【25卒採用に向けて】横浜銀行・千葉興業銀行が 「人的魅力を発信する」採用ブランディングを始めた理由とは(後半)
新卒採用強化目的で「人的魅力」を伝える採用ブランディングを開始した横浜銀行様、千葉興業銀行様。地方銀行におけるキャリアパスや働く魅力、行員それぞれのリアルな声を採用候補者に伝えるための具体的な取り組み内容についてお話しいただいたセミナーの内容をご紹介します。(後半)
INDEX
人口減少による労働市場の変化に加え、経済の地方格差や、日銀の金利政策修正などを受け、地方銀行は大きな変革期を迎えています。また、デジタル変革が進む金融業界においては、新たな事業創出やDX推進に適応できる人材の獲得が喫緊の課題となっています。その意向は、経験者採用だけではなく、新卒採用にも及んでいる銀行も少なくありません。
一方で、情報発信する手段やノウハウが不足しており、地方銀行におけるキャリアパスや働く魅力、行員それぞれのリアルな声が採用候補者に伝わっていないというご相談をいただく機会が増えてまいりました。
そうした中、25卒採用に向けて「人的魅力」を伝えるコンテンツの制作から発信、活用、分析までと、一気通貫な採用ブランディングの取り組みを開始したのが横浜銀行様と千葉興業銀行様です。
採用ブランディングを推進している、株式会社横浜銀行 人財部 DEI推進室(新卒採用担当)石渡 加奈子氏、株式会社千葉興業銀行 人事部 人材開発室 七條 唯香氏をお招きし、採用において抱えていた課題から、実践の具体的な取り組み内容についてお話しいただきました。
※本記事の前半はこちら
【25卒採用に向けて】横浜銀行・千葉興業銀行が 「人的魅力を発信する」採用ブランディングを始めた理由とは(前半)
■登壇者プロフィール
石渡 加奈子 氏
株式会社横浜銀行 人財部 DEI推進室(新卒採用担当)
2015年新卒入行。横浜駅前支店の窓口にて資産運用のご相談(サービスアドバイザ―)を3年半担当したのち、2019年同店にて個人渉外へ係替え。2022年4月、現職に着任し、主に新卒採用を担当。
七條 唯香 氏
株式会社千葉興業銀行 人事部 人材開発室
2014年に新卒で入行し、営業店では主に個人渉外業務に従事。2018年からは営業支援部で若手育成支援に携わる。2020年に第一子を出産したのちに、育休を取得。2022年5月より人事部に復職し、現在は新卒採用担当を務める。
白水 彰一
株式会社PR Table セールス・カスタマーサクセス部
新卒で大手人材広告会社に入社し、入社後は一貫して 業界・規模問わず数多くの企業様の新卒採用戦略に携わる。2023年1月にPR Tableへ参画し、セールスとして採用ブランディング施策に従事。
学生からのイメージや、求める人物像の変化について
PR Table 白水: では続いて、ディスカッションパートに移っていきたいと思います。まず最初の質問なのですが、最近「学生からの業界のイメージの変化」が起こってきたな、と肌で感じる部分などはありますでしょうか?
横浜銀行 石渡氏: 都市銀行さんは人気も回復傾向にあると耳にする一方で、地方銀行は引き続き外部環境や限定されたマーケットという観点において「将来性」について不安の声を耳にします。相反して、最近の学生たちはプライベートを非常に重視している方も多く、そういった方にとっては、地方銀行の特徴や限定されたマーケットは大きな魅力の1つになっていることも感じます。
PR Table 白水: ありがとうございます。不安感は選考のプロセスの中でいかに払拭していくかが、結果を左右する要素になるかもしれません。七條さん、いかがでしょうか。
千葉興業銀行 七條氏:若手のうちから成長していきたい、裁量を持って仕事をしていきたいので志望していますという声をいただくようになってきていますね。また、インターンシップなどに参加している学生は、従来の定型的な事務仕事ではなく、お客さまのコンサルティングを中心とした業務への理解が少しづつ広がってきている印象です。
PR Table 白水: では、2つ目のテーマです。ソリューション・カンパニーやコンサルティングのキーワードから見られるように、求める人材像も変化しているように感じました。そのような変化に伴い、選考の評価基準も変える必要性があると思います。実際にどのようにやられていますか?
