認定放送持株会社として、子会社にテレビ放送を行う朝日放送テレビや、ラジオ放送を行う朝日放送ラジオを抱える朝日放送グループホールディングス株式会社(以下朝日放送)。「M-1グランプリ」「相席食堂」「ポツンと一軒家」「熱闘甲子園」「探偵!ナイトスクープ」など、数多くの人気番組を制作している。
そんな朝日放送は2020年、未来の「コンテンツプロデューサー」と出会うための新卒、中途採用広報と中長期的なホールディングス全体の企業ブランディングを目的に、「働く人」から企業の魅力を発信する広報・PRサービス「talentbook」を導入。番組プロデューサーやディレクターなど、様々な社員の方を主役にしたストーリーを発信し、採用候補者への魅力の伝播を実現している。
今回は、talentbook導入のきっかけや効果などについて、人事課長の澤野井 信宏氏<2022年6月1日よりPRプランニング部マネージャー>にお話を伺った。
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Profile
澤野井 信宏さん Nobuhiro Sawanoi
PRプランニング部マネージャー
1997年朝日放送株式会社に新卒入社。経理局財務部、編成局番組宣伝部、編成局テレビ編成部を経て、2018年より人事部に配属。(※部署名は当時の呼称) 人事部では新卒、中途採用のチーフを務め、他にシニア戦略、働き方改革(テレワーク推進)などを主に担当。2022年6月よりPRプランニング部。
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導入背景
・ビジネス思考のある優秀な新卒学生に対する採用広報の強化
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導入の決め手
・会社や事業の「透明性の高い魅力」を作成・活用・分析できるコンテンツ管理システム(CMS)がある点
・NewsPicksなどの外部メディアとtalentbookが連携しており、放送局を就職先の選択肢の一つに考えていない潜在層学生にリーチすることが出来る点 -
効果
・技術職志望の理系学生からの応募が増加
・掲載コンテンツに接触したことのある応募学生の増加
・会社の目指している方向性や、職種毎の具体的な働き方や思いに対する理解度の向上
INDEX
求める人材に出会うために。学生の目に触れる機会を作りたい
▲PRプランニング部マネージャー 澤野井 信宏さん
──talentbook導入時の背景や経緯、課題感について教えていただけますか。
澤野井さん:朝日放送と聞いてまず想起されるのは、『M-1グランプリ』や『熱闘甲子園』などのテレビ番組だと思います。しかし実は、弊社はテレビで番組を放送するだけではなく、コンテンツ価値の最大化を目指し、様々な取り組みを行っています。たとえば、YouTubeと連動した番組を放送したり、配信限定の番組を制作したり。「総合コンテンツ企業に」を標榜し、多様なコンテンツを展開できる企業へと生まれ変わっている最中なのです。
そんな今、弊社は、コンテンツを創ることができて、創ったものを放送するだけではなく、どのようにマネタイズするのかを考えて実行できる人──「コンテンツプロデューサー」。を求めています。コンテンツプロデューサーは新卒にせよ、中途にせよ、入社後に目指してほしいキャリアの一つ。そうした背景もあり、テレビ業界への興味の有無を問わず、コンテンツプロデューサーの素養を持つ人物と出会いたいと思っていました。
また、テレビ局の仕事はよく知られている番組プロデューサーや報道記者などの仕事をしている人達のほかに、実は放送周りのシステム構築を担う技術職のメンバーがたくさん活躍している環境です。理系出身の社員で、若手もイキイキと働いています。そういった、あまり知られていない技術周りの仕事に携わる社員を取り上げることで、理系の学生からの応募を増やしていきたいという気持ちもありました。
もともと、2018年のホールディングス化を皮切りに、採用広報自体も徐々にではありますが、活発になりつつあるところでした。これまでは、自社のWebサイトに社員のインタビューコンテンツを載せていました。しかし、テレビ局で働くことに興味のある方には読んでいただいていたのですが、テレビ局への就職を考えたことのない学生や中途入社を考えておられる方には、十分にコンテンツを届ける機会がありませんでした。そういった課題感がある中で社内から「talentbookを活用してみるのはどうだろうか」という話が生まれたのです。
弊社には面白い取り組みを行っている社員がたくさんいるのですが、なかなか世の中で知られる機会がありません。talentbookなら社員の考え方や仕事感にフォーカスを当てたコンテンツを作成し、提携メディアや、広告配信等を通して届けることができるので、テレビ局志望ではない学生や中途入社を考えておられる方にも興味を持ってもらうきっかけとしてマッチしているだろうと考えました。
総じて新卒・中途に限らず、社員の働きぶりを発信する機会を増やすことで、朝日放送グループ全体に興味を持ってくれる人の総量を増やしたいと考えていたのが当時の状況でしたね。
──会社として採用広報に取り組むタイミングだったのですね。そんな中でtalentbookをパートナーとして選んでいただき非常に嬉しいです。導入にあたり、決め手となった部分はどちらだったのでしょうか?
