障がい者の総合就職・転職サービスをはじめとする社会課題の解決に向けて事業を展開する株式会社ゼネラルパートナーズ。
社内外への情報発信を行うことで、採用・インナーブランディングなどさまざまな観点から自社のアイデンティティの浸透を目指している。そして、同社がそういった発信の軸に据えているのがtalentbookだ。
社員を通して発信することで、その情報にはそれぞれの熱が乗り、社員個々人のアイデンティを確立。そして、アイデンティティを明らかにすることが、コミュニケーションの活性化を後押ししているのだ。
今回はtalentbook導入のきっかけや効果などについて、広報室 室長の佐藤氏、talentbookの担当を務める広報室 前山氏に話を伺った。
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Profile
佐藤こと Koto Sato
株式会社ゼネラルパートナーズ コーポレート部門広報室室長
ダブリン大学トリニティカレッジ心理学部卒。広告代理店を経て、障害者の就労を支援する株式ゼネラルパートナーズにて2018年から現在まで広報室長を務める。DE&Iやソーシャルビジネスに関する講演を大学等で行うなど、社内外でのDE&I推進に取り組んでいる。
前山直子 Naoko Maeyama
株式会社ゼネラルパートナーズ コーポレート部門広報室
制作会社にて報道番組の制作・編集を12年経験。出産、育休を経て待機児童問題や子どもの貧困など、子育て・子どもを取り巻く環境の課題に関心を持つ。身近な社会問題の解決に向けてなにかできることはないかと考え、2019年にゼネラルパートナーズに入社。
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導入背景
・第二創業期におけるブランドイメージの醸成・業界内のプレゼンス向上を図りたかった
・広報ポジションの立ち上げにおける、情報発信体制の構築を図る必要があった
・事業拡大に伴う採用広報やインナーブランディングの必要性が高まっていた -
導入の決め手
・社員一人ひとりの個性を伝える情報発信で、社内外の垣根を越えた広報・PR活動が実践できる点
・広報・PRにまつわる知識をインプットしながら記事発信を行える点
・社員を巻き込みながら発信していくことで、会社としての団結力の向上にもつながると感じた点 -
効果
・毎月コンスタントに2本のストーリーを発信できるようになり、情報発信の継続的な体制を構築
・採用フローの中で「talentbookのストーリーを読んで応募しようと思った」との声が増加
・コロナ禍でもtalentbookの記事を通じて社員同士の距離を縮める社内広報を実現
INDEX
社員一人ひとりの個性をしっかり伝えるのが広報の役割
──本日はよろしくお願いいたします。まずはお二人の所属される部署や担当領域について教えてください。
佐藤さん:コーポレート部門で広報室の室長を務めています。広報全般の取り組みに責任を持っており、主な業務は社内外とのコミュニケーション全般です。
前山さん:私もコーポレート部門で広報室に所属しています。プレスリリースやtalentbookでの発信、SNSをメイン業務として担当しています。
──talentbook導入時は「社員一人ひとりの存在を伝える場所を探していた」そうですね?どういった背景があったのでしょうか?
佐藤さん:弊社がtalentbookの導入を検討し始めた当時は、第二創業期を迎えてブランドイメージを社外に発信していきたいタイミングでした。業界内のプレゼンスアップが必要だと社内でも話していたんです。
弊社の場合は広報業務が社内でも理解されていなかったのか、社員が気づいたらメディアに取り上げていただいていたなんてこともあって。取材やメディア露出はとてもありがたいものですが、取り上げ方やその管轄は広報の役割。会社の方向性とのブレがないように手綱を握りたいという思いもありましたね。
また、事業の拡大に伴い、採用も活性化。加えて、社員数の増加により社員同士のコミュニケーションが希薄化する懸念が生まれていたので、インナーブランディングも同時に強化していきたいと考えていました。
これらの考えをもとに施策の方向性を検討していたところ、talentbookなら社内外それぞれへの発信が一度に行えると感じたんです。社員を巻き込みながら発信していくことで、会社としての団結力の向上にもつなげていきたいという狙いがありました。
PR Tableさんは広報・PRに関するプロフェッショナルですし、セミナーやカンファレンスなども積極的に開催されていますよね。ですので、みなさんから広報の考え方を学び入れたい、共に伴走していただきたいといった期待もありました。
──もともと佐藤さんは広報未経験で入社されたと伺いました。社内を知る動きの中で見えてきたことなど教えてください。
佐藤さん:マネージャーや社員と話して印象的だったのが、「大したことはしていないので」と言っていたことです。私自身は福祉以外の業界から転職してきたので、新鮮な取り組みや価値のある事業を行っていると感じていましたが、社員は当たり前だと思っていることもたくさんあるようです。もちろんその姿勢は謙虚で素晴らしいものですが、もっと一人ひとりの取り組みや考え方が社内外共に知られる機会をつくれたらと感じたんですよね。
また、社長の進藤が常々「社員一人ひとりの持つ課題意識が社会をより良くする」とも言っているんです。社長自身だけではなく、社員も課題と向き合い、解決に向けて歩むことが必要だ、と。そういった背景を鑑みると、社員の思いに焦点を当てる機会が必要だと考えるようになりました。
弊社の事業は人材紹介がメインなので、新しいサービスやプロダクトが次々でてくるわけではありません。ただ、その事業に携わっている一人ひとりにはとても強い思いや個性がある。その魅力をしっかり伝えるのが広報の役割だと感じるようになりました。
個々人や制度を理解するきっかけに。コロナ禍ならではの活用も
──導入後は、どのような点に注力して記事を制作されていたのでしょうか?