千葉興業銀行 七條氏: そうですね。先ほど説明した通り、私たちは鶏口人材を求めていますので、そのペルソナをしっかりと固めることで、当行独自の評価項目と基準を定めることができるようになったのではないかと思います。具体的なポイントを挙げると、鶏口人材は一定の思考力を持っているという仮説のもと、選考を設計しています。例えば現状や課題を分析したり、論点を定義したりする力を面接の中で確認するような設計を行っています。
横浜銀行 石渡氏: コンコルディア・フィナンシャルグループの人財ポリシーとして改めて明文化されたのは「常に変革マインドのある人財」を求めていることです。このニュアンスは、以前と比較しても大きく変わったわけではなく、人物重視の評価基準に大きな変更はありません。
一方で、24卒採用は面接官側の意識変革に注力しました。無形商材を扱う銀行は、最終的に働く人や社風が決め手になることが多いにも関わらず、オンラインでは伝えきれないもどかしさを感じます。効率的な就職活動をしている昨今の学生と接点を持てる限られた機会の一つとして「面接」も、当行をPRできる貴重な場として捉え直しました。
従来はコロナ禍で営業店への負担を最小限にしていたことや、判断基準がぶれにくいという利点もあり、人財部内で面接を完結していましたが、今年からは役員、本部の各部長・役職者、営業店の支店長から課長代理まで多くの行員を各面接フローに動員して、面接の場で“人”の魅力を発信する機会を設けました。面接官の面接へのスタンスにぶれが生じないよう、売り手市場であり、選ぶ側ではなく選ばれる側になっている意識改革も事前に念入りに行いました。
PR Table 白水: ありがとうございます。 今お二人のお話を伺って思ったのは、広報のやり方を変えていく必要がある一方で、採用のプロセスや選考部分も一緒に考えていく必要があるということです。また、学生も企業を判断する場面であるため、コミュニケーションの重要性も考慮する必要があります。 これらの要素をしっかりと組み合わせて、どのようにコミュニケーションを進めていくかを考える必要があるということですね。非常に参考になりました。
どのような社員コンテンツを制作しているのか
横浜銀行 石渡氏: 毎回記事を作る際に記事のメインターゲット層を決めて作成しており、大きく分けて新卒向け、キャリア採用向けとインナー向けの3軸を持っています。こちらの記事は、新卒とインナー向けに作りました。
就職活動中の学生から地方銀行と都市銀行との違いについて多く質問をいただくので、地方銀行の面白さや楽しさを感じてもらえるような記事になるよう心掛けました。また、「最速昇進課長」という成長意欲に対するアプローチだけではなく、プライベート重視志向の方にも生活を大切にしながら働いている行員の姿を伝えられたかと思います。
横浜銀行 石渡氏: 2本目も、新卒とインナー(特にキャリアに悩む若手行員)向けに作成しました。転職ありきの時代とはいえ、長く同じ会社で働きたいという声も耳にしますので、イメージがわきづらいとされる産育休経験のある渉外役職者の働き方をロールモデルとして紹介。産休中でも学べる、自宅学習支援システムを利用した話もあり、万全に整う制度についても理解を深めていただけるのではないかと考えています。
PR Table 白水: ありがとうございます。次に、千葉興業銀行様のコンテンツの事例について、お話いただけますか?