澤野井さん:大きく分けて2つあります。まず、外部連携機能が充実している点。talentbook自体がひとつの媒体として機能しているのはもちろんですが、NewsPicksをはじめ多くの外部メディアと連携しているため、記事を掲載したあとの広がりが大きいと感じました。
弊社に興味関心を持ってくれる人の間口を広げたいという気持ちがあったので、感度の高い学生や社会人が自然と弊社を知ってくれる機会が作れるのがありがたいと思いましたね。
▲talentbookのストーリーが広がっていく仕組み
もう1つは、talentbookのデザインの良さです。単におしゃれというだけではなく、上手に社員それぞれの魅力を伝えられて、読み進めたくなるデザインだと感じました。採用広報は応募者を集めるという目的もありますが、同時に、社員が掲載されることで喜びを感じてくれるというメリットもあると思うんです。社員一人ひとりがより一層魅力的に映る媒体、それがtalentbookなのではないかと感じました。
──自社の採用サイトでインタビューコンテンツを掲載していたとのことですが、当時の発信体制はどういう形だったのでしょうか? また今はどんなチーム体制で運用されていらっしゃいますか?
澤野井さん:talentbookを活用する以前、自社サイトに掲載していたインタビューコンテンツは僕が一人で制作を担当していました。是非紹介したい社員にアポを取り、取材・撮影を行って記事を執筆するイメージです。
以前、番組宣伝部といってテレビ番組の宣伝を行う部署にいたので、なにかを届ける仕事が昔から好きなんです。インタビューコンテンツの制作も当時を思い出しながら楽しく携わっていました。
talentbookの導入初期も同じような流れで、僕が全体設計から制作までを一人で担当していました。ただ、だんだんと手が回らなくなってきたタイミングでもあったので、サポートのメンバーに入ってもらって2人体制で運用するようになりました。
その後、サポートをお願いしていたメンバーが育休に入ったので、別の担当者をメインに据えて僕がサポートするという形を取り、現在も2人体制を維持しています。もう少し担当メンバーを増やして今までよりもスピード感を持ってコンテンツの制作に取り組んでいきたいです。
──採用広報を始めた当初、どのようなコンテンツをどのような目的で作成していましたか?
澤野井さん:まず取り組んだのは「コンテンツプロデューサー職」の採用を促進するためのコンテンツづくりでした。ただ、当時はコンテンツプロデューサーというポジション自体があまり知られていませんでしたし、社内でもそう多くはないという状況で。
そこで、まずは社内で活躍しているコンテンツプロデューサーの一人として、M-1グランプリを担当していた辻を取り上げたコンテンツを制作しました。
▲M-1グランプリの元・プロデューサーが語る、”おもしろい”コンテンツづくりの流儀
次に制作したのが、先ほどもお話した放送周りのシステム構築を担う「総合技術職」を紹介するためのコンテンツです。理系学生がテレビ局に就職した際の仕事のイメージが湧くようにと思って取材を行いました。
▲「“みんなと同じ”はおもしろくない」東大出身社員が、朝日放送の新たな価値を創る!
