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2023.02.24

24卒向け施策 “就職先としてのデンソー” の認知度を上げるための動画×広告配信を活用した採用ブランディング

株式会社デンソー

事業内容 

従業員数

自動車技術、システム及び製品の開発・製造・販売など

167,950名(連結)・45,152名(単独) 2022年3月31日時点のデータ

事業内容 

ITサービス事業、社会インフラ事業

従業員数

単独22,036名(2023年3月末現在)連結118,527名(2023年3月末現在)

※株式会社PR Tableは2024年11月にtalentbook株式会社へ社名変更しました。
※所属・職位は、記事公開時/2023年2月24日

CASEの時代に入り「100年に1度の大変革期」とも言われている自動車業界。新しいモビリティ社会を支えていく多様な人材確保に新卒・中途採用問わず積極的です。

デンソーもまた、従来のハードウェア領域だけでなく、ソフトウェア領域にも採用の幅を広げていますが、特にソフトウェアの領域では、就職先としてのデンソーの認知度が低く、「働く場」として候補にあげてもらうためにも、これまで以上にPR活動に注力しなければならない状況にありました。

さらに、コロナ禍ではこれまで対面で実施してきた企業説明会などの採用イベントが全てオンラインに移行し、デンソーに興味を持ってくれた求職者と直接話をして関係性を築き、仕事内容や社風、働き方への理解を深めてもらうことが難しくなりました。

そんな中、コロナ禍以降の新入社員に「就活時にもっと欲しかった情報」をアンケートした結果、「デンソーで働く先輩社員の様子・生の声」「入社後の雰囲気」「入社後どのように活躍できるのか」を知りたかったという声が多数集まりました。その打ち手の一つとして企画したのが「ぶっちゃけデンソーってどうよ?」の動画コンテンツを活用した採用ブランディングです。

今回は、24卒向けに行った取り組みの裏側について株式会社デンソー広報渉外部 ブランド推進室 坂井氏にお話いただきました。

経営課題としても上がった “就職先としてのデンソー” 採用ブランディング強化の背景

──採用ブランディングを強化した背景をお聞かせください。

坂井さん:コロナ禍に入ってからは、合同説明会やインターンの中止、リクルーター活動の中止など、圧倒的に学生さんとの接点がなくなり、マイナビの就職企業ランキングでは19年卒の時の28位から23卒時は66位と38位も下がってしまいましたし、新卒のエントリー数も20卒の半数になってしまいました。

その状況は経営課題としても取り上げられ、22年度から人事と広報が密に連携し、これまで以上にPR活動を本格化させることになりました。

── なぜ広報と人事が連携してPR活動に取り組むことになったのでしょうか?

坂井さん:当時、採用室でも本当は「社員が伝わるコンテンツ」を増やしたいと考えていたようなのですが、採用室も十分な人工があるわけではなく、MUSTの活動に注力しなければならない状況でした。それであれば、私たち広報で拾えるボールは拾おうということで、先に広報で利用していたtalentbookを有効活用しながら人事と連携して、学生にとって「あったら嬉しい」と思えるようなプラスアルファの情報発信をしていくことになりました。

▲デンソーのtalentbookページ

動画制作スタートの背景は新卒アンケートの「声」から

坂井さん:採用軸で情報発信をするにあたり、「学生が欲している情報とは何か」を突き止めることが先決でした。そのため、広報で入社したばかりの新入社員にアンケートを実施しました。

その結果、圧倒的に「デンソーで働く先輩社員の様子・生の声」「入社後の雰囲気」が知りたかったという声が多かったのです。実は、コロナ禍前まではもともと、入社の決め手が「デンソーで働く先輩社員」であると回答する人が多かったんです。その多くの方はリクルーターやインターンシップで出会った社員に魅力を感じてくれていました。ところが、コロナ禍によるオンライン化によって、もともと学生が魅力に感じてくれていたデンソーの「社員」と学生との接点が皆無になったことで、先輩社員の様子や職場の雰囲気がきちんと伝えられていないと気づかされました。

当社の強みが「社員」なのであれば、そこをしっかり見てもらいたい、感じてもらいたいと思ったのが、動画制作のきっかけですね。

──なるほど。手段として記事も作成されていると思いますが、動画が適切だと思った理由はどこだったのでしょうか?

