「安全・安心なモビリティサービスを軸に地域の特性を活かしたまちづくりを通じて九州の持続的な発展に貢献する」という2030年長期ビジョンを掲げているJR九州。
2023年1月には2024年には経験者採用を含め前年比120人増の200人を採用する計画を発表しています。併せて、17年続いた総合職と専門職という職種区分を撤廃し、柔軟なキャリア選択ができるようにするという社内変革が起こっています。
変化の最中にあるJR九州が、採用ブランディングに取り組むことになった背景や、抱えていた課題、採用ブランディング強化の一手としてtalentbookを導入した経緯について人事部長の中嶋様、 人事部人事課 ローヴァット様にお話を伺いました。
INDEX
九州旅客鉄道株式会社
事業内容:鉄道事業を始め、駅ビル・不動産、鉄道事業、駅ビルやホテル、マンション、建設、船舶、流通や外食事業など
従業員数: 7,311名(2023年4月1日現在)
導入目的:新卒、社会人採用における認知・興味関心の促進
実施施策:戦略策定、記事制作、活用、分析、広告配信
主管部署・担当:
九州旅客鉄道株式会社 人事部 人事部長 中嶋 弘明氏
九州旅客鉄道株式会社 人事部人事課(人材戦略・採用・ダイバーシティ推進)ローヴァット理緒奈氏
■課題
・コア事業である鉄道事業の仕事の魅力や働く人の想いが伝わっていないと感じていた
・新卒採用・社会人採用ともに採用を強化する中で採用ブランディングのノウハウがなく困っていた
・採用サイトが長年更新できていなかった
・社会人採用を強化していることが求職者に知られていないと感じていた
■導入の決め手
・talentbookの提携メディアや広告配信を活用することで、攻めの採用ブランディングを実現できる点
・talentbookのCMSを活用し、工数を削減しながら定期的にコンテンツを作成し、採用サイトへの掲載など二次活用もできる点
・年間を通した採用ブランディングの発信計画についても相談・提案が可能な点
九州旅客鉄道株式会社talentbookページ
https://www.talent-book.jp/jrkyushu
「総合職」と「専門職」の職種別採用を撤廃、経験者採用枠を増加と大きな変化を遂げるJR九州
──九州旅客鉄道株式会社の採用方針を教えてください。
▲人事部 人事部長 中嶋 弘明 氏
中嶋さん:まずは当社のこれまでをお話ししたいのですが、1987年の会社発足当初、当社の収入はほぼ鉄道事業による収入でした。それがコロナ禍前の2018年度には当社グループの鉄道事業の収入割合の比率は約39%まで下がっており、新しい事業に挑戦してきたことが数字からもご理解いただけると思います。また、発足当初は年間約290億円の営業赤字でしたが、さまざまな経営努力を重ね2016年には悲願の株式上場を果たすことができました。先輩方が失敗を恐れず、チャレンジし続けてきた結果だと思います。
こうした歴史の中でこの3年間は、コロナに耐え続けてきました。2022年度の新卒採用も見送り、せっかく人事部長に着任したのに新しい仲間を迎え入れることができないことは残念でなりませんでした。
そんな状況の中でも、鉄道事業の固定費削減に向けて、全社員一丸となって取り組んだBPR(Business Process Re-engineering)施策では、これまでの延長線上の経費節減ではなく、既存のルールや仕組み、考え方の抜本的な見直しを実施。その結果、コロナ禍前の鉄道事業の費用の約1割にあたる140億円以上のコスト削減を達成することができました。
会社としてもコロナ禍前を越えていけるような成長軌道に乗せるべく、人材面での改革に着手することとなりました。2022年4月に社長に就任した古宮が先頭を切り、会社の人事に関わる主要メンバーで会議を実施し、今後の人材戦略を決めていきました。
▲2022年3月23日に発表した中期経営計画2022-2024内「人材戦略の推進」の説明図
中嶋さん:そして、2022年3月23日には、「中期経営計画2022-2024」を発表。その中の重点実施項目の一つに「人材戦略の推進」という項目があるのですが、「社員の“個”の力がグループの成長に繋がる」ということを意識し、経営戦略・ビジネスモデルや労働市場の変化に適合した人材戦略の策定と運用を実現する人事制度の革新を推進していくことになりました。
人材戦略策定においては、全社視点で人材戦略を企画推進することを重視し、採用の入り口から育成、評価方法など、一連の人事制度を全部変える方針になっています。
── 採用の入り口から変化させていくというのは、具体的にどういうことなのでしょうか?
