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「傾聴力」でつながりを生む。PRパーソンはスナックのママに学べ!──スナック探訪家・PRプランナー五十嵐真由子さん

INDEX

近年、コミュニティ形成の文脈において注目を浴びつつある「スナック」。ママと客のフラットなコミュニケーションや暗黙のルールなど、ある意味特殊なコミュニティスペースといえるでしょう。

スナックには多くの人が集まり、それぞれの店で独自のコミュニティを形成しています。スナックにおける客との関係構築を見ていると、企業とステークホルダーとの関係構築を担うPRパーソンが学べることも多いはず。

そこで今回は、「人と人が出会うコミュニティスペース」として長く愛され続けているスナックが、なぜ今再注目されているのか? 人と人を繋げるハブとなるママ・マスターの振る舞いから、PRパーソンは何を学び、活躍の場を広げることができるのか? 自身もPRプランナーであり、スナック探訪家である五十嵐真由子さんにお話を伺いました。


Profile

五十嵐 真由子さん Mayuko Igarashi
Make.合同会社 代表
スナック探訪家、PRプランナー。国立音楽大学卒。CM音楽制作会社で数多くのCMソングを手掛けたのち、楽天に入社。「楽天トラベル」にてPR組織をゼロから立ち上げる。2015年独立、Make.合同会社 の代表として多くの企業や、人、街の発信力を強化する新しいストーリーブランディング手法を提案・提供している。またスナック探訪家女子「スナ女」として、「スナック入門講座」「スナック女子向けツアー」、オフィスコミュニケーション「オフィススナック」も精力的に行い、連載記事執筆やテレビ、ラジオ などメディアを通したスナック普及活動にも取り組んでいる。


スナックは素の自分に戻れるサードプレイス

― 最近メディアでたびたびスナックが取り上げられるのを目にします。スナックという存在が注目を集めているのは、なぜだと思いますか?

五十嵐真由子さん(以下、敬称略):キーワードは「一体感」だと感じます。ママがお客さん同士の共通点を見つけて、「そういえば○○さんもそうだったよね?」とコミュニケーションのハブになってくれるので、初めて来た人でもあっという間に常連さんとつながれてしまう。もう最初の10分で、知らない間に一体感を持ってお客さん同士が仲良くなれちゃうんです。

― SNSが当たり前になっている今だからこそ、貴重な場になっているのかな、とも。

五十嵐:そうですね。SNSのようにある種希薄化されたコミュニケーションではなく、知らない人同士が“リアルの場”でつながれるようなコミュニケーションが、どこか求められているのかもしれません。

そんな一体感を持つために重要な役割を果たしているのが、ママの存在です。ママは人生経験が非常に豊富で、私独自のリサーチでは、9割が離婚経験あり。もう大御所感あふれる人たちばかりで(笑)、どんな相談も聞いてもらえる懐の深さがあるんです。

― 頼りがいがありそうです。

五十嵐:初めて訪れたにもかかわらず、ママに人生相談をしている人は多いですね。なぜ初対面でそこまで心を打ち明けられるんだろうと考えると、やはりママの人柄だと思うんです。

励ましてくれたり、背中を押してくれたり、時にはちゃんと叱ってくれたりする。そうやって心の内を相談できる場所として、2回、3回と通って常連になっていく。どんな人でも、会社では社員としての、家では母親や妻、父親や夫としての顔を演じなければならないですよね。スナックはそこから完全に外れて、素の自分に戻れる場なのかもしれません。

― そもそも、なぜ五十嵐さんはスナックに通い始めたんですか?

五十嵐:旅行会社に勤めていた頃、地方の宿に伺う機会が多かったんです。でも、いきなり東京からやってきた人間になかなか心を開いてもらえない、どうやったら膝を突き合わせてお話できるか考えていたとき、タクシーの運転手さんから「スナックに行けば解決するよ」とアドバイスをもらったんです。

そこで勇気を出してスナックの扉を開けてみたところ、町長さんや地元の旅館を取りまとめている方など、地域の有力者の方たちがたくさんいらして。いろいろな情報を惜しみなく教えてくれたんです。ついさっき入ってきたばかりの、しかも地元の人間でもない私に、遠慮なくおせっかいを焼いてくれて……。

クローズドな空間であっという間にみなさんと一体になれてしまう。そんなスナックという場所に魅力を感じて、それ以来すっかりハマってしまいました。

コミュニティが盛り上がるには、「クローズド×共通点」が重要

― 最近は曜日によってママが違うスナックもあると聞きました。そうなると常連さんは付きにくいのかなと思うんですが、いかがでしょうか? PRパーソンがコミュニティを運営する際、リピート率はひとつの指標になるかと思うので、その観点から伺えれば。