佐藤さん:導入以前は社内SNSが主な情報発信の場でしたが、メンバーからの発信が多く、マネージャーからの発信は少ないのが気になっていました。ボトムアップを大切にしているとはいえ、やはり事業を支えているマネージャーからの発信も重要だと考え、最初は事業の中枢に関わるマネージャー陣を取り上げてインタビューを行いました。
その後は職種ごとのバランスを見ながらインタビュイーを決定しています。最近は、インタビューさせてもらった社員に「次は誰の話が聞きたい?」と尋ねて、指名制でインタビュイーを検討することもありますね。
ストーリー(左):「多くの障がい者に働く場所と機会を提供する」No.1にこだわる営業マネジャーの挑戦
ストーリー(右):社会の中で居場所をつくりたい。マネージャーの彼女が「福祉と民間のはざま」で働き続ける理由
前山さん:コロナ禍に突入してからは「みんなが何をやってるかわからない」など、社員同士のコミュニケーションが希薄化してきている実感があったので、より社内向けの記事企画も増やしていますね。
たとえば、男性育休ストーリーの記事もそのうちの一つです。2021年6月に改正育児・介護休業法が成立し、2022年4月から新しい制度が始まったことで男性育休が注目されています。ゼネラルパートナーズには、男性育休が制度として設けられていることを知らない社員も多いのではないかと思い、実際に男性育休を取得した社員の話を取り上げて記事にしました。
ストーリー:男性社員として約10年ぶり、史上2人目の育休取得。壁を越えることで見えた新しい景色
あとは、新規事業に関しても「何をしているのだろう?」と思われがちなんですよね。それらを記事として取り上げることで、社内で起きている出来事が汲み取りやすくなっているのではないかなと思います。
ストーリー:新規事業開発にかける想い──労力を注いだプロジェクトで見えた課題と次なる挑戦
佐藤さん:社員の声を通して企画を考えることもありますが、なるべく肩肘張らずに発信したいなとも思っていて。私たちの「この人の話、聞きたいよね」という気持ちをベースに記事企画を立てて、社員に依頼するということが多いです。
──制作した記事はどのように発信・活用されていらっしゃいますか?
佐藤さん:自社のTwitterやFacebookページでのシェア、社内チャットでの共有などを主に行っています。
▶︎ゼネラルパートナーズ Twitter / Facebook
佐藤さん:広報からのおしらせを送信する社内のチャットグループがあるのですが、前山さんが記事のサマリーやポイントを記載して共有してくれています。あとはみんなが反応しやすいように、あえて最初に3つ4つくらいスタンプを私が押しておくときもあります。そしたら続いて押してくれるメンバーが増えました。
前山さん:男性育休ストーリーの記事を共有した際に、記事内の「『ちょっとだけとっても意味ないから、取るなら1ヶ月ガッツリとってほしい』という奥様の言葉に1000%共感しました!」と育児中の女性社員からコメントをもらったりしましたね。あとは、関西支社の方のストーリーを共有した際は、関西支社内のチャットで盛り上がったという連絡をいただきました。一緒に働いている仲間の価値観や考え方を知ることで得られる気づきも多いようです。
──コロナ禍に入社された新卒社員のプロフィール代わりになるようなストーリーを制作されたかと思いますが、役に立ったことなどありましたでしょうか?