また、弊社では多くの女性社員が活躍していますので、女性のキャリア面に焦点を当てて管理職ポジションの女性を紹介したこともありますし、あとは子育て世代も取り上げました。テレビ局は激務の印象が強いと思うので、育休を経て活躍している社員を紹介することで、職場の選択肢にテレビ局を入れてくれる女性が増えてくれたらと思っています。
▲想定外は新しい自分を見つけるチャンス。仕事と育児を両立し、これからも新たな挑戦を
最近、特に注力していきたいと思っているのは、中途採用で朝日放送グループに入社したメンバーを紹介するコンテンツです。複数の企業を経験さている方も多いので、転職やキャリアに対する視点や価値観がとてもクリアだからです。
また、複数の会社を経験しているからこそ、他社と朝日放送グループの違いもよくわかる。彼らの目には弊社がどのように映っているのか、それを赤裸々に語ってもらいたいと思っています。朝日放送グループを多角的に紹介できるコンテンツを作っていきたいですね。
talentbookでの採用広報活動を通して、技術職志望の理系学生からの応募を獲得
──貴社の新卒採用においては、主にコンテンツ制作に携わる総合職、放送周りのシステム構築を担う総合技術職に注力されていると伺いました。その中で、talentbookのコンテンツはどのように活用されていますか?
澤野井さん:掲載しているコンテンツが少しずつ溜まってきたので、現在は採用サイトにも紐付けを行って「社員紹介のスペシャル版」という立ち位置で応募者に読んでもらう機会を作っています。
▲採用サイト内の「社員紹介」ページにてtalentbookを連携
また、チャレンジの一つとして、取材時の音声を編集しYouTubeに音声動画として公開しました。
文章を読むとなると時間がかかってしまうという就活中の学生にも「ながら」で触れてもらう機会を作れたらと思い始めた取り組みです。
Instagram:https://www.instagram.com/abctvrecruit/
技術部の編集チームにノイズを消したり編集するなどの工程を協力してもらいました。面白い取り組みではありましたが、思いの外、編集に時間がかかってしまっているので継続は難しいかもしれません(笑)。ただ、活用方法の一つとして実践できたことは良かったです。
その他はInstagramで新しい記事の公開をお知らせする投稿を行ったり、就活シーズンや募集したい職種に合わせた広告配信なども実施しました。
▲22卒時期の広告配信スケジュール
──内定者アンケートで振り返りも行っていらっしゃるとのことですが、そちらの反応はいかがだったでしょうか?
澤野井さん:talentbook導入開始から、毎年最終面接の前段階でアンケートを実施するようにしています。アンケートの項目は「talentbookでの発信を知っていますか?」「talentbookの記事が応募の決め手になりましたか?」といったものです。
初期こそtalentbookが応募者にリーチしている手応えはなかったのですが、だんだんと「一回は見た」「数回は見た」などの回答が増えてきており、制作するやりがいを感じられています。コンテンツの掲載数を増やしたり、自社の採用サイトとの連携なども行っているので、結果が地道に表れているのかなと。
特に印象に残っているのは、理系学生の一人が「talentbookの記事を見て、仕事の内容や活躍している理由を知ったことが応募のきっかけ」と回答してくれたエピソードです。まさにtalentbookを導入する目的の一つだったので、効果があることを知れて本当に嬉しかったですね。
テレビ局を志望する学生以外の層にもリーチしていきたいという想いを、talentbookのコンテンツによって少しずつ達成できている状況です。
▲22卒者アンケート回答抜粋
──これまでを振り返って大変だったことはありますか?
澤野井さん:一つはtalentbookのCMSの仕様に慣れることでした。一度覚えたはずでも、触らない時間ができてしまうと忘れてしまうこともあって……。
ただ、困ったときはチャットサービスで質問し、すぐに解決できたので、使い方がわからないから放置してしまうということにはならずに助かりました。
また、現在課題感として抱えているのは、talentbookを使い倒すための時間が足りないこと。僕自身、今は新卒採用と中途採用の統括を行っており、特に中途採用は一人で担っています。その他にも、シニア戦略・働き方改革・テレワークの規定づくりなども担当しているので、talentbookに割ける時間が少なくて。
今後はチームでの運用が必須だと思っているので、メンバーと連携を取りながらtalentbookを効果的に使っていく方法を考える予定です。
──当社としても印象に残っているのが、インタビュー中に泣いてしまう方もいらっしゃって……熱い想いで仕事に打ち込んでいる人が多く、本気なんだなという気持ちがひしひしと伝わってきました。
澤野井さん:インタビュー中に泣いたという話は今初めて聞きました(笑)。たしかにインタビューの機会をもらった社員には「良い場を与えてくれてありがとう」と言ってもらうことがよくあります。記事で紹介している社員は、心から自慢できるメンバーばかりです。
グループ全体の採用を後押しする存在を目指して、talentbookのポテンシャルを引き出したい
──これまでを振り返って「採用広報」視点で今後改善&トライしていきたいことはありますか?
