1-1」という社会貢献モデルを例に出して語っていただきながら、和やかな雰囲気でセッションがスタート。麻野さん自身も新著である「NEW SALES」の印税は、すべてNPOに寄付されるとのことです。

▲モデレーターを務めたのは、ナレッジワークCEOの麻野耕司さん

各々の自己紹介を終えて早速、最初のセッションテーマであるなぜ企業にサステナビリティが求められるのかへ。

新卒でアドウェイズに入社し、2021年に社長へと就任した山田翔さんは、市場のトレンドに合わせた新規プロダクトの立上げを複数牽引してきた成長の立役者。経営に参画するようになり、本質的な価値を提供できているかを基準に事業の取捨選択をすることで、一時的に業績は下がったものの回復傾向が見えてきたのだといいます。

▲アドウェイズ代表取締役社長 山田翔さん

「社会人になり、会社がとにかく目の前の売上・利益を追わなければならない状況にずっと違和感を持っていた。世の中には本当に課題を解決して稼げている事業と、情報格差を餌にして騙しているような事業の2つが存在しているのではないかと気づき、広告の会社として取り扱うものも考えなければならないと思うように。できるだけ世の中のためになるもので収益をあげて、社員が家族に自慢できるような事業をやりたいと思い、うちがやらなくてもいいものを切り捨てていったんです」(山田さん)

そうすることで目先の売上は下がったが、結果的に業績はV字回復傾向へ。意味がありそうなものにシフトし、しっかり広告に向き合う会社だという印象がついてきた結果ではないかと語りました。

▲アドウェイズの業績は2020年を底にV字回復傾向に

シニフィアン村上さんからは自著である「サステナブル資本主義」の内容も踏まえて、マクロな視点でサステナビリティに対する日本の意識の変化について解説いただきました。

「今は短期的な経営のマイルストーンに引っ張られてしまいがちな時代。昔はどうだったか。はじめて自動車をつくった時代は、いかに日本の技術力を高め、日本というブランドを世界に信用させようかと考えていたはず。経営者は自ずと長期的な視点を持っていたが、80年代に日本がトップになった瞬間に目標がなくなり、短期的な目標に囚われるようになっていったのではないでしょうか」(村上さん)

▲シニフィアン共同代表 村上誠典さん

それに対し、山田さんは「自分達の利害だけで意思決定をしてしまうと、知らないところで誰かに悪影響を及ぼしてしまう。だから視野を広げて、社会に目を向けて事業をしなければならない。広告は見る人にうざいって思われたらなくなってしまいますから。」と自身の関わる広告業界における課題についても言及しました。

向き合うべきステークホルダーを、正しく認識できているか

サステナビリティに対する両者の考え方を聞いたうえで、麻野さんより「経営者はどのように社会課題に向き合うべきなのか。」と問うと、村上さんは「“誰が企業に影響を与えるステークホルダーか”理解しきれていない経営者が多い」と述べたうえで、事例を交えてステークホルダーの捉え方について解説しました。

「たとえば、宇宙開発で『火星にいきます』というプロジェクトを与えられても、皆さんおそらくどうすればそれが成功するかすぐに判断できないでしょう。それはどういう要件やステークホルダーが成否に関わるか正しく理解できないから。火星プロジェクトは細かな技術や計画の積み重ねです。何か一つでも要素が欠けるだけで失敗してしまう。

また、『日本に電気自動車(EV)の新しいインフラを作りましょう』という場合でも、地方自治体や小売店舗など細かく見ていくとステークホルダーが無数にあり、誰かひとりが非協力的であっても実現しない。つまりテーマが大きいビジネスほど、ステークホルダーも増えていく。多様なステークホルダーを捉える、また動かしていくことができないリーダーは大きな事業を生み出したり社会課題を解決することはできないんです」(村上さん)

そう語った上で、経営者にとって大事なことは事業の成否に影響する「ステークホルダーを正しく認識できるか。」「その人たちを動かせるインセンティブを与える仕組みを作れるか」の2点だとまとめました。

サステナブル経営を実現する重要なポイントはインセンティブ設計

山田さんの原体験として「新卒で新規事業に携わっていたとき、中国人のエンジニアから『なぜやるのか?』を毎回問われ、長期視点が養われた」という話を受けて「多様性のある組織はインセンティブがないと動けない」と村上さん。

「サステナブル経営を実現する一番のポイントは“インセンティブ”」とした上で、事例の解説をいただきました。

「社会課題を解決するなら従業員にもインセンティブ設計が必要です。社外取締役で入っているSmartHRの報酬委員会(役員の報酬を決定する機関)は、一見意外に思われるかもしれませんが、まさにサステナブル経営の要。役員陣の自らの報酬のインセンティブが曖昧な人が、周りのステークホルダーのインセンティブを正しく設計できるわけがないですからね」(村上さん)