五十嵐:スナックには二つのタイプがあるんです。大御所感あふれるママのいる「トラディショナルタイプ」と、毎日違うママがやっているような「ニュータイプ」です。

トラディショナルタイプは、居心地の良さとママの懐の深さに常連さんが付きます。一方、ニュータイプは、マーケティング的にいうと「新規性」を見せる演出をしているスナックが多く、日によってコンテンツも変わります。ニュータイプが流行っているのは事実なので、リピーターを増やすより新規性を重視するスナックが最近増えているかもしれません。

― スナック初心者からすると、常連さんが多そうな店には入りにくいと感じてしまいます。

五十嵐:たしかに、最初にドアを開けるのには勇気がいりますよね(笑)。でも、常連さんはスナック初心者にすごく優しいですよ。ビジネスの現場では、すでにできあがっているコミュニティには入りづらいと感じることもあるかもしれませんが、スナックは真逆なんです。

最近若い世代の人たちがスナックに通い始めているのも、そういった隔たりの無さ、気負わなさに魅力を感じいるからではないでしょうか。例えばニュータイプのスナックは、「メガネをかけている人だけが入れる店」「落語が好きな人だけが集まる店」など、ニッチなテーマを設定する店が増えてきています。

トラディショナルタイプは、ママがお客さん同士の共通点を見つけてつなげていきますが、ニュータイプのように日替わりのママだと常連さんも少なく、共通点を見つけるのが難しいと思うんです。だから最初からテーマを区切って、共通点ありきのお客さんに来てもらう形にしたのかな、と。

― なるほど、クローズドかつ知らない人同士、でも共通点はある、というのがポイントなんですね。

五十嵐:そうそう。とはいえ、どんなお客さんが来るか分からないのは、どちらのタイプも同じです。空気を読まないお客さんが入ってきても、トラディショナルタイプのママは、相手が気を悪くしないように上手に言葉を選んで声をかけます。それは経験を積んで培われたもの。

ビジネスパーソンは特に、トラディショナルタイプのママさんから学ぶことはたくさんあると思うんです。

PRパーソンがスナックのママから学べること

― 最近いろいろな会社がコミュニティ運営を始めています。コミュニティ内の交流を促し、コミュニティ活動を活性化させる役割を担うコミュニティマネージャーを企業の広報部やカスタマーサポート部が兼任するというケースも聞くようになりました。コミュニティマネージャーはスナックのママにどんなことを学べると思いますか?

五十嵐:どうしてもビジネスシーンでは、お互いに心から打ち解けるのは難しいですよね。もちろん仕事上の付き合いなので、プライベートな部分を出せないのは仕方がないんですが……。

スナックのいいところは、やはり自分の弱さや辛いこと、自分が本当に楽しいと思うことをさらけ出せる関係性がつくれることだと思うんです。それをビジネスに置き換えると、「一線は引きつつ心の扉をどこまで開けるか」というのが、コミュニティマネージャーに必要な要素のひとつだと思います。難しいですけどね。

あとは「傾聴力」でしょうか。ママはいろいろなお客さんの話を、聞いていないようで聞いているんです。たとえば私がどこの生まれで、何の仕事をしているのかを聞いて覚えているから、他の人とつなげられる。そういったハブになるためには、ママの傾聴スタイルは参考になると思います。

― コミュニティマネージャーはスナックに通え、ということなのかもしれませんね。

五十嵐:コミュニティマネージャーだけでなく、すべてのPRパーソンに参考になるでしょうし、今後はスナックを活用したマネジメント研修で傾聴力についての講義なんかも考えています。

カウンターの中に入ると、たったひとりで同時に複数のお客さんに目を配る必要があります。一人ひとりがどんなことを感じ、どんな空気が流れているかを把握する。いきなり実践するのは難しいかもしれませんが、学ぶべきことは非常に大きいと感じます。

― 「スナックのママ式・傾聴力」というテーマでの研修パッケージ、面白そうですね。

五十嵐:最終テストは、社長にお客さん役をお願いするとかね(笑)。スナックを介して1日ママ・マスターをやることで、コミュニケーション力はすごく磨かれるはずです。実際に、PRパーソンでスナックの日替わりママをやっている人も多いですよ。

企業のPRパーソンは、あらゆる部署の人たちの話を聞き、さらにその先にいるお客様を見ないと、いいストーリーは描けないと思うんです。だからこそ、ママを経験することで傾聴力を身に着け、視野を広げようとする人が増えているのではないでしょうか。

“傾聴”と”共通点”で人と人とのハブになるスナックのママ

インタビュー場所として五十嵐さんにご指定いただいたのは、彼女行きつけのスナックでした。開店前にも関わらず、私たち取材班にも気さくに対応してくださったママ。初めて訪れたのに、なぜかホッとする――SNSの浸透によって「リアルなつながり」が薄れつつある今だからこそ、スナックのような”温かみを感じる”場が、改めて注目されているのかもしれないと感じました。

傾聴力はあらゆるビジネスパーソンにとって、必須のスキルと言えるでしょう。五十嵐さんが語るスナックのママたちには敵わないまでも、きっと学べることはたくさんあるはずです。まずは馴染みのスナックを見つけてみようと思います。(編集部)