中嶋さん:2024年度から、主に企画計画部門等でマネジメントを担う「総合職」と鉄道の現場の第一線でプロフェッショナルとして従事する「専門職」に分けてきた職種別採用を撤廃します。これまでは職種を分けた採用を行ってきましたが、総合職としての適性がある社員でも、専門職として入社したがゆえに決められたキャリアステップを歩む社員が多い状態にありました。それは社員にとっても会社にとっても、もったいない状況ですから、採用時点から入口を分けないほうがキャリアの柔軟性がより高まると考え、このタイミングで採用における職種区分の撤廃を決断しました。これも文化としては大きな変革ですね。
そして、採用計画の中で初めて、中途採用にあたる「社会人採用枠」を設けることになりました。2024年の春入社として経験者を含め200人を採用する計画で、そのうち15%の30名は社会人採用を計画しております。
鉄道業界はこれまで、新卒で採用しさまざまな経験をしながら、長く働いてもらうという雇用スタイルが基本でした。同様に当社もこれまでは社会人採用(中途採用)は、必要に応じて年間に1〜2人採用する程度でしたが、新卒で入社した社員だけではなく、いろいろな経験やバックグラウンドがある方が交わることで、新たな価値を創造することができるのではないかと考えたのです。
── 採用ブランディングを強化することになった背景と抱えていた課題を教えてください。
▲ 人事部人事課(人材戦略・採用・ダイバーシティ推進)ローヴァット理緒奈 氏
ローヴァットさん:まず、採用市場が目まぐるしく変化していく中で、当社の採用活動が変わっていない現状がありました。時代の潮流に即した新しい採用手法を取り入れていきながら、「待ち」の姿勢から「攻め」の姿勢に転じなければならないと危機感を抱いたのがきっかけです。次に、社会人採用を強化するにあたって、JR九州が社会人採用(中途採用)を行っているというイメージを持ってもらう必要があるなと感じていました。
中嶋さん:当初は2022年の8月に経験者採用の強化を決定し、10月から始動、2023年の4月入社に間に合うようにというスケジュールでしたから、ノウハウがゼロのまま急いで動き出さないといけない状態でした。そこでまずは複数の採用支援会社の方々に相談をし、ナビサイトに募集情報を掲載したり、合同企業説明会などにも出展するなど、どれが当たるか分からない中で、とりあえず全部やってみようという意識で進めていきました。
ローヴァットさん:オフラインイベントは、実際にエントリーにつながった方がいる印象でしたから、参加してよかったと思いますし、ナビサイトへの掲載もJR九州が社会人採用をやっているというイメージ作りとして必要だったのではないかなと思います。
中嶋さん:しかし、採用の入口から大きく変えていこうというタイミングだったのにもかかわらず、我々にノウハウがなく大変な状況でした。
ローヴァットさん:同時に、当社について発信するコンテンツやツールが少ないとも感じていました。新卒も2024年は採用人数を増やしていく計画でしたから、改めてJR九州のことを伝えていく必要があるなと痛感しましたね。
JR九州は、鉄道事業がコア事業で、そこに加えて相乗効果の高い不動産などの関連事業や新規事業にチャレンジしています。しかし、どうしても、学生さんが当社を見たときに注目するのは、不動産や事業開発で、もちろんそれらが大事な事業の一つであることに変わりはないですが、当社を支えている鉄道事業の仕事の魅力や人の想いがまだまだ伝わっていないなと感じていました。
中嶋さん:鉄道事業についても、観光列車のイメージが強い方も多いと思うのですが、観光列車の収入のパイはそれほど大きくはありません。実際の主軸は、日々の足を支える通勤列車や、特急列車。そのあたりの魅力も知っていただきたいと思っています。
また、鉄道が技術も含めて成熟産業だと思われるのも残念だなと思いますね。鉄道の技術はどんどん発展していますし、自動運転などにも取り組んでいるため、そういった技術変革にまつわる鉄道の良さも届けて行きたいですね。