千葉興業銀行 七條氏: はい、千葉興業銀行では、「鶏口人材」のイメージを多面的に伝えることを主軸テーマとしています。まず1つ目は、現場の若手行員の記事です。入行、研修を経て現場に配属された方が、どのように活躍しているのか、鶏口人材の価値観はどういうものなのか、を記事を通じて伝えられたらと考え作成しました。
また、若手のうちから裁量が大きく責任のある仕事ができることや、上司や同僚の雰囲気など、説明会だけでは伝えきれない部分を実際に本人に語ってもらうことで、リアリティを伝えたいと思っています。また、成長できる環境があることを伝えるために、能力開発支援制度や研修についても伝えられたらと思っています。
千葉興業銀行 七條氏:こちらは、同じ人事部人材開発室の研修育成担当の行員をピックアップしたものです。「鶏口人材」の成長環境や育成環境をどういう想いで提供しているのか、どのように設計しているのかを語ってもらうことで、学生が、千葉興業銀行に入るとこういった研修を受けられるんだ、こういう考えで自分たちを育成して受け入れてもらえる環境があるんだ、と入行後をイメージしてもらえる。そんな記事になればいいなと考えました。実際の研修担当行員に語ってもらうことで、熱量と合わせて伝えていきたいと思い、作成しました。
PR Table 白水: 1本目の記事は、会社全体のカルチャーだけでなく、部門ごとのカルチャーや雰囲気をより具体的に伝えられるコンテンツとしてすごくいいなと思いました。2本目に関しては、学生が内定をもらった後、特にオンボーディング期間にどういうことをやっていくのかはかなり気にされることだと思うので、内定者に対して意思決定を促していくためのコンテンツとしてもかなり有効に使えそうだなと思いました。大変参考になりました。
公開したコンテンツをどのように活用しているのか
横浜銀行 石渡氏:当行では、記事を掲載した翌朝に「talentbookに新しい記事を掲載しました」と行内向けイントラTOP画面にてお知らせしており、全行員の目に触れるよう意識しています。
そのお知らせ自体は時間が経つと新しい情報に埋もれてしまうため、“キャリアデザインポータル”という人財部が展開している各種人財戦略、育成・キャリアデザイン・DEI関連施策等についてまとめている行内サイトにも、常時アクセスができるキャリアパス事例としてtalentbookのリンクを貼っています。今後は行内SNS「Yammer」も活用して、定期的に行員へ周知・閲覧を促し、身近なロールモデル不足でキャリアデザインが描けない層を中心に少しでもヒントとなればと考えています。さらに、talentbookは2次活用もできるため、行外向けSNSの採用インスタグラムや、採用ホームページへの転載、マイページに登録してくださった方へURL配信等の活用を予定しています。
千葉興業銀行 七條氏:ちば興銀では、まずSNSでの発信は、企業公式のX(旧:Twitter)とLINEアカウントで配信しています。採用単体ですとLINEのアカウントがありますので、そちらでも新しい記事がアップされた際に発信をしております。
採用媒体や採用ホームページでの活用というところだと、現状はマイページのメニューの中に行員紹介という形で、記事のリンクへ飛ぶようなメニューボタンを作っております。
エントリー学生へのメールでの配信については、まず新規の記事がアップされたら配信するようにしているのと、インターンシップ参加のサンクスメールの中に、例えば「今日はこういう仕事を体験いただきありがとうございました。実際に働いている行員をもっと詳しく知りたい方はこちら」という形で、本文中に記事リンクを入れたりしています。
あとは署名欄にtalentbookの企業ページを入れるようにしているので、さまざまな連絡等で学生にメールをお送りする際に興味のある方は見ていただけるんじゃないかなという期待を込めております。
今年度からは行員のエンゲージメント向上のための取り組みを進めておりますので、行内向けコミュニティサイトを通して行員への周知を図っているところでございます。
PR Table白水: お二人とも採用プロセス全般において活用しているところがすごく印象的だったので、ご視聴の皆さまもご参考にしていただければと思います。ありがとうございました。
【Q&A】上層部の承認や他部門の協力を得るためには?