前山さん:コロナ禍では入社しても出社ができず、自分自身のことを話す機会や同期、先輩と話す機会が減っていました。そこで、彼ら、彼女らの自己紹介代わりとして機能してくれるようなストーリーを制作しました。
ストーリーを通して社員がお互いのことを知るきっかけになればというのはもちろん、私たちがインタビューに同席することで共通の話題を持っていそうな先輩社員を紹介することもできます。結果として、新卒社員と先輩社員の仲介役を担えたので、実行してよかったと感じています。
ストーリー(左):経験を通して“普通”を知る。相手を否定せず、次のステップへ後押しする支援員の想い
ストーリー(右):知らないから差別が生まれる。障がいのある姉がいたから生まれた目標 キャリアプラン
──採用広報軸でも、社内から嬉しい声があがってきたとか。
佐藤さん:ある部門長と話したときに、採用活動しているときに「ストーリーを読んできました・読んでこういうところがよくて」など言ってくれる人が増えたと言っていました。
また、「記事を読んで応募しようと思いました」という人もいるし「応募しようと思って検索したらたくさんストーリーが出てきたので読みました」という人もいたと言っていました。採用広報の面では、面接している人たちは発信している効果を感じてくれているなと感じました。採用広報として役立っていますね。
社外コミュニケーションを円滑にする2つのフォーマット活用
──プレスリリースにもtalentobookのストーリーへのリンクを貼られていますよね?内容に関わっている人のストーリーを作ることで、良かったことなどありますか?また、メディアとのコミュニケーション方法での活用方法を教えてください。
佐藤さん:ストーリーが補足資料としても使えるなと思っているので、プレスリリースを出す際、登壇者、新施設の施設長紹介プロフィール記載時に記事のURLを記載したりしています。
プレスリリース:デジタルハリウッド提携の「障害者就労支援施設」を関西に初出店!障害者のリモート勤務の必要性、時間と場所に縛られないWeb制作スキルを
佐藤さん:ストーリー制作の中で、プロジェクトの背景や想いなど、情報が整理されているので、取材依頼があった際に改めて担当者に話を聞かなくても、回答しやすくなりましたね。しかも、詳しくはこちらを読んでくださいと送れるので、すでにまとまっているのは、広報的にはラクできるなと感じます。
また、記者さんにお会いしたときに「◯◯なことに興味がある」と言われたときには、それに関連するストーリーを送っています。たくさんストーリーを公開しているので、求めているトピックの記事を送りやすい側面はあるかもしれません。
──貴社の特徴として、ノウハウフォーマットでのコンテンツ発信も積極的にされていることも挙げられるかなと思います。ストーリーとの棲み分けはどのように意識されていますか?
ノウハウ(左):障がい者採用を成功させる選考のポイントと心構え
ノウハウ(右):情報保障のひとつとして。UDトーク活用術──だれも排除しないための「情報保障Ⅱ」
佐藤さん:新規の取引先を開拓することを目的にセミナーを開催している事業部があるので、その内容をノウハウにまとめています。録画をアーカイブ公開することもできますが、検索に引っかかってこないので、記事としていつでも気軽に読めるようにしておくことの意味は大きいのではないかと思っています。
また、セミナーで登壇しているメンバーはすでにtalentbookのストーリーに登場していることが多いんです。ノウハウではその人の取り組み内容や専門的なノウハウをお伝えし、ストーリーでは人柄や想いを伝える。人でリンクさせながらも、コンテンツとしての純度を高められるように棲み分けをしています。
あとは、「ストーリー記事として取り上げられるのは恥ずかしいけれど、ノウハウ記事として少し登場するくらいなら……」と渋っていた掲載を了承してくれる社員も。シャイだったり控え目な社員だとしても、そうしてノウハウ記事を通して少しずつ巻き込んでいきやすいかなと思います。
支援サービスの利用で記事制作の効率化とクオリティ担保を実現
──talentbookのサポート面で使いやすい、導入して良かったと感じていただいている点はありますか?
佐藤さん:コンテンツ制作はもちろん、定期ミーティングでのネタ出しや人選のご相談など幅広く助けていただいているので非常に助かっています。
導入当初は自分たちで記事を執筆し、添削などのサポートをしていただいていたのですが、現在はPR Tableさんにインタビューと執筆もおまかせしています。コンスタントに記事を掲載する上で制作スピードはとても大切な観点ですから、制作面までサポートいただけると本当にありがたいですね。
第三者が介在することで生み出せる価値も実感していますね。インタビュアーを第三者であるPR Tableさんにおまかせすると、「この質問は当たり前だから聞かなくて良いかな」と知らず知らずのうちにカットしてしまう質問をしてくださったり、「そこまで聞いてくれるんだ」と感じるほどに細かく対話を重ねてくださるので、インタビュイーも話す内容が深くなったり、今までとは異なる言葉を選んで話してくれたりするんですよね。
効率面とクオリティ面、どちらの面を見ても制作をお手伝いいただけることがプラスに働いているなと感じています。
あとは普段、インタビューを受ける機会が少ない人のほうが多いので、深い考えがあってもなかなか言語化されていないケースが多いんです。公の場で話してそれが記事として残るということで、思考の整理にもなっていたらいいなと思います。
──制作支援サービスをご活用いただいているとはいえ、毎月平均2本ずつストーリーを公開できていることが本当にすごいと感じています。そこのノウハウをぜひお伺いしたいのですが、コンテンツをコンスタントに出せている要因を挙げるとするとなんだと思われますか?
