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[Sansan×talentbook]ランスタッド採用人事と語る エンプロイヤーブランディング ゼロから始めた「働く場」としての魅力づけとは

INDEX

労働人口の減少や、採用活動の多様化により従来の採用からアップデートが必要になっています。

採用に取り組んでいる企業はこれまでの施策だけでなく、転職潜在層を含めた候補者に自社を「働く場所」として認知され、魅力を伝える「エンプロイヤーブランディング」が求められています。

その中でも、ランスタッド株式会社は直近1年間で担当者の採用から始め、まさにゼロからエンプロイヤーブランディングに取り組んできました。

本記事は「ゼロから始める 『働く場』としての魅力づけ」をテーマにランスタッド社からTalent Attractionチームの西野氏と土橋氏をお招きし、Sansan株式会社様と共催したセミナーのレポートになります。

ランスタッド株式会社が採用ブランディングを始めるに至った背景や、自社の魅力を見つけるために取り組んだ施策についてお話しいただきました。ぜひ今後の採用活動にお役立てください。

労働人口が減少する中で「エンプロイヤーブランディング」の重要性が高まっている

Sansan 木村氏(以下、木村):まず最初に私の方から「本日のテーマ」へのイントロダクションとして採用市場の概況についてお話しさせていただきます。

すでに多くの方がご存じの内容かと思いますが、2030年には労働人口が644万人が不足するなど、人材不足の懸念があるかと思います、また転職市場も就業者全体のたった4.3%しかない、狭小な市場になっており、顕在層へのアプローチは限界が来ている状態かと思います。

そういった背景もあり、各業界で差異はありますが高い比率で人材不足を感じている企業様が多いといった調査データもでています。そのため、市場にあわせて採用活動も手法の転換を求められている時期なのかなと感じています。

実際に2022年版の人材版伊藤レポートでもこれまでの囲い込み型から、選び、選ばれる関係へと変化を提言されています。企業側も選択する権利がありながら、採用候補者、従業員も選択する権利を持った関係性が今後必要とされています。

その中でのエンプロイヤーブランディングですが、「企業が雇用者の立場から働く場としての魅力を発信し、企業イメージを高める取り組み」と定義しています。

活動を通じて、「あの会社で働くの面白そうだよね」と採用候補者に感じてもらうことで、転職活動の際に入社の選択肢に入ることが重要となってきています。

ランスタッド社がゼロから始めた 『働く場』としての魅力づけ

ランスタッド 西野氏(以下、西野):今後のお話しにも繋がってきますので、ちょっとランスタッドのお話しをさせてください。私は元々人材業界に長くいて、ランスタッド社の名前は知っていたものの、中身のことをあんまり知りませんでした。せっかく入社してこんな会社だったんだと知れたので、もっと紹介していきたいなと思った部分がこの取り組みの前提にあります。

ランスタッドはグローバル企業で、グローバルスケールでの大きなコンセプトを持っています。ultimate goleとして2030年までに世界5億人のキャリアを支援することを目標に掲げています。

こういった規模でのビジネスなので、社会にインパクトを残せるという点も一つのランスタッドの魅力なのかと思っています。これを日本に展開して行った時にどこまで貢献することができるかといったところも、私たちのミッションなのかなと考えています。

どれくらいの規模の会社かというと、246億ユーロ、日本円にして3兆5000億円規模の売り上げがあります。そして従業員は4万人弱いまして、世界に5000弱の会社があります。

その中で、人材サービスといってもかなり幅広くやっておりまして、人材紹介から人材派遣、ITやRPOや1日派遣のようなスポットジョブのようなものもやっています。

私も知らなかったのですが、ドライバーの派遣や試験官事業部といいまして、日本全国の様々な試験の試験官の派遣もさせていただいております。なのでみなさん人生の中で必ずランスタッドの人間とどこかで出会っていると、そんな会社でございます。