坂井さん:もちろん、社員の記事も公開していますし、きちんと事実を伝えるには大事なコンテンツだと思っています。一方で、人間味やその人の熱量を伝えるには動画が有効だと考えました。「リアル」な情報を求める学生に対しては、いち社員にフォーカスした記事だけではなく、「対話から生まれる自然なやりとり」の中でデンソーらしさを表出することが、雰囲気も含めてよりリアルなデンソーを届けられるであろうと、動画制作に踏み切りました。

また、これも新入社員へのアンケートの話なのですが、「よく使うSNSはどれですか?」という質問をしたところ、YouTubeを活用しているという回答が圧倒的でした。その回答からも、YouTubeを使わない手はないと思い、動画を作るのであればYouTubeで公開しようと考えていました。

動画コンテンツ「ぶっちゃけ、デンソーってどうよ?」が完成するまで〜目的・構成・人選のポイント〜

── そこから動画制作の目的を整理し、撮影に向けての準備が動き出したと思うのですが、人選の工夫を教えてください。

坂井さん:人選は、学生にとって身近な先輩、かつ、ある程度仕事の経験もある入社3・4年目の社員の中から登壇者を探しました。また、カメラを前に緊張しすぎないよう「同期」で複数名登壇してもらうことにしました。

ポイントとして、まずは1名の社員に、「自分が学生に戻ったとして『この先輩と一緒に働きたい』と思える同期を紹介してください」と依頼して、人選していきました。

──いつもの同期の会話感がとても伝わってきますよね(笑)。企画や構成でも工夫した点などありましたか?

坂井さん:学生にとっても人生の節目となる大切な「就職」なので、入社後のミスマッチがなるべく起きないよう、カッコイイ面も愛嬌のある面も含め、等身大の“デンソー”が伝わることも意識しました。

また、主役は社員なので、あくまでも社員を通してデンソーのことを知ってもらうことを意識し、会社側の伝えたいことと学生の知りたいことを引き出すイメージをしながら下記をポイントにシナリオを考えました。

・動画の始まりには社員の「人柄」が伝わる質問を設定。
・トークテーマは用意するも、話す内容は「社員に一任」し、当日の会話の中で新たな話が出てくる余白を確保。
・社員自身の言葉で語ってもらうことで、より「リアル×オープン」な発信にすることを意識。

また、先述の「就活時に欲しかった情報」の調査結果もシナリオへ反映しました。

<例>
・先輩社員の就活エピソード、実体験
・外から見たデンソーと異なる社内事情
・挑戦を通して得られた成長やそれを支える職場や企業カルチャー

──なるほど。届けたい相手をイメージした構成づくりを徹底的に意識されたのですね。また、畳の部屋が印象的だったのですが、そこにもこだわりがあったのでしょうか?

坂井さん:そうですね(笑)。社員がリラックスして座談会に挑めるよう、また、珍しい社内施設の紹介も兼ねて畳の部屋を選びました。動画の絵的にも、カチカチのオフィスじゃない方が、雰囲気も伝わるかなと思い、最初の動画撮影はそこを選びました。

▼完成動画座談会バージョン

──完成した動画をみましたが、最初から意識していた人柄や雰囲気が伝わる動画になりましたよね。とはいえ制作の過程でここは大変だったみたいな部分はありましたか?

坂井さん:そうですね。やはり人選には苦労しましたね。部署も200以上ある中で、出ていただくからには日頃から頑張っている社員や、動画を観てくれた学生さんが、この先輩と働きたい思ってもらえるような社員に登壇して欲しいと思っていましたから、自身の業務で普段関わりのない領域を含めて登壇者を探すのに苦労しました。あらゆるネットワークを活用して、いろいろな部署の人に話を聞いて、推薦もしてもらいながら進めていきました。

また、平日の昼間に撮影をしたので、登壇者の上司にも理解を得られるよう、丁寧にコミュニケーションをとりました。このあたりは泥臭く動きましたね。

動画が出来上がるまででいうと、テロップを入れる際、どこで区切ったら読みやすいかとか、話し言葉をどう書き起こすと読みやすいかなどの検討に少し時間をかけたかなと思います。

あとは、話が盛り上がってしまい、良い素材がたくさん取れた時に、どこをカットするかで頭を悩ませました。全部流すと40分くらいある動画を15分前後にするのはかなり苦労しましたね(笑)。ですが、取捨選択をする際は、かならず新入社員アンケートでの生の声に立ち戻り、何を残して何をカットするか選びました。

──現在、3本の動画が公開されていると思うのですが、制作を重ねるにつれて工夫されたポイントはありますか?

坂井さん:1本目は、デンソーで働くとこういう雰囲気の職場で働けるといった、ざっくりとした話をメインでしてもらいました。2本目では、もう少し業務内容や会社制度も含めて触れられるようなものにしました。3本目は似たような内容が続くと飽きがくると思い、あえて役職がついているような少し年の離れた先輩社員で、他社での経験もあるキャリア入社の社員に出てもらいました。他社を知っているからこそ、デンソーの良さや、逆にデンソーがもっと頑張らなくてはいけないと感じる部分について話してもらいました。

──たしかに、他の会社を知っているからこその「ぶっちゃけ話」は、OBOG訪問の機会が減ってしまった今、就活生にとって貴重な話なのかもしれないですね。ありがとうございます。

いかに就活生にタイミングよく届けられるか。24卒向け認知施策のターゲティング広告

── 今回は、24卒の選考エントリーがはじまるタイミングに合わせてターゲットを絞って広告配信で届ける施策を行ったとのことですが、どのような設計をされたのでしょうか?