澤野井さん:ホールディングス化したので、グループ同士での連携を密に取りながらグループ全体として採用力を高めていきたいと考えているところです。グループ全体で見て、フィットしている人を採用できたほうが将来的にプラスに働くだろうと思うので、今後はテレビ社だけではなくグループ全体を見つめた採用戦略を考えていきたいです。
特に、子会社でどういった人材が求められているのかを知れる機会は現状そう多くはありません。たとえば、「テレビ局に入社したいが制作部署以外には配属されたくない」と考える学生が、より多くの時間、制作に携わるための選択肢の一つとして、番組制作を主にやっている子会社を知ってくれたら良いなと思うんですよ。
グループ全体の働き方や仕事を広く届けていくことで、朝日放送グループを広く知ってもらうきっかけになれば嬉しいです。
talentbookの活用を始めて2年目に突入し、コンテンツ数は着実に増えていますが、導入当初の「最終的には社員全員を紹介したい」という気持ちは今も変わっていないので、大きな目標達成に向けて今後も活動していきたいです。
弊社の社員は全員が全員、それぞれのフィールドで活躍していると感じています。その活躍ぶりを全員分丁寧に紐解いてコンテンツとして紹介していければ最高てすね!
──みなさんのインタビューを拝読できる日が待ち遠しいですね。ちなみに、「採用広報」だけでないtalentbook活用への想いもあるとか……?
澤野井さん:2022年6月1日付で主に番組のPRを行う「PRプランニング部」に異動になりました。新しい部では制作しているテレビ番組はもちろん、会社や人も含めた形でトータルでリブランディングしていきたいなと。その際、talentbookはリブランディングの大きな助けになるだろうと考えています。
今後のリブランディングの方針としては、より一層「人」とその人が生み出す「仕事」にフォーカスを当てていきたいと考えていますし、そのためにはtalentbookを活用するのが効果的だと感じています。
当初の導入理由は「採用広報の強化」でしたが、あくまでそれは目的の一つでしかありません。talentbookを使ってみると、本当にさまざまな活用方法があることに気づけますし、会社の取り組みを多方面から後押ししてくれるサービスだからです。
今後、リブランディングに対して会社全体が舵を切るなら、talentbookは絶対にその手助けをしてくれる。そういう想いで、talentbookの新しい可能性を模索していきたいと考えている段階です。そのためにも、まずは最大限運用できるチーム作りをしっかりと行っていきたいですね。
──今後の展望まで、熱い想いをありがとうございました。最後に、talentbookを一言で表すとズバリどんなサービスですか?
澤野井さん:「広報・PRの飛び道具」かなと思います。というのも、自分たちでコンテンツ制作や発信、活用といった採用広報を行うことはもちろん可能です。ある程度の効果ももたらされると思います。
そこを、talentbookを通して採用広報活動をすることで、自分たちが予想していなかった景色を見ることができる。そういう力があると思っています。同じコンテンツを掲載するなら、talentbookで掲載したほうがレバレッジが効くのだろうなと。
さらに、使い方次第ではポテンシャルの高いサービスだという実感もあるので、その魅力を最大限引き出せるように工夫していきたいと思っています。今後も効果的に活用できるよう、どうぞよろしくお願いいたします。
──引き続きtalentbookを通じて広報・PR活動の伴走パートナーとしてご支援させていただきます。貴重なお話をありがとうございました!
※掲載内容は取材当時のものです。
ー編集後記ー
お話をお伺いし、自分たちが出会いたい(仲間になる可能性がある)学生さんに寄り添った採用広報を実践されていきたのだなと感じました。自社の伝わっていない部分の把握から、そこを補うための人選・記事作成。就活スケジュールに寄り添った広告配信等。着実に実行されて来られた結果、入社前から会社やコンテンツプロデューサーへの理解が深まった状態の学生さん、これからの未来を一緒に創っていきたいと思った学生さんとの出会いにつながったのだと納得しました。
また、澤野井さまが「PRプランニング部」に異動されたとのことですので、採用広報だけに留まらず、会社全体のブランディングの領域でも、ぜひ伴走させていただけますと嬉しいです。
インタビュー:株式会社 PR Table 川島