木村:そうだったんですね、僕も人生のどこかでランスタッドの方とお会いしているということなんですね、驚きました。

全社を巻き込んだ施策にしていくための体制づくり

木村:直近1年間の取り組みとして、まず強化前のお話しをお伺いできればと思います。

西野:こちらは今の組織図になるんですが、タレントアトラクションは人事の中で採用を中心に行っている部分になります。その採用チームの中にもリクルーターやオペレーションチームが存在している組織でした。

この中で採用の重要なテーマとしてエンプロイヤーブランディングがあると認識しておりましたので、オレンジになっている部分のエンプロイヤーブランディングチームを立ち上げました。

ただ、エンプロイヤーブランディングは全社を巻き込んですべき施策だと考えているので、計画をたて戦略を作る中で組織の中にどう組み込むかというところからスタートしました。

そこでまずは、エグゼクティブレベルのスポンサーをつけてサポートしてもらいました。また社内のコンテンツを社外に出すことになりますので、人事の中でもED&I(ダイバーシティ&インクルージョン)に紐づく社内の自発的な活動グループが取り組まれている内容も取り上げていきたいと思っておりました。

そのため、こういった人材を採用しているリクルーターたちとも協力してコンテンツやプランニングをまとめるエンプロイヤーブランディングマネージャーとして組織を作っていきました。その上で、社外への発信となるとマーケティングチームと関わってきますが、どう協業していくのか役割分担を詰めていきました。

我々はエンプロイヤーブランディングを「認知度(Awareness)」と「魅力度(attractiveness)」に分けているのですが、認知度を獲得するのはマーケティング、魅力をより認知してもらうのがタレントアトラクション側でやっていくと大きな役割分担を決めました。

その中で、我々はコンテンツを出して魅力を表現していくわけですが、そのクリエイティブや表現するテクノロジーに関してはマーケティングチームにご協力いただいています。ただ、マーケティングチームも様々なチームがございますので、直接やりとりができるような担当を設けてもらい、その方とエンプロイヤーブランディングマネージャーが協力してやってく組織になっています。

久保:最初にステークホルダーと合意形成をとるというお話しがありましたが、まさに担当者の方からよく聞くのは、認知も魅力づけも全てHR部署でやろうとしてパンクしてしまうといった声や、人事と広報が分断されてしまうといった声も最近とてもよくお聞きしていました。

そもそも人事も広報もKPIが異なる領域であるので全て一つの部署だけでやるのは無理があるよなと感じていましたので、始める前に明確な役割や部署を作り合意形成を取った上で走り出すというのがとても大事なんだとなと感じました。

社外に認知されていない魅力やコンテンツに溢れているという気づき

木村:ありがとうございます。1年弱ほど前でしょうか、西野さんが入社された際の課題感という質問に戻れればと思いますが、いかがでしょうか?

西野:私が入社した2022年7月に入社した際にいろんな人と1on1をさせていただくと、いい人材や知られていない実績、グローバルや日本での取り組みも様々あるということを知りました。

私はランスタッドに知り合いがたくさんいたので「どんな会社か」は知っていたのですが、入社前にはこういった事業や取り組みを全く知らなかったわけです。ホームページはいかにも外資系のデザインで中身がわからない様相だったので、こんなにもいいコンテンツが溢れているのに、採用に使わないなんて勿体無いと思ったところからスタートしました。

木村:当時、特に印象的だった部分はありますでしょうか?

西野:ファクトである数字の情報は知っていたのですが、事業の幅広さや、表現が難しいのですが人の良さ、暖かさみたいな部分がありました。

弊社は日本の北関東にあった大きな会社を買収して大きくなった背景があって、それがオランダの組織風土の暖かさとマッチして、どの会社もおっしゃると思うんですが、本当に良い人が多いなというのが印象的でした。

ビジョンづくりから始めた、立ち上げ〜3ヶ月間の取り組み

木村:最初の3ヶ月というところで、社員の協力のもと自社の強みの洗い出しや戦略設計に取り組まれたということだったんですが、どのように戦略やビジョンを描いたのかについてお伺いできればと思います。