前山さん:みんなが前向きに協力してくれる点でしょうか。最終的な人選は完全に私と(佐藤)ことさんが話を聞きたい人にしているので「こういう理由で、こんな話を聴きたいからお願いしたいです」と、理由をきっちり伝えるようにしています。
例えば「社内でこういう課題があって」とか「こういう話を聞きたい人がいっぱいいて、○○さんにお願いしたい」等、全く知らない状態ではなく、ある程度相手のことを調べてこの人じゃないとダメな理由を添えてお願いしています。
──なるほど。取材前にご提供いただく情報の中に「記事を通して伝えたいこと」という項目がありますが、ゼネラルパートナーズさんではタレントさんご自身が入力してくださっていますよね。非常に丁寧に記載いただいていますし、思いが溢れているなと感じるのは、人選理由が明確だからこそなのでしょうか。内容から人となりや、大切にしていることが見えるので、当日話を深堀しやすいです。
前山さん:そうですね。なぜ依頼されたかを理解した上で、承諾してくれているので、そうした協力姿勢につながっているのかもしれません。そもそも、「こういうことを伝えたい」という軸を持っている方が多いからというのも理由の一つです。
──talentbookでの社内発信を続けてきて感じることはありますか?
前山さん:先日ストーリーを掲載した新規事業企画の矢野は、自分たちが今どんなプロジェクトを進めているのかを含め、社内での発信に課題を感じていたようで。「他部門からたくさんご協力いただいているのに外からは何をやっているか分からないと思われていると思うので、この機会を活かせたら」とヒアリング前に話していました。あと、普段はみんな読んでるよと言ってくれないんですけど、取材依頼やtalentbookの話になったときに「実は毎回楽しみにしてる」「talentbookのファンです」とか言ってくれて、意外と社内で読まれていてびっくりしましたね。
「障がい」への正しい理解に向けて。talentbookを通じた情報発信の価値とは?
──talentbookでの発信も約4年になりますが、これまでを振り返って感じること、また今後の展望をお聞かせください。
佐藤さん:社内のことをまったく知らない状態から広報チームを立ち上げ、これまで社員の協力を得ながら記事の発信を続けてきました。特に、コロナ禍においてはオフラインでのコミュニケーションが難しい分、talentbookのストーリーを通じて社員同士の距離を保つよう働けたのは非常に良かったと感じています。
以前は、社内でtalentbookのストーリーをどれくらい読んでいるのか直接聞いたことはありませんでした。しかし、記事のリンクにパラメータを付与してCMS上で管理してみたところ、想像以上に社員は記事を読んでくれていることがわかり、とてもうれしくなったんですよね。
これからもコミュニケーションのきっかけになれるよう、積極的にコンテンツの発信を行っていきたいと思っています。
また、会社全体としては障がい者の雇用に関して関心を抱く人を増やしていきたいと考えています。「働き方改革」なんかと同じように、社会が当たり前に障がい者雇用を受け入れる体制をつくるためにも、社外に向けた情報発信は抜かりなく行いたいです。
前山さん:私自身、異業種からの転職だったので、障がいについての知識が入社時はほとんどありませんでした。そういった基礎知識や考え方を、talentbookのストーリーを通じて社員から学んでいたように思います。そんな風に、talentbookを通じて私たちの考えをより多くの方に届けていきたいですね。
障がいへの理解は社会的に見るとまだまだ進んでおらず、偏見も多くあるかと思います。そういった偏見をなくすためにも、私たちが積極的に情報発信に取り組む必要性を実感しています。
──引き続きtalentbookを通じてよりよい社会の実現に向けたお手伝いをさせていただけるとうれしいです。貴重なお話をありがとうございました!
※掲載内容は取材当時のものです。
ー編集後記ー
ゼネラルパートナーズ様が継続的に発信を続けられてきた背景には、佐藤さんと前山さんが「なぜあなたにお願いしたいのか」「どんなことを聞きたいのか」等の取材依頼の理由を丁寧に社員様に伝えて承諾いただいているからこそ、記事制作の過程で協力いただける関係性が作れているのだと思いました。また、メディア・リレーションズの際に求められている情報をすぐに共有できるのは、ゼネラルパートナーズ様が継続的に発信を続け、たくさんのコンテンツが蓄積されてきたからこその強みだなと感じました。引き続き、広報・PR支援パートナーとして伴走させていただきます。ありがとうございました。
インタビュー:株式会社 PR Table 川島