ローヴァットさん:技術で言いますと、理系学生に対してJR九州の技術職としての仕事や魅力が伝わっていないなとも感じます。鉄道事業で大学で学んだことを活かせること、技術職としてこんな仕事もできるんだという発見ができるような情報を発信していくことで、皆さんの日々の足を支える鉄道で働くことに魅力を感じてくださる学生が増えたらいいなと思っています。
採用サイトは数年間更新できず──talentbookを活用して攻めの採用活動へ挑戦
── 採用ブランディングパートナーとして「talentbook」を導入いただいた決め手と、現段階で役に立っているポイントを教えてください。
ローヴァットさん:情報を広く発信していく必要があると感じたのが一つです。自社の採用ホームページは、そもそもJR九州に興味がある学生が「JR九州 採用」と検索エンジンで検索して表示されるものです。そうではなく、JR九州をそもそも知らない方や名前だけしか知らない方など、“ゼロからイチ”の人を増やすためには、能動的に情報を発信していく必要があると思っています。
手前味噌ながら、いろいろな社員と会って話せば話すほど、うちの会社っていいなって感じることがありまして、そういった社員の話やエピソードを発信していきたいなと考える中で、talentbookでは、記事の制作はもちろんのこと、SNSや外部のメディアに連携して広く発信していくことができるので、いいなと感じたんです。
中嶋さん:本当にお恥ずかしい話なのですが、自社の採用ホームページは多大なる費用と手間がかかるのを言い訳に数年間リニューアルができていなかったんです。
そんな採用サイトからの応募を待っているだけは難しいと思いつつも、記事を制作して更新していくのも大変で進まない、という状態がずっと続いていました。しかしこれからは、しっかり更新していきたいという話を社内でしていたときに、talentbookというサービスがあるとローヴァットが推薦してきました。
担当の方々には採用ブランディングの知見があり、親身に対応いただけるという話も聞きましたし、作成した記事を採用サイトにも活用できるかつ、広げるところもご支援いただけるとのことで、受け身ではなく攻めの採用活動ができるのではないかと思い導入に至りました。
ローヴァットさん:こういうタイミングでこんな記事を制作したらいいのではないか、など、年間を通した採用ブランディングの発信計画についても親身になってご相談・ご提案いただけていて、こうした伴走型のサポートは非常にありがたいです。
中嶋さん:応募していただければ、あとは我々の強みを発揮できるのですが、その前段階の広報部分についてはわからないことが多いので、そこの知見や経験をお持ちなのはとても安心感があります。
▲2023年7月にリニューアルされた九州旅客鉄道様の採用サイト
── ここ数年で採用におけるブランディングへの意識や予算面での変化などはございましたでしょうか?
中嶋さん:コロナ禍でずっと何もできていなかったので、今後はCI(コーポレート・アイデンティティ)にも取り組んでいこうという話を広報ともしていますね。企業イメージの向上のための施策については勉強中ですが、talentbookでの取り組みも、そこと繋げていけたらとも思っているので、人事も広報とは定期的に一緒に打ち合わせをしています。
予算面でいいますと、もともとナビサイトの掲載がメインで、その他が少しという割合でした。そこから今回、talentbook活用、採用サイトのリニューアルと、プロモーション費を増やしました。2023年度から、ナビサイトの部分は変わらず、プロモーション費を純増しています。
全社員で耐えたコロナ禍の3年──JR九州社員のストーリーを発信することで、社内にも笑顔の連鎖を
── 今後どのようなテーマや人選でコンテンツを作成予定でしょうか。また今後考えている記事の活用方法についても教えてください。
▲九州旅客鉄道様×talentbook 採用ブランディング伴走イメージ図
ローヴァットさん:まずは鉄道をはじめ、各事業で活躍している社員のキャリアや働きがいなど、JR九州で働く魅力をしっかり記事にして発信したいなと思っています。
中嶋さん:また当社は「安全とサービスを基盤として、九州、日本、そしてアジアの元気をつくる企業グループ」をあるべき姿として掲げているのですが、やはりそこに共感してもらえるコンテンツを作っていきたいですね。発足当時、営業赤字だったところからみんなの努力、みんなの挑戦心でいろんな事業を生み出し、今に至っているので、そういった挑戦心がある人がたくさんいます。