ランスタッド 土橋(以下、土橋):ありがとうございます。順番としてはまずビジョンの策定から始めました。理想の状態は何か想像してビジョンという形で落とし込み、そこから逆算して戦略を作っていきました。戦略はすでにある数字をもとに戦略設計を行いました。

エンプロイヤーブランディングのビジョンとして「be admierd」という、日本語でいうと「憧れの存在になる」を定めて社内に展開していきました。日本ではまだまだ認知されていない状態から、ランスタッドという名前を聞いたら候補者から「あの会社で働いてみたい」と思ってもらえるようになりたいという想いから策定しました。

西野:シンプルなんですが、喧喧諤諤というか結構時間がかかって策定しましたよね。安易に決めるのではなくて、自分達がどんな姿でありたいのか、というのを土橋さんが多くの社員と1on1をして、エンプロイヤーブランディングの目的とすり合わせながら最後まで落とし込んでいきました。

おそらくこういったビジョンがないままに、施策をひたすらやってしまうとゴールが見えなくなってしまうので、まずは強い意志を持って固めて、周りと共有するというのがすごく重要なところだと思います。

自社の強みは辞めない理由から

木村:ビジョンを作り上げた上で現状の分析を進めていったかと思うのですが、その中自社の強みの洗い出しを行ったと伺いました。詳しくお話しいただけますでしょうか?

土橋:ありがとうございます。先ほどもお話ししましたが、多くの社員と話しをして、ランスタッドの魅力について聞きました。

1on1の中で2つの質問をしました。1つが入社した理由、もう一つがなぜ辞めないで働き続けているのかという質問です。

結果として入社理由の方は種類も多くなく、「面接官がよかった」や「人材業界が成長しているから」といった表面的な理由が散見されました。

一方でなぜ辞めないのかという理由について聞くと、本当にたくさんの回答を得ることができて、目を輝かせながら、自社の良いところについて語ってもらえたんです。

「人が良いだったり」「カルチャーが素晴らしい」とか、「インクルーシブな環境である」のような理由を働いている人たちから聞くことができました。

このような結果と、自分が感じた良さやリクルーターから聞いた候補者の応募理由を併せて、ランスタッドが出しているワークモニター(世界の労働者を対象とした労働者意識に関するグローバル調査)と照らし合わせながら、市場でランスタッドの強みはどこにあるのか、魅力に感じられるのかを言語化して外に出していこうと決めていきました。

土橋:これはワードクラウドと言うんですが、回答が多かったものほど大きく表示されています。これだけ入社前と入社後で実際に働いている社員が見えている会社の価値、魅力が異なっているというのが驚きでした。

辞めない理由を社外に知られていくことで、入社理由にも辞めない理由と同じような回答がでてくるようにしたいですね。もっと辞めない理由が社外で知られていれば、ランスタッドに興味を持ってくれる人も増えるだろうなと感じています。

過剰な広告ではなく、ありのままのランスタッドを出す

木村:ビジョンを掲げ、戦略を策定されて、実際にどのような施策に取り組んだのかお話しをお伺いできればと思います。

土橋:まず、自分達が自由に発信できるプラットフォームが必要だよねと言うところから始めました。なので、「humans of ranstad」と言うオウンドメディアを立ち上げました。ここには社員のキャリアストーリーやライフストーリーを掲載していっています。

また、事業部ごとのカラーやビジョンがあったりしますので、段階的に各事業の特設採用ページを作成していっています。ここには事業部ごとの専門の情報を掲載していくようにしています。

他にはEVP(Employee Value Proposition)を記載したパンフレットやtalentbookさんでのストーリー掲載や、プロモーションや新しく入社した方の紹介、事業部のコンセプトムービーを作成しています。作成したコンテンツはSNSでも展開して活用しています。

これらは、私一人だけではなくて社内外のたくさんのステークホルダーのご協力をいただいて形にすることができました。

久保:とても働く人のイメージが伝わるコンテンツが多いなと言う印象を、他社さんと比較しても感じています。働いている様子だけでなく働く人の価値観や人柄が滲み出しているようなコンテンツがとても多くて、一般的な外資系企業のイメージと良い意味で異なる印象が伝わってくるなと思っています。