そのように語り、山田さんもアドウェイズにおける役員陣の評価軸のお話へ。

「評価を何の軸で置くかは毎年見直している。昔は営業利益だけで評価する時期もあったが、アドウェイズの存在意義として『なにこれ すげー こんなのはじめて』というスローガンや『人儲け』という経営理念があるので、そこに対して貢献できているかを軸にして、今は役員間で相互評価するようにしています」(山田さん)

生活者である私たちが主役となって社会を引っ張っていく

これまでの話を受け、麻野さんも自身のステークホルダーに対する視点の変化について触れ、「15年くらいのマネジメント経験において、社員だけじゃなく、社員の家族にも目がいくようになった。長期でみると、家族が応援してくれたら社員が働きやすくなって会社に返ってくると気づいたんですよね」と語りました。

また山田さんは経営者が意識しなければならない点として「新卒採用の現場における学生の意識の変化」を例に挙げていただきました。

「世の中に対して何のために事業をしているかを語れないと、そもそも見向きもされない。僕らの場合は『広告が嫌いなのはわかっています。それはこれまで事業をやってきた人がユーザーの気持ちをないがしろにしてきたから。だからそれを僕らが変えようと思ってます』という語り方をしている。本質的な事業をやっていれば、市場にいる優秀な人材が興味を持って集まってくれると思うんです」(山田さん)

最後に本日の総括として、登壇者ひとりずつメッセージをいただきながらエンディングへ。

村上さんは、「企業のために働いているのではなく、自分達が社会を引っ張っていける大きなステークホルダーなんだとぜひ意識してほしい」という力強いメッセージと共に、経営者に向けては「従業員にインセンティブをつけていく設計をするのが経営者のしごと。ぜひ僕の言っていることを信じてみてください」と締めました。

山田さんは本日の大きな学びとして「日本がNo1になって長期視点を見失ったということは、今がチャンス」と前置きをした上で、「ぜひ勇気をもって、自分が納得できる会社で働いてもらえると日本がよくなるチャンスがあるんじゃないかなと思いました」と視聴者に向けた激励の言葉をいただきました。

そして最後に麻野さんよりひとこと「消費者も労働者も経営者も、皆の力で社会を変えていける可能性がある、と今日は非常に前向きな話をたくさんいただきました。ありがとうございました!」と感謝の言葉を添えて、セッションを終えました。

三者三様の視点で、経営者がするべきことのみならず、誰もが生活者として主役となってサステナブルな社会を実現していける、という視聴者に向けたメッセージがとてもよく伝わってくるセッションとなりました。

最後に登壇者の皆さまで記念に一枚。山田さん、村上さん、麻野さん、この度はご登壇いただき誠にありがとうございました!

—–

以上、イベント内容の雰囲気が少しでも伝わるようダイジェストでお送りさせていただきました。


■登壇者プロフィール

山田 翔
株式会社アドウェイズ 代表取締役社長

2007年アドウェイズに入社後、新規メディアの立ち上げを担当。2009年10月、PC向けアフィリエイトサービス「JANet」のプロダクト責任者に就任。その後、スマートフォン向け広告配信サービス「AppDriver」など新規サービスの立ち上げに貢献する。2012年10月に新規事業開発室室長に就任。2013年7月にアドウェイズの子会社であるBulbit株式会社(現:UNICORN株式会社)を設立し、全自動マーケティングプラットフォーム「UNICORN」を立ち上げる。2014年4月にアドウェイズ執行役員、2016年1月に上席執行役員に就任。2016年6月に取締役に就任後、2021年7月より代表取締役社長に就任。

村上誠典
シニフィアン株式会社 共同代表

未来世代に引き継ぐ新産業創出を目指しシニフィアンを共同創業、グロースキャピタルのTHE FUNDを設立。創業前はゴールドマン・サックスにて東京およびにロンドンの投資銀行部門に長年勤務。SHIFTやSmartHRの社外取締役他、上場およびに未上場の成長企業に取締役、アドバイザー、投資家として関わる。著書に『サステナブル資本主義 5%の「考える消費」が社会を変える』。

麻野 耕司
株式会社ナレッジワーク CEO

2003年 慶應義塾大学法学部卒業。同年、株式会社リンクアンドモチベーション入社。2016年、国内初の組織改善クラウド「モチベーションクラウド」立ち上げ。国内HR Techの牽引役として注目を集める。2018年、同社取締役に着任。2020年4月、「できる喜びが巡る日々を届ける」をミッションに、株式会社ナレッジワークを創業。  2022年4月、「みんなが売れる営業になる」セールスイネーブルメントクラウド「ナレッジワーク」をリリース。著書:『NEW SALES 』 (ダイヤモンド社)、『THE TEAM 』 (幻冬舎)、『すべての組織は変えられる』(PHP研究所)