失敗してもいいからとりあえず何か意見を言おうとか、前に進もうとか、そういう企業風土なので、そこは伝えていきたいし、伝わるといいなと思います。社内でよく「異端を尊び、挑戦をたたえる」と言うのですが、そういう社員の言葉一つひとつから、うちの会社の文化や、価値観がにじみ出るんじゃないかなと思います。
ローヴァットさん:まずは、鉄道事業の社員を紹介しつつ、この他の事業開発部門など、それぞれの系統でキャリアを積んでいる社員の記事も載せていきたいですね。また、今後は、社会人採用で入社された方々の活躍の様子も記事にしていきたいです。そしてそれらを社会人採用のアプローチにもつながるようにしていきたいですね。
中嶋さん:毎月実施している人材戦略委員会でも、社会人採用の方々がどういうふうに定着して、どう活躍されていくかというのをしっかりモニタリングしていこうという話になっています。中でも、発信した情報を見て入社された方の動向もしっかり見ていきたいです。
ローヴァットさん:活用については、記事を作って発信したり、採用サイトに埋め込むのはもちろんですが、社内SNSでも発信していけたらなと思っています。最近、社長の古宮が積極的に社内SNSを活用していまして、社内の閲覧数が増えているタイミングでもあるんです。パソコンを立ち上げると必ず社内SNSが立ち上がる設定にも変更されたので、そういった仕組みや機会も活かしたいですね。
また、今まさに社員の取材を進めていますが、社員も自身が入社した時のきっかけや仕事に対してのやりがいなどを見つめ直したりする機会が少なくなったと感じています。しかし、talentbookの取材を機に、改めて自身を見つめ直し、JR九州にいる意味や働くやりがいなどを言語化して再認識することができたという話が取材を受けた社員からありました。そのように、社員のモチベーション向上にも繋がるのではないかなと感じています。
中嶋さん:また、いろいろな情報発信をしていくうちに、たくさんの社員にも届くと思うんですよね。社員を通して情報をオープンに発信することや、社員の活躍を発信することが、既存の社員も自信につながってくると思っています。このコロナ禍の3年で、鉄道業界の先行きを不安視する声が世の中に溢れてしまい、社員も少し元気を失っているところがあるんですよね。社員を鼓舞するという意味でも取り組んでいきたいなと思います。
ローヴァットさん:学生や転職潜在層に向けての情報発信になりますけど、意外と社員に対しても良い効果があると感じていますね。
JR九州で共鳴し合い、一緒に九州・日本を元気にしたい
── 最後に採用ブランディングに取り組む意気込みや今後の展望を教えてください。
ローヴァットさん:現在、会社の成長にあわせて、新しい人材戦略として人材育成や働く環境づくりなどに取り組んでいる最中なのですが、そもそも社員が入ってこそ、準備していることが形になります。ですから、まずはJR九州を知っていただく。そしてJR九州で働く魅力や会社の文化・社風に魅力を感じて、一緒に地域を元気にしたいな、共感するなという親和性の高い方に興味を持ってもらう、ということを目指したいと思いますし、talentbookにはそこを期待しています。
まずは採用に注力することで、会社がより成長していくと考えているので、その大事な「入り口」部分をtalentbookを活用しながら取り組んでいきたいですね。
中嶋さん:鉄道事業は人の足を守るとても大事な仕事だと思っていますし、まだまだ成長する産業だと思います。さらには、九州はアジアの玄関口でこれから訪日外国人も増えるでしょう。九州もまだまだ成長していくと考えているので、会社としても成長を続け、九州を支えるいち企業でありたいですし、この想いやJR九州の良さを伝えていきたいと心から思いますね。
この想いは鉄道事業だけではなく、事業開発部門も、我々のようなバックオフィスのメンバーも一緒です。九州のために、世の中のためにという想いで仕事をしているので、talentbookを通じてJR九州を知っていただき、我々の想いに共感していただける方にぜひ来てほしいなと思っています。