土橋:そうですね、注力した部分として過剰な広告ではなく働いている人の声を通してありのままのランスタッドのイメージを訴求していくことが大事だなと思っています。なので、オウンドメディアには働いている人の記事や動画を掲載して伝えていくようにしています。

社内と社外を跨いだサイクルが本当のエンプロイヤーブランディング

土橋:これはエンプロイヤーブランディングの最終目標としてこういった循環を生めるといいなと考えている図になります。

まずエンプロイヤーブランドを高めることで、候補者の数や質が向上して採用ができるようになることでイノベーションや多様性がより増えて事業成長に繋がります。

それによって社員のキャリア構築チャンスや報酬アップといった社員の幸せにつながると考えています。そうなった時に幸せになった社員から彼らの声としてSNSや口コミに投稿してもらえることで、本当の意味でのエンプロイヤーブランドに繋がってくるのかなと思っています。

なので、この循環を上手く回していくこと、社外に対するコミュニケーションだけではなくて、社内の人たちに幸せになってもらって、その人たちの口から本当の姿を伝えてもらうといった、社内と社外この両軸で取り組んでいくことが大事だと考えています。

久保:社内、社外に繋がってサイクルが回ると言うのを意識している人は増えているとは思うんですが、中長期的な視点で最初から取り組んでいくことはとても大事なことだなと思います。


※他のイベントのアーカイブ動画は以下からダウンロード可能です。

■登壇者プロフィール

ランスタッド株式会社 人事本部 部長  西野 雄介氏

西野 雄介
ランスタッド株式会社 人事本部 部長

人材会社の日本法人を経て、2010年~シンガポールへ移住。エンワールドのシンガポール法人にてグローバルカンパニーのアジア太平洋州地域の経営人材のヘッドハンティング、及び、同事業の経営を経験。その後、帰国し、経済メディアニューズピックスなどを運営するユーザベース社にて日本・アジア地域の人事・採用の責任者等を経て現職。 Forbes JAPANのオフィシャルコラムニストとしてキャリアや組織についても発信している。

土橋 直子氏
ランスタッド株式会社 人事本部 タレントアトラクション エンプロイヤーブランディングマネージャー

土橋 直子
ランスタッド株式会社 人事本部 タレントアトラクション エンプロイヤーブランディングマネージャー

英国大学院卒業後、外資系ラグジュアリーブランドの社長秘書としてキャリアをスタート。 2012年からカリフォルニア州へ移住。日系IT企業の米国支社設立に携わる。帰国後、 Googleで人材開発、リシュモンジャパンでDE&Iプログラムマネージャー、 社内広報の経 験を経て現職。イギリス近世史に関する書籍の翻訳・出版、コラムの執筆も行う。

木村 清二氏
Sansan株式会社 Eight Career Design マーケティング

木村 清二
Sansan株式会社 Eight Career Design マーケティング

2020年4月にSansan株式会社に入社。入社後1年間はEight Career Designのインサイドセールスの立ち上げに従事。その後、インサイドセールスとマーケティングを兼任しつつ、『Eight Career Design』のグロースに携わる。現在はEight Career DesignとともにEightの広告サービスのマーケティング及びインサイドセールス部門リーダーとして事業を推進している。

久保 圭太
株式会社PR Table PR室 室長/ Evangelist

久保 圭太
株式会社PR Table PR室 室長/ Evangelist

2007年アドウェイズ 入社。デジタル広告領域の営業および組織づくりに従事。 2014年より人事戦略室の責任者として、採用・育成・制度づくりに携わった後、10ヶ国のグローバルPRを統括。 2018年よりPR Tableに参画し、カンファレンスやオウンドメディア運営を通じたPublic Relationsの探究活動を行う。PRコンサルタントとして企業様向けのコンテンツ企画・活用支援、CS組織の立ち上げを経て現職。 PRSJ認定PRプランナー。

イベント開催日時:2月21日(火)12:00~ オンラインにて実施