【Q&A①】 採用ブランディング施策を進めるために、上層部の承認を得るハードルが少し高い印象があります。社内での承認の取り方や説得に苦労した点や、エピソードがあればお聞かせいただければと思います。
横浜銀行 石渡氏:頭取をはじめとする経営層から直々に「採用は重要な経営課題の一つ」として発信があり、行内での採用活動・採用助勤に対する協力体制が整っている状態でした。
また、経営層だけが参加する会議や、月1で開催されている全体会議に参加し、支店長の理解と協力も得るために、新卒・キャリア採用の話をさせていただく時間を1分だけもらうという動きをしました。
採用担当でなくても、採用状況の現状を把握してもらうことで、これからの銀行を支える上での大事な動きなんだと、肌で実感してもらうことを意識しました。なので具体的な数字のデータもなるべく提示し、こういう理由で、これだけ重要度が増してきていて、ライバル企業が金融業界だけだったものが、金融問わず全ての会社が採用の獲得競争の相手ですよと、お伝えしています。
人材部長からも積極的に発信いただいていましたし、頭取以下の経営層の方も自分ごと化して協力いただくための動きを積極的にしてくださいました。
千葉興業銀行 七條氏:当行でもスムーズに進んだのですが、理由としてまず「鶏口人材とは」を伝えきれていないという課題認識を上層部と共有できていたことが挙げられます。定期的な打ち合わせや年に一度の総括報告で共通認識を得ることができたため、必要性や取り組むべき理由のストーリーを描けていたと思います。
もう一つは、talentbookの検討に関しても、情報の流動性の観点で、他のツールとの位置づけの違いを明確に示すことができたからだと思っています。
元々、HPや公式のSNSはあったのですが、HPは採用戦略が途中で変わっても数年に1回しか更新しない状況、会社公式のSNSはリアルタイムですが情報が流れてしまうので、ストックの観点では厳しいと。talentbookでは都度記事をアップすることができるし、記事はストックされていくので、これまでにないツールだよねと認識を得ることができたのかなと考えています。
【Q&A②】採用活動は一年を通して行われますが、人事チームだけで完結するのは難しいと感じます。他部門や現場の協力を得る上で取り組んだことや留意したことなどがありましたら教えていただけますか。
千葉興業銀行 七條氏:まずは採用のコンセプトや戦略を説明し、現場の上司や店長、課長などに協力を依頼しました。また、学生からのアンケート結果などもまとめてフィードバックし、皆さんに協力してもらった感謝を伝えました。採用活動に関する情報を共有し、会社全体で協力する流れを作りましたね。
横浜銀行 石渡氏: 期初に、採用活動に対する簡単なアンケートをシステムで全行員にとっています。内容は、採用活動に主体的に取り組みたいか、 指名があったらやりたいか、なるべくやりたくないのか、 など本当に簡単な4択程度で、今後の採用助勤依頼時の参考データにしています。
また、助勤する日程は繁忙である月末を避けたり、 助勤日の1ヶ月前を目安に助勤者の上席経由でお願いするなど、 細かい配慮をして協力してもらっています。
取り組みへの期待や今後の展望
PR Table 白水: ありがとうございます。では最後に石渡さん、七條さんより今後の採用施策の取り組みの期待や展望について一言ずつコメントをいただければと思います。
横浜銀行 石渡氏:自身の手がけた広報コンテンツを見て当行に興味を持ち応募しました、という学生からの反応を耳にすることができたとき、広報での手ごたえを感じます。talentbookでも同じような反応がさらに増えていけば嬉しいです。
また、talentbook CMSでは読者のアクションやアナリティクスの分析ができるので、人気な記事や、反応を見て、他の広報媒体や採用活動でも活かしていこうと考えています。
千葉興業銀行 七條氏:当行もまだまだ取り組み途上の状態ですが、まずはtalentbookを通じてさまざまなロールモデルを発信していきたいと考えています。千葉興業銀行のイメージ作りなども、学生の性質や世代によって変わっていくものだと思っているので、修正を重ねながら、その時の学生が自分のキャリアをイメージしやすいような記事作り、発信を目指していけたらと思っております。
※本記事の前半はこちら
【25卒採用に向けて】横浜銀行・千葉興業銀行が 「人的魅力を発信する」採用ブランディングを始めた理由とは(前半)
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イベント開催日時:10月18日(水)13:00~ オンラインにて実施