坂井さん:24卒(大学3年生)が就職活動で動き出す、10月〜動画広告と記事へ誘導する広告配信をして、就職活動のピーク後も継続して学生さんとの接点がもてるようスケジュールをひきました。

また、2022年11月に採用サイトをリニューアルしたので、動画広告で接点を持った学生が、少しでも興味を持って採用ページに訪れ、マイページに登録してくれる流れも意識して、ターゲティングのセグメントを考えました。セグメントは、早い段階から「就職先としてのデンソー」の認知を取りたいという意味で、メインターゲットは24卒(大学3年生)としつつも、大学1年生、2年生もターゲットに入れて配信しましたね。

── 会社として学生に対して広告配信を実施することには抵抗はなかったのでしょうか?嫌がられたりするのかなという懸念もあったのかなと思います。

坂井さん:そこも、新入社員に直接聞いたのですが、彼女、彼らは、情報のシャワーを浴びるのは慣れているみたいなんですよね。それこそメルマガなども、プッシュ型で情報が届くことに拒否反応や嫌な印象はあまり受けないらしく、自分の中で情報を取捨選択するのが当たり前という感覚のようです。そのため、こちらから情報を届けにいく努力をしようという判断になりましたね。

▼配信したショートバージョン動画
◆Digest◆ぶっちゃけデンソーってどうよ? 4年目社員に聞いてみた

── 定量的な結果はこれからだと思うのですが、反応などはありましたか?

坂井さん:反応でいうと、登壇者が大学の後輩やサークルの後輩から「動画みました」と連絡をもらったと言っていたので、それなりに届いているんだなと感じています。24卒が積極的に動き出すタイミングに実施できてよかったと思います。

── 今後はどのような数字を測定していこうと考えていますか。

坂井さん:YouTubeの動画広告は「認知」に有効だと思うので、いかに学生とのタッチポイントを作ることができるかが大切だと考えています。そのため、表示回数や視聴完了率を効果測定の指標として見ています。さらには、デンソーに興味を持ってくれた人は採用サイトに訪問してくれると仮定して、採用サイトのページへの遷移数や滞在時間などをきっちり見て、分析するようにしていこうと思っています。

最終的には、エントリーに何件繋がったのかが一番見たいところですが、まずはYouTube広告で少しでも認知を高めて、「デンソー」との接点をつくりたいですね。

──完成した動画をみましたが、最初から意識していた人柄や雰囲気が伝わる動画になりましたよね。とはいえ制作の過程でここは大変だったみたいな部分はありましたか?

▲2022年11月にリニューアルオープンした採用サイト「DENSO Recruit

 

坂井さん:今、23年度に入社する新入社員様にアンケートを作っていて、「就活している時に見たデンソーの情報で一番印象に残っているものは何ですか?」という質問も追加しているので、その回答も楽しみにしています。たくさんの情報の中で、どの情報が印象に残ったかというのは、今後コンテンツを作る上でも参考になりますから。

── 現在、施策を開始して1年目だと思いますが、最後に今後の展望を教えてください。

坂井さん:動画を3本、一気に制作・公開したので、今後それらをどのように広げていくかを考えていきたいです。採用室では、リクルート用SNSで紹介してくれたり、23卒の内定者の方々に動画公開のアナウンスをしたりして活用いただいています。

徐々にオフラインでの接点も増えてきましたが、まだまだオンラインでのコミュニケーションが多いと思うので、オンライン上のコンテンツで「人」を感じてもらえるコンテンツは大事だなと思っています。

今の活動の成果が見えてくるのは、これからなので、今後内定者の声を聞くのが楽しみです。施策の始まりも、迷った時の指針も、新卒で入社した方々の生の声だったので、そこをこれからも大切に、人事部と連携していきたいと思います。

──今後の内定者の声を聞くのが我々も楽しみです!貴重なお話をありがとうございました。

ー編集後記ー

規模の大きい企業では、人事と広報が部署を超えて採用ブランディングに取り組めている事例がまだまだ少ないように思われます。そんな中、デンソーさんはお互いの得意分野を整理し、うまく役割分担されて動かれているなと感じました。

また、デンソーを「働く場」として認識してもらいたい就活生に近い、新卒入社の声を聞き、何をするべきかを考え、動画制作や広告配信など、すぐに24卒向けの施策として動かれたスピード感にも驚きました。

引き続き、採用ブランディングを実践するパートナーとして伴走させていただけますと嬉しいです。ありがとうございました。

ディレクション:株式会社 PR Table 川島


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